モーツアルト     ベートーヴェン
 
 

2009年12月5日(土) ピエール・アンタイ チェンバロリサイタルほか

 
 今日は最初にお礼から。皆様ご存じの「チェリスト宮城様」が11月30日のブログで、この拙文に触れていただきました。誠にありがたいことです。これからも多くの皆様に読んでいただけるよう、無い頭を精一杯絞りたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて今週水曜日(12月2日)、名古屋・栄にある電気文化会館ザ・コンサートホールに、ピエール・アンタイのチェンバロを聴きに行きました。
 曲目はオールモースト・バッハ。まず8曲の小品で多彩なオードブルを楽しんだ後は、イギリス組曲4番、半音階的幻想曲とフーガ、そしてパルティータ2番。途中飛び入りでヘンデルの小品が1曲。アンタイ氏の説明によりますと、なんでもこの日はヘンデルの誕生日だったとか。
 一番気に入ったのは、半音階〜〜。この曲って、パイプオルガン曲の「トッカータとフーガ ニ短調」と雰囲気がよく似てますね。調性もニ短調でいっしょ。比較的若い時期に作曲されたことも共通。バッハの短調といえばロ短調、というイメージが強い私ですが、若かりし頃のバッハはニ短調に惹かれていたのでしょうか?
 チェンバロのナマを聴くのは実は初めてだったのですが、ピアノが大きな油絵だとすれば、チェンバロは精巧に蒔絵。音楽の振幅は小さいけれど、他の楽器にない独特の魅力を感じました。前から7列目の真ん中という席も良かったのでしょう。オーディオ的には、どのくらいのボリュームで再生したらいいかも掴めた気がして、これからのCD鑑賞の助けになりました。
 アンタイの演奏は、頭の回転の早い人のおしゃべりを聴く趣き。その持ち味からして、ゆっくりしたところより、速いパッセージで本領を発揮していました。今度はスカルラッティが聴きたいなあ。

 これで今年のコンサート通いは、12月27日の、友人が歌う「メサイア」を残すのみ。こちらは思いっきり弁護士の耳で聴きにいきます。また来年もすでに3枚のチケットを購入済みです。
●1月31日 ヴィヴィアン・ハグナー Vnリサイタル (電文ザ・コンサートホール)

日独ハーフの女性若手ヴァイオリニストと言えば、アラベラ・シュタインバッハーと、このハーグナーの二人ですね。くしくもこの二人、N響定期でコンチェルトの競演があります。楽しみになさっておられる方も多いかと。CDの出方だけ見ていると前者が一歩リードしている感がありますが、真の実力を確かめたく、後者のリサイタルに足を運びます。プログラムはシューマンの1番をメインにした多彩なもの。

●2月20日 セミヨン・ビシュコフ指揮NHK交響楽団演奏会 (愛知県芸術劇場コンサートホール)

ロシア出身の実力派指揮者との定期をそのまま定期に持ってきてくれます。あえてパイプオルガン側のP席を確保。この数年の間に同じP席で聴いた、ドレスデン・シュターツカペレ、ハンブルク北ドイツ放送響、ライプチヒ・ゲヴァントハウス管といったドイツの一流オケと、日本が誇るN響を大胆不敵(笑)にも比較しちゃおうという試み。

●4月22日 アンジェラ・ヒューイット ピアノリサイタル(電文ザ・コンサートホール)

21世紀の名器ファツィオーリとはいかなる響きのするピアノなのか? これをメインテーマに聴きに行きます。プログラムのうちハイドンの52番とベートーヴェンの6番のソナタはいかにもこのピアノに合いそうな曲。一方のメインのブラームス3番は、ファツィオーリとはイメージが重なりません。これをどう弾いてくれるのか。私などを遙かに凌ぐ筋金入りのクラシックファンの友人といっしょに聴きます。

 

2009年12月12日(土) ヘンデル・イヤーに寄せて

 
 今年(2009年)は、ヘンデル没後250年のアニバーサリー・イヤーですね。遅ればせながら、この1か月ほどヘンデルのオペラやオラトリオから、有名なアリアや合唱曲をまとめて60曲ほど聴きましたので、今日はそのご報告も含めてヘンデルの話題です。

 ヘンデルはドイツ生まれですが、若い頃イタリアで修行し、その後は終世イギリスで暮らし、イギリス国籍もとりましたので、イギリス人は自国の作曲家と思って敬愛しているようです。BBC Music Magazine誌も、Gramophone誌も大々的に特集を組んでいました。前者は著名な演奏家に「ヘンデルの最高傑作」を尋ねています。結果は次のとおり。
・ジョン・エリオット・ガーディナー(指揮者) : オラトリオ「エジプトのイスラエル人」
・アンドリュー・マンゼ(Vn奏者&指揮者) : 王宮の花火のための音楽
・ジョン・バット(ハープシコード奏者&指揮者): オペラ「ジュリアス・シーザー」
・ポール・マックリーシュ(指揮者) : オラトリオ「テオドーラ」
・エマニュエル・アイム(指揮者) :  オラトリオ「テオドーラ」
・ハリー・ビケット((ハープシコード奏者&指揮者):  オラトリオ「テオドーラ」
・ローレンス・カミングス(ハープシコード奏者&指揮者): オペラ「ジュリアス・シーザー」
・ケイト・ロイヤル(ソプラノ) :  オラトリオ「テオドーラ」
有名なオラトリオ「メサイア」は誰もあげていませんね。私もメサイアは何度か聴き、いくつかの合唱曲は歌ってもみましたが、有名なハレルヤコーラスも含めて、どれもそれほどの名曲とは思えないというのが実感で、メサイアを歌おうというお誘いも、お断りしてしまいました。

 またGramophone誌は、演奏家たちに「お気に入りのアリア」を尋ねています。こんな結果です。
・ジェイムズ・ボウマン(カウンターテナー): オペラ「アリアダンテ」よりDoppo note
・ハリー・クリストファーズ(指揮者): オラトリオ「サムソン」よりTotal eclipse
・リナルド・アレッサンドリーニ(指揮者): オペラ「ポーロ」よりCaro dolce, amico amplesso
・サンドリーヌ・ピオー(ソプラノ): オラトリオ「アレキサンダー・バールス」より Convey me to some peaceful shore
・エンマ・カークビー: オラトリオ「快活の人、沈思の人、中庸の人」より Or let the merry bells ring round

 これらの曲も含めて、60曲聴いた限りでは、そのほとんどはA〜B級レベルの曲で、「これは素晴らしい! S級だ。一生の宝物」と感嘆するような曲は少なかったです。そんな中では以下の6曲が、私のお気に入りS級アリアです。
@オラトリオ「時と悟りの勝利」より Lascia la spina(棘はそっとしておき)
 これは私のヘンデル・アリア開眼のきっかけになった曲。
Aオペラ「タメルラーノ」より Ciel e terra di sdegno(天地は怒りで身を固めよ)
 歌ってみたいアリアの筆頭
Bオラトリオ「セメレ」よりWhere're you walk (そなたの赴くところ)
 数あるゆったりしたテンポのアリアの中ではこれが随一
Cオラトリオ「快活の人、沈思の人、中庸の人」より Or let the merry bells ring round
 有名なミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」のドレミの歌の"原型"
Dオベラ「アルチーノ」よりVerdi prati (緑の野)
 有名なオンブラ・マイ・フより、さらに甘美な歌
Eオラトリオ「テオドーラ」より Angels, ever bright and fair (英知と公正の天使たちよ)
 晩年のヘンデルの崇高な信仰告白。

 同時代のバッハの音楽の持つ構築性、厳密性、密度感に対して、ヘンデルの音楽の魅力を一言でいいますと、「包容力あふれる、おおらかな人間讃歌」。そう感じたこの1か月でした。
 シューベルトの歌曲についで、ヘンデルのアリアを周遊したワタクシ、次はいよいよザイルとピッケルを用意して、一大山脈の縦走に挑むつもりなのですが・・・それはまたの機会に。

 

2009年12月19日(土) フォルティッシモを聴くために

 
 今日午前中は恒例のオフ会。タケさん、デカチョーさん、I瀬さん、I原さん、大橋店主とともに、6041のSさん宅にお邪魔してまいりました。今回のメインテーマは、キット屋さん新発売のアナログプレーヤーと、様々なカートリッジの聴き比べ。結果はすでに大橋店主の日記に詳しいですし、デジタル派の私は、実はさほど関心がないので(笑)、感想は省略。すみません。

 そのかわり、すでに4〜5回お邪魔している6041のS様がいかなる音で、音楽を楽しんでおられるかを書かせていただこうと思います。もっともS様の場合、JazzとClassicの両刀使いですが、私が多少なりともわかるのは後者のほうだけです。
 S様の音の特徴を一言でいえば、「音楽のフォルティッシモを聴くための音」です。アンプもスピーカーもたくさんお持ちですが、いずれの組み合わせもフォルティッシモを聴くための音といってよいかと感じています。記憶をたどりますと、S様から聴かせていただいた音楽は、ボレロ、フィンランディア、シューベルトの9番の最終楽章、英雄ポロネーズなど、いずれもクレッシェンドしてフォルテに達し、そのカタルシスを味わう音楽と言ってよいかと思います。

 私自身もかつてはそうでした。室内楽や器楽よりはオーケストラ曲をよく聴き、交響曲では緩徐楽章よりも、両端楽章を聴いておりました。それが第九を歌うようになり、大橋店主と知り合いになった頃から、少しずつピアノやピアニッシモの表現に関心が向き、adagioなどのゆっくりとした音楽にも耳を傾けるようになり、室内楽、器楽、独唱のディスクをかけることが多くなりました。昨年新しいスピーカーを買う際も、そうしたディスクをメインに聴くことを想定して、標準的なブックシェルフを選びました。
 これがキット屋さんの真空管アンプの影響なのか、はたまた第九の指導をいただいている先生方の影響なのか、あるいは単に馬齢を重ねたせいなのかはわかりません(笑)。S様はまだお気持ちが若く、音に対しても音楽に対しても探究心がおありで、それが音に表れているのだと思います。こんなことを考えながら、アナログの音を聴いておりました。

 「カートリッジ取り換えばや物語」の後は、夕方から地元の図書館で催された、アマチュアによる「フィガロの結婚」(抜粋)を、家内と娘と3人で見てきました。皆さんオペラが好きで好きでたまらない方々ばかりのようで、歌もさることながら演技が素晴らしかったです。おそらく市販されているすべてのフィガロのDVDを持っているであろう、友人のU氏(アルマヴィーヴァ伯爵役)の演技はなかでも出色で、オペラにあまりなじみのない観客からも、たくさんの笑いを取ってました。楽しかったですよ、Uさん !

 

2009年12月20日(日) 最近購入した新譜から

 
 持っていない曲の"穴埋め"も兼ねて、新譜を数枚買いました。そんな中から3枚のご紹介です。

●ドヴォルザーク 弦楽セレナード、ハース 弦楽四重奏曲第2番(弦楽合奏版)、シュルホフ 弦楽四重奏のための5つの小品(弦楽合奏版) アムステルダム・シンフォニエッタ (Channel Classics CCSSA24409)
素晴らしく録音の良い弦楽オケのディスクです。このレーベルのこのアンサンブルの録音は今までに数点出ていて、いずれも好録音でしたが、今回もいいです。録音派の方は是非ご一聴を。雑誌MJでディスク評書いている平林氏とは、好みがあわないのですが、このディスクが優秀録音という点では、ぴたり一致。指揮者なしのドヴォルザークは、よく練られた解釈で丁寧に弾いていて好感が持てます。カップリングのハース作品はヤナーチェクの後継、シュルホフ作品はナチスによって排斥された、いわゆる退廃音楽の範疇。試聴はこちらからどうぞ。
●ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ全集 イザベル・ファウスト(Vn) アレクサンドル・メルニコフ(P) (Harmonia Mundi HMC902025-7)
近年まれにみる見事なベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集。ドイツの中堅ファウストは速く軽めの運弓、少ないヴィブラートで、細かいアーティキュレーションを積み重ねて、非常な明快なベートーヴェン像を打ち立てています。そして伴奏ピアニストのレベルをはるかに超えるメルニコフとの息もぴったり。他盤を押しのけて、「第九のIのコレクション」入り。録音は上下が広い、いわゆるハイファイ録音ではありませんが、ふたつの楽器の質感をよく捉えていて、好感を持ちました。楽器の生の音をよくご存じの方向き。付録のメイキングDVDも面白いです。試聴はこちらからどうぞ。
●モーツァルト ヴァイオリン協奏曲1〜5番、協奏交響曲K.364  カルミニョーラ(Vn) ヴァスキエヴィッツ(Va) アバド指揮オーケストラ・モーツアルト (Archiv 4777371 )
現代を代表する名指揮者アバドが、古楽専門のアルヒーフ・レーベルに録音?? と思った私、聴いてみてなかなかの演奏に2度びっくり。「生き生きした演奏」とはどういうものか、それが知りたければこれをお聴きくださいな。高尚な話をしていたと思ったら、次の瞬間には女の尻を追いかけている・・・そんな映画「アマデウス」で描かれた作曲家像を彷彿とさせる演奏です。雑味たっぷりのバロック・ヴァイオリンを捉えた録音にも好感を持ちました。5曲の協奏曲に加え、協奏交響曲K.364も加えているのも高得点。試聴はこちらからどうぞ。


 それでは皆様、よい年をお迎えください。





 
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