キット屋倶楽部
音楽の
すすめ by F高
イラスト
どんなオーディオ機器で聴く? (2006.6.16)
皆様こんにちは。僕の使用して来た機器の歴史をお話します。初めてオーディオらしい機器を購入した当時、僕のプレーヤーはマイクロのMR711で、その付属品に付いていたのがVF3200とかいう番号のカートリッジでしたが、これが硬く、膨らまず、魅力が乏しいと思えました。エンパイアの1000ZEXに換えたところ、低音部が少し拡大されました。喜んだものの、何か満ち足りない。これは単に音がたるんでいるだけじゃなかろうか、と。スピーカーも疑いました。僕の当時のラインアップは日立のLoD HS-500であり、アンプにはラックスのSQ507Xだったが、この音に対する不満はHS-500の性格にあるんじゃないだろうか、と疑ったのです。なにか白黒をハッキリ分離してしまうような音、それが当時の印象でした。

もうちょっと複雑な、揺らめくような音色は出ないものか、と悩みました。音を分離するだけじゃなく、融合もするようなものが欲しい!日立はオーディオフェアでも、片チャンネル当たり4台のHS-500を束にして鳴らしていましたが、カラカラという乾いた音だったのを思い出しました。オーディオフェアなんて、音楽を聴く場ではないことを知ったのは後になってからです。
当時はシュアーのV15-TypeIIIを使っていたけれど、その音は善くも悪くもなく、あらゆるレコードが鳴るから、という理由で側に置いておきました。お金が無いから、せいぜいカートリッジを交換するしか、手が無かったのです。ある時、デッカのMark Vを入手したところ、これからポリーニが素晴らしい音になって聴こえました。一度それが分かると、またそう言うレコードがある事が分かると、他のレコードでは必ずしも旨く行かないという欠点には、目を閉じるようになります。そういうレコードを聴いて、デッカで旨くいった場合はそのままにしました。旨くなかった場合も多く、それはシュアーでしのいだのです。

3年後に米国で生活することになりました。そこで知り合った米国人のオーディオ・マニアはそれぞれ自慢の機器を持っていましたが、当時の僕には到底不可能なものばかり。なにより彼等は大きなリスニング・スペースを持っているのがうらやましい。この当時の僕は、日本で一応は独立した一戸建てに入っていたのですが、4.5畳が2間しかない所だったので(但し近隣の家が離れていたから、夜中にどんなに大きな音を出しても一切苦情は無し)。帰国してからは、別の6畳×2と4.5畳と6畳のダイニングキッチンの所に移り、さらにその20年後に10畳、6畳×3の別の所へ(これらはアパートだったので上下左右に気を遣わなくてはダメ)。これで満足しなくちゃと思っていたら、定年になり、現在は(12+4)畳のリスニングスペース、8畳×2、6畳、15畳という田舎の家をリフォームして住んでいます。今度は独立しているし、ご近所は、大きな音を出しても構わないところです。

ニューヨークには後で何度も行き、オーディオ仲間に泊まらせて貰いましたが、ほんとうにうらやましい。5000坪の庭付きです。自宅の中を小川が流れ、野生の鹿が横切るのですよ!またオーディオ・ファイルはオーディオ・ファイルの友達網を持っているため、あちこち覗きに行きました。その中でもKLHのモデル9(コンデンサー・スピーカー)を聞くことができたのは望外の喜びでした。あれは素晴らしく豊かな響きだった。ニューヨークで得た知識は当時の日記に下記のように書かれています。
「メットのオーケストラを繰り返し聴くうちに気がついたのは、ヴァイオリンの余り美しいユニゾンの強奏を聴いたことがない。でも、生の音ってこんなものかということは良く分かった。つまり、観客の吸音効果まで入れて結果的には余り周波数特性は良くないのだ。高音はストンと落ち、かなりナロウ・レンジで分離も悪い。ただ、生の音の絶対の強みはSNの良いことだ。観客のたてるノイズなどは耳が選別して取り除いてくれる。メチャメチャにSNが良く、かつ電気的な歪みが無いからどんな大きな音でもうるさくない。これが劇場の音ということになると、オーディオ的な意味の分解能を追うのは邪道かな、と考え込んでしまう。」
米国では普通に会う人たちは決してオーディオに詳しくありませんが、その代わりソフトウエアに関してしっかりした自分の意見を持っている気がします。僕の敬愛するH氏などはその典型でしょう。その下りを僕の古い日記が示しています(下記)。
「僕の帰国直後に来日したH氏に、本人とN夫人の音楽の好みについて改めて聞いてみた。若いころは大編成の交響曲とかワーグナーみたいなものを聴いたけれど、いまはもっと小じんまりしたものが合うと言っていた。モーツァルトの中では「魔笛」が最も楽しめるという。しかし「コシ・ファン・トゥッテ」は頂けないと、はっきり言う。答え難い質問だろうが「ドン・ジョバンニ」はどう思うかと尋ねたら、「ドン・ジョバンニ」は巨大すぎてまだ答えられない、と予想どおり。「フィガロの結婚」が少し長すぎる、もっと短くすれば極めてチャーミングなオペラだという点では意見が一致した。H氏はマーラーの声楽曲は嫌いだという。僕は「大地の歌」は大好きだからこの点は同意しかねる。でもぼくもマーラーの他の声楽曲は余り好きでない。ボーズのスピーカーを使っていることは前から知っていたが、H氏に言わせれば、選択の余地がなくてそうなったまでで、自分にはもったいないスピーカーだと言っていた。実際、アンプはローテル製だというし、オーディオ狂ではないようだ。ただ休みの日にモーツァルトの小品でも流しておけば夫人がいそいそと働くのだそうである。大変結構なことだと思う。」
でもその話は後にして、日本へ戻らなくちゃなりません。デッカは素晴らしく響くが、レコードをえり好みして全てのレパートリーを網羅できないという欠点がありました。それをカバーするため、ラックスのターンテーブル+インターナショナルアームにデッカ・マークVIIを付けたところ、少し改善された気がしましたが、根本的には変りません。ついにあきらめて捨ててしまいました。堪え性がないのが僕の大きな欠点かも知れません。代わりにトーレンスの321 MarkIIにSME 3009 S2 improvedと、デッカ・マークVIIを付けて、これ以上の改善は無理と観念しました。その頃ソフトウエアはジワリジワリとCD時代に乗り換えつつあったのです。

マランツのModel 34を廉価に入手し、CDに乗り換えたのですが、最初に買ったのがジェシー・ノーマンのシューベルトのリート集。これをきっかけに、次々にLPからCDに買い替えました。結局僕自身は音楽を聴きたいのであり、あまりハードウエアに情熱を裂く気は無かったのです。マランツは実際にはフィリップス製でしたが、サイズの割に重たく、それだけ安定していました。それが壊れて今度はトリオに、さらにパイオニアに変更。そのうち英国のQUADのCDプレーヤーがいいんじゃなかろうか、と思いました。しかしQUADで開始したら、全部QUADにしなければなるまい、というのがネックでした。結局スピーカー以外のオールQUADシステム(QUAD67プレーヤー、QUAD66プリ、QUAD606 パワー)を購入し楽しんでいましたが、ある時プリアンプが動かなくなり、青くなって秋葉原に飛んで行ったところ、買った店ではもう扱わない、と言うすげない答え(この2年前にQUADは消えてしまった。現在は復活)。それでもと頼み込んだら紹介して呉れた修理屋さんで直して貰いました。名門QUADがこれなら、タンノイも危ないと思い、急ぎスターリング/HEを購入。そうしたら昨年になって、CDプレーヤーとプリアンプが連続して壊れてしまいました。無惨!
その途中では様々な小型スピーカーを楽しみました。ロジャーズのLS3/5Aとか、セレッションのSL6とかも入ります。B&WのLM-1なんていう超小型スピーカーを職場の自分の部屋にセットしたりもしました。ただし実際に職場でかけたのは3度だけ。やはり音がするので職場で鳴らすのは難しかったからです。アンプではラックスのL48Aの中古とか、オーラデザインのVA50とか、ミュージカル・フィデリティのA1とかを使いました。ミュージカル・フィデリティのA1はツマミが少なく、その音は穏やかだし、ズーンと沈むような低音域を持っていたので、満足しました。それがまた壊れてしまい大変困ってしまう。QUADを始め、皆満足に使えないからです。機器の当たりが悪くって運の悪さを呪わしく思いました。メチャメチャに忙しかったから、手入れが悪かったのかも知れません。どうしようか、いっそ憧れの真空管にしようか、と一人悩んでいた時に、具体化するように励ましてくれたのがこの道の先輩のN田さんです。

もう半田ゴテを離れてから長いので心配でしたが、とにかくSV-501SE キットを買い、組み立てました。CDプレーヤーの方はミュージカル・フィデリティのAC3.2CDを使っていましたが、これはディジタル出力とアナログ出力の両方があったので、そのアナログ出力を直接SV-501SE に繋いで、そのボリューム・コントロールで音の大小を調節して音出しが始まりました。SV-501SEが完成するまでの間、一時期ですがN田さんのスタックス製イヤースピーカーの専用アンプを使って、それとQUADの606パワーアンプに繋ぐってことをやっていましたが、その音はやや硬く、時折ギクッとするような音が出ていたのです。SV-501SEに繋いでからは少しづつ音もこなれてきました。これに相応しいCDを70枚選び出したのですが、その多くは問題ないのですが、ボイートのオペラ「メフィストフェーレ」のプロローグだけはどうも終部に耳が受け付けないイヤな響きがありました。たった一つだから良いじゃないか、とは行かなかったのです。これはイタリア・オペラのエッセンスみたいな曲だからです。

そこでキット屋さんにModel 2を注文し、AC3.2CDのディジタル出力を繋いで、それをさらにSV-501SEとタンノイ・スターリング/HEに繋いで聴くことにしました。今度は殆どのCDはゆったりと楽しめました。また「メフィストフェーレ」の問題ですが、Model 2のインディケータはどうもそのCDに製盤ミスがあったらしいことを示していたので、納得。Model 2の機能がそれを示したと思います(もう少しいじってからCDを買い直したい)。その2週間後に今度はCDプレーヤーにCEC製TL-51Xを選び、キット屋さんに注文しました。これは結構悩んだのですが、結論的にいえば買って良かったな!と思っています。それからN田さんが自作プリアンプFYN-1を持って現れました。プリアンプの完全自作は僕には難しいと思ってN田さんに製作を依頼していた品です。そうしてTL-51X、Model 2、FYN-1、SV-501SE、スターリング/HEというラインナップをオルトフォンのコード(これもキット屋等さんから入手)で繋いで、キット屋さんとN田さんの連合軍による全真空管式セットが一応完成しました。本当の意味で難しいのはこれからですね。うまく使いこなさないと。スピーカーのセッティングを始め、振動対策、極性統一など問題が山積み!
リスニング・スペースは前述のように12畳です。実際には付近の扉を開けて全開すれば12畳プラス4畳分あります。近所の耳を気にする必要がないので、大きな音も望むままです。どんな音がするでしょうか。期待に胸を膨らませてスイッチを入れたのですが、その時の胸のトキメキをご想像下さい。間違いなく真空管の音です!これから高域、低域のツマミをあれこれいじって、その音で各CDを再生して行きます。なおFYN-1はまだイコライザー・アンプを付ける等、細かいバージョンアップをしなくてはなりません。それをN田さんが自分の所で仕上げてくれることになっています。そのためまた僕の所から一時的に姿を消しますので、その間のためにも、またキット屋さんにヘッドフォン用アンプをお世話になろうかな、と考えているところです。この真空管式アンプ群は大切に扱いたいと思います。かつてのようにメチャメチャ忙しい生活ではないので、もはや言い訳は効かないからです。

思い立ってから一気にここまで進んでしまいました(当人が驚いています)。その間5か月。全ては財布に相談をした上なのは言うまでもありません。使いこなしをマスターするのは前途多難だし、まだまだこれからです。
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