ジャズ・オーディオの雑記帳
by 6041のS

ジャズ批評3月号(2008.3.1)

ジャズ批評の3月号の特集に「マイ・ベスト・ジャズ・アルバム2007」というのがあり、ぼくがお世話になっているジャズ喫茶「グット・ベイト」のマスターも記事を書いています。
雑誌の記事では、マスターによる自己紹介とか、アルバムを推薦する理由なども書かれていますが、興味のある方は雑誌を読んでください。では、マスターがどんなアルバムを推薦しているか紹介します。

2007 新録ジャズ・アルバム・ベスト5
1 「ズボンで」坂田明&ちからもち(社会人レコード)
2 「キャッチ・アップ」森山威男クインテット(F.S.L.)
3 「Sacred Ground」David Murray Black Saint Quartet(Justin Time)
4 「ライブ・イン・オランダ」タック&パティ(ユニバーサル)
5 「パッション・オブ・エイジア」川島哲郎Meets竹澤悦子(Jazz Bank)

2007 発掘・復刻ジャズ・アルバム・ベスト5
1 「Complete Last Date」Eric Dolphy(LP Jazz Gallery)
2 「ヒア・アンド・ナウ・アンド・サウンディング・グット」ディック・モリシー(Mercury)
3 「コーネル1964」チャールス・ミンガス・セクステット・ウィズ・エリック・ドルフィ(Blue Note)
4 「プリーズ・リクエスト」オスカー・ピーターソン(Verve)
5 「テイルズ・フロム・ザ・ハドソン」マイケル・ブレッカー(Impulse)

ぼくは、よくグット・ベイトにお邪魔しているので、マスターが発掘・復刻盤で取り上げたものはなるほどと良く理解できるが、新録のものはまったくノーマークであった。ジャズ喫茶の店主ともなると実に良く色んなものをチェックしているのだと、改めて感心する。
もっとも、情報を貰ってもあまり日本物には手を出さないが。






ベ−ト−ヴェンと蓄音機(2008.3.2)

クラシックの音楽好きで、オーディオ好きの人ならば、五味康祐の書いた「五味康祐 オーディオ遍歴」と「五味康祐 音楽巡礼」という本を読んだことがあるか、読んでみたいと思うだろう。残念なことに、現在では両方ともになかなか入手が困難なようである。これらの本を読んでみると、書かれていることも面白いが、その独特の語り口がとても印象的である。およそクラシック音楽とオーディオを明るく楽しんでいるというような感じではなく、細君に多大な苦労をさせながら、重荷を背負った求道者のような語り口であり、読んでいる方も佇まいを正さないといけないのかと感じてしまう。
氏がオーディオ遍歴の果てにたどり着いたオーディオが、タンノイのオートグラフというスピーカーであり、マッキントッシュのC22,MC275というアンプであることは、広く知れ渡った話である。これは最近耳にした話であるが、氏が業者に依頼して英国よりオートグラフを輸入した時に、業者は2セット輸入し、1セットは依頼主の五味康祐に渡ったのであるが、もう1セットは別の方のところに渡ったのである。それが最近愛知県の方のところにやってきたようである。

角川春樹事務所から出版されている本に、ランティエ叢書と名づけられたシリーズがある。ちょっと仕事を離れて、心の豊かさとかゆとりを得るために本を読んでみる、そんなことを意識して出版された本である。全部で35冊以上出ているようであるが、そんな中に、ベ−ト−ヴェンと蓄音機(オ−ディオ)五味康祐という本が入っている。その内容は、氏の上記2冊の本からの抜粋であり、入手もまだ出来るようである。これ以外にも植草甚一による「古本とジャズ」もなかなか面白いと思う。
オーディオと音楽以外にも興味をそそるような本が出版されている。ぼくが気になっている本を以下にならべておく。

・鬼平・梅安食物帳(ランティエ叢書 ) 池波正太郎 1998/11
・骨董鑑定眼(ランティエ叢書 ) 青山二郎 1998/11
・自家菜園の愉しみ(ランティエ叢書 ) 榊莫山 1998/09
・魯山人の食卓(ランティエ叢書 ) 北大路魯山人 1998/09
・風太郎(ふうたろう)の死ぬ話(ランティエ叢書 ) 山田風太郎 1998/07
・食道楽の献立(レシピ)(ランティエ叢書 ) 村井弦斎 1997/12
・古本とジャズ(ランティエ叢書 ) 植草甚一 1997/12
・ベ−ト−ヴェンと蓄音機(オ−ディオ)(ランティエ叢書 ) 五味康祐 1997/11
・俳句と地球物理(ランティエ叢書 ) 寺田寅彦 1997/09
・江戸前食物誌(ランティエ叢書 ) 池波正太郎 1997/07





ゲーテの西東詩集(2008.3.3)

ジャズ批評の2008年3月号をパラパラめくっていたら、寺島靖国さんのエッセイに次のようなことが書かれていた。彼が井上ひさし著「日本語観察ノート」を読んでいたら、中に「文章上達のコツ」という章があり、そんなもんあるものかと思って読んでいると、大事なことは何か訴えたいことを明確に持っている事であると書いてあり、いたく感心したと。これは文学だけのことでなく、ジャズでも、もっといえば何ごとにおいても、人に感動を与えるには、大切なことであるように思う。
これを受けての立場(見る者、読む者、聴く者)で考えると、作者より提供された作品を鑑賞して、感動を受けるかどうかということが基本では有るけど、すべてでは無い様に思う。どうして、どういう背景があって作者はこういうものを生み出すことが出来たのだろうかと、作品とともに、作者を理解することが出来れば、より一層作品に対する理解も深まり、感動も増すのではないか。
そんなことを思いながら、ぼくは一つのことを思い出した。昭和44年12月に出版された1冊の詩集を、古本で入手し読んだ時のことである。「西東詩集」ゲーテ著である。ゲーテの晩年の金字塔といわれる、平凡社出版のこの本は、赤い皮シボ調の表紙に金箔で文字の書かれた豪華な装丁の本で、訳詩者も井上正蔵、奥津彦重、高安国世、手塚富雄といった、当時のドイツ詩の日本における第1人者たちである。
このゲーテの西東詩集の初版本にはアラビア文字で「西方の詩人による東方の詩集」と書かれているが、ゲーテは詩作をするに当たり聖書とかホメーロスの詩などを研究していたが、東方の文化にも興味を持ち研究していた。特にペルシャの詩人ハーフィズについて強く関心を示し、この詩集にはその結果が反映されている。「ゲーテ相愛の詩人マリアンネ」高橋健二著によれば、この詩集は12の巻から構成されている。「歌びとの巻」「ハ-フィズの巻」・・・中でも素晴らしいのは「ズライカの巻」である。ここではペルシャの詩に出てくる理想の女性ズライカと一人の男性ハーテムによる相聞歌の形式の抒情詩で構成されている。ゲーテがこの詩を書いたのは65歳前後であり出版されたのは70歳の時である。
「ズライカの巻」の中でも良く知られた「銀杏の葉」という詩を次に掲げます。

銀杏の葉

東洋からはるばると
わたしの庭にうつされたこのいちょうの葉は
賢い者のこころをよろこばせる
ふかい意味を味わわせます。

これはもともと一枚の葉が
二つに分かれたのでしょうか?
それとも二枚の葉がたがいに相手をみつけて
ひとつになったのでしょうか?

こんなことを思っているうちに
わたしはこの葉のほんとうの意味がわかったと思いました。
あなたはわたしの歌を聞くたびにお感じになりませんか、
わたしが一枚でありながら あなたと結ばれた二枚の葉であることを?

(「西東詩集」手塚富雄 訳 平凡社出版)
ゲーテの自筆原稿
(デュッセルドルフ・ゲーテ博物館所蔵 )



ぼくは65歳にもなったゲーテに、この詩を書かせた情熱はどこから来るのか大変興味を抱いた。実はこの「ズライカの書」に歌われているのは、ズライカ(マリアンネ)とハーテム(ゲーテ)のふたりの恋愛を歌ったもの。ゲーテは二枚の葉が割れて一枚につながっている銀杏の葉を男女の愛の象徴とみて、ハイデルベルクの古城の庭にあった銀杏の葉を、ゲーテ相愛の詩人マリアンネに贈ったのである。
当時のぼくは詩を書いていたので、ゲーテのこと、マリアンネのこと、ハーフィズのことを知りたくなり、「ゲーテ全集」「相愛の詩人マリアンネ」高橋健二著、「ハーフィズ詩集」黒柳常男訳・ワイド版東洋文庫などを入手して読みふけったものである。





ブックオフ巡り(2008.3.4)

ブックオフ巡りをした。基本的には100円本しか買わないが、今回は、ジャズ本1冊は半額を払った。どうしてこの本を買う気になったのか解説する。

・「宇宙誌」松井孝典著・徳間書店1993年(2800)
宇宙と名が付くと常に手にとって見たくなる。壮大な宇宙の話をしているといつの間にか素粒子の話になる、この対比も面白い。前にも「ホーキング未来を語る」とか、グリーンの「エレガントな宇宙」を買ったが、今回のものは「宇宙誌」というタイトルのように、物理学の話のみではなく、哲学的な話もありそうだ。
・「ジャズを放つ」江森一夫編集・洋泉社1997年(1700)
洋泉社というのは、クラシックの名盤ガイドのような、クラシック音楽の解説本を多く出版している会社である。そこがジャズの本を出すに当たって、ジャズの専門家だけでなく、クラシックの専門家にもジャズを語らせているのが面白い。
・「図書館読本」別冊・本の雑誌13 2000年(1500)
図書館の仕事についての色々本。興味本位で買った。
・「君子の交わり紳士の嗜み」小島直記・新潮社1985年(1200)
小島直記の本は原則として買う。今回の内容は、筆者が著名人と囲碁の対局をしてその様子について書いたもの。
・「21世紀知の挑戦」立花隆・文芸春秋2000年(1429)
立花隆の昔の著作「田中角栄研究」「農協」「脳死」などは、彼の研究に基づく主張があって面白く読んだ。現在は以前ほどのインパクトは感じないが、それでもついつい買ってしまう。
・「アメリカ現代史」斎藤眞著・山川出版1976年(1752)
山川出版の世界現代史シリーズは全部で37巻出ているようだが、ぼくは23巻持っている。現代というまだ歴史の評価が定まっていない時代を、解説しているところが気に入っている。といっても少し古くなってきたが。
・「世界の歴史第17巻・アメリカ合衆国の発展」清水博著・講談社1979年(1500)
「アメリカ現代史」と並んで置いてあったので買ったもの。どんな書き方がしてあるのか興味もある。
・「日本史こぼれ話」笠原一夫/児玉幸多編・山川出版1993年(860)
こぼれ話も好きなので買ったもの。

気楽に何でも買えるのがこの手の古書めぐりの楽しみである。しかし本を買っても読んで頭に入るのか、それとも頭を休める枕代わりになるのか微妙だ。確率的には後者の方が多いだろう。





豊田市農ライフ創生センターでの開講式(2008.3.5)

今日は農作物栽培技術研修担い手づくりコース5期生開講式が、豊田市農ライフ創生センターでありました。
豊田市農ライフ創生センターというのは、主に工業、商業の町というイメージのある豊田市で、農業の活性化を狙いに平成16年のオープンした施設で、活動の主体は市とJAあいち豊田農協が共同運営するという全国でも珍しい施設で、活動事業は
(1) 農業者の育成、就農の相談等に関する事業
(2) 農作物の栽培技術の研修に関する事業
(3) 農地の仲介及び農家の仲介に関する事業
(4) 栽培技術の研究、農作物の加工品の開発、新品種の実験栽培等に関する事業
ということであるが、いわゆる農作物栽培技術研修担い手づくりの育成が大きな事業である。これは年々減ってゆく農業の担い手を補うために、定年退職者などを新たな農業の担い手として育成し、「生きがい型農業」の実践を支援することで、遊休農地の活用と高年齢者の生きがいづくりを進めようというものである。

今日の開講式には、私を含めて約50名の受講生と7名の講師、8名のセンターのスタッフの皆さん、それから主催者側(市と農協)の代表者が集まり、2年間の研修の第一歩を踏み出したわけであります。
研修は5つの科に別れています。
1)畑科    露地・ハウス野菜作り
2)田畑科   稲作と露地野菜作り
3)果樹科   豊田市特産の果樹作り
4)地産地消科 産直施設での販売用、学校給食用の野菜作り
5)山間営農科 山間地域での営農を想定した作物作り
私は4番目の地産地消科に属し、地域の皆さんにおいしい野菜をお届けできればと、腕を磨きたいと思っています。


(写真は5期生募集パンフレットより流用)





ポール・チェンバースとスコット・ラファロ(2008.3.6)

ビル・エヴァンスがポール・チェンバース(b)とフィーリー・ジョー・ジョーンズ(d)と組んだ唯一のアルバムにGreen Dolphin Streetがあります。このアルバムは、Chet BakerのChetというアルバムを録音したときのメンバーのうち、ピアノ・トリオのメンバーのみが残って、1959年1月の同じ日に録音したものである。
興味深いのは、どちらのアルバムにもYou And Night And Musicが演奏されているが、Chetのアルバムでは、これをスロー・バラード風にChet Bakerのトランペットのみが際立って演奏されており、あとのメンバーは単なるリズム・キーパーとコードをつけることに徹している。Chetのムード・トランペットを聴くには良いが、ジャズとしてはいささかぬるま湯的に聞こえる。これがEvansのトリオでは一転してアップ・テンポでピアノのみでなく、ベースもドラムもぐんぐんと前に出てきて、前のセッションでの消化不良を吹き飛ばすような勢いでえんそうしている。
前置きが長くなったが、先日購入した「ジャズを放つ」という本の中で、東京芸大を卒業して、クラッシクの評論が主である大宅緒さんが、スコット・ラファロとポール・チェンバースを並べて解説していた。なるほどと思ったのは、両者を比較するに当たりビル・エヴァンスのトリオのアルバムを例にしての解説であった。それがこのアルバムと同じ年の12月の製作された、スコット・ラファロ、ポール・モチアンとのPortrait In Jazzおよび1961年2月に製作されたExplorationsである。
氏の解説の要旨をまとめさせてもらうと、「ラファロの好きだったチェンバースとラファロの演奏を続けて聴いても、あまり違和感がないのは、両者が基本的には同質の太さ、強さを持っているからだ。しかし、4ビートの刻み方は、両者は大きく異なる。チェンバースの特徴は、正確無比のきれいなラインで曲をグイグイとひっぱって行く心地よさである。Portrait In Jazzでのラファロは、オーソドックスであろうとする中で、四分音符で歌おうとする意思が見える。またチェンバースの使わない高音を使う動きも見える。それ以外に一つ一つの音が長めに粘る、三連符やシンコペーションも用いるが、全体にはまだぎこちない。それがExplorationsになると、ラファロの本領発揮となる。それはエヴァンスの演奏の意図を先読みするセンスが素晴らしい」氏の解説を正確に知るのは、「ジャズを放つ」を是非読んでください。
これだけの的確な解説をしてもらって、改めてこの4枚のアルバムを続けて聴いてみると、単に一枚一枚を聴いた時とは違って、それぞれのアルバム(演奏者)のつながりとか、差異、共通点など、今まで見えなかったことが見えてくる。やはりプロの解説は素晴らしいと思う。
もちろんぼくは両者ともに大変好きなベーシストです。





言葉に力を(2008.3.7)

リチャード・ブローティガン詩集「チャイナタウンからの葉書」池澤夏樹 訳より(絶版)

愛の詩
素晴らしいこと
朝目が覚めた時に
たった一人なのは
誰かにむかって愛していると
言わなくてすむのは
なぜってぼくはもう誰も
愛していないのだから。

この詩集を、ぼくは古本屋で見つけた。ブローティガンを知っていたわけではない。100円の本だという理由で手に入れた。日本の俳句に影響された、短い言葉の中に感動的な言葉が凝集されている。

詩集「6月30日、6月30日」よりKazue D. 訳
自我に囚われた雨の夜、東京でひとり、愛し合う人もなく
夜が半分
過ぎ去る。そして若さも
過ぎ去る。わたしは
ベッドでひとり
ぼくの本は
ノルウェー語、フランス語、デンマーク語、ルーマニア語
スペイン語、日本語、オランダ語、スウェーデン語、
イタリア語、ドイツ語、フィンランド語、ヘブライ語に訳されている。
そしてイギリスでは出版もされた。
なのに、
今夜はひとり眠るんだ、
雨降る東京の夜を。

ぼくはブローティガンほどには、孤独を感じていない。かといって、言葉がひとりで溢れ出すほどの若さもない。要するに中途半端なのである。それでもちょっと前までは、ぼくの言葉に耳を傾け、面白いといってくれる仲間もいた。 それが中途半端でも、何とかぼくが詩を書く気力を持続させてくれた。でも今は、仲間から連絡を受ける方法も絶たれてしまった。
言葉に力を与えることの出来ないぼくは、100円で集めた本を読んでいる。 クロード・ロワ詩集「時の縁りで」水谷清 訳、ブコウスキー詩集「モノマネ鳥よ、おれの幸運を願え」中上哲夫 訳、 レイモンド・カーヴァー詩集「海の向こうから」黒田絵美子 訳。幸いにも、何を読んでも無駄であり、ゆっくりと眠れる。





言葉で表現するということ(2008.3.8)

彼女の歩く姿は美の化身

彼女のほっそりとして、しなやかに、歩く姿は、
美の化身のようだ。
まるで雲ひとつないよく晴れた、
漆黒の天空に輝いている星々のように。
光と闇が織り成す、絶妙のコントラストが、
彼女の眼差しと全身を飾る。

彼女の優しい微笑みは、太陽の輝く光も及ばない。
光に映し出された、黒髪になびく顔の美しさは、
一つの翳り、一つの憂いさえも、わたしの心を乱す。
変化を見ていると、
数々の想いが静かに姿をあらわし、
清らかで、みやびた表情をとどめる。

やさしく、静かに、語りかける声の響きは、
わたしの心を誘い、輝かせ、
幸せな、過ぎた日の思い出と、
明るい未来を語ってくれる。
まわりを明るくし、人々に愛されるその人柄は、
わたしの心に秘めた愛を告げる。
(生野 恭)


写真は「空の名前」高橋健司(写真・文)光琳社出版より”立ち雲”
夏の雲

夏の雲は力強い
強い日差しを浴びて
白く輝きながら
ぐんぐんと上昇する
あちらにひとつ
こちらにひとつ
またひとつ
入道雲ができあがる

やがて風がざわめき
空のひかりがにぶり
遠くで雷鳴がひびく
少しの静寂のあとに
ぱらぱら、ざわざわ
ばらばらばらばらばら
光と、音と、雨の共演
夏の雲は力強い
(生野 恭)

何かを表現するということは、対象となるものを良く観察するということ。それも、ある瞬間をしっかりと観察する。時間の流れで観察する。そして感じたことを表現する時に、単に感情を表わす言葉を連ねても上手く表現できない時には、うまく比喩を使う。そういう文章表現の技術が大切であるが、それでは単に上手く表現できるのみで、感動は伝わらない。
大切なことは、表現者自らが感動しその気持ちを表現せずにはいられないという気持ちを伝えることが出来るかどうかであろう。
ここに上げた詩が例として適当かどうかはわからない。

 京都に光琳出版社という主に写真集を得意とする出版社があった。今は倒産して存在しない。倒産したときに、ブックオフが大量にここの本を仕入れ全国で販売した。確か「宙(そら)の名前」という本がNHKのブックレビューで紹介され知っていたので、ここに上げた5冊を購入した。
 この中で特に、ぼくが気に入っているのが「空の名前」、「宙(そら)の名前」(これは夜空の星を撮影したもの)、「色々な色」の3冊である。全頁にわたりカラーの写真と、ちょっとした解説が書いてあるが、これを見ているとビジュアルなものを言葉で表現する術を知るのである。雲を表わす言葉で50以上、色を表わす言葉にいたっては800以上存在する。
素敵な本だ。






人間臨終図鑑(2008.3.9)

シューベルト
生きている間、彼の才能はほとんど認められず、友人と同居して食べさせてもらわなければならないほど彼は貧しかった。
・・・11月17日に見舞いに来た友人は「シューベルトはじっと寝ており、衰弱と発熱を訴えていたが、午後はまったく正気であった」といっているが、夕方になって意識障害が現れた。18日には、自分が知らない部屋に寝かされている、といって、ベッドから抜け出そうとした。・・・19日午後3時彼は死んだ。・・・

これは作家の山田風太郎が書いた「人間臨終図鑑」上巻にある、31歳で亡くなったシューベルトについての記述を抜書きしたものである。
「人間臨終図鑑」は1986年に出版されたときは、布製の表紙が張られた豪華な上下2巻であったが、1996年に普及版が出た時には、T、U、Vの3巻に分かれて出版された。ぼくはいずれも中古本で買ったので、下巻もしくはV巻が今も欠けている。もっとも現在は徳間文庫で出版されているようであるが。
内容的には、過去になくなった人たちの最後の様子が、なくなった年代順に、シューベルトの例のような調子で書いてある。多い人で3頁から少ない人で5行程度である。当然若死にする人と、天寿を全うする人では、その死に方が違うし、いくつで死んでも幸せな一生かそうでないかとか、読み方は色々あるが、ぼくがすごいと思うのは、これを書いたことである。
他人の死に立ち会うことが出来るのは、親戚とか、知人とか、自分の身近な人意外は無理である。ましてやキリストの死の状況が如何であったかなどということは、皆目わからない。したがってこれを調べようと思うと、過去の文献なり、伝聞なりをこつこつと調査しなければならない。山田風太郎はこの根気仕事をなして、そして自分の言葉で、その死の様子を整理したのである。書かれた内容を分析するよりも、書いたプロセス自身がすごいと思うのである。こういうことに関心を持つことも面白いと思う。

あまり現実味はないかもしれないが、自分の住んでいる地域でそれぞれが、家の祖先の臨終の様子を書き綴り、まとめれば、その地域の人間臨終図鑑が出来上がる。会社でも出来る。但し面白いと思わなければ、やる人はいないであろう。
考えてみれば、今ぼくがこつこつと整理しているジャズマンのディスコグラフィーも似たようなものである。一つ一つを精度良く整理しようと思うと、根気仕事で調査が必要であるが、時間を割いてそんなものを作って何が面白いのかと思う人が大部分であろう。





ディスコグラフィーに載せるべきや、否や (2008.3.10)

アート・ペッパーのデスコグラフィーを整理していたら、ギャラクシーよりThe Hollywood All-Star Sessions Box Setという5枚のディスクに52曲が収録されたCDが発売されているのが見つかった。これを調べてみると、日本の中小レーベルであったAtlasが録音し、当時発売した7枚のLPを、Atlas倒産の後にギャラクシーが入手し5枚のセットで売り出したものであることがわかった。
・Bill Watrous - Funk'n Fun (Atlas [J] YJ25 7024)  1-8(別テイク2曲)
・Jack Sheldon - Angel Wings (Atlas [J] LA27 1001)  9-17(別テイク2曲)
・Pete Jolly - Strike Up The Band (Atlas [J] LA27 1003)  18-25(別テイク1曲)
・Sonny Stitt - Groovin' High (Atlas [J] LA27 1004)  26-32(別テイク1曲)
・Sonny Stitt - Atlas Blues Blow And Ballads (Atlas [J] LA27 1007)  33-36
・Shelly Manne - Hollywood Jam (Atlas [J] LA27 1012)  37-43(別テイク1曲)
・Lee Konitz - High Jingo (Atlas [J] LA27 1016)  44-52(別テイク2曲)
(注)各行の末尾の数字はCDに収録された曲番
上記のように整理してみると、単純に7枚のLPをCDで復刻したのであれば、デスコグラフィーに追加する必要はないが、新たに別テイクを含んでいるのであれば、追加する必要がある。だが上記のLPがCD化されたことはないのか、それをさらに調査してみると、
・ビル・ワトラス・クィンテット/ファンクン・ファン+2 (TKCB71588)
・ピート・ジョリー/ストライク・アップ・ザ・バンド+1 (TKCB71589)
・ソニー・スティット/アトラス・ブルース"ブロー!&バラード" (TKCB71590)
以上の3枚が徳間音工より別テイク付きでCD化されているのがわかった。それ以外はどうなったか。残念ながら今のところぼくには分からない。しかも版権がギャラクシーに移っているのでもう再発はされないのではないかと思うのである。
というようなことで、The Hollywood All-Star Sessions Box Setは当面、ぼくのデスコグラフィーに残ることになった。




当時のアート・ペッパーはギャラクシーと契約していたので、アトラスではリーダーとして名前をクレジット出来なかった。また本人(もしくは婦人のローリー)もサイド・メンとして自由に演奏したいということで、プロデューサーの石原康行さんがこういうグループとの演奏を企画したようである。
そのせいか、ペッパーものびのびと演奏している。













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