キット屋倶楽部
キット屋コラムの部屋
 

『オーディオと音楽の交差点』

音楽とオーディオの交差点 第8回

はじめに
 皆さんこんにちは。大変無沙汰しております。しかし蒸し暑いですね。
 楽器にも辛い季節なのですが、オーディオも特に木や紙を使っているスピーカーにも辛い季節、湿気を含むと反応が悪くなるようです。真空管アンプは発熱しますし、エアコンつければやはり音が気になりますし。
 さてHPでもご記憶がある方もいらっしゃるかと思いますが、先日(6月10日HPひとりごと参照)大橋様が拙宅にお越しいただくという僥倖に恵まれました。私のスターリングに追加導入したスーパーツィーター(タンノイST25・以降ST)の変化をご確認いただくということでした。

 大橋様とは楽器や弓のお話等もさせて頂いたのですが(HPに写真掲載)まずはSTの導入やセッティングの顛末を皆様にお伝えしようと思います。最後には滑り込みで発売されたばかりのPrime300Bver.2のことも、触れさせて頂いております。
 今回は珍しく四弦亭のオーディオをテーマにしています。大したキャリアでもありませんので偉そうに書くことはないのですが、四弦亭がどんなオーディオの接し方をしているか少し書かせて頂きます。お恥ずかしいのですが。
 言い訳ついでにもう一つ、今回まとまった時間がなく時期的にバラバラに書いておりまして起承転結のない書き溜めのエッセイともいえないものになってしまっています。読みにくいところがあってもご勘弁くださいませ。

私のシステムも導入1周年
 現在のシステムも導入して早1年を過ぎました。愛器501SEが我家にやってきたのが実は昨年の6月12日でした。なんというタイミングでしょう。生みの親の大橋様に導入1周年のその時にお越しいただいたのは何かの縁を感じずにはいられません。四弦亭コラムの新ネタを書かなければと思いつつも、バタバタしていてなかなか書くことができませんでしたが過日のST導入については、大橋様に拙宅の導入後の音をお聴きいただいたこともありますので、この機会に書かせていただきたいと思います。

ST導入動機
 システムを新規にした当初より2,3年後にはSTを導入しようと考えていたのですが、今年の3月にタンノイのSTシリーズのラインナップが整理されて安い機種が無くなるという情報を得て、エイヤと購入した次第です。
 また、大橋様のご感想にも書いて頂いてありますが、もう少し空気感というか上に立ち昇る(っているハズの)残響やヴァイオリンの倍音の再現を伸ばして天上の高さも出したいと思ってはいました。まあ、そんなことから計画よりも少し早かったのですが導入に踏み切りました。

目的は達成されたのか
 上記、導入動機にも書きましたようにある程度目的はありましたのが、本当にその再現がSTで実現するのかということに関しては「勘」でしかありませんでした。結果的には一定の条件付で大正解ということになったと思います。
 HPで大橋様に過分にも評価していただいた部分こそがまさにその目的だった訳で、どうしても独善的になりやすいオーディオの音の追い込みですので、大橋様に同様な部分でご評価いただいたということでプロの視点を踏まえた客観値としても皆様にご報告できると思っております。一定の条件と書かせて頂いたのはセッティングを自分の部屋の環境を含めかなり様々な面で追い込む必要はあると感じたからです。

セッティング
 セッティングは何が正しいとは一概に言えないと感じます。それは部屋の環境によって千変万化してゆくからです。同じアコースティック環境の方は二人としていない訳ですのでそれぞれの音のイメージや過去のセッティングの経験がものを言うものだと考えます。

何が良い音なのか?
 様々な音楽ジャンルによってもそれぞれの再現イメージがあると思います。
 クラシックと一概に言ってもオーケストラ、室内楽、弦楽・管楽、声楽、オペラ等ありますし、その中でも時代による変遷や楽器の編成によっても様々なイメージがそれぞれにあると思います。当然、使い手の音楽のイメージによってその個性はそれぞれですし、何が正しいとか良いとかという価値判断基準はそれぞれの頭の自分が望む良い音のイメージに従うしかないのは言うまでもありません。

セッティングの為の準備
 やはり基本はSTを追加する手前の現行システムのセッティングがきっちりしていなければ、STを追加してもその根本的問題点は解決しません。
 まずは現在のシステムのセッティングをきっちり行ったうえでSTを追加されることをお勧めいたします。言い換えれば、何をSTを追加することで求めたいのかをある程度イメージしておいたほうが良いと思います。ある面、STの追加による音の変化はかなりのものがありますので自分の再生イメージの軸を動かないようにしておくことが大切かと思います。

 それを前提とした上でお話を進めたいと思います。

セッティング
 スターリングHEは上は25000Hzまで、能率は91dbとなっています。
 ST25はカットオフの設定は3種類14k、16k、18k
 能率は86、89,92dbという3種類の切り替えが出来ます。

 現在、私のスターリングのツィーターのアッテネーターは標準値(センター位置±0)です。

 結果的に私のSTの設定値は89db&18kとなりました。
 これは部屋の環境やメインSPによって、また好みによって何が良いのかはご自身でテストするしかないと思います。
 大橋様に日記に書いていただいたように、私の場合ほとんどSTの存在は実音として感じることはありません。しかし、空間の情報や音の密度感、定位、低音の明瞭化等、おどろくほどの再現に変化が出てきます。全てはご自身の耳で判断されるしかありません。
 また設置位置や角度(縦、横)もご自身で少しずつ試してゆき音を追い込んでゆくことでかなりの変化が別に期待できますので色々試してみてください。良く言われる設置位置の移動に伴う位相の部分ですが、これも基準としてはスターリングのユニットのツィーターの振動板と同じ位置が基本になるかと思いますが、前後の移動はご自身でテストされて気に入った場所を探すしかないようです(測定器でもあればまた別とは思いますが)。結果的には自分の耳で解らないのであれば気にしても仕方ないと思いますので、まずはご自身で様々な音源を用いて試してみてください。片チャンネルづつ人の声(ソロの歌)でやソロ楽器等を用いると解りやすいかもしれません。
 特に人の声の認識は人間は敏感に反応する(日ごろより慣れている為)ので良いかもしれません。その後室内楽等の編成の小さいもので音のつながりや響きの変化、残響等をチェックしてゆくと色々と耳が慣れてきてその変化もわかりやすくなってくると思います。最初から大編成のオケ曲だとなかなか判断が難しいと思います。
 四弦亭は自分のセッティングしか行ったことがありませんのでセッティングのノウハウの開陳というレベルのものは持っていませんが、とにかく自分で色々試してみることをお勧めします。大変時間も忍耐もかかることかもしれませんがまあこれもオーディオの楽しみの一つなのだろうと思います。
 位相による変化は耳が慣れてくるとなんとなく判断できるようになるようです。とはいえ部屋の環境でも間接的な反射音もありますから絶対的な位置はないと思いますのでいろいろ試されると良いかもしれません。

ST追加の変化について
 これは大橋様が拙宅を訪問されたときのHPの店主日記(04/2/27と6/10)をお読みいただくことが一番STアリとナシの客観的なご意見ではないかと思います。
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 皆さんおなじみ四弦亭さんのお宅にお邪魔させて頂きました。今回で2度目の訪問である訳ですが一番の興味は四弦亭さんが過日導入なさったスーパーツイータによってStirlingの響きがどのように変ったか、自分の耳で確かめることです。ところで「ツイータを足す」・・・皆さんはこれをどのようにお感じになりますでしょうか。普通に言えば「帯域を伸ばす」という模範解答が先ず出てくるのでしょうが、個人的に私はそのような使い方は結果的に必ずしも良い結果を齎さない、と思っています。今まで数え切れないほどのSPシステムを聴き、お客さま個々のカスタマイズの実例を拝見して参りましたが、幾つかの成功例に共通しているのは「音のテクスチャー(手触り感)を変える」事を目的としている事です。決して広帯域化は目的ではないのです(測定すれば結果的にそうなっているのは事実でしょうが)。事実、今日聴かせて頂いた四弦亭さんのリスニングルームにおいて視覚的要素を除けばスーパーツイータの存在に気付く方はまずいらっしゃらないでしょう。事実、音としては殆ど感知出来ません。クロスオーバー18KHzというセッティングからも分かるように四弦亭さんはハナから「高域を足そう」とは思っていらっしゃらないのです。寧ろ聴かせて頂いた感じでは今まで以上に低域の明瞭度が上がり、どこのStirlingでも聴いたことのないローエンドまで伸びのある低域を一層際立たせて居るような気がします。また決定的な違いは、音の天井がグンと上がって三次元的情報量が格段に増したことです。特に音が消え入る瞬間の一瞬の空気感のリアリズムが凄い!指揮者で私が大変に好きな広上 淳一さんという方がいらっしゃるのですが(皆さんもご存知ですね)、広上さんの音の最後の消え入る瞬間を右手の先で掬い取るような、最後の一瞬に込められた無限の情報のようなものを今日、四弦亭さんのStirlingから感じたような気がします。大変にシャープネスの高い、鮮度感あふれる音調であるのですが大音量であっても聴き疲れのしない音に纏め上げられたテクニックは素晴らしいと思いましたし、私どもの501SEがこのような表現をも可能にしていることを大変に嬉しく思った次第です。
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 STを追加しますと音場空間が増すのですが、注意深くセッティングしませんと楽器のテクスチャーや温度感が相対的に落ちてくる場合があるということを経験しました。
 最近のSPの傾向と同じ部分、つまり音場、空間情報そして定位はピタリと決まるが線が細いというか温度感やテクスチャーが楽器らしく響かない、というようなものになってしまうと何故スターリングを選んだのか解らなくなってしまうわけです。
 これにはかなり注意を払いました。つまりこれはこれで面白いですし3Dを見るようで楽しい部分もありますが、音楽を聴くということに関して言うと感動が薄らぐというか温度感が低目になってしまうことでの実在感が落ちるような気がするということです。それは何で真空管アンプを使用しているのかという部分と同じようなことかもしれません。

 私が目的としたのは、ST無しで追い込んでセッティングしてあるスターリングの音や響きの上にST追加の効果(空間や残響成分、そして本体のアッテネーターを上げることなく高域成分をもっと素直に伸ばして音に伸びを与えてゆきたい)をフリカケや隠し味のような感じで追加したいということ。
 高次倍音を素直にバランス良く上まで再生してそれと共に残響を綺麗に再現したい。
 これは専門雑誌等でも良く言われてきたことですが、それに伴い定位が明確になることと低音の再現が非常に奥深く自然に鳴る。ということも効果としては考えていましたが、ここまで効果が出ることは予測していなかった嬉しい副産物だったと思います。
 結果的に奥行きも深く、空間にある楽器から振動が音として放射されているような感覚も出てきました。ホログラム的というか3D的という感じの再現も実現しています。
 セッティングで気をつけないといけないと思ったのはオケの木管楽器等が細くなりやすいということです。質感が損なわれないようなセッティングを行ってみてください。

Model2の足について
 過去の本コラムでmodel2のゴム足のままで使わないほうが良いと指摘させていただきましたが、大橋様が誰にでも出来るその問題解決をしてくださったことは、私も本当に嬉しく思っております。
 現在、この度目出度くアフターパーツとして提供されるようになった足は取り付けてありますが、それ以前に私が自分で様々テストした別な足のセッティングもなかなか良かったので、その良い面をイメージして今回のスパイクを中心にして調整してみようと現在調整中です。
 基本的に大橋様も他の使用された方々も、高音の伸びを指摘されておりましたが、私の場合は各種振動対策も行っていたため、あまりその点では向上というものはありませんでした。
 但し、以前の足に比べてフォーカスがより高まったことはあります。そして木管の響きがとても自分としては好きな方向に向かったということです。
 但し、弦が若干キツク(細め、シャープ)になっているようでそのあたりをもう少し調整をして、響きのコクというか粘りというか私の好きな音の要素を加えて行こうと思っています。Model2は非常に様々な振動対策や素材に音として反応するので皆様も色々試してみられるとイメージに近い音に持ってゆくことが比較的しやすいと思います。楽しんでみてください。

あなたは何が聴きたいですか?
 STの追加は様々なことを私に体験させてくれました。またあらためてオーディオの目的と手段についても考えさせてくれたように思います。

 四弦亭酔響のコラムにも過去書かせていただきましたが、オーディオ小僧の時代から約20年振りにオーディオの熱が再燃してシステムを構築、セッティングを繰り返して1年を過ぎました。

 変な言い方なのですが、システムのセッティングもひと段落して、やっと音楽を楽しむこととオーディオを楽しむ(セッティングや機器の購入や使いこなし)ことがやっと一致してきたような気がします。四弦亭の場合は頭に音や響きのイメージがかなり明確にありますので、なんとかそのような音や再現をと、それこそ各種ケーブル、制振アクセサリーの類を含めてセッティングも行ってきました。一番初めに取り組んだのは部屋のアコースティック環境による悪い影響をどのように対策するかだったような気がします。後になって思えば、導入早期にこの調整(戦い)を行ったことが良かったと思っています。

 簡単な部分では左右差による定位の乱れ(音域や楽器によって左右が逆になったり)と戦いました。特にやっかいだったのはチェロとコントラバスという音域のコントロールでした。四弦亭は実際にあまり他人様(マニア)のシステムを聴く機会もありませんので比較対象はなく、自分の耳と頭のイメージでそのセッティングを進めてきました。
 実際の位置関係や聴こえ方を知っているので楽器の位置関係やバランスが部屋のアコースティック環境で変化してしまっては大変気持ちが悪いので、そのあたりは難儀しました。但し、それが「音楽」という意味では、どんな状態であれその音楽が違うということではありませんので、ある種オーディオ的な調整という分野であったと思います。

 低音は音楽表現や響きを再現するのには必須ですのできっちり再現できないと音楽が楽しく聴くことは出来ません。
 音圧で押してくるような低音も×、ブーミーな感じで上をマスクしてしまうのも×。
 抜けのよい軽い響きで下まできっちりと音程やステージの奥行きを感じさせてほしいしその倍音にきっちり上の楽器が乗ってハーモニーを構成しその響きがホールに広がり、その上に残響として昇ってゆき自然に減衰すること。が四弦亭には重要です。
 そしてあるべき位置から鳴っているのであればそれは最高という感じでしょうか。

 大橋様も良く書かれていますが、オーディオ的には部屋の環境も含め(これが難しい)て、
・帯域バランスが整っていること
・下方リニアであること(当然上方もリニアであること)
・ 発音と減衰のスピードが適切であること(各帯域で)
というところが重要なセッティングの要素ではないかと思います。

 しかしながらホールでも同じアコースティック環境がないように家庭でのアコースティック環境は本当にそれぞれですし、整っているなんてことは殆どありえないでしょうから、可能な限り(しかし生活空間の場合は美観も大切)整えその後不具合や過不足があるところを細かいセッティングで追い込んでゆくことが大切なような気がします。

 実際には部屋の音響のコントロールとセッティングは不可分ではあります。それらの合わせ技で調整することになりますが、部屋のアコースティック環境による音への影響は本当に計り知れないものがありまして、所謂マスキングや位相という問題を無視して機器だけのセッティングを行うのは難しいし危険なことだと思います。

 部屋のいたずらなのか、機器の特性なのかと言ったら音質や再現方法に関しては機器やシステムの特徴が出ると思いますが、多くの問題点は部屋のいたずらによるものが大きいような気がしています。現実には部屋の本質的な部分に対策することは費用も膨大にかかりますので、結局は部屋の特性をセッティングでどうやって折り合いをつけてゆくのかということになるのかもしれません。それが結局セッティングだったり調整の主だった音に関する効果になるのではないかと思います。

 部屋からの影響を最小限にするのには、ある面(部屋の大きさや形状やSPにもよりますが)ニアフィールドリスニング的な聴き方のほうが良いようです。但し、人間は視覚からの情報が聴覚にも影響を出しますので、さすがにあまり極端なニアフィールドというものは良いとは思いませんが。因みに私はSPとの距離は直線で2.5m位となってます。SPの間の距離は2.2m位でしょうか。そして少しだけ内振り。
 SPの内振りに関しては私の部屋の環境ではあまりやりますと部屋の特性や反射によって良い結果が出ませんでしたので少しだけになってます。
 理論上では直接SPが耳に向かって内振りにしていたほうが多分部屋の影響は少なく出来るということでしょうが、実際には私の場合は実験はしましたが好みに合わず却下されました。これは結局は部屋のアコースティック環境によるものだと思います。

 低音域のコントロールが自分のイメージに合ってくればしめたもので、高域や中域に関してはそれこそ色々なアクセサリー関係を試せばご自身の好みのバランスに持ってゆくことはある程度可能だと思います。
 皆様はご承知とは思いますが、とにかく現実の音や響きを知らずまたイメージしないで雑誌や評論の言葉からだけで音をイメージを勝手に膨らませ過ぎると、良い結果を出すのは難しいと思いますので注意されたほうが良いと思います。迷ったら、是非、演奏会に行ってみてください。

好き嫌いと良し悪し
 最近四弦亭はシステムや機器固有の性能的な差はそんなに実際の再生音には問題は起こらないと感じています。つまり、先にも書きましたように好みであって良し悪しではない場合が多いと思います。
 まあ何が良し悪しで好みなのかにもよりますが。

 音色やバランス、表現の仕方は各機器やメーカーによって様々な価値観で作られ各機器の音は決められていると思いますので、その部分が好みに合えば後は使いこなしによって自分のイメージの音に近づけてゆくことが出来ると思います。

 当然、SP等は大きさや形状また仕組み等によって表現方法は多様ですしSP自体と部屋によっても使いこなしが難しい場合もあります。例えば私が使用しているタンノイはただ床にポンと置いただけではなかなか上手く鳴らないかもしれませんが、上手く使いこなせば本当に素晴らしい再現をしてくれると思います。
 巷でタンノイの悪評を聞くこともありますが、それはきっちりセッティングされていない(しようもない)オーディオ店で聴いた感想であったりするようです。
 音楽の本質を理解し節度をもって聴かせるという意味においては本当に音楽の分かった人達が開発し作っているんだなと思います。但し、その表現や再現、また音質がお好みではない方もいらしゃるとは思いますし、まさに好みの問題であって良し悪しではないということは言えるのではないでしょうか。

 タンノイはタンノイのホールの音と同じ音がすると言われる方がいますが、実際にその場所に行って聴かれた方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?ちゃんとセッティングさえすればムジークフェラインやベルリンフィルハーモニー大ホールの違いは言うに及ばず演奏されたホールや環境の違いはきっちり再現してくれます。大体、お客様が満席のホールと客席に人が入っていないホールは残響も違いますし音は同じではありません。冬と夏だって着ているものによっても差が出ます。客席の違いによる音やバランスの変化、そして視覚からくる聴こえ方の違いはもっと大きいと思います。

 録音で面白いなと思うのは、特にヴィーンのムジークフェラインザールの響きは残響が長く、ブレンドされた音になります(オーディオ的にはモコモコしていて分解しないとも言えます)が、その録音において同じヴィーンフィルの演奏でもその録音の直接音と間接音のバランスや捕らえ方は本当にエンジニアによって様々で、かなり違いが出ます。でもムジークフェラインの音や響きであることには違いはありません。お客様の入っていないムジークフェラインでの録音は各エンジニアの感性によって相当変わりますし大変だろうなと思います。とはいえライブ録音だと様々な制約が多いですから、それもまたご苦労が多いのだろうと思います。

 オーディオだって部屋のアコースティック環境からは逃れられないのです。
 だからこそセッティングや調整で部屋と折り合いをつけてゆくしかないのだと思います。


 以前にも書きましたが「部屋の周波数特性を上手にサーフィンする」というようなことが実はセッティングに大きく影響すると思います。

 低音が決まらないうちに色々と上っ面だけの変更を丹念に加えても、ちょっとセッティングを変更した瞬間に仇となって出てきてしまう場合があります。STの追加だって同じことだと感じています。
 折角、お金と時間をかけてアクセサリー関連で調整しても、低域が良い音で出ていないのではハーモニーも音楽も上手に再現してくれません。下がブーミーな状態で高域を鳴らしてゆきますと所謂ドンシャリ傾向の音になります。結果、中域が薄く響きの厚みや美しさが自然に聴こえない状態になりやすい。これでは音楽を自然に楽しむことは出来ません。なぜなら演奏者はそういうバランスを必死に取ってお客様にお届けしているのに、再生の段階でそういうバランスを保てないということは困ったことになるのです。

 音が硬い柔らかいとオーディオでは言われますが、実際のハーモニーは各声部の音程と音色がその調性に合っている場合は柔らかいとか硬いではなく調性によっての響きの違いはあります、いずれにせよ敢て不協和音とか刺激的な響きを表現で必要としている場合以外は、気持ちのよい広がりのある響が聴こえてきます。深くて軽い響と言っても良いかもしれません。

501SEと91B
 四弦亭は以前SV91Bをお借りして自分の環境で聴かせていただいたことがあります。同じ300Bシングルと言っても501SEとはかなり再現が異なります。低音の制動力は本当に凄いものがありました。
 但し、501SEを前提としたセッティングのままで交換しテストしたので91Bの良さを全て引き出した訳ではありませんし、91Bには91Bに合わせたセッティングが必要と思いました(当然ですが)。
 一番の違いと感じたのは91BはもっとSPから離れて聴くほうが良いと言うことです。最低3m以上、4m〜5m位が良いような感じでした。
 501SEはその特性を味わうには2m〜3m位、つまりニアフィールド系のほうがその良さを実感できるということです。
 91Bを近くで聴きますと音が逞しすぎるというか骨太過ぎるような気がしました。これはあくまでも私の部屋とシステムでの話しです。バロックや古楽系の楽器が実際の音よりもはるかに太くて逞しい。これはセッティングや調整を91B用に追い込めば多くは解決するとは思いました。
 もしかすると501SEよりある面使いやすいアンプと思いました。それは音楽の骨格が崩れないできっちり再現されているからです。但しその低音のバランスがかなり骨太で、一番苦労して調整してあるアコースティック環境では見事に崩れてしまいました。

 501SEのほうが響きに対しては繊細かもしれません。金管楽器や打楽器関係は91Bのほうが実際のスケール間がきっちり出てきます。但し弦は四弦亭は501SEのほうが好みです。
 誤解していただきたくないのは、表現の違いは確実にありますが、セッティングによってそれは解決することが出来る。表現の好みやどんな音楽が好きなのかによって変化しますので優劣はつけられません。大編成で金管打が活躍するような曲には91Bが面白いと思いました。古典音楽や古楽系になると弦の表現の繊細さや音色変化には501SEが四弦亭は好きです。両方を適宜つなぎ替えるのが面白いなと。但しセッティングは両方に合うようにしないといけないとは思います。セッティングや調整で許容範囲を広げておく必要がある。当然のことながら、使用しているSPや部屋の環境によって選択するべきものでもあると思いました。どちらも音楽の本質を伝えてくれる素晴らしいアンプと思います。これはお好み次第だと思いました。

 いずれにせよ300Bシングルが私の好みであるようです。
 誤解を恐れずに言えば、91Bはシングルとは思えないPPアンプのような部分も兼ね備えていると思いますのでPPアンプでないとご自身のSPでは鳴らせないと思っている方に一度91Bを聴いていただけるとかなりシングルアンプと言っても様々であると感じられるのではないかと思います。

♪パウゼ
楽器の変遷と音楽の表現の変化
 皆様は古楽とか古楽器という言葉を最近良くお聴きになることがあるのではないでしょうか。
 英語ではPeriod Instruments, Original Instrumentsと言われます。このほうが実際の楽器の位置付けが分かりやすいと思います。日本語ではピリオド楽器、オリジナル楽器という言い方をされる場合が最近は多くなってきています。

 古楽器というと=バロック楽器と考えがちですが、広義では一般にそうではありますが、詳しくはバロック楽器もクラシック楽器もセッティングや構造の変遷によってありまして、その後はモダン楽器(しかし楽器商的分類とは若干異なる意味合いがあります、このあたりは過去のエッセイに掲載しましたので興味のある方はお読み頂ければと思います)と変遷してきます。

 現在はその作曲家、作曲時点の時代の楽器や弓の変遷に合わせて奏者が使い分ける場合も多くなってきました。楽器に関しては奏者それぞれバロックだったりクラシックセッティングだったりするようですが、弓は比較的手に入りやすくなって(新作もあります)います。
 時代に合わせて選択することが理想ですが、実際はモダンオケでクラシック楽器や弓を一人使っても意味はあまりありませんので、実際にその使い分けを行うのは小編成のオケや古楽系のオケが多いようです。
 最近ではヨーロッパのオケのオーディション内容で古楽器とモダン楽器を両方演奏できること、なんていうのも出てきています。これは以前の環境からすると隔世の感があります。

 もう一つの流れとしては、モダン楽器の演奏者が裸ガット弦と時代に合ったバロックやクラシックボウを使用して演奏することもあります。ベルリンフィル・バロック・ゾリスデンという団体はそれで演奏しています。
 元ベルリンフィルのコンマスをやっていた名手ライナー・クスマウル氏が中心となって殆どベルリンフィルの弦の現役の首席やトップクラスが参加している最高レベルのアンサンブルや響きをそのセッティングで聴かせてくれます。

 これも一つの古楽演奏研究のモダンへの転用の成果ではないかと思います。弓や弦を変化させるだけでも弾き方や頭で響きのイメージがきっちり合えばモダンセッティングの楽器であっても適切な変化を使い分けることも可能です。

 それで一番大切なのは響きのイメージなのですが、これはやはり実際にバロック楽器やクラシック楽器を演奏したことがあるほうが適切なイメージを得やすいと思います。
 楽器や奏法が問題というよりも、その演奏者の頭のイメージのほうが重要なのです。
 これはオーディオでも同じことではないかと思います。
♪♪♪

祝・完成Prime300Bver.2
 WE300Bを取り巻く環境はなかなかはっきりしていませんし価格もとても高いものです。
 そういう環境の中でキット屋様は多くの300Bを使用した商品を開発してこれらています。私の愛器501SEも300Bを使っています。確かに私もWE300Bを愛用している一人ではあるのですが、現在の状況をいちいち気にしていては音楽も楽しめません。
 そんなこの時期に大橋様が渾身の力で開発したPrime300Bver.2の完成と発売はとても朗報だと思います。
 四弦亭酔響はサンプル段階でテストさせていただく機会を持たせて頂きましたが、その球を使って聴こえてくる「音楽は大変素晴らしい」と確信を持って言えます。

 四弦亭は球のことを個別に語る資格やキャリアまったくは持っておりませんが、当初よりWE300Bで501SEで聴いてきた私ですが、Prime300Bver.2から再現されてくる音楽は文句なく素晴らしい、音楽がとても良く分かっている再現をしてくれる球と言えます。
 当初はWE300Bの代替品として使えるのかどうか、という視点でテストしようと思ったのですが、そんな期待を大きく超えるものでした。WEとの違いはなんですか?と聞かれたら「それぞれ個性がありますが、どちらも素晴らしいですし、場合によってはPrime300Bver.2を好まれる方もいると思いますし、やっぱりWE300Bが良いと好まれる方もいらっしゃるのも解る」とお答えすると思います。
 実際に初めてWE300B以外の球で501SEを聴いたのですが、逆にWE300Bの個性や色づけを感じた位です。WE300Bでの再現はPrime300Bver.2を聴くと分かるのですが、その高域の伸びというか、音を脚色する天使の羽衣のような上澄み感のある音だと言うことです。言い換えれば格調高い音ですし陰翳感もすばらしく感じる。

 Prime300Bver.2の第一印象は骨太な表現をするなあということ、シャキッとしている。但しもっとスムーズさと高域の繊細感と伸びが欲しいな、という感じでした。
 但し、低域の再現の腰の強さは特筆ものでエージングする前の段階から私のシステムの環境ではWE300Bよりもクリアな再現でした。エージングをしてゆきますとどんどんその不満が解消してゆくのです。
 WEよりもフォーカスがシャープで定位もより決まってきます。楽器の質感も高域のスムーズさが出るようになってどんどん良くなってゆく。

 WE300Bの独特の格調高い音調は、色づけではないのか、またそれが魅力を増して愛好するマニアがいるのではないか、と逆にその色づけを感じさせてくれるほどPrime300Bver.2は実際の音に近い感じを受けます。
 ある面、敢て言ってしまいますとWEより再現音に関しては正確な表現を持っていると言えるかもしれません。
 そして音楽の骨格である中低域が素晴らしいですので本当に音楽を掛け値なしに自然に楽しませてくれる再現をしてくれます。
 但し、これも好みでありますし、私のイメージする音や知っている音と比較した場合であって、皆様がそれぞれご自身の再生の理想のイメージを持たれていると思いますので、御自身の耳で確かめられることが宜しいかと思います。
 両球共に音楽をそれぞれ楽しく再現してくれますが、個性の違いはありますので音楽の種類によって弓のように、または弦のように、差し替えて楽しむことが出来る素晴らしい球だと四弦亭は思います。加えますとWE300Bの暖かい音調とPrime300Bver.2は違和感ない音調も持ってます。


 このような素晴らしい球を開発し、はっきり言いましてこの音としては大バーゲン価格で提供して頂いた大橋様に感謝いたします。

 差し替えられてちょっと不満に思うところがあったら50時間程度エージングされるまで待ってみてください。それ自体の個性ではない不満部分は多分解消されていると思います。

 是非、迷ったら「演奏会」に行ってみてください。
オーディオと音楽の交差点 第8回
四弦亭酔響
2004/7/29
  (無断転用転載禁止)
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