モーツアルト     ベートーヴェン
 
 

2011年9月1日(木)  完全同期の音に聞き惚れる-TL3Nの音

 
 8月22日待望のTL3Nが我が家に届きました。以下MC-3を使いSV-192Sと完全同期の状態で、24bit176.4khzにアップサンプリングして2〜3日聴いた感想です。

●30〜40枚のCDをつまみ聴きしました。普段よく聴くCDやリファレンスにしているCDだけでなく、あまり聴かないものや録音がよくないと感じているCDも意識的にかけてみました。その結果どのCDも音質的に向上していると感じました。しかし特筆すべきは、10枚に2〜3枚の割合でTL-51Xに比べて格段に良くなるディスクがあったこと。
●一番うれしかったのは、演奏家が音符のひとつひとつに込めたであろう様々なニュアンスをものの見事に再現してくれたことです。私はこれをフランス歌曲のディスクで発見しました。たぶん自分がアマチュア歌うたいだから聞き取れたと思います。楽器をおやりになっている方は是非この完全同期の音をその楽器のCDで聴いてみてくださいませ。驚くほど細部が明瞭に聴こえてくることがおわかりいただけるでしょう。演奏家ならこの音を聴いたら必ずほしくなるはずです。だって自分が演奏に込めた細かなニュアンスがこれまで以上に聴き取れるのですから!
●続いて感じたのは演奏が生き生きと感じられること。TL-51Xでは単なるアレグロであったものが、TL3Nの完全同期で聴くとアレグロ・ヴィヴァーチェになるのです。これもうれしかった! 聴きながら思わず体をリズムに合わせて動かしたくなりました。
●和音がきれいに響きます。弦楽四重奏の場合、和音がきれいでかつ豊かな響きに聴こえてきます。ピッチが正確で倍音がきちんと再生されているからと推測します。TL3NにしてクァルテットのCDを聴く楽しみが増しました。
●TL-51Xはフォルティッシモが威圧的になるが、TL3Nはならない。上手な演奏家が無理なくフォルティッシモを出している感じがよくわかるようになりました。
●芯のある、低域の引き締まったピッチの正確な音。特に中低音。響きを付加しすぎない、厚化粧にならない音。高音はどこまでも素直に伸びるイメージ。
●音の重心は「低くなる」というより「より安定感が増す」。
●空間感、ホール感に優れる。CDを変えた瞬間、録音会場の空気感が伝わってくる感じ。リアルな空気感。そして空間がより広がるイメージ。
 

 この音は一度聴いたら後戻りできないですね。音楽をよく知っている方、なまの音・演奏をよく知っている方ほど惚れるはず(笑)。
 6041のS様の名言に「女房がわからない程度の音の改善は目クソ鼻クソ」というのがあります(笑)。普段音に関心の無い女房殿でも気づく改善が本当の音の改善、わからないようなのは、いくらアナタが悦に入っていても実はたいした改善ではないのだ、という意味デスネ。
 我が家で女房殿が一発で音の変化(改善)を聴き取ったのは過去2回。一度目はムラタのハーモニックエンハンサをとりつけた時。二度目はmodel2をSV-192S+MC-3に変えた時。一方目クソ鼻クソだったのは、アンプの下の足や敷物、200V化、300Bver4 vs ver5などなど(笑)。して今回は・・・まだ試しておりません。失礼。もう少し涼しくなったら聴かせてみようと思っています。
 いずれにしてもワタシ自身はこの完全同期の音に聴き惚れておりますデス、ハイ。値差を考慮してももう後戻りなど考えられません!(キッパリ)

 この数日後、同時期にTL3N(+MC3)を購入された、いつものオフ会メンバーのタケさんから、インプレが届きましたので、ご紹介いたします。「・・・私のTL3Nの印象ですが、大変すばらしいの一言です。音の解像度、音像の明確さとスクリーンの大きさ、芯がしっかりとして適度なエッジのグラデーション、低音のしまり方などは、TL-51Xとくらべると2周りくらい良くなっているように思います。大編成の合唱の入った曲などは、これまでもやもやしていたのが一気にクリアになって、圧巻ですね。逆にヴァイオリンソナタや声楽など小編成の曲は、音像が大きくなりすぎず、すっきりと鳴らしてくれますが、倍音の出方はすばらしく良い響きをだしてくれます・・・」とのこと。私も全く同感です。

 

2011年9月8日(木) バリオスをご存知ですか?

 
 アグスティン・バリオス・マンゴレは、1885年南米の"河と野と森の国"パラグアイに生まれ、1944年中米エル・サルバドルで客死した風雲児的天才ギタリスト兼作曲家です。生涯の多くを中南米諸国で過ごし、短期間ヨーロッパを旅して歩く日々もありました。ボヘミアン気質の詩人型だったらしく、作品を書いても楽譜を人に与えてしまうことが多く、従って300曲を越すという彼の作品は、没後ほとんど散逸したのですが、1960年代に入ってから篤志研究家たちがバリオス作品を収集・整理し、楽譜も出版されるようになり、現在では100曲を越す作品が知られ、多くのギタリストが彼の作品をレパートリーに入れています。

 彼の作品のほとんどは数分の短いギター独奏曲で、4つの作品群に分けられると思います。
(1) ショパンのサロン的作品を範にしたような愛らしい作品
(2) 中南米特有のリズムを使った民族的色彩の強い作品
(3) バッハのリュート作品への敬意を感じさせる擬バロック、擬古典的な作品
(4) 生来の抒情的感性、多感なロマンティシズムが匂い出ている作品
 私が特に好きなのは(4)の作品群です。彼の代表作と言われている「大聖堂」、ト短調の
 主部が哀愁に濡れる「追憶のショーロ」、バリオス最後の作品にしてトレモロ奏法が美しい「神の愛に免じて施しを(最後のトレモロ)」、そのロマンティックな題名が素敵でバリオスの十八番だった「森に夢見る」、若き女性への秘めた思いを舟歌(バルカロール)のリズムとニ長調の甘美な調べに乗せた「フリア・フロリーダ」などは、みなこのジャンルに属すると言ってよいでしょう。

 いかがですか? 聴いてみたくなったでしょう(笑)。日本で手に入りやすいCDとしては、ジョン・ウィリアムズのソニー盤デイヴィッド・ラッセルのテラーク盤があります。前者は上記5曲をすべて含んでいます。また後者は「追憶のショーロ」を除く4曲が入っています。どちらもバリオス入門に最適なディスクと思います。
 私が持っているのは、日本を代表するギタリストのひとり鈴木大介さんが10年ほど前にフォンテック・レーベルに入れた3枚のCDです。64曲を聴くことができて重宝していますし、ギターの弦毎の音色の違いがくっきり出ている録音も素晴らしいと思います。また浜田滋郎氏のライナーノートもバリオスと彼の曲の理解の助けになりますし(この拙文も氏のライナーノートにその多くを負っています。)、実売価格で1枚1300円程度というのもうれしいです。HMVやamazonのサイトでは各トラックの冒頭数十秒をPCで聴くことができますので、初めての方はトライしてみてはいかがでしょうか? (なお鈴木大介さんは昨年バリオスを再録音しました。入っている曲からすると、近い将来もう1枚発売されるような気がします。)

 どうぞ"ギターの吟遊詩人"バリオスを是非聴いてみて下さい。

 

2011年9月15日(木) 19世紀の8大ヴァイオリン協奏曲をアナログ時代の名ヴァイオリニストの演奏で揃えてみる

 
 キット屋倶楽部の皆様は、クラシック音楽に使われる楽器ではヴァイオリンの音色に惹かれる方が多いのでしょうか? また小編成の曲よりも大編成のオーケストラがお好き? さらに録音はデジタルよりもアナログ時代のものがお好き?
 そんな勝手な推測をして、それなら19世紀のロマン派の名ヴァイオリン協奏曲を、ステレオ・アナログ時代(1950年代後半から1970年代まで)を代表する名ヴァイオリニストたちの演奏で揃えようとすると、どんなラインナップになるのか考えてみた、というのが今回のテーマです。

 まずは曲から。ミシュラン本よろしく最高の三ツ星作品を選ぶと、次の4つになるのではないでしょうか? ベートーヴェン(作曲年1806年)、メンデルスゾーン(1844)、ブラームス(1878)、チャイコフスキー(1878)。
 続いて二つ星は次の4つとしましょう。ブルッフ(1868)、ラロのスペイン交響曲(1874。名は交響曲ですが実はヴァイオリン協奏曲)、サン・サーンスの3番(1880)、ドヴォルザーク(1880)。
 以上8大ヴァイオリン協奏曲をアナログ・ステレオ時代の名ヴァイオリニスト8名の演奏で揃えてみます。(ここでちょっとわき道にそれますが、この8大協奏曲に続く"ひとつ星"協奏曲はパガニーニ1番、ヴュータン5番、ヴィニエアフスキ2番の3つ。またシベリウスは1905年完成なので20世紀の作品ですね。)
・ベートーヴェン グリュミオー盤
・メンデルスゾーン ミルシテイン盤
・ブラームス パールマン盤
・チャイコフスキー オイストラフ盤(ロジェストヴェンスキー指揮の方)
・プルッフ ハイフェッツ盤
・ラロ スターン盤
・サン・サーンス チョン・キョン・ファ盤
・ドヴォルザーク スーク盤(アンチェル指揮の方)

 いかがでしたでしょうか? 異論は当然あろうと思います。音楽之友社の「名曲名盤300」の結果とは意識的に違うものを挙げてみようと努めました。数種類の海外のベスト本も参考にしました。一応アナログ・ステレオ時代にピークを迎えていた名ヴァイオリニスト達をほぼ網羅できたのではと思っています。と言いながらもちょっと後悔しているのは、シェリングを入れられなかったこと。素晴らしいヴァイオリニストでしたものね。コーガン・フランチェスカッティ・アッカルドあたりの落選は仕方ないかなあ・・・メニューヒンやシゲティはモノーラル時代がピークだったのでは?

 今度は「20世紀の名ヴァイオリン協奏曲を現役ヴァイオリニストの名演で揃える」というのもやってみようなかあ。


 

2011年9月25日(日) アンスネス・ピアノリサイタル

 
 現在40歳前後のピアニストの中では、キーシンとアンスネスが一頭地を抜いているというのが私の独断です。このふたりが今秋名古屋でリサイタルを開いてくれるのですが、キーシンはチケットが高価なのでパスし、アンスネスの方を聴きに行きました。 9月24日(土)、会場は名古屋・伏見の電気文化会館で、プログラムは次のとおりでした。

●グリーグ 抒情小品集より6曲 (ノルウェーの旋律Op.12-6, 民謡Op.12-5, 孤独なさすらい人Op.43-2, 春に寄すOp.43-6, 羊飼いの少年Op.54-1, ノルウェーの農民行進曲Op54-2)
●ブラームス 4つのバラードOp.10
●クルターク(1926〜) ビアノ・ソロのための遊戯から8曲
●ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」
●ショパン プレリュード1曲、ワルツ3曲 = アンコール

 冒頭のグリーグはノルウェー出身のアンスネスにとっては、同国人の作曲家の作品ですね。聴いていると、まさに北国の土や森の匂いがただよってくるような感覚にとらわれました。これ以上は望めないほどの名演だったと思います。
 それから次のブラームスでも感じたのですが、アンスネスは自分の手と足と耳でピアノを完璧にコントロールできているだけでなく、会場にどう響くのかという点もコントロールできていたと思います。これはある意味凄いことなのでは? 百凡のピアニストはピアノをコントロールするだけで汲々とするものですが・・・こんな感覚を感じたのは数年前のツィメルマン以来でした。定員約400名の小さなホールですので、空間に音をどう響かすか、とても繊細に吟味された演奏だったと思います。

 彼のピアニズムは良い意味での中庸。さらに分厚く響くブラームスもあるけれど、そうはしない。さらに雄渾なワルトシュタインもあり得るけれど、うえてのりは超えない。必要にして十分な効果はきちんと出ている、自らの恣意的主張は厳しく戒め、作品に奉仕し、作品本来の持ち味を尊重する、そんなピアニズムだったと思いました。
 でもアンコールでは緊張が解けたからか、4曲も弾いてくれる大サービス。ワルツが素晴らしかった!! 途中弱音ペダルを踏みっぱなしというアドリヴもあり、おおいに乗って弾いてくれました。是非ワルツ全曲録音を希望したいなあ。
 ほぼ満員のお客さんはいつも以上に暖かい雰囲気で、熱心に耳を傾ける、いいお客さんが多かったように思いました。しても後味のいい演奏会でした。土曜日の勤務を抜けて聴きに行った甲斐がありました。是非また名古屋で弾いてくださいな!!






 
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