温故知新:古い録音を聴いてみよう

モノローグ(289) Dec.21, 2017

 

宗教曲「いろいろな鎮魂ミサ曲(レクイエム)」

死者を弔うため、また思い起こすための行事に伴う音楽に注目すると、多くの物があります。残念ながら、私はその点詳しくありません。何語であれ、そこに描かれているのは皆同じセリフかも知れません。たとえ言葉が別々でも、似たような表現になるのは理解できます。要するに主にラテン語で書かれたくだりを、好きな言葉で抜粋してしまうのです。有名なモーツアルトが選んだ曲、ヴェルディが選んだ曲、ドイツ語で書かれた曲等々があるので、この年末にそれらをまとめてみましょう。もちろんコレ以外にも多く有ると思いますが、ここでは私が知っているもので、実際に聴いたCDに限定します。

 

宗教曲

レクイエム(ラテン語、旋律はモーツアルト)
ブルーノ・ワルター指揮ウイーン・フィル
S  エリザベート・シューマン
A  ケルステン・トルボルイ
T  アントン・デルモータ
Bs  アレクザンダー・キプニス
ブルーノ・ワルター指揮 ウイーン・フィル
1937年録音
KC-1014
これは全体としては申し分ありませんが、ただエリザベート・シューマンが一人ノサバッて聴こえました。何かが違うという感じ。オペラではなく、レクイエムだと言う基本的な認識の違いがあったのかも知れません。しかし誰が歌っていても、レクイエム。そのラクリモーサを聴く時、どうしてゆったりと聴くことが出来るでしょうか。心を揺さぶられます。

 

宗教曲

ドイツ・レクイエム(ドイツ語、旋律はブラームス)
S  エリザベート・シュワルツコップ
B  ハンス・ホッター
カラヤン指揮ウイーン・フィル
1947年録音 ムジーク・フェライン・ザール
Maestro Nobile, Herbert von Karajan; 231754
ブラームスの選んだドイツ語による「ドイツ・レクイエム」です。初めおとなしく、ゆっくり進むのですが、やがてその中で合唱が歌うのが、まるで狭い帯域の中で全てを処理しようとしている様でした。レクイエムには、モーツアルト音楽のように迫ってくるものがあり、それと比較されることを常に覚悟しなければなりません。残念ながらブラームスのそれは、繰り返して聴くことを想定すると、私にとっては5番目以内に入るのは難しそう。

 

宗教曲

レクイエム(ラテン語、旋律はヴェルディ)
ヴィクトル・デ・サーバタ指揮 ミラノ・スカラ座管、合唱団
S  レナータ・テバルディ
Ms  ネル・ランキン
T  ジャチント・プランデルリ
Bs  ニコラ・ロッシ・レメーニ
1951年録音、ライブ
478 1535
これは当時は珍しかったライブ録音です。この曲を録音する際は、このまま売り出すことは考えていなかったのではないか、と思います。CDを掛けてすぐに、サーという雑音が聴こえますが、雑音そのものは、直ぐに忘れてしまいました。私としてはもう少し終曲部を際立たせる事も可能だと思うのです。全体を指揮したのはデ・サーバタで、それこそ火を吹くような熱演です。デ・サーバタは特殊なヒトに分類されがちですが、それは病身だったことや、それに伴い,録音が極端に少ないことが利いています。まずランキンのメゾ・ソプラノが響き渡りますが、これは気持ちが良い響きです。後半に出番が多いテバルディは声が実に均質に響き、なるほどと思わせます。それでもテバルディは後半の一部に、声を絞り出すところがあり、あれが彼女が終生悩んだ高音だろうと察します。全体は上手まとめられています。

 

宗教曲

レクイエム(ラテン語、旋律はモーツアルト)
ブルーノ・ワルター指揮、ニューヨーク・フィル
S  イルムガルト・ゼーフリート
Ms  ジェニー・トウーレル
T  レオポルト・シモノー
Bs  ウイリアム・ウオーフォール
1957年録音
32DC 576
かなりボーッとした音質ですが、リズム、テンポは確かなものであり、また終わりに向かって壮大な響きをはじき出してきます。これは素晴らしいものです。これがもっと後の録音だったら、つまりステレオ時代の録音だったら、と惜しい気持ちになります。1957年の録音といいますから、この「レクイエム」が録音された頃は私に取って重要な時期でした。全体に、懐かしさを覚えます。実際、私がこの種の音楽を楽しんだ時代の録音は、結果的に私のレクイエム体験の基礎になり、後々まで影響しました。モーツアルトのこの響きは人生を支配するものと言えます。あの朦朧とした音質だけ気になります。

 

宗教曲

レクイエム(ラテン語、旋律はフォーレ)
アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ音楽院管
S  ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレス
Br  ディートリッヒ・フィッシャー・ディスカーウ
1962年録音
これは素晴らしい録音です。おまけにオルガン奏者がアンリエット・ピュイグ=ロジェです。昔、葉山近傍の民家で開かれた小さなホーム・コンサートで彼女の生演奏を聴きましたが、小柄な老婦人でした。そしてこのレクイエムは素晴らしい出来映えです。特に最初の部分、そしてオルガンの演奏がつくところ。あれは素晴らしく良い。この録音が出て以来、他の録音が目立たなくなっているのも頷けます。ただ、演奏全体の最後の、花が咲いたようなところは、もう少し工夫があっても良いような気がします。この曲の印象を左右する重要なところで、これにもう少し大きな音で宇宙を描く等の工夫があれば!それにしても、全体は恐るべき集中力でドライブされ、是非皆さんのCD棚に加えて欲しい曲だと思いました。

 

宗教曲

荘厳ミサ(ラテン語、旋律はベートーベン)
オットー・クレンペラー指揮、ニュー・フィルハーモニア管
S  エリザベート・ゼーターシュトレーム
Ms  マルガ・へフゲン
T  ワルデマール・クメント
Bs マルティ・タルヴェラ
1965年録音 キングズウエイ・ホール
TOCE-50193
ロンドンで録音したもの。極めて明快な録音です。それは各音が明快なだけでなく、その重ね合わせをもハッキリ聴き取れます。全部聴いてから気がついたのですが、この第2節にある「グローリア」の恐らく短縮版を、大昔(約60年前)に私の通った中学校の女子部の生徒達が歌い、関東地方内での優勝をもたらしました。部分といっても長いし、本当? 記憶違いだったらごめんなさい。

 

宗教曲

レクイエム(ラテン語、旋律はモーツアルト)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリン・フィル、
S  アンナ・トモワ・シントワ
Ms  アグネス・バルツア
T  ヴェルナー・クレン
Bs ホセ・ヴァン・ダム
1975年録音
UCCG-5025
個々のキャスティングは素晴らしい。これを聴いた途端に感じるのは、カラヤンのオーケストラの鳴らし方の特異性です。つまり狙い打ちしたように、音が強調されて出てきます。しかもキリエとかラクリモーサとかでは、終わりにフェルマータを掛けていて、朗々と響かせます。しかしカラヤンがモーツアルトの心に対しては祈っていないのではないか、という疑いが出るかも。確実に音の分離は良いのですが。

 

宗教曲

レクイエム(ラテン語、旋律はモーツアルト)
S  エマ・カークビー
Ms  キャロライン・ワトキンソン
T  アントニー・ロルフ・ジョンソン
Bs  デヴィッド・トーマス
クリストファー・ホグウッド指揮 エンシェント室内楽団管
1983年録音
DCI-1033
これを聴くと、癖に気がつきますね。つまりこれは古楽器の演奏。考えてみれば、現代の大きな音の出る楽器類は19世紀半ばから出来たものであって、それ以前のバッハ、ハイドン、モーツアルト等は古楽器の時代でした。ですから古楽器の音にも親しむ方が良いのではないか、と考えます。でも本当のことを言うと、古楽器の音が余りに長時間続くと、私はいささかうんざりしてしまいます。

 

 

千葉のF高












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