ジャズ・オーディオの雑記帳
by 6041のS

ヘンデルの音楽 (2016年1月10日)

 誰でも、生きている限りいろいろなことが起きますが、昨年はぼくにとっても忘れることの出来ない、色々なことがありました。ぼく個人としては、医者から心穏やかに暮らせとアドバイスされ、しばらくは、もっぱら読書と音楽に浸っていました。今は従来の日常が戻っています。しかし思わぬ経験をしたことで、クラシックの音楽を聴く中でも少し感じ方に変化がありました。ぼくの好きなモーツァルトの音楽は、ぼくをモーツァルトの世界に引きずり込み過ぎるような気がして、疲れを感じるようになりました。そしてヘンデルの明るくて、大らかで、楽しい音楽に安らぎを感じています。
 手持ちのヘンデルのLPを数えてみるとざっと50枚くらいありました。その中で一番多かったのが11枚もある「水上の音楽」です。まず、それぞれの演奏者の「水上の音楽」を聞くことから始めました。「水上の音楽」はヘンデルがイギリス国王ジョージ1世の舟遊びのために書かれたものだが、舟遊びは3回以上行われ、そのたびにヘンデルの音楽も書かれたが、自筆稿が失われ、それぞれの曲がどのような順番で演奏されたかはっきりしない。それで後世の研究者が編集を試みている。レートリッヒ版、クリュザンダー版、ハーティ版、ハレ版などがあり、かつ全曲演奏か、組曲演奏かでいろいろな種類のアルバムがある。その中で僕が一番気に入った演奏を下記に挙げる。
 1)ジョージ・セル指揮/ロンドン交響楽団、LONDON、1961年
 ハーティ版による組曲で、冒頭に有名なホルンと弦が威勢の良い演奏を繰り広げるアレグロで始まり、録音もよく、 いつ聞いても本当に気持ちが良い。オーケストラによる全曲版では、
 2)エドゥアルト・ベイヌム指揮/アムステルダム・コンセルトヘボウ管、Philips、1958年
 クリュザンダー版による全曲演奏で、堂々とした構えの音楽が聴ける。 もう少し小編成の演奏としては、古楽器による味わい深い演奏をする、
 3)アウグスト・ヴェンツィンガー指揮/バーゼル・スコラ・カントルーム、Archiv、1965年
 この演奏はレートリッヒ版によった全曲演奏である。以上の3種類のアルバムがぼくのお気に入りであり、気分により、 とっかえひっかえ聞いている。
 今回ヘンデルを聞いてみて、その良さを再認識してのが、「ヴァイオリン・ソナタ集」だ。 ヘンデルの全15曲からなる「ソナタ作品1」の6曲がヴァイオリンソナタである。ぼくの持っているアルバムは、 4)ヨセフ・スーク(Vn)ルージイッチコヴァ(Hapsi)、ERATOで、6曲のうち4曲を収録したものであるが、格調高く朗々と演奏していて、ヘンデルの音楽の安らぎを十分感じることができる。6曲全曲を収録したアルバムでは、5)アルチュール・グリュミオー(Vn)ラクロワ(Hapsi)、Philipsのアルバムも持っている。グリュミオーのヴァイオリンは相変わらず美音であるが、少し演奏があっさりしている感じがする。ぼくはヘンデルのヴァイオリンソナタは本当に素晴らしいと思う。
 ヘンデルといえばオラトリオ「救世主」が外せないが、これはLPではハレルヤコーラスの入った抜粋盤しかなく、全曲はCDになってしまう。またオルガン協奏曲も残念ながらLPを持っていない。持っていない話が続いたが、合奏協奏曲作品6も外せない作品だ。
 6)コレギウム・アウレウム合奏団、harmonia mundi、1975年
 7)ネヴィル・マリナー指揮/アカデミー室内、LONDON、1968年
 この2組の演奏がぼくのお気に入りである。★ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮/ベルリン・フィル、DG、1968年のアルバムもあるが、絢爛豪華すぎてヘンデルのイメージと会わない感じがしてあまり聞かない。
 あとヴァイオリン以外の協奏曲があるが、これについては1枚だけアルバムを持っている。
 8)ヘンデルー協奏曲集/ジャン=フランソワ・パイヤール指揮/パイヤール室内、ERATO
 このアルバムには、パープ協奏曲、フルート協奏曲、オーボエ協奏曲、複協奏曲、合奏協奏曲ハ長調などが収録されていて、 好都合の1枚である。
 それから声楽曲では、キャスリーン・フェリアがバッハとヘンデルのアリアを歌ったDECCAの1枚がある。
 9)Kathleen Ferrier /Bach & Handel Arias、オランダDECCA
 ここではフェリアがA面でバッハのロ短調ミサ曲、マタイ受難曲、ヨハネ受難曲などからのアリアを歌い、 B面でヘンデルのオラトリオ・メサイア、サムソン、マカベアのユダからのアリアを歌っている。
 
 上段左より、1、2、3、7
 中段、9
 下段左より、4、5、8、6
 今回改めて、まとめてヘンデルの作品をいろいろと聞いてみたが、彼の音楽は雄大で壮麗であり、明るい。 今の僕にはこういう音楽が聴けることが大変うれしい。


 

 



シューベルトの交響曲第8番「未完成」 (2016.1.24)

 先日テレビを見ていたら、ラララ・クラシックという番組で、シューベルトの交響曲第8番「未完成」を特集していた。誰でもが耳にする曲であるが、改めて聞くということがぼくには今までなかったので、いったいどのくらいにLPを持っているのか調べてみた。この曲はシューベルトの交響曲の分類コーナだけを見ても出てこない、ベートーヴェンの「運命」や「田園」と組み合わせたり、ドヴォルザークの「新世界」と組み合わされてLPが発売されているからである。調べた結果27枚のアルバムが出てきた。これを第1楽章と第2楽章の頭の部分を聞いて、ぼくの演奏の好みをLPを改めて探し出そうというわけである。
 今回取り上げた主な演奏家を列挙すると、 ワルター&フィラデルフィア’47、ヨッフム&ACO’52、カラヤン&PO’55、ミュンシュ&BSO’55、ワルター&NYP’58、クリュイタンス&BPO’60、クレンペラー&PO’63、バーンスタイン&NYP’63、モントゥー&ACO’63、カラヤン&BPO’65、ベーム&BPO’66、C・クライバー&VPO’78、マゼール&VPO’80、クレツキー&ソヴィエト国立 など17種類の演奏を根気よく聞いてみた。 あとワルター、カラヤン、バーンスタインなどは同じ演奏のジャケット違いとか、発売時期の違いによるカッティング違いのアルバムが重なっている。これも主だったものを聞いてみた。(自分で思うのも、物好きなことであった)
 結果を言うと、やはり一番気に入ったのは、ブルーノ・ワルターがニューヨーク・フィルを指揮して録音した1958年盤が最も良いと思った。特に第2楽章の歌の美しさは素晴らしい。このアルバムはベートーヴェンの「運命」がコロンビア交響楽団と演奏したものとのカップリングになっている。他にもこれに近い演奏もあるが、それはこのアルバムを聞けば十分であろう。さらにワルターの演奏とは対照的にきびきびとダイナミックに演奏したのが、C・クラーバーがウィーン・フィルを指揮して録音した1978年盤であろう。シューベルトの「未完成」については当分この2枚を聞いていれば満足である。
  
 さらにワルターの1958年の演奏盤は、ぼくの手元に国内盤3枚と米国盤1枚がある。レコード番号はSOCL-1001(SC)、SONC-10101(SC)、OS-116(日本コロンビア)、Y-30314(米国ODYSSEY)となる。さらにフィラデルフィアとの1947年録音盤SOCF-101(SC)もある。これらの音を聞いてみると、当然ソニーの音と日本コロンビア当時の音と米国盤の音は異なるが、同じソニーの音でもものによって大きく異なっている。なかでもSOCFとかSONW、SOCTなどの番号の入った盤はダイナミックレンジが広く取ってあるような気がする。一説には当時の社長の好みを反映して、標準以上に低音のダイナミックレンジがとってあるということである。該当するレコードをお持ちの方は聞いてみてください。


 

 



ベートーヴェン・弦楽四重奏曲第15番イ短調(モルト・アダージョ) (2016.1.31)

 ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲を製作順に並べると、12番、15番、13番、14番、16番ということになる。そして12番、15番、13番の3曲がガリツィン公爵のために書き上げられた作品ということになる。ベートーヴェンは15番の作曲の途中で病にかかり、ほぼ完成に近かった作曲を中断した。その病が癒えた後に新たに作曲したのが、15番の第3楽章(モルト・アダージョ)である。この第3楽章には冒頭に「病気がいえた者の神に捧げるリディア調の聖なる感謝の歌」と書かれ、アンダンテ:新しい力を感じながら、モルト・アダージョ:内的な情感で、と書かれている。ベートーヴェンが病気を克服して、作曲に戻れた自分の生活体験がこの楽章に反映されているのである。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は、第12番まではすべて4楽章で構成されていたが、15番ではこのことがあり5楽章となっている。そして13番は6楽章、14番は7楽章となり、最後の16番で4楽章に戻っている。
 なんとなく自分の気持ちを落ち着かせようと思うときに、ぼくが聴きたくなるのがこのベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番の第3楽章 (モルト・アダージョ)である。15番は演奏時間が43分くらいあり、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中で最も長大である。第3楽章だけでも16分くらいあり十分手ごたえがある。この楽章は、「どうだ、聞け!」とばかりの演奏ではなく、「聴衆は居ようといまいと関係なく、心静かに神に祈る」そういう感じに聞こえてくる演奏をぼくは好む。だからCDよりもLPの音のほうが良いと思っている。古臭い音の昔の録音でも、むしろセピア色の写真を見るようで、こちらから耳を傾けに行ってしまうのである。この15番の演奏のLPで僕が持っているのは次の3枚である。
 ★バリリ四重奏団、Westminster ML5224、1956年
 ★ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団、Westminster ML5177、1951年
 ★スメタナ四重奏団、Supraphon、OP-7045-S、1967年

 この中で僕がよく聞くのが、バリリ四重奏団である。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の優美な演奏に対して、 バリリ四重奏団の演奏はさらに繊細さが加わったようで、この第3楽章の美しさは心打つものである。この盤はモノラルなので再生もモノラル専用のカートリッジが良い。(音質の問題もあるが、再生ノイズが軽減される)この演奏はCDでも発売されており、音としてはクリヤーになっているが、LPのほうが断然雰囲気があると思っている。
 もう少し音のよい演奏とか、全体を聞き流すといった聞き方をするときはCDを聞くこともある。その場合は再生装置を変えることにする。 普段使っているアルテックA-7というスピーカーをKEFのC75というスピーカーに変えて、アンプもEL34のプッシュプル(超‐8B)から300Bのシングルアンプ(SV-501SE)に変更して、しっとりとした響きが出るようにする。もっているCDは、★レナー弦楽四重奏団、EMI、1935年、★ブッシュ弦楽四重奏団、EMI、1937年、★バリリ四重奏団、West.、1956年、★ベルリン弦楽四重奏団、DS、1977年、★アルバン・ベルク四重奏団、EMI、1983年、★スメタナ弦楽四重奏団、DENON、1983年、★メディチ弦楽四重奏団、Nimbus Rec.、1990年、の7種類の演奏である。この中で第3楽章を聞くときはアルバン・ベルク、通して聴くときはベルリン弦楽四重奏団をよく聞く。リラックスするときはスメタナ弦楽四重奏団も聞く。でもこの演奏を何回か聞いていると、癒されるというよりも気持ちが暗くなることがあるので、気を付けないといけない。
 と言いながら、「病から癒えたことへの感謝の気持ちを込めて」モルト・アダージョを聴こう!


 

 









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