ジャズ・オーディオの雑記帳
by 6041のS

「FMジャズ喫茶Pitch」2018年2月3-4週放送分の収録 (2018.1.22)

 昨年の7月上旬に放送された「FMジャズ喫茶Pitch」のSAVOYレーベル特集で、神谷マスターが最後の曲にMilt JacksonのOpus De Jazzというアルバムのオリジナル盤を持ってきて、その音の良さに聞き入ったのであるが、実はこのアルバムにはRVGの刻印の入った2種類のオリジナル盤が存在している。放送の中で少し解説したが、ここにもう1回整理しておく。この演奏が録音されたのは1955年10月22日で、その年のうちに最初のアルバムが米国で発売された。そのジャケットは3種類あり、発売順に図1~3である。レーベルは図4のえんじ色であり、レコードには手書きRVG刻印がされている。しかし後にバン・ゲルダーが再カッティングして新しく発売されたものが有る。ジャケットには図3が使用され、レーベルは図5の赤に変わっており、レコードにはスタンプRVG刻印がされている。希少価値で言えば1955年発売盤のモノクロジャケットのほうが大変珍しい。
 先回のブログに書いたことであるが、1955年当時はレコードの注書きに「ピックアップはLP用として特に軽く(10g以下)、針先を正しく仕上げたものをご使用ください」ということで、ステレオの時代(米国では1958年にステレオレコードが発売される)になって使用されるようになった、軽針圧のピックアップ(1.5~3g)からするとずいぶん重いピックアップを前提にして作られたレコードである。

 神谷マスターが持ってきたアルバムは、LP用の、今から思えばずいぶん重い針圧(10g以下)での再生用のオリジナルアルバム(手書きRVG刻印)である。これに対してステレオ用の軽針圧ピックアップ(1.5~3g)で再生できるようにリカッティングされたもう一つのオリジナル盤(スタンプRVG刻印)が有るのである。もちろんどちらもモノラル盤である。音の傾向は、先に出たものは、中音域、特にミルト・ジャクソンのヴィブラフォンが歪むかと思うほどにしっかりとヴィヴィッドに鳴っている。あとから出したものは、音がすっきりとしていて、低域と広域が広がっているように聞こえる。
 今回は神谷マスター、清水、大橋店主の順でスタートである。


1)神谷:The Way You Look Tonight (6:27)
・Jackie McLean ‎– Presenting... Jackie McLean
・Ad Lib ‎– 6601
・Recorded on October 21st, 1955
 Bass – Doug Watkins
 Drums – Ronald Tucker
 Piano – Mal Waldron
 Saxophone – Jackie Mclean
 Trumpet – Donald Byrd

 マスターが最初に出してきたのが、ジャッキー・マクリーンの初リーダー・アルバムである。それも黒猫の横顔のジャケットのAd Lib盤である。えっ!オリジナル盤持っているの。と思ったら残念ながら日本盤であった。Ad Libのオリジナル盤は貴重盤で知られている。このアルバムは版権がJubileeレコードに移ってから日本で発売されたので、The Jackie McLean Quintetというタイトルの、フクロウのような顔をした猫のジャケットのアルバムがよく知られている。ジャッキー・マクリーンの初々しいアルトの演奏でThe Way You Look Tonightを聞いてください。

2)清水:The Congregation (6:46)
・Johnny Griffin ‎– The Congregation
・Blue Note ‎– BLP 1580
・Recorded on October 23, 1957
 Bass – Paul Chambers
 Drums – Kenny Dennis
 Piano – Sonny Clark
 Tenor Saxophone – Johnny Griffin

ぼくがジョニー・グリフィンを聞き出したきっかけは、確かミュージックバードでPCMジャズ喫茶を聞いてからのことである。その時は彼のCDアルバムをたくさん集めた記憶がある。そのためケリー・ダンサーズのようなよく聞いたアルバムはLPで持っていないのだ。今日は彼が初期にブルーノートに録音した中のThe Congregationというアンディ・ウォーホールのイラストでも有名なアルバムを持ってきた。バン・ゲルダーの録音した、彼の太くて、ハイスピードで豪快に、良く歌うテナーの音色を楽しんでください。共演しているソニー・クラークのピアノも中々光っていると思います。

3)大橋:You Said It (5:30)
・Stanley Turrentine ‎– Jubilee Shout!!!
・Blue Note ‎– BST 84122
・Recorded at the Van Gelder Studio, October 18, 1962.
 Bass – Butch Warren
 Drums – Al Harewood
 Guitar – Kenny Burrell
 Piano – Sonny Clark
 Tenor Saxophone – Stanley Turrentine
 Trumpet – Tommy Turrentine

 大橋さんがスタンリー・タレンタインのアルバムを持ってくるとは、ぼくにとっては意外であり・嬉しいことです。彼のテナーの演奏もグリフィンのように豪快にブローするが、それに加えてゴスペル調というか、ソウルフルな面があり、コテコテッとしているところがぼくは気に入っている。ここでは弟のトミー・タレンタインがトランペットで参加しており、ピアノのソニー・クラークも良いと思う。

4)神谷:Besame Mucho (6:54)
・Dave Pike Quartet ‎– Pike's Peak
・Epic ‎– LA 16025
・Recorded New York City, November 1961
 Bass – Herbie Lewis
 Drums – Walter Perkins
 Piano – Bill Evans
 Vibraphone – Dave Pike

 またまた神谷マスターが珍しいアルバムを持ってきた。ヴィブラフォン奏者のデイブ・パイクのPike's Peakというアルバムである。彼は1954年にロスアンジェルスに移住した後、カーティス・カウンス、エルモ・ホープ、デクスター・ゴードン、ポール・ブレイなどのグループで演奏し、1960年にニューヨークに移った。1961-64年にはハハービー・マンと演奏し、1968-73年にはドイツに渡っている。というように多彩なグループで演奏しているが、リーダー作はあまり多くないのである。このアルバムのLPも大変入手困難である。ここのピアニストにビル・エヴァンスが参加しているのが注目を引く。彼がベーシストのスコット・ラファロを1961年7月6日の自動車事故で無くして、そのショックから立ち直って、最初にジム・ホールとUndercurrentというリーダー・アルバムを作ったのが1962年の4-5月にかけてであるが、その前にここでどんな演奏をしているのか興味深い。

5)清水:Jay Mac's Crib (7:40)
・George Wallington Quintet ‎– George Wallington Quintet At The Bohemia
・Progressive Records ‎– PLP 1001
・Recorded at the Cafe Bohemia, New York, N. Y., September 9, 1955
 Alto Saxophone – Jackie McClean
 Bass – Paul Chambers
 Drums – Art Taylor
 Piano – George Wallington
 Trumpet – Donald Byrd

 ジョージ・ウォーリントンにはこのアルバムの1年後の1956年に録音したJazz For The Carriage Tradeというアルバムがあり、ここではベースがTeddy Kotickに、アルトがPhil Woodsに交代しており、特にJackie McCleanとPhil Woodsの演奏の雰囲気の差が大きく、アルバムの印象がずいぶんと異なり、マクリーンのファンのほうが日本人には多いと思う。このアルバムもProgressiveのオリジナル盤であれば幻と言われた貴重盤であるが、のちにPrestigeよりジャケットが変更されて発売された。
 取り上げた曲Jay Mac's Cribはドナルド・バードの作曲であるが、聞いていると、どこかで聞いたことのある曲と非常によく似ていることに気づかれる方が多いのではないか。

 この番組が始まってしばらくして、大橋さんから番組の前にどんな曲を放送するのか事前にブログで紹介しませんかと提案されました。確かに三者三様の立場で曲を選択して、それについて“ああだ!こうだ!”とジャズ談義ができれば良いな、ということになり、取り上げたアルバムの基本的なデータについては、事前に紹介したほうが放送を聞いて関心のある方には便利であろうと思い、放送の前に使用するアルバム1つ1つについて調べたデータをもとに、収録されている曲の一覧データを除いたものをブログに載せています。

 この中で、使用するジャケットとレコード会社、レコード番号についてはどれを載せるべきか迷いましたが、(ずばり使用したもののデータという考えもありますが)ここではオリジナル盤のデータをなるべく乗せるようにしています。オリジナル盤でもステレオとモノラルがある場合は、使用したのがモノラルであれば、モノラルをという風にしていますが、レコード番号に限っては両方を載せている場合もあります。やりだすと単純なようでなかなかややこしく、冒頭のMilt JacksonのOpus De Jazzのような長々とした話も出てきます。

 そんな中で、ジャズ・オーディオの雑記帳の中の「FMジャズ喫茶Pitch」10月3-4週放送分の収録 (2017.9.11)というブログで紹介したThe Lester Young-Teddy Wilson Quartet - Pres And Teddyというアルバムのドラマーが"Philly" Joe Jonesとなっていますが、ぼくのうっかりミスで、正しくは"Philly" を取った、ただのJoe Jonesが正しいです。訂正させていただきます。この件につきましたは、横浜在住のJ様から連絡をいただきました。ありがとうございました。
 これからもこういったうっかりのない様に気を付けますが、あまり気を付けるとどうしても筆が鈍ってしまいますので、誤った時は後で修正する。ということで続けたいと思います。

今回も5曲で時間となりましたが、はたして三人のジャズ談義は充実していたでしょうか。


 

 








<<雑記帳トップへ戻る