キット屋倶楽部
私のオーディオ人生
Y下
by Y下
第33回亡き友のオーディオの遺品 その2
 大変長らくお待たせしました。前回に引き続き今回も亡き友のオーディオの遺品その2になりますが残された遺品は大変多くすべてをご紹介することはできませんがその中に印象に残った物を紹介させていただきます。また彼は第4回のコラムに書きました小池レコード店に通って沢山のレコードを購入した熱心なマニアでもありました。小池レコードに関してはある程度の年齢の方なら小池レコードの輸入盤の音の良さとそこで鳴らされていたサウンドに多くの方は感動され何時までも脳裏に焼きついていると思う、
小池サウンドとはいったいどんなサウンドで鳴らされていたのかその辺も後半でご報告したい、  
彼が残した珍しい真空管 KT−61
 亡くなった彼が残した真空管の中で珍しい球があります。英国GEC製のKT61ビーム管でキット屋のマニアや真空管アンプマニアでも一度も見たり聞いたりしたことがないと思いますがこの出力管はまだKT−66、KT−88が発売される前の球です。この球の同等管はありませんがプレート電圧350Vと低めで出力はPPで12Wぐらいあります。当時の高能率なスピーカーであれば楽々ドライブして鳴らすことができます。それにしても大変貴重かつレアな球の一つになる。




松下 5AR4 メタルベース
5AR4は沢山のメーカーがありますが今回ご紹介するのはベースがモールドでなくメタルになっている珍しい5AR4です。この時代松下電器産業が作ったのではなく多分オランダのフィリップスが製造してロゴマークを松下と入れたのではと思えますが詳細は不明です。
よくマニアの方は整流管の聞き比べと題して違いを評価していますが間違った
方法でテストしている方が沢山います。Pinコンパチならばどれでも差し換え可能ですが整流管によっては使用できる電流値や整流管の内部抵抗が違うためその辺を考慮しないと寿命を縮めてしまう恐れが生じる。



ポーランド製AZ−4
 この整流管は500Vで100mAまでを流して使用します。コネクターは8PオクタルソケットではなくサイドPinタイプになります。ヨーロッパの真空管はけっこうサイドPinタイプが多いですがこのサイドPinコネクターは価格が高いので使いたくても使えないのが欠点ですがポーランド製の真空管なんてあまり聞かない球ですね、

 
ガラード TYPE−A プレーヤー
 彼が残した遺産でガラードのオートチェンジャー TYPE−Aがあります。
このプレーヤーは301,401とは違い沢山のレコードをセットするだけ1枚終了しますと自動的に次のレコード演奏が聴ける面白いプレーヤーの一つです。
 このプレーヤーは小池レコード店で使われたプレーヤーと同一になります。彼は熱心な小池レコード店のユーザーですから多分小池レコードと同じ音を出そうと努力されたのではと思われる。勿論アンプはリークを使いスピーカーはグッドマンなどのフルレンジを鳴らしていたが残念ながら小池レコード店の音には似ても似つかないサウンドであるのは云うまでもない、
 また熱心なお客に対して小池氏は自分の店で扱っていたスピーカーシステムを高い価格で販売もしていた、ここで買ったスピーカーシステムはワーフェデール、ステントリアン、リチャードアレンなどをボックスに入れて販売していたらしいが残念ながら小池サウンドと同等の音はしなかった、
とんでもないアンプだった
 彼が自作で製作された数多くのアンプがありましたが今回ご紹介する自作アンプの中では見た目は大変汚く尚且つ内部の半田付けや配線を見ますと汚いのを通り越してこれでも鳴るのかと思えるぐらい酷いアンプですが使ってあるトランス類は巷ではまず手に入ることのないレアなトランスみたいでこの汚い自作アンプの原器は名古屋駅前にあった有名なメトロ劇場で使われていたアンプらしい、
 劇場用アンプはほとんど一般には手に入りませんがどこで手に入れたのか詳細は不明だ、又どこのトランスなのか大変気になることだが色々調べて見ますと当時の劇場アンプは信頼度から云って出力トランス、電源トランス、チョークなどは町のトランス屋で巻いたものとは思えないのとトランスと云えばラックス、タムラ、山水、タンゴではないはずだ、
   劇場で使われたアンプ類は果たしてどこのメーカーなのか、この件に関して大阪のヴィンテージマニアでRCAアンプやパルメコスピーカーをお持ちの今田氏にお聞きしましたところ詳しい情報を教えていただきました、
 当時の劇場用スピーカー、アンプ類はウェスタンとビクターが沢山の劇場に納入していたらしくビクターと云えば馬鹿にしますが本家は米国のRCAになる。メトロ劇場も米国RCAのスピーカーとアンプが使われていたのではないかと推測できます。
 この点を今田氏にお聞きしますとRCAのアンプに内蔵されていたトランス類は米国シカゴ製のトランスで此処のトランスはウェスタン、スタンコア、ランジュバン等から受注して製作されていたらしい、もし本当ならばとんでもない凄いトランスで音響的には最高のサウンドで鳴るはずだが本当にメトロ劇場で使われたスクリーン用アンプのトランスなのかは半信半疑だ、結果は音を聴けば答えは返ってくるから試聴してみることにしたが使用球は6L6GCだがせっかく手持ちのTelefunken/MAZDAのEL34が4本ありますからPin接続を追加してこれを使えば面白いのでは・・・・・
こんなアンプ期待していないよ
 スピーカーはヴァイタボックスのフルレンジを使いこのアンプを鳴らす前にWE−300Bを先に試聴してみた、さすがWE−300Bは音色、音質とも素晴らしいサウンドである。室内楽でとりわけヴァイオリンを聴くと何とも云えない心地よさが感じ取れヴァイタボックスの持ち味が十分堪能できる。やはり個人的には3極管は私好みの音だ、
※この試聴にはアナログレコードでコレルリのヴァイオリンソナタをリファレンスに使用した、
 それに比べて5極管のEL34は過去に使った経験からすると少し大味的な感じと細身な部分があるから私の好みからすると長く使いたいとは思わない球でほとんど期待していないのだが果たして今回はどんなEL34の音が出てくるのか期待せずに接続した、
 このアンプは初段、電圧増幅共6SN7GTを使い回路は内部配線やパーツやトランスを見るとウィリアムソン回路を採用しているみたいだがこんな商品価値のない汚いトランス類で本当に音が出るのか、また汚い配線と下手くそな艶のない素人の半田付けでいい音がする道理は無い、電源投入後にスピーカーから若干ではあるがハム音がでているが試聴位置では気にならないが相当トランスからのリッケージフラックスに伴うノイズが出ているみたい、

何だい!この音は
 早速、同じトラックに針を下ろして鳴り出すのを待った、出てきた音は「何だい!この音は」にぴったりな表現、今までのオーディオの概念を覆すほどの特徴を持ったサウンド、ヴァイタボックスのフルレンジがこんな音で鳴るのは初めての経験、ジャズ喫茶のDaysを含めて京都のヤマトヤなどで沢山のヴァイタボックスを聴いてきたがこんなヴァイタボックスの音は聴いたことがない、
 私が聴かせていただいた三上先生宅や伊勢市のWEC5、東京のウェスタンサウンドインクで聴いたウェスタンの555のドライバーを使ったスピーカーシステム、WE−755Aとはまったく違う異質な鳴り方だ、勿論アルテック、JBL、タンノイとはベクトルの違う音で部屋全体に鳴り響くのには脅威を感じた、ではどんなサウンドの音色、音質かと聞かれても返答に困るのと言葉では言い表せない未体験のサウンドとしか云えない、
 もしこのサウンドを他のマニア宅で聴かされたら私は完全にノックアウトされてしてしまうか、自分のシステムの音を聴く気になれなくなるだろう、
今使用中のロンドンウェスタン直系のスピーカーも良いがこのアンプを使ったヴァイタボックスは見えない糸に引き付けられる麻薬的な要素を持ったサウンドで一度聴いたら忘れられない音だ、
 このアンプに使用してあるトランスはタムラ、タンゴ、LUX、ファインメットコア、オリエントコアの特性ばかり追っかけた自作マニアが使うトランスでは残念ながらこの音は出てこない、このトランスは外観こそお粗末だが間違いなしに米国シカゴのトランスと思う、昔も今も真空管アンプはトランスが一番重要と・・・・・
このサウンドは何処かで聴いたことがあるぞ
 色々聴いていくうちにこのサウンドは遠い昔に何処かで聴いたことがあるぞ、そうだ思い出した!このサウンドの特徴は小池レコード店で聴かされたサウンドと同じだ、小池レコードのスピーカーはもう完全に手に入らない1950年代のスピーカーだがヴァイタボックスのフルレンジも同じ1950年代に登場したスピーカーであるから音はほとんど共通点を持っていると言うか製造元は同じところで作ったのではと思えるぐらい似ている。
 接続するアンプがWE−300B、PP5/400のアンプを使うと小池サウンドにはならない標準的なヴァイタボックスサウンドになってしまう、
今回初めてこのアンプで鳴らしたサウンドは小池レコードの伝説のサウンドと瓜二つの音だが遠い〜昔に高校生の頃、小池氏の新幹線と東海道線の話がこのサウンドと共に蘇った気がしてならない、
小池レコード伝説のエピソード
 今になって小池レコードは伝説になってしまったが此処で鳴らすサウンドは誰しも一度聴くと魅了されてしまう音であったのは間違いない、今でも私の周りにも小池レコード店に通われた方が沢山います。その方達とお話しますと「あの小池の音は素晴らしかった」と口にする。
 噂では小池レコード店に関西では有名なオーディオマニアでもある落語家がこの店に訪れた、小池氏は黙って一枚のレコードをかけて落語家に聴かせた、落語家は落胆して店を出てから付き添い人に「もうオーディオはやめよう」と洩らしていた、相当ショックを受けたのかもしれない、
 またこの店にタンノイのオートグラフを持っているオーディオマニアが訪れた、小池氏は口論になるとタンノイマニアに一枚のレコードを聴かせた、小池氏は強い口調で「タンノイでこの音が出るか!」と一喝したらしい、タンノイマニアは黙って店を出て行ったと後から聞かされた、多分あのサウンドとレコードを聴かされて頭の中が真っ白になったかも(このタンノイマニアは私のオーディオ仲間でもあった)
あとがき
 今回は亡き友人の遺産のパートUになりましたが彼が作った弁当箱を使ったようなシャーシーと高価でもないパーツ、汚いが穴明け加工から組み立てまで考えて製作した努力は自作マニアの中でも大したものだ、こんな音が出るのならこのアンプをオーバーホールして新しく作り直そう、
 またこのアンプは名古屋の委託販売のショップの棚に置いてあったが誰も見向きもせず埃が被っていた哀れなアンプだった、彼のために弔い合戦とはいかないが自分のスキルを屈指して新規に作り直そう、折角作るのであれば真空管アンプでは価格も高く評価の高い○○ラボラトリーが有名だが○○ラボラトリーでも真似の出来ないそれ以上のレベルで亡くなった彼のためにY下オリジナルを作ろう、次回のコラムはシカゴトランスを使ったEL34 PPアンプの製作記事と試聴になります。
            お楽しみに!