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私たちが居る意味
 皆さん、こんばんは。いやあ、今日は大反省です。昨日の続きで今日は家から片道1時間もかかるアウトレットモールに連れていけと言われて、朝からそれなりに準備をし出掛けたまでは良かったのですが、しこたま買い物をして帰り道の高速上で当然、長女が「わたしの鞄がない!」と言い出したのです。

 小振りのショルダーバッグで中には彼女の全財産、貰ったお年玉1万円強とニンテンドーDSが入っているとか。最初はシートとドアの間に挟まっているとかシートの下に落ちているのだろう位にしか思っておらず、そのまま車を進めていたのですが、どうやら本当にないらしい。きっと買い物の途中で休憩がてらテラスで食事をした場所に置き忘れたようだ、という事のようで車内は俄かに緊迫してきました。一旦車を停め、探してみたのですが本当に無い・・・彼女の凹みようと言ったらそれは大変なもので「ごめんなさい、私が悪い」と謝り続けています。私は別の意味で凄く腹が立って苛立っていました。「なんで大の大人が二人もついていて、子供が自分の手荷物を置き忘れたことの気づいてやれなかったのか」・・・一縷の望みを捨てきれず、モールに電話して落し物が届いていないか確認したのですが、そりゃ無理ですよねえ、出てくる訳がありません。結局諦めました。その余波もあって今日は一日なんだかテンションが上がらず、物悲しい正月2日目になってしまいました。
 こういう場合、置き忘れた本人をとっ捕まえて「なんでそんなもん忘れるんだ!」と叱り飛ばすのは簡単です。でも誰が好き好んで自分の財布と宝物を置き忘れたりするものですか。これは一緒に居た大人の責任、つまり私がボケていたのです。

 味気ない気持ちで家に帰ってボーっとしていたのですが、こういう話は私どもの仕事にもよくあるなあ、という事に気づきました。「キットを組んだのですが音が出ません。何度も確認したのですが間違いはありません」というご相談は日常茶飯事です。何度かメールのやり取りをして埒が開かないと結局、修理扱いという事で私どもに送って頂くのですが、実際修理でお預かりする殆どのアンプが組立マニュアル通りに作られていない事が原因で機能不全に陥っています。勿論マニュアル通りに組まれていれば誰が作っても同じ特性,同じ音が出るように検討されているのがキットな訳ですから、実際モノを見てみると配線は漏れている、ビスは正しく使われていない・・・アナタいったい何を見てアンプを作っているワケ?と訊きたくなるような代物も少なくありません。そういう人に限って「何度も確認した。間違いない」と仰るもの。こんな時ほど悲しい気持ちになることはありません。

 こんな時「何やってんだ!こんなんで音が出る訳ないじゃない」と言うのは簡単なものです。でも逆に言えば何でこんなことになってしまったのか?果たして私どものマニュアルはビスの種類も間違ってしまうようなレベルのものなのか・・・と自問自答する必要も常々感じています。
 殆どの方は紆余曲折があっても何とか完成できるものです。仮に上手く行かなかったとしてもちょっとしたハンダの浮きや単純な勘違いが殆ど。そんな風にみんな人知れず苦労して失敗してやり直して少づつ腕を磨いているのです。最初から達人なんて居る訳ありませんから。出来れば初めての人にも完璧に出来て欲しいとは思いながら一方で「失敗を乗り越えて完成の感動を味わって欲しい」という気持ち、作るという過程そのものを通じて「やり切る」マインドを体得して欲しいという気持ちを強く持って(ある意味、お客さんに期待して)いるのも事実です。この隙間を埋めるのは「必ず完成させてやる!」という皆さんの強い意思と「何とか音を出させてあげたい!」という私どもの熱意しかありません。

 そういえば先日、暮れも押し迫ったある日、メーカさんからSOSの電話が入ってきました。嘘のような紛れも無い事実です。「大橋さん、参りましたよ。修理で預かったアンプですがお客さんは"分からない所はサンバレーに電話で訊いた。それでも音が出ないのは品質上の問題でこれは欠陥商品だ。音が出るように自分で直すから教えに来い!」とそのお客さんは言ったんだそうな。こうなると幾らマニュアルがどう・・・アフターサポートがどう・・・というレベルの話ではありません。キットというのは製作という過程を楽しむ為に皆さん或る意味、積極的に未完成のパーツセットを買う訳です。それが出来ないのは製品の品質が悪いから・・・というのは余りにジコチュー。出来ないのは学校が悪い、死んだのは病院が悪いと何でもひとの所為にしたがる現代気質がこんなところで私どもの仕事にも影を落としているのです。この問題は今後ますますクローズアップされて来るでしょう。ドクターが患者さんの親族に「大丈夫ですよ」と言う事があったとすれば、それは「助かって欲しい」という願いであるように、私たちが「きっと出来ますよ」というのは「頑張って欲しい」という私どもの願いでもあるのです。それを逆手に取られたのではいつまでたっても私どもは浮かばれません。

 キットという製品が成立,存続する為には私たち販売側が「誰にでも作れる」ことを想定す必要があるのは勿論ですが、作っていただくお客さんにも自分自身で乗り越えなければならない「壁」があるのも紛れもない事実。音が出ないのを何かの所為にしたいという気持ちも分かりますが、諦める前にまず本当に自分がやるべき事をやっているのかをもう一度見直して欲しいと思います。その上で分からない,出来ないのは仕方ない。その為に私たちがこうして留守番をしているのですから、そういう時こそ私たちの出番ではないかと思います。

 今日は親としての出番を私は逸してしまいました。無くしたお金どうこう、ということよりも自分が出来たことをその時忘れてしまった無能さにつくづく嫌気がさしました。せめて仕事ではこういう事のないよう、正月だ、休みだと手前勝手なことを言っていないで頑張らなくては、と思った一日でした。

 



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