ジャズ・オーディオの雑記帳
by 6041のS

Art Pepper/San Francisco Samba(2008.6.16)

アート・ペッパーの有名なビレッジバンガードのライブが録音されたのが、1977年7月の28日から30日にかけての3日間である。メンバーは、彼のお気に入りのピアニスト・ジョージ・ケイブルス、ぼくのお気に入りのベーシスト・ジョージ・ムラーツ、コルトレーン・カルテットにいた偉大なドラマー・エルビン・ジョーンズである。彼はこの仕事の前にイーストコーストの各地、ボストンやデトロイトで公演をしていた。その間に10キロもやせてしまった。そんな中で気力を振り絞ってのビレッジバンガードのライブ録音であった。ここでのペッパーの演奏は、コルトレーンが乗り移ったと思われるような、エモーショナルなものであるが、ぼくには聴いていて辛いものを感じる。
この時のことを、ペッパーの「ストレート・ライフ」という本の中で。ハーシュ・ハメルはこう証言している。「一度、すごくびっくりさせられたことがある。アートがニューヨークかどこかに行って帰ってきたときだ。まるで死人のような顔をしていた。ドンテの店にやって来てプレイしたのだが、60歳くらいに見えた。それから三週間、いや一ヶ月ほどたって、彼が再びドンテの店に顔を出すと、何と15歳くらい若返って見えるではないか。肌もつやつやしている。ぼくはびっくりしてしまった・・・」
このニューヨークでの仕事を終えて1週間後の1977年8月の6日と8日に、サンフランシスコのキーストンコナーでライブ録音されたのが、Art Pepper/San Francisco Sambaというアルバムである。ここでのメンバーは、Art Pepper (alto sax)、George Cables (piano)、Michael Formanek (bass)、Eddie Marshall (drums)である。演奏曲目は、1.Blue Bossa、2.Art Meets Mr. Beatiful、3.Here's That Rainy Day、4.Samba Mom Momである。
長々と前置きを書いてこのアルバムを紹介したのは、ぼくはこのアルバムが後期アート・ペッパーの、コルトレーンに影響されて、よりストレートにエモーショナルな演奏をするようになった作品の代表だと思っているからである。まさに咆哮するアート・ペッパーである。
1曲目のBlue Bossaであるが、エディ・マーシャルのアップテンポの派手なシンバルワークによるラテンリズムに乗せて、ペッパーはいきなりアドリブを開始する。それも、あたかも次から次へと溢れ出るメロディーを抑えていたかのように、である。16分を超える長い演奏を、途中13分前後にドラムのソロを1分与えただけで、独占している。2曲目では、さらにペッパーは高揚し、まさに咆哮している。6分を過ぎたところで、ジョージ・ケイブルスのピアノソロが始まると、ミスタービューティフルにふさわしい、美しいソロとなり、その対比が際立つ。この演奏が終わると、アート・ペッパーがマイクでリクエストに答えて次にHere's That Rainy Dayを演奏すると紹介しているが、あれだけの激しい演奏にもかかわらず、息切れしていないのである。体調がよいに違いない。そしてバラード風の演奏が始まる。ここではジョージ・ケイブルスとの息もぴったりである。そして最後はSamba Mom Mom、1曲目のBlue Bossaについで良い出来と思う。
聞き終えると爽快感がみなぎり、もう一度聞いて見たいと思う。そう、これがビレッジバンガード・セッションとの違いである。あれを聴くと気持ちが沈むのである。






試聴会と名曲鑑賞会(2008.6.17)

キット屋の大橋店主の日記によれば、土・日に行われたキット屋・10周年記念の東京試聴会と演奏会も大成功のうちに幕を閉じ、その余韻も覚めやらぬ程ということで、まずはおめでとうございます。思い返してみると、3年前の2005年6月のキット屋東京単独試聴会に向けて、大橋さんにジャズの試聴用に「テナー編、ピアノ編、ヴォーカル編」の推薦曲を選定して持って行き、二人で聞きながらこれでは試聴会でなく名曲鑑賞会だね、と言って笑ったことが懐かしいです。以下はその時の「テナー編」の曲とちょっとしたコメントです。

1.「サン・シャワー」
「ボサ&バラード、ロスト・セッション」スタン・ゲッツ
Verve UCCV-1048 1989年
とにかく歌っている。スタン・ゲッツ(ts)もケニー・バロン(p)も、そしてビクター・ルイス(ds)までも。リラックスして、しかも狂おしいほど叙情的に。ゲッツが亡くなる2年前のである。


2.「丘に住む人々」
「スタン・ゲッツ・イン・ポーランド」スタン・ゲッツ
MUSE NMCD6002 1960年
この曲の持つ敬虔なイメージとゲッツの穏やかな慎み深い奏法が良くあっている。そして録音も上品な音になっている。


3.「イッツ・オールライト・ウィズ・ミー」
「イフ・アイム・ラッキィ」ズート・シムズ
PABLO VICJ-60853 1978年
ズート・シムズはテナーのアドリブにすべてを賭けた男。軽快なリズムに乗ってズートらしさの爽快感溢れる曲。


4.「ジャイブ・アット・ファイブ」
「ダウン・ホーム」ズート・シムズ
ベツレヘム COCY-75727 1956年
デイブ・マッケンナ・トリオのご機嫌な4ビートに乗って、ここでもズートは歌心溢れるアドリブを繰り広げています。またマッケンナの躍動的なピアノソロも一聴に値します。


5.「彼女の黒髪」
「ザ・ケリー・ダンサーズ」ジョニー・グリフィン
リバーサイド VICJ-60022 1962年

アメリカ南部の民謡で、グリフィンは最初ムードたっぷりに歌い上げるが、アドリブになると軽快にグリフィン節を満喫できる。名手ロン・カーターのベースも冴えている。年代の割に録音も良く、テナーの音もぎゅっと絞り込まれており、一つの聞き所だ。


6.「ハッシャバイ」
「シカゴ・ニューヨーク・パリ」ジョニー・グリフィン
Verve 314 527 367□2 1994年
これは切手のグリフィンといわれるCDである。ハッシャバイといえば、グリフィンの十八番である。軽快なテンポに乗って歌うようにスケールの大きな演奏を繰り広げている。クリスチャン・マクブライドのアルコのベースソロも聞ける。


7.「ラブ・ユア・スペル・イズ・エブリウエア」
「ブルースエット」カーティス・フラー
サボイ SV-0127 1959年

ゴルソン・ハーモニーと呼ばれる非常に柔らかい音色を、カーティス・フラーのトロンボーンとベニー・ゴルソンのテナーサックスで奏でている。カーティス・フラーの低音を生かしたトロンボーンの音色は特に秀逸である。


8.「ファイブ・スポット・アフター・ダーク」
「ブルースエット・パートU」カーティス・フラー
サボイ COCY-75624 1993年

アルバム「ブルースエット」から34年たって同じメンバーで再録音したもの。ベースのみがジミー・ギャリソンからレイ・ドラモンドに変更になっている。前作とは楽器の音色、録音レベルが大きく変化している。


こんなものを引っ張り出しながら、改めてここに挙げた曲を聞いてみました。今回は、久しぶりの単独名曲鑑賞会です。3年経ってみると、アレンジの強いものは曲想が古く感じられるが、アドリブ表現の優れているものは、いい物はいいという感じである。それにしても1曲じっくりと鑑賞出来れば良いが、試聴会のように、多くのアンプを紹介するために2分程度で止めようとすると、どこまで良さが伝わるか、なかなか難しく、試聴会における大橋さんの苦労が伺われます。
時間がゆったりと取れれば、アンプの紹介は試聴会、休憩時間には、同じ曲で鑑賞会、と言うのも良いかもしれません。もしくは前半試聴会、後半鑑賞会。
こんなことは、言わずもがなのことかもしれません!?






ちょっと得した気分(2008.6.18)

例えそれがたいした事ではなくても、予期せぬ幸運、もしくはこうなると良いなと思って、それが実現すると、なんか嬉しくなるものです。今日はそうしたちょっと得した気分になりました。例によって中古のレコードを買いに行った時の事です。ジャンク品のLPコーナーを見てもほしいと思うようなものが見つからなかったので、中古品のコーナーに行って、クラシックのLPを見ていると、国内盤が500円で沢山並んでいました。500円は高いなと思いながらチェックしていたら、最後に一枚テラークの輸入盤がありました。ジャケットも盤質もほとんど新品同様の物でした。でも値段が付いていないのです。これが500円なら、即買いだと思いながらアルバイトの店員に値段を聞いてみると、彼は店長のところに確認に行きました。そして500円と言ったのです。
・GEORGE GERSHWIN / RHAPSODY IN BLUE, AN AMERICAN IN PARIS / ERICH KUNZEL, CINCINNATI SYMPHONY / TELARC, DG-10058
テラークのLPは後に日本でもプレスして発売されたが、これはドイツでプレスされて、アメリカより輸入された初期盤で、1981年当時日本では4000円もしたものである。ぼくが手持ちのテラークのレコードを、あとから出た日本盤のLP、それからCDと聞き比べてみても、ドイツプレスのアメリカ盤をしのぐ音質のものは1枚もなかった。そんな思いもあるので、このLPの新品同様のものが500円で購入できたのは、ぼくにとってちょっと得した気分となったのである。
テラークについてのウィキペディアの記述を抜粋紹介する。
「テラーク・インターナショナル・コーポレーション(Telarc International Corporation)はサウンド・エンジニアのジャック・レナードと音楽プロデューサーのロバート・ウッズにより、1977年にオハイオ州クリーブランドに創設されたインデペンデント・レコード・レーベル。設立当初よりデジタル録音を採用しており、音質には定評がある。初期はクラシック音楽のレーベルであったが、後にジャズやブルース、カントリー・ミュージックも取り扱うようになる。
音質について
もともとスピーカーのメーカーであるARC社の製品テスト・テープを作っていたのがきっかけでレコード会社として発足(社名にはARCが含まれているのはそのため)。
テラークは音質について細心の注意を払っており、その音質は「テラーク・サウンド」と要約し、スローガンとしている。そのためアメリカ本国以外でのプレスを許していなく、日本盤のライナーノーツは添付される方式となる。
設立当初からレコード盤をダイレクトカッティングで製作していたが、デジタル導入では広い周波数特性を確保するために当時最高の50kHzというサンプリング周波数を使用していたサウンドストリーム社製アナログ-デジタル変換回路(ADC)を採用した。
1980年代後半により20ビットADCでレコーディングを開始、1996年から24ビット方式を使い始める。近年ではDSDレコーディングを基調としたSACD(ハイブリッド仕様)をリリースしている。」






Fさんからの電話(2008.6.21)

昨夜、思いがけなく会社の先輩で、仕事以外でも大変お世話になったFさんから突然電話をいただいた。懐かしさのあまり長々と話し込んでしまい、結局一度近いうちにお会いすることを約束して電話を切った。
ぼくが雑記帳のようなものを書き始めたのは、1996年に病気をして1ヶ月休養した時に、何か新しいことを始めようと考えたことと、パソコンの実用的な使い方をマスターしようと思ったからである。それが曲がりなりにも続いていたのはFさんにアドバイスされたり,励まされたりしたからである。Fさんの本業はデザイナーで、トヨタの初代エステマのデザインでは、グット・デザイン賞に輝いた凄腕の人であるが、実はそれに劣らず隠れた才能の人である。
当時、僕は歴史に凝っていて、色々な歴史本が出ると大抵は目を通していた。但し面白くなくては行けない。読んだ中では、中央公論社の「世界の歴史」これは簡潔な小説風でなかなか面白かった。同じ中央公論社の「日本の歴史」は、ぼくには冗長すぎた。読売新聞社の「日本の歴史」書き方は教科書風であるが、価値判断の視点が明確であり、これも面白かった。岩波講座「日本の歴史」これはテーマ毎に専門的に掘り下げており、難しいが、はまると視点が良く判った。集英社版「日本の歴史」は百科事典風で入門者向けであった。
そんなぼくの歴史好きを知ってかどうかわからないが、Fさんは、ぼくが休養していた時に、麗吉野著「偶然!日本史」と言う本を持って我が家に突然、見舞いに来られたのである。麗吉野という著者を僕は知らなかったので、色々聞いて見ると、これはFさんのペンネームだそうで、僕はこの本を直接著者よりいただいたことになる。本業の合間を縫って趣味で書いておられたようで、歴史は繰り返す!という視点で丹念に出来事を年表に整理し(これが半端ではない)、どういう循環の法則で解釈できるか考察されている。キーワードを追っていくだけでも中々面白い。今まで出遭ったことの無い手法である。
仕事以外で何か一つ自分を表現するものを持っていると良い気分転換になるよ。Fさんはそうおっしゃったのである。それがきっかけでぼくも何かやってみようと思い、雑記帳を書き始めたのである。それまで文章をまともに書いたことのない人間にとって、最初のうちは苦痛であったが、Fさんにせかされて2003年まで続いたのである。後半では詩までも表現手段に加えて、150編くらいは書いた。
しばらく中断していたが、昨年、縁あってキット屋の大橋さん、第9のIさんに背中を押されまた書き始めたのである。
電話でFさんにそのことを話すと、もうパソコンはやめたから、次に合うときまでに書いた物を印刷しておいてと言われた。ぼくは、これを全部印刷するのは大変だと思いながら、いつの間にかパソコン机の前に座っているのである。






ガーシュイン作品集(2008.6.24)

GEORGE GERSHWINのRHAPSODY IN BLUE, AN AMERICAN IN PARISというテラークのLPを入手してちょっと得した気分になったので、アイラ & ジョージのガーシュイン兄弟の作品をジャズで取り上げた作品で、ぼくの好きなアルバムを聞くことにした。1曲1曲ごとに好きな演奏は別にあるが、アルバム単位のガージュイン作品集を聞くことにする。
その前に「The Essential George Gershwin」というアルバムに紹介されている、ジョージ・ガーシュインの作品と歌っている歌手の代表的なものを紹介する。(全部を紹介していない)
1.アイ・ガット・リズム(エセル・ウォーターズ)
2.オー・レディ・ビー・グッド(バック&バブルズ)
3.サマータイム(ビリー・ホリデイ)
4.スワニー(アル・ジョルソン)
5.サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー(フランク・シナトラ)
6.ス・ワンダフル(ダイナ・ショア)
7.私の愛する人(ビリー・ホリデイ)
8.ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ(ジーン・ケリー)
9.バット・ノット・フォー・ミー(ドリス・デイ)
10.霧深き日(ローズマリー・クルーニー)
11.ゼイ・オール・ラフド(トニー・ベネット)
12.君がために歌わん(ザ・ハイロウズ)
13.アイヴ・ガット・ア・クラッシュ・オン・ユー(エラ・フィッツジェラルド)
14.サムバディ・ラヴズ・ミー(アルバータ・ハンター)
15.ラヴ・ウォークト・イン~エムブレイサブル・ユー(モーリン・マクガヴァン)
16.イット・エイント・ネセサラリー・ソー(アレサ・フランクリン)
17.マイ・マンズ・ゴーン・ナウ(サラ・ヴォーン)

・But Not For Me / Carol Sloane
最初はヴォーカル曲から聞く。女性歌手のガーシュイン作品集は、ローズマリー・クルーニ、エラ・フィッツジェラルド、クリス・コナーなどがあるが、このキャロル・スローンの繊細でお洒落なアルバムが好きである。伴奏もトミー・フラナガンのピアノ、ジョージ・ムラーツのベース、アル・フォスターのドラムとぼくのお気に入りである。


・By George Cables Plays The Music Of George Gershwin
2枚目のアルバムはピアノトリオの演奏である。メンバーは、ジョージ・ケイブルスのピアノ、ジョン・ハードのベース、ラルフ・ペンランドのドラムである。アート・ペッパーがジョージ・ケイブルスのことをミスター・ビューティフルと言って、お気に入りのピアニストとして晩年に多くの作品の残しているが、まさにビューティフルなピアノである。このピアノトリオで聞く演奏は、ニューヨークの都会的な香りを感じさせる演奏である。


・Zoot Sims And The Gershwin Brothers
このアルバムはズート・シムズがガーシュイン兄弟の作品を取り上げて演奏したもので、バックにオスカー・ピーターソンのピアノ、ジョー・パスのギター、ジョージ・ムラーツのベース、グラディ・テイトのドラムと、ご機嫌にスイングしている。バックにまわった時のオスカー・ピーターソンは本当にすごいと思う。


・Sir Roland Hanna Quartet Plays Gershwin
ローランド・ハナというピアニストは色んなムードを持ったピアニストではないか。ソロを取る時はクラシック風なムードを持つが、バックにまわればいろいろなタイプの演奏家と演奏できる。このアルバムではビル・イーズレイというかなりハードバップなテナー奏者と演奏している。ホットで上品さもあるガーシュイン作品集となっている。


これ以外にもコンピレーションもののガーシュイン作品集は、ある意味山のようにあるが、アルバムとしての雰囲気がバラバラとなるので、1曲、1曲好きな演奏を取り出して聴くには良いが、全曲を通して聴くには、ちと辛い。
偉そうに言った割には、もう終わりです!















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