キット屋倶楽部
音楽の
すすめ by F高
イラスト
第40話 遠景用と近景用の機器選びの復習 (2007.2.7)
皆様こんにちは。今日はデザインをまず考えましょう。実は僕は1990年頃からパソコンのマッキントッシュのファンです。ラインコマンドを要するような入力形式が大嫌いだった時、アップルの形式は実に新鮮でした。あくまで"for the rest of us(専門家でない、素人のための)"コンピュータ、という宣伝文句に参りました。1990年代後半にはオロオロするような場面もありましたけれど、僕は未だに忠誠を尽くしております。最近の主たるマックの使い方は出来た成果のプレゼン用ファイルを作ること。今までの仕事の成果の大半がこの形式で収めてあって、大層便利しています。但し、適当に意地悪も楽しんでいて、僕はほぼ自作の全ファイルをApple純正のKeynotes形式で入れてあるのです。だからファイルを呉れ、と言われても、そう単純にPowerPoin形式に変換できないのです。移ったとしても、同様の仕掛けは楽しめません。ザマー見ろ!(こう言ってはいけませんね。自らの了簡の狭さに恥じ入ります)。でもKeynotesの諸機能をフルに使うと色々と冒険できるので楽しいですよ。なぜマッキントッシュを好むか、という議論を始めると収拾がつかなくなるので、ここではスマートに避けましょう。

iPodも4種類持っています。ただし、iPodに入れてあるのはクラシックだけでなく、ポップス、歌謡曲のたぐいも。また人に頼まれたパーティ用の音楽をクラシックから選んで入れてあります。例えば「静かな音楽」、「元気がでる音楽」、「必死に聴く音楽」等々というファイルを作りました。それほど音質にこだわらなくても済むなら、使い方次第では便利だし楽しいですよ。そしてデザインというのも重要な分野だと思います。特にスピーカーでそれが言えます。なぜハーツフィールドとか、パラゴンとか、オートグラフが愛でられるか、ということを考えますと、その形自体に魅力があるからじゃないかとも思います。それもいいではありませんか。素晴らしい音が出れば申し分なし!実は僕が憧れているのは、やはり大型の、コンデンサー・スピーカ?ESLです。でも価格が高くなりすぎましたね。現実には我が家ではタンノイのスターリング/HEを鳴らしているわけですが、もし宝くじでも当たれば、次はQUADのESL、もうひとつソナス・ファーベル社のスピーカ?「クレモナ」も欲しいな、とタワケタことを思っています。後者は熱血型指揮者の佐渡裕さんが使っているらしいというだけの理由ですが、イタリア・オペラを鳴らすのに良いのでは? と言っても、今はそういう余裕はないし、それにコンデンサー・スピーカーは単に伝説に酔っているだけかも知れません。何か良さそう、という雰囲気に対してヨダレを垂らしております。

僕は航空機会社に勧められて、パイロット用の操縦桿訓練シミュレータを操作してみたことがあります。羽田で2回も挑戦したのですが、2回とも墜落事故を起こしてしまいました。実は僕はデザイン的にああいう操縦席の雰囲気は苦手です。やたらとスイッチや、計器目盛りがあって、メカメカ満艦飾ですからね。パイロットは慣れているでしょうが、また技術少年ならそういうのが大好きでしょうが、僕は無理と諦観しました。使わないスイッチ類は蓋をしてしまいたいのが本音。僕はああいうハードウエア指向ではありません。スパゲッティみたいにコードが這う部屋からは逃げ出したくなります(でも僕の部屋のコードの混乱ぶりはどうだ?)。QUADみたいな簡素な、あるいは簡素を装ったものが好きです。でも、進歩のためには両方の指向が必要なんですね。僕の好みを端的に申し上げるなら、簡素な構成であって、ボタンやダイヤルも最小限のシステム、いうことになります。家庭的デザインと言えば良いでしょうか。「QUAD」の最後の「D」がDomestic(家庭的) だという意味がヒシヒシと迫って来ます。

そしてオーディオ機器はどういうものを選ぶか、という大問題があります。現実に自宅に置くわけですから、余りズータイが大きくない方が望ましく、色々な問題を考えると皆様も苦労されているんじゃないかと思います。でも、くじけないで行きましょう!音が至近距離で聴く血生臭さを伴う音か、それとも遠方からひびくマッシブな音か、という差は実際に音出しする上で特に重要です。ワーグナーだったら遠方の響きが重要ですね。ブリュンヒルデの飛びこむ火炎が、遥か遠くのヴァルハラ城の燃える輝きに重なるところ、これなんか全く、マッシブに捕らえないと理解できなくなります。ワーグナーでは、イゾルデの悩みやトリスタンの苦しみにはインティメイトな表現もあり得るかもしれないけど、やはり第一解は遠方起源の音じゃないでしょうか。但し、どちらがいいかは、聴き手の気分により、体調により違ってきます。でも人声とキカイの音は誰でも区別できます。それを区別し難くするのがオーディオ技術!イタリア・オペラの方はワーグナーとは違う。オテロ役がミケランジェロ風の大伽藍を描く時の決意も、メデア役の絞り出す苦痛も、ヴイオレッタ役の絶望も、その音は至近距離から聴こえる音です。カラスの復讐心に満ちたダラス公演の実況を聴く度に、僕はゾクゾクします。顔に歌手の汗が飛び散り、唾が飛び散るのですが、これぞイタリア・オペラの至福の時ではありませんか!
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ギネス・ジョーンズ
ギネス・ジョーンズ
(Opera News誌より)
遠景の音(遠い声)と近景の音(近い声)、これを選ぶには、長い道筋を通らないとなりません。オペラの場合、オペラ・ハウスに実際に出掛けてみることをお勧めします。安い席でいいんです。初台の国立歌劇場でも、上野文化会館でも、メトロポリタン歌劇場の地獄の釜を覗くみたいなファミリー・サークルでも、逆にウイーン国立歌劇場の大統領席のボックスでも構いません。ブダペストのエルキル劇場(国立オペラでなく、市民ホールみたいな所)でも結構楽しめましたよ(ギネス・ジョーンズ出演の「トウーランドット」)。その時の都合と懐次第。そういうのを聴いた上で最後にオーディオ機器を選び出せばいいんです。結局は、聴く曲により遠景用と近景用の2種類のものが要るんじゃないでしょうか。贅沢ですが。

遠景用の「ニーベルンクの指輪」の録音代表としては、アストリード・ヴァルナイの余り若い時でなく、1953〜1957年のものが良いと思います(1941年の録音は声が青臭く、1960年代になると、ソプラノとしては声が荒れてくる)。同じ歳のビルギット・ニルソンは音程が甘く、台詞を聴き取りにくい欠点があって、それを気にするともうダメです(ニルソンがイゾルデを歌ったのを聴いたことがありますが、僕の耳には音程の悪さが気になって仕方が無かったのに、偶然同じ日に同じホールで聴いていたN先生はいやそんなことはなかったよ、と言われました、同一の公演でもこれですから、聴く人によって、またその時の聴く人の体調によってかくも差が大きい)。曲によってはマルタ・メードルのも良いと思います。最近メードルのCDを買って聴きまくりましたが、いずれの曲も血のりがべったりと付いたような印象です。ドベドベ、ネットリ、タールのように濃厚な感じ。それを嫌う批評家もおられますが、僕はメードルが大好きです。

近景用の録音の例としてはカラスの「メデア」。色々な実況録音がありますが、繰り返し聴く価値のあるものは1953年スカラ座と1958年ダラスの2つじゃないかと僕は思います。あとは何か問題を内包。「ノルマ」も実況録音が多いのですが、残すべきは1956年のスカラとRAI実況録音。最もカラスらしいのは1956年RAI実況ですが、そういう実況盤のヒドい音を聴くのはくたびれる、イヤだ、と嘆くアナタ、それならもう少し落ち着いてゆっくり聴ける1960年EMI盤が良いかも知れません。実際聴いてみて1960年盤「ノルマ」も捨てたものじゃないと思います。圧倒的な迫力、凄まじい声の威力等はそこに無くても、代わりに静けさを何と巧く表現していることか。カラスは20年以上歌いましたが、凄みを感じさせたのは4?5年しかない。それに、モノによって印象が違い、例えば僕は彼女の「蝶々夫人」の一部は余り好きじゃありません。また声楽をやる人の中には異論があるということも知っています。某声楽家は、カラスは異常だと言っています。カラスの舞台生命の短さを思えば、そういう意見があっても何も不思議じゃありません。
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ここで申し上げたいのは、声楽家は実に寿命が短いということです。普通、声楽家のピークは35歳くらいだと言われていますが、30歳になって光っていなかったら、せめて光を増していなかったら、もう難しいかな。ですからその録音を論じる際は、具体的にいつの、どのテークの録音かを明らかにしないと、話が始まらない。毎回全て違うからです。また歌手も30歳になる前に十分な訓練をして置かなければなりません。遊んでいるヒマは無いんじゃないでしょうか。全てを犠牲にして頑張らなかった場合、後悔の日々が待っていますよ。それくらい、舞台に立つと言うのは凄いことなんです。常に人目にさらされ、そこで「舞台を喰う」という大変な作業! 実際に舞台で動作してみせるので、誤摩化せないからです。何か失敗すれば直ぐに分かります。バレエ・ダンサーの方が厳しいでしょうが(誰の目にもあきらかに技量の差は分かりますし、失敗すればそれも誰が失敗したせいかも明々白々だから)、歌手もマイクを使わなければ同じです。但しポップス等ではPA・編集という手をつかう方法もあります。

アンナ・モッフォ
リューバ・ヴェリチ 全盛時代(左)と晩年(右)の写真。アンナ・モッフォ(上)とリューバ・ヴェリチ(左)(Opera News誌による)
僕はアンナ・モッフォの「椿姫」を聴きながら、この人は可愛そうな人だと思いました。自分がどの程度に評価されているのか、本人には分かっていたのですね。一度メットのビング支配人はテバルディ、サザーランド、プライス、そしてモッフォを一緒に招いて食事会を催しました。その時、最初に来たのがモッフォだったと聞きます。彼女は1976年までメットに出ましたが、あとは何年記念という催し物にしかお呼びがかかりません。録画を気をつけて見ると、モッフォは初め中央から遠いところにいたはずなのに、どんどん中央に寄っていくのですね。でも市場にリリースされたDVDでは、モッフォの歌うシーンはカットされています。もう自分はメットの舞台を踏むことはない、等々複雑な思いで胸が一杯だったに違いありません。モッフォの晩年の写真を御覧ください。哀愁が漂っています。彼女のヴィオレッタでは超高音も出していますし、立派なものです。では何故?それは彼女が美しすぎたのが原因だと思うのです。どうしてもそれを捨てられない、これが彼女が晩年に味わった寂しさの原因だと思います(いろいろ考えた末にこう書くしかないと判断しました)。モッフォへのオマージェ。他方ヴェリチの晩年には、どう見えたって構わない、という開き直りがあったようです。メット史上最大の拍手を受けた歌手の晩年です。「サロメ」の素晴らしさは有名ですが、彼女の「アイーダ」も聴いてみました。でも、これは少し音が悪すぎました。先刻ほめたヴァルナイのメットにおける「さまよえるオランダ人」も、直前まではヴェリチが歌うはずだったと言います。開き直りの美学、これがあると強いですよ。

ここでは近景用と遠景用という極端な分類をしましたが、実際、その差は大きい。今まで繰り返して述べたように、その時の気分、体調、直前に何を聴いたか、アナタは幸せかどうか、等々に依存するからです。どっちの音楽を聴きたいのですか?世の中に絶望的した気分の時は、世界の破滅を歌う「遠景」かと言うと、そうも言えず、絶望的だからこそ「近景」の血生臭さを求めるってこともあります。当然その逆も。ですから、どちらも持っておけばがっかりせずに済みます!もし、どちらかにベクトルが傾いたら、それがその時のアナタにとっての正解です。僕自身がまだ迷っている始末です。それではどんな耳があるのでしょうか。下記のA説、B説の分類になるでしょうか。
A説 「ワーグナーの音楽、これの虜になった方、アナタは偉大です。あの荘厳な響きの中で、ブリュンヒルデの投げつけた炎に包まれて全世界と共に滅んで行った、犠牲的精神の塊。あれに比べればイタリア・オペラのスンチャッチャは何だ?あれでも音楽か?みな心身共にくたびれた病人か、精神治療が必要な患者の大集団ばかりではないか!暗いし、しかもその暗さは灰色だ!肺結核だ、毒薬だ、ショックだ、自殺だと、見苦しいことのオンパレード。おまけにテノールが巨腹を突き出して、両手を振り回したりしちゃってさ!それに引き換え、ワーグナーの音楽はそういうことを遥かに超越していて、パルシファルの聖蹟も、ゼンタの犠牲も、やむにやまれぬもの、それも人類全体に奉仕する崇高なもの。ニュルンベルクの喜劇だって、人類愛を歌い上げた点ではそれに負けないくらい大きい。決して個人的感情など述べていない。トリスタンとイゾルデだけ、いくらか個人的要素があるとしても、その個人的要素を合成すると全体になるんだ。人類の贖罪だ、懺悔だ、という汎地球規模の奉仕の音楽!『遠い声』で聴こう!」
B説 「なに言っているんだ。イタリア・オペラの中にこそ真実があるんだぞ。血しぶきや、怒りの燃焼が、またそれがつき動かすヒトの心こそ、音楽的感動をもたらすんだ。それにひきかえ、ワーグナー!あの陰気な音楽、全体主義、長?い音楽はナンだ。それだけひらめきに欠けるってことを白状したようなものではないか。麗々しく、祝典と称した死者の弔いばかり出てくる音楽、それを有り難がって、持ち上げ、過大評価し、それ以外の音楽に対して偏狭な奴ら!デズデモーナの死こそ真実であるのに。ノルマの涙こそあらゆる真実だっていうのに!メデアの狂乱の原因を御覧よ!涙や怒りも昇華すると美に至るんだぞ。この美しい世界を見つめてご覧!ひとり一人の心の真実を探そうよ。人類全体の真実なんて吹聴するワグネリアンはおこがましい。あの独り勝手な独善集団、と一括りにしてしまいたい!あんなに長い間、聴き手を拘束するなんて非人道的だぞ!引きかえ、イタリア・オペラのかくも美しい世界。誰にも犠牲を強制せず、影響下に巻き込まない、孤独な世界。そう、天才は孤独だ!『近い声』で聴こう!」
なんて、論争をしているのです。口に出さなくても、互いにそう思っています!そして僕自身はどうなんだ?前者の「遠い声」、後者の「近い声」の狭間でオロオロしています。ああ、この世の最も原始的な楽しみ!
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少し具体性を持たせましょうか。すなわちイタリア・オペラ、特にベルカント・オペラの場合、リスナーたる僕自身は舞台のど真ん中にいるのです。プリマドンナの隣にいて(あるいは自らプリマドンナと同一化して)、その声を聴いている、というシチュエーションです。従って声は回り中から、前だけでなく、横からも、後ろからも聴こえて来ます。舞台の真ん中というのがあり得ないとすれば、指揮者の位置と言い換えても良い。正直に言いますと、僕自身はもっと歌う者と同一化して聴きたい!少なくともステージから遠く離れた座席で、ゆったりと聴く音ではありません。至近距離で聴くのです。第1者とか第3者という議論では、第1者と言えます。関心はひたすら歌手の技巧に集中するため、ある歌手に注意している時は、他の歌手や合唱には無関心です。芝居の場合なら芝居全体の出来映えを観るのでなく、個別の、各瞬間の、「見栄」を楽しみ、その微妙な違いを楽しむのです。歌舞伎を楽しむ場合の一つの行き方です。全体の出来映えよりも、特定の役者の持つ技量をを再確認する場。めくるめくカラスの技巧を楽しむことはかくして可能になります。これが僕の考える「近い声」の本性です。

それに対して、ワーグナーの場合は、リスナーたる僕自身は数10メートル離れて舞台全体を観る場合を想定します。自分自身は第3者として鑑賞する立場に徹します。あくまで芝居であり、歌劇であり、それを前方に広がった舞台枠の中で演じるのを鑑賞するのです。レコードとは演奏を再現するための道具であり、楽しむべきは再生音楽です。こういう場合は、個々の歌手の技量と言うより、指揮者がどんな音楽を作り出すかに関心が集中します。舞台までは何10メートルもの距離がありますし、そこでは声だけでなく、全てが舞台の枠組みの中に収まっています(コレ重要!)。指揮者が音楽を作っているのですが、聴こえてくる音は指揮者の耳に聴こえる音とはいささか違います。リスナーは、指揮者より遥か離れた位置で、ゆったりと座って耳に聴こえる音楽やその構造を聴いているのです。これは「指輪」を初めてスタジオ録音した、ジョン・カルショウの言う、「音だけによる音楽の再現(演奏の再現でなく)」とは少々違うのかも知れません。歌舞伎で言えばカルショウのは、「スーパー歌舞伎」の世界。スーパー歌舞伎では宙づりになるとか、空中を飛ぶとか、色々な演出があります。でも僕自身は舞台上演の、旧型の再現を楽しみたい。既に他界した古い歌手等を考える場合は当然ですね。それを前提に、フルトヴェングラーは本当に好みの指揮者だったな、という感想を述べることになります(これは好き嫌いの問題であり、良いかどうかとは別の問題)。これが僕の考える「遠い声」の本性です。

以上は僕自身の意見に過ぎませんが、「近い」/「遠い」という同一の言葉を用いても、そこに別の意味を込めた御意見があっても当然だと思います。ただ定義をしっかりして置きたいため、ここに特記しました。またここで一つお断りがあります。エレーナ・スリオティスはメットに出たことは無いと書きましたが(第30話<アンナ・ボレーナの塔>参照)、実は1969年にヴェルディ「マクベス」でデビューする予定だったのが、メットの労働争議のためにキャンセルされてしまったのが真相らしい。そして1970年以降、はや支配人の耳は厳しくなって行ったのですね。本日、古いOpera News誌を整理していたら、それを記した記事にぶつかりました。やはり一時は凄かった。それがあっという間に没落したので、至極残念です。全盛時の声を生で聴いてみたかった! 1969年といえば彼女はまだ25〜26歳ですよ。
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ここに至って、僕の独断的判断で推薦するCD等の番号を御教えしましょう。始めに申しましたように、古い時代のものが多く、既に販売会社が変更されたり、廃止されたレーベルがありますが、どこかに、これらの音源が存在しています。また、例えば「トロヴァトーレ」ではカラスが入っていないが、というご指摘があるかも知れませんが、ここでは他の歌手の調子や、レコードとしての出来映えなどにも気を使って、こうしました。僕がカラスにどれだけ思い入れを持っているかを承知しているなら、これも許されるだろうと思います。また「ナブッコ」ではレナータ・スコットが初登場します。スコットの歌うアビガイーレ役は、実は(カラスを除けば)僕の考える最大限の、理想的な歌唱に近いと思います。ただ、指揮者ムーティの指示のせいか、最後の1オクターブの跳ね上げが聴こえません。楽譜通りだとこういう歌い方になるのかも知れませんが、残念だと思っております。また、あれだけギクシャクした想いの極限を歌い出しているのですから、スコットもなかなか才能ある歌手です。あれをキャリアの最後近くで録音したのも、スコットらしいと感心します。「仮面舞踏会」ではテバルディのものをマニアック盤として記載しましたが、マニアックという意味を思えば、これも許されるだろうと思います。また35番「サロメ」のマニアック推薦のヴェリチのものは抜粋盤です。登場順に25番「パルシファル」までを正編とし、あと26番「セヴィリアの理髪師」から41番「運命の力」までを続編としました。

僕は第2話<ワルキューレの雄叫び>で述べたように、または第3話<椿姫は永遠>で述べたように、夫々約20組程度の全曲盤を持っていて、それぞれ良く聴いております。色々と買い足したので、現在では、全ジャンル合わせて約2,000枚のCDを持っており、オペラ関係は1,400枚程度。その中から一般的名盤とマニアックの各1組づつに絞り込みました。ここに(紹介した順に)並べます。決して好きな順ではありません。

<推薦CDカタログ>
正編
No. 曲名 作曲家 一般的名盤/
マニアック盤
販売会社 CD等の番号 指揮者 主要な歌手 LD 登場
1 ワルキューレ ワーグナー 一般的名盤 ポリドール POCL-9335/8 ショルティ ニルソン 第2話
マニアック TESTAMENT SBT4 1391 カイルベルト ヴァルナイ
2 椿姫 ヴェルディ 一般的名盤 クラウン PAL-2013/14 ジュリーニ カラス 第3話
マニアック FONIT-CETRA CD0 9 サンティーニ カラス
3 ドン・ジョバンニ モーツアルト 一般的名盤 東芝EMI TOCE 6331/33 ジュリーニ サザーランド 第5話
マニアック ソニー SRLM 951-2 カラヤン トモワ=シントワ LD
4 トウーランドット プッチーニ 一般的名盤 米ロンドン 414-274-32 メータ サザーランド 第6話
マニアック 東芝EMI TOCE-9137/38 プラデルリ ニルソン
5 アイーダ ヴェルディ 一般的名盤 英デッカ 414-087-2 カラヤン テバルディ 第22話
マニアック TESTAMENT SBT 2 1355 バルビローリ カラス
6 トスカ プッチーニ 一般的名盤 ポリドール POCL-3921/2 カラヤン プライス 第23話
マニアック 東芝EMI TOCE-3157/58 デ・サーバタ カラス
7 マクベス ヴェルディ 一般的名盤 英デッカ 440 048-2 ガルデルリ スリオティス 第24話
マニアック 伊CGD 2CDLSMH 34027 デ・サーバタ カラス
8 さまよえるオランダ人 ワーグナー 一般的名盤 Music&Art CD-319 クナッパーツブッシュ ヴァルナイ 第25話
マニアック Teldec 4509 97491/2 カイルベルト ヴァルナイ
9 カヴァレリア・ルスティカーナ マスカーニ 一般的名盤 ポリドール POCL2395 セラフィン シミオナート 第26話
マニアック 米OPD OPD-1230 ヴォットー シミオナート
10 ラ・ボエーム プッチーニ 一般的名盤 ポリドール F64L-50225 6 セラフィン テバルディ 第27話
マニアック 東芝EMI HS-2088 ビーチャム ロス・アンヘレス
11 メデア ケルビーニ 一般的名盤 FONIT-CETRA CDE 1019 バーンスタイン カラス 第28話
マニアック GALA GL-100.521 レッシーニョ カラス
12 魔笛 モーツアルト 一般的名盤 ポリドール 414 568-2 ショルティ ドイテコム 第13話
マニアック 東芝EMI CHS 7 69631 2 カラヤン リップ
13 トロヴァトーレ ヴェルディ 一般的名盤 英EMI CMS7 63640 2 シッパーズ トウッチ 第14話
マニアック 独グラモフォン 445 451-2 セラフィン ステルラ
14 ランメルムーアのルチア ドニゼッティ 一般的名盤 伊GDS GDS 21017 セラフィン サザーランド 第15話
マニアック クラウン PAL-2009/10 カラヤン カラス
15 トリスタンとイゾルデ ワーグナー 一般的名盤 東芝EMI CC30-3352/55 フルトヴェングラー フラグスタート 第16話
マニアック ORFEO C603.053 D カラヤン メードル
16 オテロ ヴェルディ 一般的名盤 ポリドール POCL-2551/2 エレーデ デル・モナコ 第17話
マニアック ポリドール POCL-411618-2 カラヤン デル・モナコ
17 薔薇の騎士 R.シュトラウス 一般的名盤 ポリドール UCCG-3407/9 ベーム ゼーフリート 第18話
マニアック キング 485L-2501-2 カラヤン シュワルツコップ LD
18 カルメン ビゼー 一般的名盤 東芝EMI CC30-3330-32 プレートル カラス 第19話
マニアック 東芝EMI TOCE-9939-41 ビーチャム ロス・アンヘレス
19 ノルマ ベルリーニ 一般的名盤 CBSソニー 78DC833?5 セラフィン カラス 第20話
マニアック ポリドール POCL-2562/3 ヴァルヴィーソ スリオティス
20 アルジェのイタリア女 ドニゼッティ 一般的名盤 英EMI CHS 7 640412 ジュリーニ シミオナート 第21話
マニアック ANF ANF3514 ワイケルト ゾッフェル LD
21 ニュルンベルクの名歌手 ワーグナー 一般的名盤 米デッカ 452 606-2 ショルティ ヴァンダム 第29話
マニアック NAXOS 8.110872-75 カラヤン エーデルマン
22 アンナ・ボレーナ ドニゼッティ 一般的名盤 クラウン PAL-2011/12 ガヴァツエーニ カラス 第30話
マニアック 英デッカ 455 069-2 ヴァルヴィーソ スリオティス
23 フィガロの結婚 モーツアルト 一般的名盤 ポリドール POCL 3941/3 E.クライバー デラ・カーザ 第33話
マニアック EMI CMS 7 69639-2 カラヤン シュワルツコップ
24 蝶々夫人 プッチーニ 一般的名盤 ポリドール 411 634-2 セラフィン テバルディ 第34話
マニアック 東芝EMI TOCE-59407/8 カラヤン カラス
25 パルシファル ワーグナー 一般的名盤 フィリップス 30CD-376-9 クナッパーツブッシュ ダリス 第35話
マニアック NAXOS 8.110221-24 クナッパーツブッシュ メードル

続編
No. 曲名 作曲家 一般的名盤/
マニアック盤
販売会社 CD等の番号 指揮者 主要な歌手 LD 登場
26 セヴィリアの理髪師 ロッシーニ 一般的名盤 ポリドール 443 958-2 エレーデ シミオナート 第21話
マニアック 東芝EMI TOCE-9479-80 グイ ロス・アンヘレス
27 チェネレントラ ロッシーニ 一般的名盤 ポリドール 433 030-2 ファブリティス シミオナート
マニアック ポリドール WOOZ 24009/10 アバド フォン・シュターデ LD
28 ナブッコ ヴェルディ 一般的名盤 独デッカ 417-407-2 ガルデルリ スリオティス 第31話
マニアック 英EMI 7 47488 8 ムーティ スコット
29 夢遊病の女 ベルリーニ 一般的名盤 SRO SRO-841-2 レッシーニョ サザーランド 第32話
マニアック 英デッカ 448 966-2 ボニング サザーランド
30 清教徒 ベルリーニ 一般的名盤 東芝EMI TOCE 6050-51 セラフィン カラス
マニアック ポリドール POCL-3965/7 ボニング サザーランド
31 ローエングリン ワーグナー 一般的名盤 Teldec 4509-93674-2 カイルベルト スティーバー 第33話
マニアック 東芝EMI TOCE-9455-50 ケンペ グリュンマー
32 タンホイザー ワーグナー 一般的名盤 東芝EMI TOCE-9452-54 コンヴィチェニー ルートヴィヒ
マニアック フィリップス CDV-503/5 デーヴィス ジョーンズ LD
33 仮面舞踏会 ヴェルディ 一般的名盤 東芝EMI CC30-3762/63 ヴォットー カラス 第34話
マニアック ユニバーサル UCCD-3355/6 バルトレッティ テバルディ
34 ドン・カルロ ヴェルディ 一般的名盤 独グラモフォン 447 655-2 カラヤン ユリナッチ
マニアック 独グラモフォン 435 062-2 サンティーニ ステルラ
35 サロメ R.シュトラウス 一般的名盤 ポリドール POCL-3682/3 クラウス ゴルツ 第35話
マニアック 米EMI CDH 7610072 マタチッチ ヴェリチ
36 エレクトラ R.シュトラウス 一般的名盤 ポリドール POCL-4198/9 ショルティ ニルソン
マニアック 独KOCH 3-1643-2 R.クラウス ヴァルナイ
37 ラ・ジョコンダ ポンキエルリ 一般的名盤 ポリドール POCL-3838/9 ガヴァツエーニ チェルクエッティ 第37話
マニアック FONIT-CETRA CDC 9 ヴォットー カラス
38 こうもり J.シュトラウス 一般的名盤 東芝EMI TOCE-9145-44 カラヤン シュワルツコップ 第38話
マニアック ポリドール POCL-3078-9 クラウス ギューデン
39 ホフマン物語 オッフェンバック 一般的名盤 パイオニア PILC-1017 プレートル バルツァ LD
マニアック 東芝EMI TOCE-6447/48 クリュイタンス シュワルツコップ
40 リゴレット ヴェルディ 一般的名盤 東芝EMI CC30-3760/61 セラフィン カラス 第39話
マニアック RCA BVCC-35053 ショルティ モッフォ
41 運命の力 ヴェルディ 一般的名盤 英デッカ 421 598-2 プラデルリ テバルディ
マニアック 英EMI CD5 7 47581 8 セラフィン カラス

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