ジャズ・オーディオの雑記帳
by 6041のS

ジャズLPレコードの収集(2013.2.3)

 ぼくは今でもジャズのLPレコードを収集しているが、ほとんどの収集はジャズ喫茶「グッド・ベイト」にお客さんが手放したいと言って持ち込んだのを購入している。持ち込まれたLPを見ていると、それぞれの個性も現れていて、なかなか興味深い。今日ぼくが購入したものは、大変珍しいヨーロッパ盤などもあり、よくわからないものを家に帰って調べてみた。
 ・Soul! / Art Blakey & The Jazz Messengers / Fontana 1958 / France
 フランス盤らしいジャケットのおしゃれなアルバムである。演奏メンバーと収録曲を手掛かりに調べてみると、1958年のパリ・オリンピア劇場におけるライブコンサートが収録されているようである。それもオリジナルのOlympia Concert盤よりも3曲余分にボーナストラックが入っている。これは儲けたかなと思って、1曲目のMoanin'を聞いてみる。確かに拍手も入ってライブであり、間違いなさそうだ。相変わらずリー・モーガンのソロは快調だ、などと思って聞いていると、あれ!何か変だ。ベニー・ゴルソンのソロが出だしを吹いただけで、ジミー・メリットのベースソロに飛んでいる。熱いボビー・ティモンズのソロも完全にカットされている。1958年11月22日と12月17日に収録された7曲の演奏がCDで発売されている。それを手掛かりにLPのOlympia盤とSoul!盤を比べてみると以下の表のようになる。
  Title Olympia Soul! CD: Olympia
A1 Moanin' 13:38 7:40 13:38
A2 Justice 9:17 8:12 9:17
A3 I Remember Clifford 5:36 5:36 5:36
A4 Just By Myself 4:35 4:35 4:35
B1 Blues March   5:45 5:46
B2 Whisper Not   7:08 7:11
B3 Blues Pour Doudou   3:17  
B4 Are You Real 10:17 7:29 10:17
  Total Time 43:23 49:42 56:20
   要するに長い演奏の3曲の演奏の誰かのソロがカットされているようである。確かに考えてみれば、1時間近い演奏をすべて収録すれば、音のダイナミックレンジを抑えないといけなくなり、音的にはつまらなくなってしまう。そこで10分近くをカットしたようである。しかし演奏を聴く側に立てばオリジナル盤のように曲数を抑えてもノーカットの方が盛り上がる。両方を満足させるにはCDで聞くのが良いようである。但しBlues Pour DoudouのみはSoul!にしか収録されていない。
 ・Cecil Payne Quartet & Quintet / Signal / King 1956 / Japan
 ・Patterns Of Jazz / Cecil Payne / SAVOY 1956 / USA

 1956年5月にNYCで録音されたこのアルバムは、最初シグナルレーベルよりCecil Payne Quartet & Quintetとして発売され、その後サヴォイよりPatterns Of Jazzと改題されてジャケットも一新されて発売された。したがって、その後シグナル盤は幻の盤となった。手に入れたシグナル盤はその幻盤ではなく、日本のキングよりオリジナルジャケットで再発されたものである。サヴォイのものは米国盤であるが、録音技師ヴァン・ゲルダーのRVG刻印はついていない。
 例によって両盤を聴き比べてみることにした。まずサヴォイのA面1曲目を聞いた。そして次にシグナルのA面1曲目を聞いた。あれっ!曲が違う。ジャケットを見ると両盤ともにA面がセシル・ペインのカルテット、B面がセシル・ペインとケニー・ドーハムの2管によるクインテットとなっている。そうしてみるとサヴォイ盤の方がセンターラベルを張り間違っているように思える。ところがよく見ると、レコードの刻印はAと打たれている。レコードの刻印が間違っていて、ラベルも間違えたのか、それともA面がクインテットのアルバムが存在したのか疑問が残る。
 改めてA面1曲目のThis Time The Dream's On Meを聞いてみる。このセシル・ペインの演奏どこかで聞いたことがあると思って、レコード棚を探してみると、Patterns‐Cecil Payneという題名でサヴォイより再発されたまったくジャケットも異なるアルバムが出てきた。こちらはA面がカルテットの演奏で誤りはない。レコードの刻印もAとなっている。そんなことに興味が言ってしまったので、音の比較がしっかり出来ていないが、少し聞いた感じではサヴォイの再発盤がかなり音の感じが異なっているようである。
 ・Miles Davis In Person At The Blackhawk / COLUMBIA 1961 / USA
 ・Farmer's Market / Art Farmer Quintet with Hank Mobley & Kenny Drew / STATUS 1956 / USA
 ・Art Blakey's Jazz Messengers With Thelonious Monk / LONDON 1957 / UK

 マイルスのアルバムは、A面のWalkin'とBye Bye Blackbirdでひたすらマイルスがバリバリと吹きまくっている、マイルスにしてはホットな演奏である。入手したものは6Eyeのオリジナル盤で、音が前に飛び出してくる。無心にジャズが楽しめる。
 次の20代のアート・ファーマーのアルバムも、クリフォード・ブラウンの亡くなった年に録音されたもので、クリフォード程の鋭さではないが、やはりブリリアントなトランペットの演奏が楽しめるものである。RVGの刻印もあるが、音は少し歪気味でクリヤーではない。
 ジャズメッセンジャーズのアルバムは、メンバーがなかなか固定しなかった1957年代の演奏で、ピアニストにセロニアス・モンクが参加したものである。これは珍しいUK盤という事で入手した。この後、1958年になってブルーノートに有名なMoanin'を録音しジャズメッセンジャーズブームが起きた。
 ・Clark Terry Quartet with Thelonious Monk / Jazz Land 1958 / USA
 ・Al & Zoot / Al Cohn Quintet Featuring Zoot Sims / Jasmine 1957 / UK
 ・The Happy Blues / Gene Ammons / Prestige 1956 / USA
 ・Daddy Plays The Horn / Dexter Gordon Quartet / Fresh Sound 1955 / Spain

 クラーク・テリーがセロニアス・モンクと共演したもので、クラーク・テリーのフリューゲルホーンも素晴らしいが、モンクのピアノがユニークでまっとうに近いバップ演奏をしている。アル・&ズートは二人が共演して作った一連のアルバムの最初の物。息の合った二人のリラックスした演奏が楽しめる。次は、ジーン・アモンズ名義のアルバムであるが、ジャッキー・マクリーン、アート・ファーマー、デューク・ジョーダンなどそうそうたるメンバーが名を連ねたジャムセッションともいうべき楽しいアルバム。これは再発盤でオリジナル盤は赤いジャケットが使用されている。Vangelderの刻印あり。デクスター・ゴードンのこのアルバムは、漫画チックなジャケットが秀逸で人気がある。今回入手したものは、スペインのフレッシュ・サウンドが再発したものであるが、オリジナルジャケットを再現しておりジャケ買いの一枚。
 以上、入手した10枚のアルバムでした。ジャズが熱かった1950年代の作品を中心に、しかも米国や欧州での発売盤を収集され、それを手放された今回のコレクターは本当にジャズが好きだと想像される。
 
 




Stan Getz and J.J. Johnson at The Opera Houseの疑問(2013.2.7)

 1957年にはノーマン・グランツの主催するJATPコンサートが、カーネギー・ホール(ニューヨーク)、オペラ・ハウス(シカゴ)、シュライン・オーディトリアム(ロス・アンジェルス)で開催された。その中から、このStan Getz and J.J. Johnson at The Opera Houseというアルバムが制作され発売された。このアルバムにはモノーラル盤とステレオ盤があり、この両者は録音された場所も日付も異なるとされている。
 ・Mono LP / MGV 8265 : Opera House, Chicago, IL, October 19, 1957
 ・Stereo LP / MGVS 6027 : Shrine Auditorium, Los Angeles, CA, October 25, 1957
 モノーラル盤の演奏メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、JJジョンソン(tb)のほかにオスカー・ピーターソン・トリオ(オスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、ハーブ・エリス(g))それにコニー・ケイ(ds)が参加している。ステレオ盤も同じメンバーと記述してあるが、★(1)そうではなくドラーマーがルイ・ベルソンの交代しているという話もある。そしてステレオ盤にはYesterdaysが1曲抜けている。
 MGV8265(モノ)、MGVS6027(ステレオ)とも初期のジャケットは黄色地にゲッツとジョンソンが正面を向いて楽器を演奏している写真であるが、再発盤V8490(モノ)、V6 8490(ステレオ)では上辺に赤い帯があって、ゲッツとジョンソンが横を向きあって楽器を演奏している写真に替わっている。ぼくの持っているLPはMGV8265(モノ)のジャケットを使った日本製作の再発盤と、米国のMGVS6027(ステレオ)再発盤である。
 ここから話が少しややこしくなるのであるが、LPとは別にMonoとStereoの両方を収録したCDが発売されており(Verve 831 272-2 USA)、これにはステレオ4曲とモノ6曲が含まれている。そして次のようなデータが付いている。
 ・Stereo CD : Civic Opera House in Chicago、 September 29、1957
 ・Mono CD : Shrine Auditorium in Los Angeles、 October 7、1957
 ★(2)日付と場所がLPのデータと全く異なっている。これは別の演奏というより、どちらかの記述に誤りがあるのではないかと思える。
 以上ぼくの持っている3枚のデータを一覧にしたのが下記の表である。
  Mono
LP
Stereo
LP
Mono
CD
Stereo
CD
BILLY'S BOUNCE 7:41 10:15 7:57 9:45
MY FUNNY VALENTINE 8:19 7:40 8:28 8:08
CRAZY RHYTHM 7:34 7:36 7:48 7:56
YESTERDAYS 3:38 (3:38) 3:43  
IT NEVER ENTERED MY MIND 3:45 3:46 3:53  
BLUES IN THE CLOSET 6:06 6:08 6:17 9:02
 ★(3)ぼくの持っているステレオの再発盤に、録音されていないYesterdaysが入っているが、これはステレオでは録音されていないはずで、モノの音源を流用したのだろうか。
 ★(4)Blues In The ClosetのCD Stereoでは9:02という演奏時間であるが、Stereo LPでは6:08とMono LPの6:06に近い。これもモノ録音の流用か、Stereo録音をカットしたのか。しっかり聞けば分かるだろう。
 以上★4つの疑問がはっきりしないままに残っている。
 とりあえず、LPのそれぞれの冒頭のBilly's Bounceを比較しながら聞いてみた。モノラル盤ではゲッツやジョンソンのソロが前にせり出して聞こえるが、ステレオ盤では後ろに引っ込んでいる。ぼく的にはモノラル盤の録音の方が好みである。次にドラムの演奏を注意して聞くと、誰とは言えないが、ドラムのたたき方が違っているように思える。同一人物ではないようだ。
 次にステレオ盤のB面をすべて通して聞いてみた。(僕はモノラル盤はよく聞いていたが、ステレオ盤は聞いていなかった)色々と発見があった。まず疑問だったステレオ録音されていないYesterdaysであるが、存在していないのだ。ジャケットにもセンターレーベルにも4曲の表示があるのに、実際は3曲しか録音されていないのである。聞いてみるまで何故分からなかったかというと、ライブ録音なので曲の切れ目が拍手でつながっており、曲を区分する溝がないのである。
 それから最後の曲Blues in The Closetであるが、6:06という表示であるが、実際には8分以上演奏しておりCDの9分に近い演奏時間となっている。
 最後にCDの音を比較するために、ステレオ録音のBilly's Bounceを聞いてドッキリした。出だしのオスカー・ピーターソンのピアノが左から聞こえてきたのだ。ぼくの記憶ではLPのステレオでは右から聞こえているのに。あわててCDプレーヤからプリアンプへの結線、カートリッジのリード線、プレーヤーからイコライザーへの結線、イコライザーからプリアンプへの結線をすべて確かめた。間違いはないようだ。それでも念のためにオーディオチェック用のLPで確認してみた。そして出した結論はLPとCDでは音源が違うようだ。米国製のLPは作りがおおらかなようだ!
 以上★(2)以外の疑問は音を聞いてみて、謎が解けたと思うが、色々とイライラしながら楽しめた。
 
 
 
 「追記」
 録音の日付についてJazz Discography Projectのスタン・ゲッツとオスカー・ピーターソンのセッション・インデックスを表のように整理すると、JATPのコンサートはシカゴのオペラ・ハウスでは10月19日・20日、ロスのシュライン・オーディトリアムでは10月の25日に実施したと整理されている。さらにVerve Record発売のJATPの他のアルバムのセッションを追加して整理したものを追記した。とりあえずはこれで納得しておくことにする。

区分 タイトル 場所
p Ella Fitzgerald & Louis Armstrong LA, Aug. 13, 1957 8 13 LA
g & p Stan Getz w/ Oscar Peterson 3 Capitol Tower Studios, Hollywood, CA, Oct. 10, 1957 10 10 Hollywood
g Herb Ellis 5 LA, Oct. 11, 1957 10 11 LA
p Sonny Stitt 6 LA, Oct. 11, 1957 10 11 LA
g Stan Getz - Gerry Mulligan 5 LA, Oct. 12, 1957 10 12 LA
p Louis Armstrong w/ Oscar Peterson 4 Chicago, IL, Oct. 14, 1957 10 14 Chicago
p Ben Webster 5 LA, Oct. 15, 1957 10 15 LA
g Ella Fitzgerald w/ Frank DeVol Orch. LA, Oct. 15, 1957 10 15 LA
p Coleman Hawkins - Ben Webster 5 same location, date 10 16 Hollywood
p Coleman Hawkins 5 Capitol Tower Studios, Hollywood, CA, Oct. 16, 1957 10 16 Hollywood
p Ella Fitzgerald LA, Oct. 17, 1957 10 17 LA
p Ella Fitzgerald at JATP Opera House, Chicago, IL, Oct. 19, 1957 10 19 Opera house
g & p JATP same location, date 10 19 Opera house
p Oscar Peterson 3 at JATP same location, date 10 19 Opera house
g & p Stan Getz - J.J. Johnson 6 at JATP Opera House, Chicago, IL, Oct. 19, 1957 10 19 Opera house
g JATP Opera House, Chicago, IL, Oct. 20, 1957 10 20 Opera house
g & p Ella Fitzgerald at JATP same location, date 10 25 Shrine Auditorium
p JATP Shrine Auditorium, LA, Oct. 25, 1957 10 25 Shrine Auditorium
g & p Stan Getz - J.J. Johnson 6 at JATP Shrine Auditorium, LA, Oct. 25, 1957 10 25 Shrine Auditorium
g Ella Fitzgerald w/ Frank DeVol Orch. LA, Oct. 28, 1957 10 28 LA

区分 タイトル 場所
  Coleman Hawkins - Roy Eldridge 5 at JATP same location, date 10 19 Opera hause
  MJQ at JATP same location, date 10 19 Opera hause
  Coleman Hawkins - Roy Eldridge 5 at JATP same location, date 10 25 Shrine Auditorium
 





フランスのピアニスト・Marc Hemmeler(2013.3.1)

 先日、ジャズ喫茶「グッド・ベイト」でチャールス・ミンガスの演奏するベースの音を聞いていて、相変わらずスリリングなぶっとい音を出しているなと思いながら、この太い音はレイ・ブラウンの音と似てるなと思った。もちろん演奏のスタイルは違っていて、どちらかというとレイ・ブラウンはリズム楽器としてのウォーキング・ベースが主体で、時々ソロを取るという感じであり、ミンガスはバンドのリーダとして演奏の表情を時々変えては、メンバーに指示を出すようなところがあり、演奏としてはスリリングである。
 なぜミンガスを聴きながら、レイ・ブラウンが出てきたかというと、前日に「Jazz Giants '58」というスタン・ゲッツ(ts)、ジェリー・マリガン(bs)、ハリー・エディソン(tp)、ルイ・ベルソン(ds)とオスカー・ピーターソン・トリオが共演したアルバムを聞いていて、ベースのレイ・ブラウンの太いウォーキング・ベースにすっかり気分が良くなったところであったからである。
 そんな話をマスターとしていると、いつかベーシストからドラマーに話が移り、フランスのダニエル・ユメールの話となった。ぼくはダニエル・ユメールがレイ・ブラウンと共演しているピアノ・トリオのアルバムがあったことを思い出したが、ピアニストの名前が思い出せず話しは中途半端に終わってしまった。家に帰って調べてみるとそれが、フランスのピアニストでMarc Hemmeler(マーク・ヘムラー)であることが分かった。アルバム名はeasy does itという。彼には、レイ・ブラウンとシェリーマンと組んで制作したWaking in L.A.というアルバムが良く知られているようだ。
easy does it Walking in L.A.
1 Samba De Angry 1 Yapad De Papa (Betty's Waltz)
2 La Vie en Rose 2 My Romance
3 My One and Only Love 3 Gravy Waltz
4 Con Alma 4 In Your Own Sweet Way
5 Stephane's song 5 Walkin In L.A.
6 Marada Blues 6 Do You Know What It Means
7 Clodi Clodo 7 Spring Can Hang You Up
8 Easy Does It 8 I'm An Old Cowhand
 早速2枚のアルバムを入手して聞き比べてみた。驚いたことにドラマーが異なるだけなのに、音楽が違うのだ。Walking in L.A.ではシェリー・マンの本当によくスイングするドラムに乗って、まさにオスカー・ピータソンを感じさせるように、ピアノが小気味よくドライブしている。easy does itではダニエル・ユメールの小技のきいたドラムに乗って、繊細に表情を変えながらしっとりと演奏している。取り上げた曲目も、フランス人同士という事からか、La Vie en Roseのようなシャンソンも取り上げているのだ。
 レイ・ブラウンは相変わらずマイペースで太い音でウォーキング・ベースを弾いて、存在感を示している。たいへん心地よい。
 
 








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