ジャズ・オーディオの雑記帳
by 6041のS

DJANGO(2008.8.5)

ピアノとバイブのユニゾンでテーマが流れたあと、ミルト・ジャクソンのブルースフィーリングいっぱい溢れるビブラフォンのアドリブが始まる。微妙にテンポを変化させながら。聞いていると妙に心が切なくなってくる。ブリッジのあと今度はジョン・ルイスのピアノがシングルトーンでとても美しいメロディを弾きはじめる。音が上に、下に変化しながら。しばらくすると、ブロックコードに変わり音楽を盛り上げる。そしてまた音がゆっくりと沈んでゆく。テーマに戻り、エンディングを迎える。
これはモダン・ジャズ・カルテットが「DJANGO」というアルバムで演奏したジャンゴという曲のことである。この曲はピアニストのジョン・ルイスが、1930年代にパリで活躍したジプシーのジャズ・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの死を悼んで作曲したものである。MJQはこれ以降何回もこの曲を演奏したアルバムを出しているが、ぼくはこのアルバムの演奏が一番好きである。この演奏を超えるようなジャンゴは聞いたことが無い。特にジョン・ルイスのピアノが唯一無二なのである。
この曲は鎮魂曲と言うことになっているが、死者に対する鎮魂のみでなく、メランコリーな時のぼくの心にぴったりなのである。ぴったりすぎて哀しくなってしまう時もあるが、たいていは肯定的に聞いている。真夜中に、静かにこういう曲を聴くとジャズは哀愁であると思う。
モダン・ジャズ・カルテットというグループは、リーダのジョン・ルイスの個性を反映して、バッハのフーガの技法などを取り入れた、室内楽的な緻密な演奏を特徴にしているが、一方ではミルト・ジャクソンのブルース感覚溢れるアドリブもあり、両者の絶妙のバランス感覚が素晴らしいと思う。
「Concorde」というアルバムに入っている、朝日のようにさわやかに、とか、「黄昏のベニス」というアルバムに入っている、コルテージ、などがぼくの好きな曲である。コルテージは特に録音もよく、ドラマーのコニー・ケイが叩くハイハット・シンバルの音がとても澄んだ音で録音されている。貴重な録音としては、MJQと当時人気を二分していたデーブ・ブルーベック・カルテットのアルト奏者ポール・デスモンドと共演したニューヨークのタウンホールでのクリスマス・コンサート盤も好きである。






Miles & Trane (complete Columbia recordings) (2008.8.10)

豊田市にあるスーパー・ブックオフで見つけたのが、Miles & Trane (complete Columbia recordings)という6枚セットのCDボックスである。
これは1955年10月から1961年3月にかけてコロンビアに録音された、マイルスとコルトレーンが参加したセッションの中より、12のセッション、合計58曲を完全収録したCDである。このうち40曲は「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」、「マイルストーンズ」、「カンド・オブ・ブルー」、「ジャズ・アット・ザ・プラザ」、「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」などのアルバムですでに世に発表されているが、18曲は今回のCDで初めて世に出たものである。このボックス・セットの発売は、8年前の2000年である。
この企画は、1955年にコルトレーンがマイルスのバンドに初めて参加し、マイルスの影響を受けて成長し、1961年の録音を最後にマイルスのもとを離れるまでの、コルトレーンの成長が記録されているのであり、コルトレーンのコレクターにとっても見逃せないアルバムである。
このCDボックスには100ページに及ぶ解説があり、この録音期間における、マイルスのディスコグラフィーが整備されていたり、録音事情が解説されていたり、「カインド・オブ・ブルー」におけるビル・エヴァンスが書いたライナーノーツが載っていたりして、これもなかなか読み応えが有る。
ぼくの好きなアルバム「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」の最初の収録は1961年の3月7日に、テナーサックスがハンク・モブレーの参加で行われたが、マイルスはこれに満足せずに、急遽コルトレーンを呼び寄せて、2週間後の20日と21日に第2回目の収録が行われ、タイトル曲・サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カムとテオが誕生したのである。そしてこのアルバムではこの2曲が素晴らしいのである。
と言うようなことも読み取れるのである。






アズ・タイム・ゴウズ・バイ(2008.8.15)

テレビから録画したビデオを見ていて、久し振りに、アズ・タイム・ゴウズ・バイという曲を、意外にも宮本信子の歌で聞いた。
この歌は映画のなかで歌われている。そうです、カサブランカという映画のなかで、とても効果的な場面で唄われていました。ハンフリー・ボガード扮するリックの店の黒人歌手サムが、イングリット・バーグマン扮するイルザのリクエストに答えて、リックから歌うのを禁止されていたこの曲を、ピアノを弾きながら歌うのがとても郷愁をそそりました。
宮本信子は夫の伊丹十三が死んで、もう映画はやれないと思い、舞台だけと思っていたところに、声がかかりジャズボーカルをやったところ、はまってしまったそうです。
そこで好きなアズ・タイム・ゴウズ・バイを歌おうと思って、色々な歌手を聞いたなかで、リー・ワイリーを聞いてこれだと思ったそうです。リーの歌は、スキャットもなくフェイクもなくとても素直に情感を込めて歌っています。彼女の歌から感じるのは、さりげない歌声の中に、人生の哀感、孤独のようなものがにじみ出ている、といった感じです。
リー ワイリーはジャズシーンではかなり初期に活躍した白人の女性シンガーです。彼女は1910年、オクラホマの片田舎で生まれました。そして10代でニューヨークに向かい、30年から40年代にかけてオーケストラやバンドをバックにラジオ、そしてクラブで人気歌手として活躍します。
宮本信子はリー・ワイリーについて、彼女がどんな人だったのかを知りたいと思い、ニューヨーク、オクラホマと旅をして、彼女の友人だった人とか、身寄りの人を訪ねてインタビューをしています。そしてますますリー・ワイリーが好きになり彼女の持ち歌を自分も歌ってみたいと決心する。そんな内容のテレビ番組であった。
番組が終わってみると、ぼくは無性にリー・ワイリーのアズ・タイム・ゴウズ・バイを聞きたくなった。この曲は「ウエスト・オブ・ザ・ムーン」というアルバムに録音されている。幸いにもアルバムを持っていた。この曲は雨のしとしと降っている昼下がりとか夜に、1人で読書でもしながら、というのが良くにあう曲だと思う。
ついでにアズ・タイム・ゴウズ・バイの聞き較べをはじめた。まずはクリス・コナー、彼女の歌もぼくはなかなか良いと思う。ハンク・ジョーンズのピアノトリオの演奏をバックにしっとりと歌っている。エラ・フィッツジェラルド、彼女は歌は上手いがこういう都会的な歌は似合わない。マイケル・フェイステイン、彼も歌は上手いが声が甘すぎる。ローズマリー・クルーニ、彼女の歌もよいが何か足りない。そうだ、もう少し哀愁を感じたいのだ。やはりこの曲はリー・ワイリーかクリス・コナーで決まりだ。
もう少しリー・ワイリーの歌を聞こう。アルバムは「ナイト・イン・マンハッタン」この中のマンハッタンという曲、これはもうリーのためにあるような曲である。聞いているとつくづくリー・ワイリーという人はマンハッタンを歌うために生まれて来た人だなと思う。














<<雑記帳トップへ戻る