ジャズ・オーディオの雑記帳
by 6041のS

4人のコンサート「マスターの解説」 (2011.7.3)

 ジャズ喫茶「グッド・ベイト」のマスターが、ジャズのレコードコンサート用に書かれた解説を紹介したいと思います。マスターの手書きの原稿をもとに、挨拶などは飛ばし、レコードの解説の部分を中心に紹介します。
 『今日は、私の好きなLPレコードの中より選んできた6枚を紹介します。まず、最初に紹介するレコードは、Jazzといったらブルーノート(レーベル)、ブルーノートといったらバンゲルダー(録音技師)録音、といわれるくらいブルーノートはJazzの王道レコードです。その中よりエルビン・ジョーンズ(ds)がリーダーのPUTTIN' IT TOGETHERというアルバムです。エルビン・ジョーンズはジョン・コルトレーンの黄金のカルテットのメンバーだったドラマーです。このアルバムは、私の大好きなレコードで、エルビン・ジョーンズがバスドラムを思いっきり踏み込んで叩いています。普通Jazzのトリオといったら、ピアノにベースにドラムですが、このエルビン・ジョーンズ・トリオはテナーサックスのジョー・ファレルとベースにジミー・ギャリソン(この人もコルトレーンカルテットのメンバーだった)そしてドラムにエルビンという構成です。エルビンのバスドラがどのように聞こえるかが、聞きどころです。
 ・推薦曲;Reza
 
 次に紹介するレコードは、JAZZ AT MASSEY HALLです。演奏しているのは、Charlie Parker (as)、Dizzy Gillespie (tp)、Bud Powell (p)、Charles Mingus (b)、Max Roach (ds)という物凄いメンバーです。これはトロントにあるニュー・ジャズ・ソサエティが企画したもので、1953年5月15日にカナダ・トロントのマッセイホールでのライブ録音です。
 このような豪華なメンバーでのライブにもかかわらず、録音の予定は全くなかったのです。しかし幸いなことにミンガスが用意周到にこのコンサートの録音を取らせていたのです。
 このコンサート、一人一人に大変な逸話があってびっくりさせられます。
 チャーリー・パーカーはニューヨークから手ぶらでトロントにやってきて、地元の楽器屋から借りた練習用の白いプラスチック製のアルトを持って舞台に上がりました。そしてこのアルバムが発売された時は、他社との契約があったためにチャーリー・チャンという偽名でクレジットされました。
 ガレスピーは大のボクシングファンで、まずいことにこの日はロッキー・マルシアーノ対ジャージー・ジョウ・オルコットのヘヴィー級タイトルマッチの試合があり、時々ステージを離れて試合を覘きに行っていました。ミンガスはこれを嫌って2人の間はすごく険悪なムードになりました。
 バド・パウエルは1年半におよぶサナトリウムでの療養から出たところで、最初の曲から酔っぱらっていました。
 マックス・ローチはこのコンサートの翌年、あの有名なBrown=Roachというバンドを作ります。ソニー・ロリンズとクリフォード・ブラウンと共に素晴らしいJazzを展開するのです。
 チャールス・ミンガスはこの録音テープを、自分でdebut Recordというレーベルをつくり、レコードとして制作するのですが、自分のベースの音が小さくて気に入らなかったので、新たにオーバーダブして発売しました。果たしてベースがダブって聞こえるのでしょうか。
 このコンサート、2500人収容のマッセイホールに700人と客の入りはすごく悪かったのですが、聴衆の熱狂的な拍手と、Go! Now! といった声援で数の不足を補い、ジャズ史上燦然と輝く傑作アルバムが生まれました。このメンバーでの演奏はこれが最初で最後でした。
 ・推薦曲;Hot House、A Night In Tunisia

 次の紹介するレコードは日本のジャズです。これは渡辺貞夫こと、世界のナベサダ(世界のナベアツではない)と日野皓正の素晴らしいレコードで、先ほど紹介したチャーリー・パーカーの13回忌を記念して、1969年に東京で行われたライブ録音です。題名は「チャーリー・パーカーに捧ぐ」というものです。メンバーは渡辺貞夫(as)、日野皓正(tp)、八城一夫(p)、原田長政(b)、渡辺文夫(ds)です。
 この日ゲスト出演した日野皓正が連日のオーバーワークで調子が悪く、得意のハイノートが出ません。それを察知した渡辺貞夫がメンバーと打ち合わせて、1曲ソロで演奏することにしたのです。それがI Can't Get Startedという曲です。ところがこの演奏が終わっても、予定と違うAu Privaveというチャーリー・パーカーの曲をさらにソロで吹き始めます。他のメンバーはあわてて、後ろで音をそっと出して合図しますが、渡辺貞夫はそのたびに一層激しくソロを取り参加させません。何とかドラムとベースが曲に参加して、その後日野皓正のソロとなります。日野皓正も不調とはいえ素晴らしいトランペットソロをしています。ただ高域が出ません。唇の調子がやはり悪かったのでしょう。
 世界のナベサダがアルトサックス1本でガンガンに吹いています。このレコードは私にとっては非常持ち出しの1枚です。
 ・推薦曲;I Can't Get Started、Au Privave
 
 次に推薦するレコードも、私の非常持ち出し用の1枚です。タイトルは「Ella & Louis」演奏メンバーは、Ella Fitz Gerald(voc)、Louis Armstrong(tp、voc)、Herb Ellis(g)、Oscar Peterson(p)、Ray Brown(b)、Buddy Rich(ds)で1956年8月の録音です。
 ノーマン・グランツが大物同士を組み合わせて企画した1枚ですが、大成功だと思います。サッチモのガラガラ声と、エラの透き通るような声が対比をなすレコードで、これがどちらも素晴らしいのです。この2人は何を歌ってもジャズですね。
 ・推薦曲;A Foggy Day、Stars Fell on Alabama、Cheek to Cheek
 
 次に紹介するのは、私事ですが、Jazz Menで1番大好きなエリック・ドルフィーです。ドルフィーは36歳にベルリンで、志半ばにして亡くなっています。Jazz Menとして活躍したのはほんの4年です。その4年で彼は燃え尽きました。紹介するアルバムは「Eric Dolphy In Europe Vol.2」です。コペンハーゲンで地元のミュージシャンと1961年9月に録音されたものです。私は彼の演奏を聞くたびに目頭が熱くなるのを禁じえません。
 ・推薦曲;The Way You Look Tonight「今宵の君は」
 
 最後にもう1枚大好きなピアノトリオを紹介します。ビル・エヴァンスです。ビル・エヴァンスといえば普通は「ワルツ・フォー・デビィ」などのリバーサイド3部作が有名ですが、ここで紹介するのは1977年に録音されたYou Must Believe In Springというアルバムです。このアルバムに入っている1曲目のB Minor Waltz (For Ellaine)は彼の最初の妻Ellaineにささげた曲。彼女はこの時期にエヴァンスと別れて地下鉄に飛び込み自殺をしてしまう。また4曲目のWe Will Meet Again(For Harry)のHarryは彼の実の兄で、これまた録音の2年後にピストル自殺をしてしまいます。というような状況で内省的なビル・エヴァンスの作品の中でも、もっとも内省的、瞑想的な作品で、発売はなぜか彼の死後1981年になされました。
 このレコードは大好きだった女性が、大好きだったレコードでもあります。この内省的なレコードを聞きながら紹介を終わります。
 ・推薦曲;You Must Believe In Spring
 
 マスターの名解説いかがでしょうか。思わず演奏の場に自分がいるような気持ちになってしまいます。(これはマスターの原稿を元にしていますが、1字1句同じというわけではありません)
 
 




Complete Jazz at Massey Hall (2011.7.6)

 Complete Jazz at Massey Hall というCDがThe Jazz Factoryというレーベルから発売されている。このCDの特徴は、マッセイホールで行われたコンサートの順にすべての演奏を網羅していること。およびチャールス・ミンガスがdebutレーベルより発売した時にあとからオーバーダブしたベースの音をはずし、マスターテープに忠実である、という2点にある。
 まず当日のコンサートのプログラムを紹介します。
The Concert
・First Set

(The Graham Topping Band: 11titles)
The Quintet
1. Perdido
2. Salt Peanuts
3. All The Things You Are
4. 52nd Street Theme
Intermission
・Second Set

Max Roach Solo
5. Drum Conversation
The Trio
6. Cherokee
7. Embraceable you
8. Halleluiah
9. Sure Thing
10. Lullaby Of Birdland
11. I’ve Got You Under My Skin
The Quintet
12. Wee
13. Hot House
14. A Night In Tunisia
The Quintet: Dizzy Gillespie , Charlie Parker ,
Bud Powell , Charles Mingus , Max Roach
The Trio: Bud Powell , Charles Mingus , Max Roach
 このプログラムを見ると、debut盤に収められた6曲は、The Quintetとして演奏された7曲のうち、52nd Street Themeを除いた6曲であり、最初の3曲が第1部より、あとの3曲が第2部の終わりの3曲である事がわかる。そう思って聴くと、あとの演奏の方がより熱が入っているように聞こえる。
 ピアノトリオで演奏した部分については、確かフランスよりバド・パウエルトリオの演奏としてLPが過去に発売されている。
 ミンガスのオーバーダブしたベースの音を取り除いた音は、ホーンとドラムが大変クリヤーに聞こえてくる。マックス・ローチが右足で、1・2・3・4とバスドラを叩いているのが大変良く分る。逆に言うとこのバスドラのために、ミンガスのベースが聞こえなくなっているのである。
 このコンサートにまつわる逸話は色々とあり、マスターの解説で詳しく紹介されているが、このCDの解説によると、ニューヨークのラガーディア空港からトロントに向けて出発する時からもめごとがあったようである。(ニュージャズソサエティは5枚のチケットしか用意してなくて、ミンガスの奥さんとパウエルのマネージャーの分がなかったのである。パウエルの体調は、付き添いのマネージャーがいなくては何も出来ない状況であった。結局ガレスピーとパーカーが次の便で行くことになり、パーカーが到着した時にはアルトサックスを持っていなかった)どうも逸話の方は揉め事が多いが、演奏は大変素晴らしく、ジャズ好きは是非聞くことをお勧めします。(いつもより少し大きめの音量で!)
 
 











<<雑記帳トップへ戻る