キット屋倶楽部
私のオーディオ人生
Y下
by Y下
第4回 小池レコード店の思い出、オーディオよもやま話
 私のオーディオ人生のコラムも今回で4回目になります。42〜3年前の記憶を紐解くと、どうしても小池レコード店の小池氏を抜きにしては語れません。今までのコラムとは時代が逆行しますがご理解ください。今回のコラムは小学生以下の駄文になって申し訳ありませんが当時を思い出しながら書いてみました。

名古屋国際ステレオコンサート
 ステレオ(当時はオーディオでなくステレオと呼んでいた)に興味を抱き始めたのは、確か高校2年の頃と記憶しています。この当時は色んな場所でレコードコンサートが開かれていた。その中で毎月名古屋市中区の中区役所ホールで開かれていた名古屋国際ステレオコンサートだけが印象に残るレコードコンサートと記憶しています。曲目はジャズからクラッシックまでの名演奏家のレコードを解説付きで行なっていた。このレコードコンサートは大がかりなステレオ装置ではなく、ステージの上に左右のスピーカーを置いてレコードを聴かせてくれた。このレコードコンサートで一番印象に残ったのはリビング・ストリングスが演奏する引き潮である。このレコードは最後にかける定番でこの曲目に目を瞑って聴いているとあの波の音が生々しく聴こえてあたかも海辺にいるような錯覚に陥ってしまうぐらいリアルな音であった。これがステレオなのだ。こんなリアルな音は今までのコンサートでは聴いたことがないステレオは凄い!自宅で聴く松下の20cmのスピーカーとは全然違う。このコンサートの音は音が前に飛び出してくる。「俺もこんなステレオで音楽が聴けたら最高だろうな」と心で呟いた。いったいこのステレオ装置は何処のメーカー何だろう?コンサートが終了してステージの前に行ってみた。このコンサートを主催した年配の方と仲間らしき人と談笑しているのを横目でシステムを見てみた。見たこともないお粗末なプレーヤーと金色の色をした真空管アンプだけである。真空管アンプも何処のメーカーさえわからない、たったこれだけのシステムであの素晴らしい音が出るのは脅威にも思えたし興味も出てきた。スピーカーも30cmぐらいでこんな広いホールを鳴らしきるとは、凄いとしか言いようがない。しかも左右にスピーカーボックスを並べて低音から高音まで鳴るとは不思議でもあった。

小池レコード店
 このコンサートの主催者は新栄にある小池レコード店を始めて知った、主催者の小池氏は「暇があったら店に遊びにいりゃ〜」と盛んにPRしていたのを覚えている。

   名前 小池弘道
       2000年3月に故人となり享年90歳
       故人になられて小池レコード店は店を閉じる
   住所 愛知県名古屋市中区新栄

  小池レコードの思い出
 皆さんも小池レコード店をご存知ある方もおられると思います。「あの店か、よく行ったことがある」とおっしゃられると思います。行かれた方はこれからお話する小池エピソードを読んで昔を懐かしんでください。コンサートで聴いたあの小池レコード店へ学校帰りに同級生と二人で冷やかしに行ったのが最初である。この店は一般的なレコード店とは違いレコードは店の前のみすぼらしいショーウィンドーに数枚のレコードが飾ってあるだけで現代のCDショップとはまったく違う異質な店であった。玄関のガラス戸を開けるとその奥に今で言う試聴室のような6畳の畳部屋があり、ここで小池氏の話を聞きながらレコードを買うのであるが、そう簡単には売ってくれない。まずは小池氏の話に同調しない限り門前払いとなる。

小池氏(親父)とお客の会話
 店に通されると中に先客とおぼしき方と口論に近い話し方でレコードの違いを小池氏は力説しているのを聞くことができた、しかも名古屋弁丸出しの会話である。

親父 「あんたレコード何枚ぐらい持ってりゃ〜す」
お客 「LPが50枚だ」
親父 「ステレオは何を持っとんの?」
お客 「プレーヤーはOO製でアンプはOO社、スピーカーはOOの2Wayで音楽を聴いとるわ」
親父 「あんたの持っとるレコードとステレオは全部パーだわ」

お客は真っ赤な顔をして憮然とした態度である。それに輪をかけて小池氏の新幹線講座が始まる。 

親父 「ええか、よぉ聞けよ、新幹線と東海道線は何が違う」
お客 「レールの幅も違うしスピードが違う」
親父 「あんたの持っとるレコードとステレオは東海道線だぎゃ、東海道線と新幹線とは違う、ええか、よぉ聞きゃ〜よ」
お客 「どこが違うんですか」
親父 「あんたの持っとる東海道線から新幹線のレコードを聴いたら、あんたの持っとるレコードもステレオも3分でパーだぎゃ、嘘だと思うならおみゃ〜さんのレコードをいっぺんかけてみょうか」

お客は自分の持参したレコードを1枚取り出して親父さんに渡した。レコード盤はペレス・プラードのLPである。小池の親父は鼻歌まじりでLPをジャケットから取り出してポンコツプレーヤーに乗せた。出てきた音楽は軽快なリズムに乗ったマンボの音楽である。音は中々良い音であまり不満を感じなかった。

親父 「今日来た学生さん達(私たちのこと)あんたらぁも、よぉ聞いときゃ〜よ、これが東海道線の音だぞ」

そう言いながら無造作に自分の手元にある輸入盤のレコードを取り出して、先程聴いていたペレスプラードのLPと小池の親父さんの輸入盤との聴き比べになった。輸入盤は同じラテンのLPでクレバノフ・ストリングスのマラゲーニャである。レコードに針を下ろしたとき、針音が国内盤とは違う音がする。親父さんはアンプのボリュームのツマミを回し始めた。出てきた音にびっくり仰天である。これがステレオなのか!トランペットとカスタネットがスピーカーの前から飛び出してくるではないか。しかも目の前で演奏しているような今まで聴いたことも無い音である。

親父 「これが新幹線の音だぎゃ、国内盤とは音が違うだろう、あんたが持ってりゃ〜たレコードもステレオもみんなパーだぎゃ、この音は生でも出えせん」
私  「生だとOOができるけど、この生はできないね、」
親父 「たわけ!学生のくせに何をトロイこと言っとる、おみゃ〜さん達みたいな勉強の出来ん奴はすぐにトロイことを考える、そんなことは大人になってから言うことだ」
お客 「今どきの学生さんは勉強よりそっちのことばかり考え取るのかねぇ」
親父 「ええか、おみゃ〜さんのとうちゃんは一生懸命働いて学校に授業料を払っているんだ、親孝行しょうと思ったら勉強せい」

この言葉に私は内心「うるせいジジィだ、何でこんなジジィに説教されないかんのだ」私は、今までこんな親父さん見たことも聞いたこともない変わった親父さんだと思えた。

お客 「輸入盤と国内盤の違いはわかった、たった今かけたレコードを売ってくれ」
親父 「このレコードは売らん、今度来た時に売るからそれまで頭を冷やして来ると、ええわ」
お客 「今度来るときには、このレコードを売ってくれよ」

今日、聴かされた音は今までに聴いたことも無い音である。小池レコード店のステレオは何処の製品を使っているのだろう、私はレコードよりこの装置に興味が益々募った。親父さんの話などうわの空である。一度ステレオ年鑑の雑誌を拝読して調べればすぐにわかる、しかし謎だらけの装置だ。親父さんには悪いが、レコードを買うふりして又この店に来よう、今度来るときは違う仲間を連れて行けば行きやすいはずだ。後日、学校帰りに違う仲間を連れて再度、小池レコード店へ直行した、玄関を開けると小池の親父さんはニコニコしながら「又おみゃ〜さんか、まぁ中に入りゃ〜」といつもの名古屋弁丸出しの口調である。小池の親父さんは開口一番に「ただで見る映画に感動するか?お金を払って見て初めて感動するのだ」完全に私の心を見透かした言葉だ。中に入ると今日も先客が一人いた、年齢は30代の方で小池レコードの輸入盤を何枚か購入されている感じで、もう買ったのかレコードを持っていた。私は小池レコードのシステムを穴が開くほどじっくり見た、ステレオ年鑑で見た写真を思い出しながらプレーヤーからチェックした。プレーヤーはガラードのオートチェンジャータイプでアンプはEL−34を使用したリークのポイント1、カートリッジは多分ピッカリングのように思えた。問題のスピーカーだがこのスピーカーは年鑑には載っていない。外観からするとワーフェデールの30cmのダブルコーンのような気がしたがよく似ている。私は親父さんに「親父さん、このスピーカーは何処のメーカーなの?」親父さんは「そんなこと聞かんでもええわ、こう言う音が聴きたかったらレコードを買わないかんわ」とはぐらかされてしまった。小池の親父さんは先客の人に「この前、わしの店で揃えたステレオはどうだ、わしのと同じ音がしているだろう」と先客と何やらヒソヒソ話を始めた。小池の親父さんは「スピーカーの裏蓋を絶対に開けてはいかん、開けると音が変わるから開けないように」と忠告していたのを耳にした。スピーカーの裏蓋を開けると音が変わるのだ、と思ったがよくよく考えたらスピーカーが何処のメーカーか分かってしまう、分かれば化けの皮がはがれる、よくもデタラメを言うものだ、このジジィは狸親父だ。後から聞いた話だけど、裏蓋を外して中のスピーカーを見たお客がいて大問題になったらしい、噂ではこのスピーカーは英国のOOとわかったけど、もう手に入らないスピーカーである、多分小池さんのスピーカーもここのメーカー製を使用しているのかも知れないがこれだけは最後まで謎であった。

 その後、小池レコード店には4〜5回お邪魔してレコードを買ったが、確かに素晴らしい音で音楽を聴かせてくれた、輸入盤と国内盤とは音が違うのだけど、ステレオのレベルが上がるとその差は大きく開かなかった。エレボイの3Wayにしてから久しぶりに小池レコード店に足を運んで、小池さんの音を聴かせて頂いたが、高校生時代の感動はなかった。あの親父さんの人柄の良さと人情味に溢れるサッパリした性格、相手対しての思いやりは今でも心に残っている。
 あれから30年以上の歳月が過ぎたある日、名古屋の小池弘道氏が亡くなられたと新聞で報道された、この記事を読んだ私は自分にとっては高校時代の良き思い出でもありステレオの出発点でもあった。

 今回は名古屋弁の会話が沢山出て来ます、名古屋弁の方言を少し述べさせ頂きます。

 おみゃ〜さん=お前さん
 聴かんでもええわ=聴かなくてもよい
 買わないかんわ=買わないと駄目
 ええか=よいか
 持ってりゃ、持ってりゃ〜す=持って来た、持ってるか
 だぎゃ=だろう
 タワケ=馬鹿
 トロイなぁ=馬鹿だなぁ
 遊びにいりゃ〜=遊びにおいで
 よぉ〜聞きゃぁ〜よ=よく聞けよ

名古屋弁でお話される方は国会議員の河村氏がいます、あの方のお喋りの方言が名古屋弁で言葉の最後に語尾の上がった喋り方になります。

オーディオよもやま話(その1)
タイムマシン
 以前、映画で大ヒットしました(バック・ツゥ・ザ・フューチャー)を皆さんはご存知だと思います。この映画の主役でありますマーティーと博士がタイムマシンを使って過去未来と自由に行けるストーリーですね。もし可能であれば皆さんも私もオーディオは長い経験と実績を積んで音楽を聴いておられると存じます。例えば最初にオーディオ装置などを揃えて音楽を聴いていた頃の音は、どんな音だったのか誰もわからないですね。仮に現代の自分が過去の自分のシステムを聴きに行ったとしたら、どんな評価をされるのか、「あんまり良くない音だが自分の好みに合う感じだ」「よくもこんな音で音楽を聴いていられるな、ここを改善すれば良くなるのに」の2通りになるのかな?ただ本質的には現代の音とはがらりと変わらないような気がします。当時の音源はレコードとテープが主役でしたがCDに変わっても自分の感性は簡単には変わらないしスピーカーも過去のものと現代のものとでは極端に変わったとは思えませんから音の方向性は違うとは思えない。私も30数年前にオーディオをやめて再開しても同じような音のような気がしますけど、「あの頃、俺に良く似たおっさんが聴きに来たけど話が合う、しかも俺の装置のことは詳しい、この部分を改善するともっと良くなるよ」とアドバイスしてくれたけど、何であんなに俺の装置のこと詳しいのだろう。」しかもステレオの話しより俺の将来の人生観まで口説く言っていたのを覚えている、あのおっさんが言っていたなぁ「君は音楽に興味のない人と結婚したらきっと後で後悔する羽目になるぞ、小遣いをあまり貰えない鬼嫁だったら最悪だ、好きなステレオも自由に出来ない、今の俺がそうだからな」と怒りながら俺に忠告してくれたなぁ(未来から来た自分とは知らずに)
この文を俺の嫁さんが読んだらキレるだろうな、

オーディオよもやま話(その2)
本音と建前
 オーディオこそ本音と建前の世界かも?オーディオ雑誌を読むと評論家の先生達は決まって試聴した機器をさもこれが最高と美化して評価する記事が沢山載っている。「OOのアンプは今まで聴いたことのない素晴らしいアンプである。」とか「このスピーカーは従来のスピーカーとは一線を隔てた良いスピーカー」とベタ誉め的な記事を読むと、評論家の先生達はよほど酷いシステムで聴いているのかと疑ってしまう。評価していただくのは大変結構であるが何と比較しての評価なのか?がついてくる、本当に良いのなら評論家の先生達もこの機器を導入して聴いているはずなのに誰一人として使用していないのは、本音は良くないと思える、本当に良いものなら自然と口コミやネットで広がるはずではないか、建前ばかりを書くからみんなが困惑する。建前で買わされたマニアこそ大きな被害者だ、オーディオ機器は安い買い物ではないから建前より本音が知りたいのだ。評論家の先生達はメーカーの手先と思えば、本音は言えないから建前でしか書けないかも知れないこれではオーディオも迷える羊になってしまう。 しかも評論家の先生が推薦した半導体アンプなどの製品は、良いはずなのに最後はガラクタか粗大ゴミになってしまう、そう思えてくるのは私だけではあるまい。評論家の先生方達よ、「悪い事は言わん!ここだけの話、俺だけに建前じゃなくて本音を教えてくれぇ〜」

オーディオよもやま話(その3)
二つの会話
 キットで製作したアンプや自作で製作したアンプを完成させて最初の音出しは緊張感と不安がいっぱいである。果たしてどんな音が出てくるのか、アンプを製作した方全員がこの心境ではないだろうか。2台目の人でも10台目の人でもこの気持ちは一緒ではなかろうか、苦労して製作したアンプをスピーカーに接続して初めて音を聴く「う〜ん、中々良い音だな、前に製作したアンプとは多少違うけど、どっちが良いのかなぁ、今度の製作したアンプの方のが良いような気がするけど、」何回も聴き比べしてみると最後はどっちが良いのかわからない、皆さんも私と同じ気持ちではないでしょうか。迷いが出てくると頼みの綱が一人いる、それは自分の嫁さんしかいない、すぐに嫁さんを呼んで音を聴いて貰う、これはある夫婦の会話です。

二つの会話、その一
主人 「今度作ったアンプだけど、前のアンプと比較してどっちが良いか聴いてみろ」
奥様 「そうね、今度のアンプの方のが聴きやすい感じがするからこっちのが良いね」
主人 「俺もそんな感じがするよ」
奥様 「そりゃ〜毎日音を聴かされていれば、すぐにわかる」
主人 「しかしお前は耳がいいなぁ〜、感心するよ」
奥様 「音は素人が聴くのが一番良くわかるからね」
主人 「そうだよなぁ〜お前は俺より耳がいい!音は素人に聴いて貰うのが一番だな、オーディオマニアは理屈ばかり言うから俺は嫌いだ、俺はお前を見直したぞ」
奥様 「音がわからなくなった時は私を呼んでちょうだい」
主人 「これからは師匠と呼ばせて貰うよ」
この夫婦の会話を聞けば良い音で鳴っていると思う

二つの会話、その二
主人 「今度作ったアンプだけど、前のアンプと比較してどっちが良いか聴いてみろ」
奥様 「そうね、今度のアンプより前のアンプのが音が良いね」
主人 「そんな事はない、今度のアンプのが俺は良い音がすると思う」
奥様 「私は前のアンプの方のが音が良いよ」
主人 「お前は、せっかく苦労して作った、アンプの良さがわからんのか!」
奥様 「私は今のアンプより前のアンプの方のが良いと言っているのに」
主人 「お前は耳が悪い!せっかく作ったアンプにケチをつけるのか、素人のお前に音がわかってたまるか!」
奥様 「素人と言うのなら聴いてくれなんて頼むな!自分こそ音のことはわからないくせに」
主人 「何だとぉ、もう二度とお前なんかには頼まないわ」
奥様 「こちらこそお断りだわ、そんなものどっちが良いかは私には興味がない」
主人 「くっそー」
奥様 「音のことが、わからない奴はオーディオなんかするな!あんたの耳より私の耳のが良いに決まっている、何たって私の耳は地獄耳だからね」
主人 「お前の耳が地獄耳なら俺の耳はロバの耳だ!」????

(念のため、この夫婦の会話はY下ではありません)

次回の予告
  次回は10月18日の大橋様の店主日記でご紹介されましたPP5/400アンプの製作記を完成まで詳しく載せる予定です。是非ご期待ください。

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