ジャズ・オーディオの雑記帳
by 6041のS

どんなジャズが好きですか (2016.11.13)

 「FMジャズ喫茶Pitch」という放送番組の中で、パーソナリティを務める大橋さんからどんなジャズが好きですかと質問されて、あまりうまく答えられなかったという思いがしている。うまく頭の中を整理して自分がどういう演奏を好ましいと思っているかを伝えられなかったということである。

 そもそもジャズとはどういう音楽か。ジャズを特徴づける3つの要素があり、それを整理すると次のようになる。ジャズとは、アメリカで、黒人とヨーロッパ音楽の出会いから生まれた音楽。楽器編成、メロディ、ハーモニーはヨーロッパ音楽の伝統をつぎ、リズム、フレージング、サウンドおよびブルース・ハーモニーはアフリカ音楽と、アメリカ人としての黒人の音楽感覚から派生した。

 ジャズがヨーロッパ音楽と異なるのは、次の3点である。

 1)スイング感のあるリズム
  ・シンコペーションの変化とアフタービート
  ・オフビートによるリズムの挿入

 2)即興演奏による自発性とヴァイタリティ
  ・インプロヴィゼーションがなければジャズでない。

 3)演奏者の個性を持ったサウンドとフレージング
  ・ジャズのサウンドは美学に優先して表現的であり、エモーショナル。
 この3つの要素に優れた演奏がジャズの好ましい演奏ということになる。その中でぼくの好みを言えば、スイング感ではカウント・ベイシーのオール・アメリカン・リズム・セクションのようなスイング感が大好きである。ベースとドラムが良くスイングすることがぼくにとっては好ましい演奏である。即興演奏では歌心あふれる演奏が好ましい。サックス奏者で言えば、レスター・ヤング、コールマン・ホーキンス、ベン・ウエブスター、スタン・ゲッツ、ズート・シムズ等々ほとんどすべての著名奏者はそれぞれ個性を持っていて素晴らしい。冷静になって整理すれば、思いをうまく伝えられるかと思ったが、なかなかむつかしい。結局はジャズであれば何でも聞いて、その演奏の中にどういう素晴らしさがあるかを見つけるのが楽しいということか。
 どんなジャズが好きですかという質問には、ジャズであればみんな好き、と答える以外はないのか。ただし、確かに苦手な分野がある。①、8ビートのリズムが苦手。 4ビートでスイング感が感じられないとぼくにとってはストレスである。だからフュージョンと区分される演奏はあまり聞かない。ただし例外としてデビット・サンボーンの演奏は8ビートであっても好きである。 ②、尖ったアバンギャルドの演奏も苦手。フリーキー・トーンに聞こえてもセロニアス・モンクの演奏は緊張感に溢れていて素晴らしいと思うが、フリーキー・トーンのみが続くような演奏はなかなか心地よいと思うことが少なくて、疲れてしまい、ついつい遠ざけてしまう。
 僕がよく行く知立のジャズ喫茶「グッド・ベイト」のマスターは、まさにジャズであれば何でも好きな人で、8ビートも尖ったアバンギャルドな演奏も好みであり、時にはぼくも付き合ってそういう演奏を聞くようになり、苦手の範囲も少しづつ狭くなってきた。昔はオーネット・コールマンと聞いただけで避けていたが、今では彼の演奏するロンリー・ウーマンは時々聞くようになった。
 苦手といって音楽を遠ざけていると、いつまでも苦手のままであるが、そういう音楽にも良さを見出す人と一緒に聞いていると、なるほどと思って共感できるようになることもある。
 但し書きを取って、ジャズであれば何でも聞いて、その演奏の中にどういう素晴らしさがあるかを見つけるのが楽しい、と答えるようになれるだろうか。


 

 



「FMジャズ喫茶Pitch」 (2017.1.20)

 2016年11月から始まった「FMジャズ喫茶Pitch」という番組に参加している。ジャズ喫茶の店主が知立のジャズ喫茶「グッドベイト」マスター神谷さん、常連客の一人がぼく、ナビゲータは大橋さんの3人でスタートした。番組としては3人がそれぞれ3様のアルバムを持ち寄って曲をかけ、関連する話をああだ、こうだとしゃべっている。台本はなく、いっつもぶっつけ本番で始まるのでナビゲーターの大橋さんと担当のディレクターさんは大変である。

 すでに6回の収録を終えてみると、台本もなくやっているがなんとなくそれぞれの立ち位置といったものが見えてくる。曲をかけながら何を話すか!まず本人がこの曲(演奏)をなぜ紹介しようと思ったか。(どこが良いと思っているのか)ここが見えてこないと聞いていて話がつまらない。自分が感動しないものを、第3者に素晴らしいよといっても、言葉に迫力が出てこない。

 したがって3人がそれぞれ良いと思うものを持ってくるのであるが、マスターが持ってくるものは、世の中にあまり知られていない、隠れた名盤というか、いわゆる知る人ぞ知る名盤というものが多い。マスターとは長年おつきあいしているので、半分くらいは知っているが、半分くらいは聞いたことのないものである。改めてマスターの引き出しの多さに感心してしまう。大橋さんも初めてお会いしたころと比べれば、随分とジャズにも詳しくなり、選曲の幅広さに感心してしまう。

 マスターはジャズの重要な要素である即興演奏が素晴らしければ、何を聞いても良さを見出せるようで、ぼくらの選曲に対してその良さをすぐに見出してしまう。ところが僕は、聞いていて心地よいというには、リズムがスイングしていないとダメ、ソロの演奏は(ピアノ以外は)苦手、などという狭い料簡があるので、あれもこれも素晴らしいと言えず、こういうのはいかに苦手かと言い訳することがある。

 放送を聞いていて、いかにこの演奏が素晴らしいかを語っているのを聞くのは、なるほどなと感心することもあるが、いかにこの演奏が苦手かを力説するのを聞いていても、楽しくないと思うのである。今は苦手としていても、マスターの話を聞いて良さを理解できるようになり、なるほどこういうところに良さがあるのですねと言えるようになりたいものである。苦手と言い訳していては、演奏に心を閉ざしてしまうことになるからである。(そう思っても、現実には苦手なものも存在するが)

 ぼくが放送に取り上げる曲を選ぶのに、マスターのように隠れた名盤が次から次へとランダムに出てくるわけではないので、テーマを考えて選曲している。ぼくの今までの選曲をリストアップすると次のようになる。


11月1-2週 :  アート・ブレーキー、デイブ・ブルーベック(聞き始めのジャズ)
11月3-4週 :  スタン・ゲッツ
12月1-2週 :  ハンプトン・ホーズ
12月3-4週 :  ソニー・スティット、ズート・シムズ(ピーターソンがバックで演奏)
1月1-2週 :  エリック・ドルフィ(3人で特集)
1月3-4週 :  ドナルド・バード、アート・ファーマー(トランペッターで選曲)
2月1-2週 :  ソニー・クリス
2月3-4週 :  アート・ペッパー

 こうしてみると、演奏者単位で選曲することが多いが、毎回放送されるのは2曲程度なので、演奏者で選んでもたったの2曲ということになるが、それでも何をかけようかと聞きなおして新しい発見もあり、面白い。

 

 



「FMジャズ喫茶Pitch」2017年6月前期放送分の収録 (2017.5.22)

 昨年の11月より、大橋さんの放送番組「FMジャズ喫茶Pitch」のレギュラーゲストとなり、毎回収録に参加しており、それに関連してこの雑記帳にメモ程度のことを書き留めていたが、ブログとしてアップせずにサボっていた。大橋さんから「FMジャズ喫茶Pitch」も7か月が経過し、それなりに軌道に乗って来たので、この番組について毎回思うところを書いてはどうかという提案をいただいたので、渡りに船と6月放送分より番組の紹介もかねて思うところを書いてみることにしました。

 6月前期放送分のテーマは、レーベル別特集の第3回としてRiversideを取り上げました。ナビゲーターの大橋さんは「初心者でも聞くジャズの名盤」、店主の神谷さんは「あまり一般には知られていない隠れた名盤」、ゲスト客のぼくは「ジャズファンはなるほどと思う名盤」といったようなキーワードをもとに毎回選曲しています。

 まずはそれぞれが選曲したリストを掲げます。(放送の順番)


No 選曲者 演奏リーダー 曲名 アルバム名
1 大橋 Bill Evans Waltz For Debby Waltz For Debby
2 神谷 Wes Montgomery Round Midnight The Wes Montgomery Trio
3 清水 Thelonious Monk Rhythm-A-Ning Mulligan Meets Monk
4 神谷 Mundell Lowe Cheek To Cheek The Mundell Lowe Quartet
5 清水 Thelonious Monk Bemsha Swing Brilliant Corners
6 神谷 Ernie Henry I Should Care Presenting Ernie Henry

 Riversideレコードといえば、セロニアス・モンク、キャノンボール・アダレイ、ビル・エヴァンス、ウエス・モンゴメリーといったジャズマンが看板のスターであるが、選曲リストを見てみるとキャノンボール以外は洩れなくリストアップされている。本来であればキャノンボールの大好きな僕が取り上げるところであるが、今回はモンクをあえて2枚取り上げたので、こういう結果となった。

 大橋さんの定番のビル・エヴァンスの曲からスタートであるが、神谷マスターがギターのマンデル・ロウとかアルトのアーニー・ヘンリィを取り上げるところは隠れた名盤といえようか。

 

  

   (左がNo4、右がNo6のアルバム)

 ぼくはモンクの作曲した曲をモンクが演奏したもので、一方はマリガンとのコラボレーション、もう一方はモンクのリーダーアルバムで演奏の差異を楽しむという趣向である。

 レーベル別特集として第1回がBlue Note、第2回がPrestigeを取り上げ、第3回としてRiversideとなったのであるが、録音の聞きどころとして前2回がRudy Van Gelderが主役で、同じVan Gelderの録音でもBlue NoteとPrestigeでは音作りが微妙に異なることに話が盛り上がったが、RiversideではVan Gelderの録音はほとんどなく、スタジオ録音ではニューヨークのReeves Sound Studiosがよく使われているが、ここでの録音エンジニアとしてはJack Higginsがよく登場する。これはRiversideの社長ブル・グロウアーのより自然な録音という方針を反映して、Van Gelderとはことなる音作りのためである。こういった録音の違いもRiversideの聞きどころの一つである。

 それぞれのアルバムの個別の取り上げた思いについては、番組の中で色々と語られているので、ぜひ放送を聞いてください。放送内容についてはシナリオはなく、ナビゲーターの大橋さんの進行によってぶっつけ本番となっているので、話のノリが悪かったり、スロットル全開で大いに盛り上がったりと、今回もナビゲーターは大いに苦労したことでしょう。


 

 



「FMジャズ喫茶Pitch」2017年6月後期放送分の収録 (2017.5.22)

 レーベル特集も第4回となり、今回はVerveを取り上げる。Verveは音楽プロデューサーで興行主であったノーマン・グランツが興したレーベルで、当初はクレフ、ノーグランといったレーベルで立ち上げ、すでにチャーリー・パーカー、ディジー、ギレスピー、ビリー・ホリディ、レスター・ヤング、カウント・ベイシー、スタン・ゲッツといったJATPで活躍したアーチストが含まれていた。その後にVerveを設立し、新たにオスカー・ピーターソン、エラ・フィッツジェラルドなどが加わった。

 ノーマン・グランツのアルバム制作の特徴はスター主義である。JATPコンサートと同じように、大物スターを一堂に会してテナーバトル合戦を行ったり、オスカー・ピーターソンのトリオをバックに歌手にうたわせたり、ゲッツとJ.J.ジョンソンに共演させたりと話題性の多いアルバムがたくさんある。そして多作主義である。

 大変間口の広いVerveであるが、今回3人が取り上げたアルバムのリストを下の表にしめす。


No 選曲者 演奏リーダー 曲名 アルバム名
1-1 大橋 Ella Fitzgerald And Louis Armstrong Stars Fell On Alabama Ella And Louis
1-2 大橋 Cheek To Cheek
2 神谷 Charlie Paker Au Privave & Si Si The Magnificent Charlie Paker
3 清水 Illinois Jacquet Lullaby Of The Leaves Swing's The Thing
4 神谷 Billie Holiday Lover Come Back To Me A Recital By Billie Holiday
5 清水 Ellington & Hodges St. Louis Blues Back To Back
6 神谷 Tal Farlow There Is No Greater Love Tal

 大橋さんが取り上げたのは、ヴォーカルの大名盤Ella And Louisである。神谷マスターはVerve以前のクレフのParkerやBillieの名盤を取り上げており、マスターのコンセプトである「隠れた名盤」ではなく「王道を行く名盤」を取り上げている。ジャケットも珍しい。

 

  

   (左がNo2、右がNo4のアルバム)

 ぼくはVerveといえば当然スタン・ゲッツを取り上げたいところであるが、大ヒットしたボサノヴァはぼくの好みでないし、チック・コリアと共演したSweet Rainは以前誰かが取り上げたし、オペラハウスのライブも以前取り上げたし、ということでAt Largeというデンマークでの録音を用意したが、それは予備ということにしてNo3とNo5のアルバムを取り上げた。

 なぜか最近ガッツのある演奏が聴きたいのである。Prestigeでのブッカー・アービンとかRiversideのセロニアス・モンクやジェリー・マリガン、そしてVerveでのイリノイ・ジャケーなどである。それとは別にジャケーのアルバムではトランペッターのロイ・エルドリッジが参加し、エリントンとホッジッスのアルバムではハリー・エディソンが参加している。このトランペットの華やかな高音を、音がぐいぐいと前に飛び出すようなスピーカーで聞くと快感である。そんな風に聞いているのである。

 前期分の収録以上に、後期分の収録では、ぼくとか神谷マスターのおしゃべりが活舌になり、大橋さんがうまくコントロールしないと、音楽をかけるスペースがどんどん狭くなってしまう。こういう時はナビゲーターの役割は大変ですね。とくに今回取り上げたアルバムの温かい感じのする演奏と録音も話題となりました。

   

収録が終わり、ほっとした表情の3人でした。(左から清水、神谷、大橋)ジャズの6大レーベルといえば、あとSAVOYとEMARCYか。ContemporaryとかECMも見逃せないし、大橋さんがしっかり企画をされるでしょう。

ということで放送をお楽しみにしてください。


 

 









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