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2010,02,05, Friday
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皆さん、こんばんは。夜半から雪が降り始めて珍しく我が家の庭にも積っています。雪が吸音材の代わりになってシーンとした静寂感がなかなか気持ち良いものです。朝になれば庭じゅう子供達の足跡だらけになることでしょう。
今日は朝からずっと来客続きで夕方まで殆ど席につけない状態であったのですが、それぞれのお客さまがとても印象的な方ばかりであっという間の一日だったような気がします。午後からは某大手ユニットメーカの方が来られて新しい8cm,10cm,12cmのフルレンジを先さまのオリジナル後面バックロードに入れた状態で試聴させて頂きました。特に良かったのが12cmで従来このメーカのユニットに感じていたハイ上がりの、悪く言えば薄っぺらい紙臭い音のイメージが姿を消し、随分と使いやすくなっているような気がしました。 相当の設計変更があったものと思いお訊ねしてみると「振動板も磁気回路も全く同じでエッジの作り方が変わっただけなんです」と伺ってエッジの重要性を改めて認識・・・旧いユニットでウレタンエッジのタイプですと15年位で加水分解を起こしボロボロに朽ちてしまって「エッジ交換したのはいいけれど、元々の音とすっかり変わってしまって使う気がしない」というお話をよく伺います。ネットで"エッジ交換"なんてキーワードでググると色んな方法や交換用の素材が出てくるとは思いますが、出来ればメーカ純正あるいは信頼出来る業者でのオーバホールをお奨めします。厳密にいえばそれでも音が変わらないかと言えばNOですが、エイヤ!でやるよりは遥かに変化量が少ないと思います。 余談ですが2ウェイ以上のSPシステムで製造後30年くらい経っているものはユニットそのものよりもネットワークがイカれている場合も相当の確率であります。特にコンデンサ類の絶縁不良が非常に多く見られ、それも特定の部位が共通して壊れていることが多いものです。ですからもし業者さんから"ネットワークはどうします?"と訊かれたら迷わず一緒に診てもらいましょう。「霧が晴れた」ような音にリフレッシュして戻ってくることも充分に考えられます。 少々脱線しましたが、そのユニットメーカの方と色々お話していた時、その方がふとこんな事を仰いました。「この業界に35年居ますけど、ずっと"刈る"ことばかりで"種蒔き"は出来なかった」・・・決してこの方だけがそうではなく、恐らくは業界全体がモノを売ることに一生懸命で、次のお客さんを育てることを怠っていたという事でしょう。ウォークマンの登場,CDの出現に端を発したオーディオのダウンサイジングによって根本的に「音の聴き方」が変化して来たなか、これからのオーディオはどうなるのか、という不安は確かにあります。きちんと設計されたSPを適切に選択されたアンプで正しくセッティングされた時の音はヘッドフォンで聴く音楽とは隔絶した歓びや感動を齎してくれると私は信じたい・・・だからこそ12年余りの間、ただひたすら「種蒔き」中心に行ってきたつもりです。それが奏功したかどうかは分かりませんが、これからも「真空管アンプで聴く音楽はこんなに楽しく美しい」ということを愚直に訴え続けるしかないと思います。 先日いらっしゃった或る方(元ケーブル屋にお勤めだった人)が言っていました。「この仕事は"言い切り"ビジネスなんですよ。これはどう、あれはどう・・・なんてイチイチやっていたら大変で堪らない。お客さんに対して"SPケーブルはこれ、アンプはこれを使いなさい。SPはこれが世界最高だからこれを使えばよろしい"と断定するのが一番商売としては楽です」と。 この話を聞いて元々オーディオというのは自分で組合せの妙を楽しむ趣味ではなかったのか・・・と暗澹たる気持ちになりました。玉石混交の情報のヘドロの海で何が何だか分からなくなっている方が、藁にも縋る気持ちで行き着いたサイトでそんな"言い切り口上"に触れれば今までの悩みが消えたように錯覚し"これを買っとけばいいんだ"ということになってしまうのは想像に難くありません。ただこれは決して「種蒔き」ではありません。促成栽培のように「早く出来ればOK」みたいなものでしかありませんし、一番根っこの部分での「自分で選ぶ」苦労もなければ満足も音楽を聴く感動も少ないでしょう。ただ「これが世界最高の音だ」と刷り込まれた事実だけが残るのみ・・・こんなことで業界が健全な成長を続けられる筈がありません。皆さんは一生懸命貯めたお金で楽器を買う時、折角店頭に行って試奏もせずに高価な楽器を買いませんよね?それと同じです。一種類だけしか店頭になくて「これが最高だからこれを買っておけばいいんだよ。他のは全部ニセモノだから」と言われて本当に満足出来るでしょうか? 一方「お前のところのアンプは何を買っていいのか分からん」とよく言われます。確かに30種類近くもあると選ぶ方は大変です。私も在庫を1機種だけに絞って「これが世界最高だからこれを買いなさい」と言えれば商売は遥かに効率的になるでしょうし、会社からも在庫がどうだこうだと文句を言われることもありません。そんな状況下で何故7機種(以上)もの新企画を今年立ち上げるのか・・・はっきり言ってビジネス的には限界ギリギリの挑戦であることを自分が一番知っていながらオーディオの「悩んで選ぶ楽しさ」をもっともっと味わって欲しいからです。 「自分の選んだアンプ,自分で作ったアンプでこんな音が出たよ!」という嬉しさを一人でも多くの方に伝えたいから、そのお店の方からはバカか!と思われようとも年間365日、メールであのアンプはこう・・・このアンプはこういう音なんですということを無限回廊を歩くように続けて来ました。 人の顔が皆違うように、好きな音も全員違います。オーディオの一番面白いのは、この「言い切れない」ところではないかと私は常々思っています。 |