モーツアルト     ベートーヴェン
 
 

2011年5月7日(土)  鮮度が高く、音離れの良い音に!

 
 4月24日(日)、日野市のF原さん、四日市のK藤さんをはじめ、第二試聴室に8名が集まっての「大橋さんオートグラフお別れの会」で、これまでとはガラリと趣きの違ったオートグラフの音を聴かせてもらいました。おおいに触発されました。その後2次会で、F原さんとK藤さんに我が家のHarbethを聴いていただきながら、「うちも今日の大橋さん宅のような明晰な音に近づけたいな」と思っていました。
 我が家の音は、当日の第二試聴室の音と比べると、よく言えば重厚で音に厚みと温かみがあり、とても滑らかな音。そのかわりどこかのビールのようにこくはあるけどキレがない。ナマの音より出音が重い。空気感がよどんでいて、スカッと晴れ渡る感じが出ない、音離れが悪いのです。そしてどこか不自然。人工物めいたつくりもの的印象が否めない、ということに気がつきました。

 ゴールデンウィーク休みの初日、改良に取り組みました。用意した処方箋は4つ。
@ プリ(SV722マランツ)の真空管をMullardからデフォルトに戻す
A プリのコンデンサをJensenから通常に戻す
B SPケーブルをWEから以前使っていたベルデンに戻す
C SV-192Sの可変出力部を用いて簡易プリとして使うことにより、SV722をはずす
結果は・・・・この中でひとつだけズバリと策が的中し、想像以上に音が好ましい方向に変化した方策がありました。

 バロックヴァイオリンでは、これまでかすかにしか聴こえてこなかった"軽み"が現れ、音と音楽が飛翔してくれるようになりました。チェロ独奏では、音の重心がほんの少し上がり、その代わり音のエッジが明瞭になって、ちょうど1年前、目の前で聴かせていただいたM城様のチェロの音を彷彿とさせてくれるようになりました。ピアノではショパンのワルツの軽やかで弾むような歌いまわしが、明るい音色で聴こえてきます。音の鮮度が明らかに上がっています! マーラーの交響曲では、これまで重く暗めの音に聴こえていたものが、明るく出音の早い音に変身し、それと同時によどんだような湿気たっぷりの空気感から、ヨーロッパ特有の乾いたような、見通しのよい空気感に変わりました。金管の咆哮、弦の美音は言うことなし!

 G.W中も含めてほほ10日間毎日様々なCDでこの音を聴き続けましたが、やはりいいですね。以前の音よりずっと好ましい。素直で自然です。以前の音よりいい再生音になったと思いますし、楽器の音の実体感も増しています。もうしばらくこの音で聴き続けた上で、最終判断しようと思っています。
 この音をF原さん、K藤さんに聴いていただきたかったなあ(苦笑)。えっ、どの方策をやったのか、ですって? それは内緒デス!

 

2011年5月8日(日) マーラーの「本歌取り」

 
 昨年(2010年)はマーラー生誕150年、今年(2011年)は没後100年の記念の年にあたりまので、今回はマーラーを取り上げます。今では世界中のオーケストラがその作品を演奏する交響曲作家として有名なマーラーですが、生前は作曲家としてよりも指揮者として有名でした。ウィーン国立歌劇場の音楽監督もしていて、多くのオペラを指揮しただけでなく、シンフォニー・コンサートもたびたび振っていたそうです。

 以下私見ですが、マーラーは自分が実際に指揮した先人の作品群から、メロディや和声進行やオーケストレーションなどのインスピレーションを得た、というよりそれらをうまく取り入れ、時には真似して作曲したと思うのです。和歌で過去の歌を参考にして新しい歌を詠むことを「本歌取り」と言いますが、マーラーはまさに作曲上の本歌取りの名人だったと思います。
 では、どんな風に本歌取りしたのか、最もわかりやすいメロディの本歌取りの例をふたつお目にかけます。

 上はマーラーの交響曲第2番の冒頭部分です。ハ短調でチェロとコントラバスの荘厳かつグロテスクな出だし。LP時代にはこの冒頭部分のフォルティッシモをいかに正確に再現できるか、カートリッジのトレーステストに使っていた方も少なくないと思います。
 一方下は誰の何という曲かわかりますか? 上下対照(対称?)になるように、1小節の長さを伸縮させて書いたのでかえってわかりにくいかもしれませんが・・・これ、ベートーヴェンの交響曲第2番第1楽章の、序奏が終わって、アレグロ・コン・ブリオになったところのヴィオラとチェロで奏でられる第1主題なんです。こちらは明るく若々しいニ長調なので、一聴似ていないと思うでしょうが、試しに短調にして歌ってみてください。上のマーラーとそっくり。
 お金はないけど(←今もそうですが・・苦笑)、時間だけはたっぷりあった(←これは今と違う!)、 大学生の頃、マーラーに心酔し、スコアを見ながら聴き入っていた頃、発見しました。後で作曲家の諸井誠氏が全く同じ指摘をしているのを発見し、「わが意を得たり」と得意になったものでした。

 次の例。上はマーラーのどの曲かおわかりですか? そう交響曲第3番の冒頭部分、ホルン8本での力強く決然としたニ短調の出だしです。
 では下は? これはシャープもフラットもないハ長調ですから、わかる方も多いでしょう。はい、ブラームスの交響曲第1番の第4楽章、長い長い序奏が終わった後、ヴァイオリンで奏される第1主題です。初演の時からベートーヴェンの第九の歓喜の歌のメロディに似ていると言われる、あのメロディですね。このふたつ、そっくりそのまま真似たと言っても良いくらい瓜二つ。多くの解説書に指摘があるのも頷けます。

 以上はいずれも先人の交響曲のメロディの本歌取りの例でしたが、きっとオペラを本歌取りしたものもあるのではと思います。また曲の構成や和声進行や楽器の使用法などの点でも先人の作品を模したものがあると推測します。
 絵画にしろ文学にしろ音楽にしろ、先人の作品に全くインスパイアされていないものを探すのが難しいくらいですから、こうした例はマーラーに限らないわけですが、彼の場合は指揮者であったということが、多くの本歌取りを可能にした理由のひとつではないかと想像しています。

 最後に珍しいものをお目にかけます。マーラーの交響曲第5番の有名な第4楽章アダージェットのはじめの部分のスコアです。書き込みの主は、マーラーの直弟子だったオランダの名指揮者ウィレム・メンゲルベルク(1874〜1951)です。
 彼がこの曲をどんな風に再現 (というより再創造と言った方がよいのかもしれません) しようとしたのか、彼の脳みその中を覗き込んでいるような気がして、見ていて飽きません。
 

2011年5月14日(土) 震災後初めてのコンサート

 
 「あの日」からちょうど2か月になる5月11日(水)、震災後初めてのコンサートに行きました。
◆アラベラ・美歩・シュタインバッハー ヴァイオリン・リサイタル(ピアノ伴奏はロベルト・クーレック)
◆名古屋・伏見 電気文化会館 ザ・コンサート・ホール
◆ブラームス ヴァイオリンソナタ第2番、第1番、第3番

 シュタインバッハーは日独混血の若手ヴァイオリニスト。経歴によりますと2004年パリでチョン・キョンファの代役として成功してからスターダムをかけのぼり、欧米の一流オーケストラや指揮者との共演を重ねている若手のホープ。同国のムターも応援していて、弓を贈与されているのだとか。独オルフェオ・レーベルと蘭ペンタトーン・レーベルから各数枚のアルバムを発売中。まあ、わかりやすく言いますと、ハーン、フィッシャー、ヤンセン、バティアシュヴィリなどと並んで人気・実力ともに随一の若手女流の一人ということデスネ。
 まずは彼女の音。とりわけ大きな音ではなく、どちらかというとやや細身の音でしょうか。特に美しいと思ったのは、4本あるうち一番高い音を受け持つ弦を奏でた時の、ひかり輝くような実にいい音! 彼女の強みのひとつかと。
 肝心の演奏も、ブラームス特有の秘められた情熱や諦念を的確に表出していて、とても好感を持ちました。それに最近の若手に時折見られる過剰なまでの自己表現といいますか、表現意欲の空回りのようなものがほとんどなく、知と情のバランスのたいへんいい演奏でした。
 プログラムの最初におかれた2番が特に気に入りました。3曲の中では地味な曲ですが、冒頭に持ってきただけあって、ご自身も自信のある曲目だったのかもしれません。
 前日から引き続きの大雨で、ヴァイオリンもピアノも鳴らず、ご苦労があったのではと推測しますが、たいへん楽しめた演奏会でした。

 ああいう震災の後ですから、海外からアーティストが来て演奏会を開いてくれることのありがたさ、生の演奏を聴ける喜びのようなものを、私だけでなく会場のお客さん全体が共有していたように感じました。
 帰りがけに2枚チケットを買い求めました。日本期待の若手チェリスト遠藤真理さん(皆様ご存知のM城さんによると"まりっぺ")のリサイタル(5/28)と、世界的に有名なバロック・ヴァイオリン奏者・寺神戸亮さんの無伴奏ヴァイオリン&ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ(=肩掛けチェロとのこと。ご存知ですか?)のリサイタル(7/8)の2枚です。
 行きたいリサイタルは多し、でもTL3N早くポチりたし。(苦笑)

 

2011年5月21日(土) 最近購入した新譜から

 
 今月は4枚の新譜のご紹介です。聴いたのは3月上旬でした。その月の日記にアップしようと思ったのですが・・・ 機会を改めてのご紹介になります。

◆曲目 : バッハ・ファンタジー(チェンバロ小品集)
◆演奏 : クリストフ・ルセ(cemb)
◆CD : APARTE AP010 (輸入盤)
最近フランスで設立されたばかりの独立系新レーベルからの、2枚目のルセのアルバム。バッハの比較的珍しい小品を集めたもの。これを深夜聴いていると、ろうそくの光のもと、バッハが「こんなパッセージはどうかな」「このリズムを使ってみよう」などと考えながら羽根ペンでひとつひとつの音符を細かく書き込んでいく様が目に浮かびます。300年の時空を超えて、まるでバッハが隣にいるような錯覚を覚えたディスク。ストップの変更や譜面めくりの音まで聞こえる鮮明な録音も素晴らしい! 今月一番頻繁に聴いたディスク。

◆曲目 : R・シュトラウス POESIE(管弦楽伴奏付き歌曲集)
◆演奏 : ディアナ・ダムラウ(S) ティーレマン指揮ミュンヘン・フィル
◆CD : VIRGIN TOCE90180(国内盤) / 6286640(輸入盤)
コロラトゥーラとリートの両刀遣いのドイツのソプラノ・ダムラウが歌ったオーケストラ伴奏付き歌曲集。最晩年の名作「4つの最後の歌」以外の有名曲はほとんど入っていますし、伴奏の指揮者&オケも一級。いまどき珍しい豪華版ディスクです。一部ライヴ、一部セッション録音。甘美で豊麗で深い陶酔にたっぷり浸って歌われる愛の悦びの歌の数々・・・そんな耽美なひと時を過ごすのに最適な1枚です。ちなみに私の好きな歌は、月並みですが「献呈」「万霊節」「あした」「子守唄」あたりです。

◆曲目 : モーツァルト ピアノ協奏曲第20番&第27番
◆演奏 : 内田光子(P&指揮) クリーヴランド管
◆CD : DECCA UCCD1277(国内盤) / 4782596(輸入盤)
相性のよいクリーヴランド管を弾き振りしてのモーツァルト協奏曲再録音第2弾(23&24番が既出で米グラミー賞受賞)。20番の出だしがずいぶん慎重であれっと思ったのですが、1楽章の途中からぐっと集中力が増して、両端楽章のカデンツァでは内田光子節全開 ! つられてオーケストラも充実。27番も同趣。2楽章の出だし数秒で内田ワールドに連れ込んでくれます。「これぞライヴの醍醐味」的演奏。後は21番の再録希望!

◆曲目 : ブルックナー 交響曲第5番
◆演奏 : ベルナルト・ハイティンク指揮バイエルン放送響
◆CD : BRklassik 900109(輸入盤hybridSACD)
近年とみに名声が高まっているオーケストラを、ブルックナーが得意な巨匠が指揮したライヴ録音のディスク。悠揚迫らざる指揮もいいのですが、終始私の耳を捉えて離さなかったのは、オケの金管群の柔らかい響き。強奏時も弱音の時も実にいい音です。数年前このオケのブルックナーを生で聴いたのですが、その時よりずっといい! 多分このオケの特徴とブルックナーをよく知っているバイエルン放送協会のトーンマイスターの腕もあるのでしょう。300Bppアンプとオートグラフでこの音に包まれてみたいなあ。

 ところで、来月は皆様ご存知のデラ工房1/1をお持ちの「三重のK藤様」宅への訪問が実現しそう。うーん、楽しみっ!






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