モノローグ(267) Intermission   (2015.4.16)

先号を出す際に、自分で気がつき、また編集者からも指摘された通り、当ブログの番号が誤っておりました。先号のモノローグ(263)→(264)に、またモノローグ(264)→(265)に修正いたします。従って先号では次のようになります。『モノローグ(264)〜(265)ノルマの歌唱法』、『(264)バルトリの「ノルマ」新録音』、『265カラスの場合』。

ヴェルディ「運命の力」を観て

ヴェルディ中期のオペラ「運命の力」を新国立劇場で観ました。47年前の大学の教室忘年会か何かで、余興に「鼻歌に歌った」のがこの「運命の力」のレオノーラのアリア「神よ平和を与え給え」。当時私は学問に専念というより余興にいそしんでいました。

その広告をみたのが今年の正月。滅多にやらない曲なので、他の曲に目をつぶって「運命の力」の格安券を2枚求めた次第。

当日まずトイレに行かなければ安心できない。私が用をすませ、妻を待っていたら、何とKo元総理が目の前を通り抜けてトイレへ。テレビ等で見るとそれほど大きいとは思わなかったが、実物を見ると堂々たる体格。中休みの時間、クランベリー・ジュースを飲みに並んだ時、我々の直前にいた男性が他の男性と会話していた内容が聞こえました。「Koさんはどう?」「あの人は私の隣」。

最初に舞台装置が現れて感じたのは「イヤ」な感じでした。実際あのアブストラクトな装置は何のため?経費削減のため?等々。あの風潮は馴染みがたいのです。モダーンで廉価な家具があって、ロフトみたいな2階に登る階段だけついています。どうしてあのデザインの椅子が必要なの?等々。現代はオペラ上演に適した空間を作れないのでしょうか。いずれ元に戻ると思いますが、その間に生活する人々は中途半端なもので我慢せざるを得ないようです。決して役者が演じることを指しているのでなく、その指先の向く空間の表現が私には受け入れがたいのです。また第1幕で気になったのはドン・アルヴァーロの歌唱法でした。インカ帝国の王家の血をひくドン・アルヴァーロですが、ここで聴かせる、投げ出すような歌唱法は随分乱暴だなあ、と思いました。これは人によって聴き方が異なり、妻は「あれはあれで良かったわ。ダイナミックな歌い方でヒトの耳を引きつけるし」と申します。レオノーラは僅かに「す」がたった声でしたが、まだ声はでます。もう少しはもちそう。ドン・アルヴァーロが投げ捨てたピストルが暴発してカラトラーヴァ侯爵は死んでしまいます。第2幕のレオノーラの最初のアリアや合唱は聴いていてゾクゾクするような元気のよい音でした(分厚い管弦楽の音もまた重要な要素)。またジプシーの合唱も同様です。プレチオシルラはジプシーの代表だということを示しましたが、声(特に高音部)に限界があるためか、上手く行かないこともあります。この幕の歌では合唱が最上の出来映えですが、後の方の幕での「ラタプラン」ははっきり言ってダメ。

レオノーラの兄のドン・カルロが登場する場面はまるで野戦病院(軍隊ではどこでもああなのかも知れません)みたいにベッドを沢山ならべた構造ですが、あれは意味があるでしょうか。ドン・アルヴァーロが実はドン・カルロにとって仇敵に他ならないことが判明したあとの決闘では2人とも本当らしくは見えなかったのですが、あれは演技力不足でした。ただこれらの歌唱から、ドン・アルヴァーロの喉は十分な演技力を秘めていることが分かります。実際、ふと喉から力を抜いた時は良い声でしたよ。ドン・カルロの声は一級品でした。

修道士メリトーネの演じる「残飯」の処理では、メリトーネが余り演技力がないため、冴えません。実際この2度目の人々の合唱とか、病院ベッドの場面など3つ程度の場面はカットできるかも知れない、と密かに思った次第。最後のレオノーラの場面では「神よ平和を与えたまえ」は切々と歌われ、高音も出てホッとしました。こういうのは歌手だけでなく、聴衆もまた上手くいって欲しいのです。両者が上手く合った上演は万人を愉しませます。このように、大道具の設定などに不満があるものの、全体として合格点に達していました。

それにしても、さっと眺めて気がついたのですが、観客は男性高齢者が多い。

 

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最近は多くのDVDとCDでオペラを愉しみ、比較を楽しんでいます。4月の例を示したものが下記の表です。前月に聴いたケルビーニ「メデア」に続き、目下は[椿姫]の何回目かの復習です。実際これを見ると大変な事を始めたと自覚せざるを得ません。まだまだ続くのです。そしてケルビー二、ベルリーニ、ドニゼッティ、ヴェルディが終了したら、其々をパッケージにできるようにCD棚を整理することになるでしょう。整理作業というのも何度目かですが、するたびに味が違うのが面白い。余りに聴きすぎた曲だと過去の物とあまり差が無くなっているため、それらは過去の印象を代理させます。

 
1日 メデアDVDスタジオ全曲 ギネス・ジョーンズ
2日 メデアDVD実況全曲 レイラ・ジェンサー
3日 メデアDVDメデア全曲  アンナ・アントナッチ
4日 椿姫CDスタジオ53全曲  マリア・カラス
5日 椿姫CD実況スカラ座全曲  マリア・カラス
6日 椿姫CD実況リスボン全曲  マリア・カラス
7日 椿姫CD実況ロンドン全曲  マリア・カラス
8日 椿姫CDスタジオ全曲 レナータ・テバルディ
9日 椿姫CDニューヨーク実況全曲 レナータ・テバルディ
10日 椿姫CDフィレンツエ実況抜粋 レナータ・テバルディ
11日 椿姫CDフィレンツエ放送全曲 レナータ・テバルディ
12日 椿姫DVD映画全曲 テレサ・ストラータス
13日 椿姫DVDスタジオ全曲 エチェナ・ゲヴァザーヴァ
14日 運命の力実演全曲  
15日 椿姫DVD映画全曲    ロザンナ・カルテリ
16日つづく 椿姫CD実況全曲 アンナ・モッフォ

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今回の「運命の力」を観るために妻と私は大雨の中、朝10時に家を出て、近所のJR駅から普通列車に乗り、それから地下鉄で行く予定でした。それが途中船橋駅でアナウンスがあり「人身事故のためこの列車はここで停止します」。そこで代わりに近くから別の京成電車に乗り換え、本八幡から都営新宿線で初台に出ました。到着したのは開演15分前。コンサート途中のトラブルは3回目。大変でした。

千葉のF高












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