モーツアルト     ベートーヴェン
 
 

2012年8月4日(土) 第九仲間に自宅のオーディオを聴いてもらい思ったこと

 
 7月下旬のある日曜日、男女4人の第九仲間を自宅に招いて、オーディオの音とおしゃべりを楽しみました。その時思ったことを備忘録も兼ねて書いてみます。
1.  リファレンス・ディスクは1枚じゃダメ
機器の入れ替えや使いこなしの変更などによって装置の音を変えた時に、音の傾向を掴むためにかけるリファレンス・ディスクを何枚お持ちですか? 少なくともワタシは、音楽の種類、楽器編成、録音年代などを変えて何枚ものディスクをかけてみないと、音の傾向を掴むのは難しいです。
これまで、こんな駄文を書いているおかげで、何度かオーディオ・ファイルの装置を聴かせていただく僥倖に恵まれましたが、こ・こ・だ・け・の・話(笑)、ご主人お勧めの種類の音楽や編成のディスクを聴いていた時にはわからなかった欠点が、他のディスクをかけた途端もろに露呈した! ということが一度ならずありました。リファレンス・ディスクは多数あるべきだと思っています。
2.  お客様といっしょに聴くことで自分の音が客観視できる
今回お客様を招いて自分の装置の音を聴いた理由のひとつはこれでした。不思議なことに、自分一人で聴いているとわからない "自分の音のくせ" みたいなものが、お客様といっしょに聴くと、何故かわかるような気がします。
自分の音の傾向や水準を掴むためには、上級オーディオ・ファイルのお宅を訪問して音を聴かせていただくというのがベストと思いますが、なかなか実現しないもの。その代替手段がこれ、という気がしています。
3.  お客様の持ってきたディスクをたくさんかけるのが音質向上の早道
どうしても自分の装置が好ましく鳴るディスクをかけがちですよね、特にお客様を招いた場合は。でも普段自分がかけたこともないようなディスクで、愛器に武者修行させるのが音質向上のヒントを掴む早道と感じています。
そういう意味でキット屋さんの試聴室は、すごく鍛えられているわけです。音の好みも経験も様々な方が、本当に様々なディスクを持ち込み試聴して、「これはいい音だ」と納得して初めてアンプやスピーカーが売れるわけですから・・・
4.  いい音で鳴らないディスクにこそ飛躍のヒントが隠されている
いい音で鳴らないディスクを「録音が悪い」と切って捨てるのは早計。何故うまく鳴らないのか、そこにこそ音質飛躍のヒントがあると思うようになりました。このことに気づいていれば、8年間にも渡る「コー○○ンボードは音質に良いという先入観」からもっと早く抜け出せたのに・・・という歯軋りしたいような強い反省があるからです。
今回、第九仲間が持ってきてくれたCDを片端からかけました。最も良かったのはピアノとチェロ。続いてオーケストラ物や金管・木管・ギターもまずまず納得できる音。JAZZもvery good。 対してヴァイオリンの音 (含む弦楽四重奏) は納得がいきませんでした。第九仲間の顔にもそう書いてありました。ヴォリュームを絞り気味だと気づかないのですが、音量を上げ気味にするとフォルテで欠点が露わになる感じでした。この欠点の原因がどこにあるのかまだ掴めないのですが、次なる改善への道筋が見えてきたのかもしれません。

以上、真空管オーディオ8年にしてやっとスタート台に立った気がしている者の、最近の愚考の一端でした。

 

2012年8月11日(土) 最近購入したクラシックの新譜CDから

 
 これまで三十数年間、演奏家による演奏の違いを聴き分けることに、クラシック音楽を聴く面白さを感じてきました。10年ほど前まではかつての巨匠や名人の録音を中心に聴いてきました。ここ10年は、キット屋さんのアンプの音を知ったのをきっかけに、現役の演奏家のCDばかり追いかけてきました。たくさんの同曲異演盤を買いました。
 しかし最近は演奏の特徴を聴き分けることより、曲の魅力そのものを味わい尽くそうという気持ちが強くなってきました。3年ほど前に「1曲1枚主義」に転身して、大量のCDを中古ショップに売りました。現在保有しているクラシックCDはわずか350枚。新規購入数もめっきり減りましたし、購入した分、同じ枚数を処分し350枚を越さないように努めています。

 そんな状況ですから、この数ヶ月の間に買ったクラシックCDの新譜はわずか8枚。本日はその中からまだご紹介していない6枚を取り上げます。いずれもライブラリーの欠落を埋めるために購入したもので、ヨーロッパ各国雑誌の評判の良かったものです。
シューベルト 幻想曲D.934、ロンドD.895、ソナチネD.574 ヴィトマン(Vn) ロンクィッヒ(p) <ECM>
2年前に同レーベルから発売されたシューマンのヴァイオリン・ソナタ集が抜群だったドイツの中堅奏者による新譜。ドイチュ番号900番台の作品に惹かれている私は思わずポチりました。
シューベルト 歌曲集 ギューラ(T) ベルナー(fp) <ハルモニア・ムンディ・フランス>
古楽指揮者アーノンクールから信頼厚いドイツのリリック・テノールの第一人者が、人生の誕生から死までを全19曲で描くというコンセプトで歌った1枚。鄙びた味わいのフォルテ・ピアノによる伴奏。シューベルトの曲は「1曲1枚主義」の唯一の例外。それだけ好きということなのでしょう。
シューベルト 弦楽四重奏曲13番「ロザムンデ」,14番、「死と乙女」,15番 アルテミスSQ <VIRGIN>
これまで未開拓だった15番を聴き込もうと購入。アルテミスはハーゲンの後を追いかける独墺SQの中軸。7年前のベートーヴェン全集第一弾を聴いて以来、同団体のCDにハズレ無し!
リスト&ベルク ピアノ・ソナタ ヤナーチェク「霧の中で」ヴァーリョン(p) <ECM>
この2年間にリストは2度、ベルクは1度実演に接し、その魅力がわかりかけたので、さらに理解を深めようと購入した1枚。併録のヤナーチェクも従来から興味のある作品。
ショスタコーヴィチ交響曲第2番&第15番 ワシリー・ペトレンコ指揮ロイヤル・リヴァプール・フィル<NAXOS>
進行中の全集の1枚。ロシア出の俊英指揮者の解釈はヨーロッパ各国での評判を裏付ける素晴らしいもの。しかしオケの技量は二流。ショスタコの交響曲の良いディスクがなかなか見つからず。
「ラティーノ」ミロシュ(g) <DG> 
先月の実演で魂を揺さぶられる感動をもたらしてくれたギタリストのDG専属第二弾。南米の作品を集めた1枚。これ以外にもギター音楽のCDを何枚か買おうと物色中デス。

 50歳になった頃から、最近流行の「断捨離」じゃないですけれど、自分の持ち物をシンプルにしたいと思うようになりました。CD整理もその一端かもしれません。衣服や靴や本も大量処分しました。最近凝っている「女性JAZZヴォーカル」のCDも上限枚数を決めて集めようと思っているところです。CDに限らず、本当に大切なものだけを厳選して持ちたいという気持ちが強くなってきている今日この頃です。

 

2012年8月18日(土)ロマン派ヴァイオリン・ソナタの隠れた名作二点

 
 ロマン派のヴァイオリン・ソナタでは、フランクのイ長調(1886)とブラームスの3曲(1879,86,88)が、何と言っても人気ですね。どの名曲案内書にも載っています。これら2人の作品に続く名作としては、何冊かの英文のガイドブックにフォーレの第1番(1876)が載っていますので、3番手はこの曲ということになるかもしれません。
 それでは、続く4番手、5番手はあなたならどの曲を選び出しますか? 私はこの2年間にそれぞれ3度生演奏に接し、次第にその魅力に目覚め、CDも愛聴するようになった次の2曲がそれに当たると思っています。

シューマン(1810〜1856)ヴァイオリン・ソナタ第1番イ短調op.105

 比較的晩年に近い1851〜3年にかけて作曲された、彼の3つあるヴァイオリン・ソナタのうち最初に作られた曲です。第1楽章はほの暗いドイツの森を逍遥する詩人のようにロマンティック、続く第2楽章はABACAというロンド形式のAにあたる楽想が詩的で愛らしい。どちらも高音というより中低域を頻繁に鳴らしてグレイッシュな雰囲気を醸し出し、独特の魅力を湛えています。
 しかし私がこの曲の白眉と思うのはlebhaft(生き生きと)と題された第3楽章です。特に無窮動的&トッカータ的に動く第1主題に限りない愛着を感じています。その魅力とは「精神異常・精神破綻の寸前にあるような不安感・誘惑感・眩暈感」であると言えばわかっていただけるでしょうか?シューマンはこの曲の作曲後ほどなくして精神を病みライン川に入水自殺を図るのですが、その病魔が彼の心を密かに蝕み始めている、そんな感じをこの主題は抱かせます。そしてそれが聴く者をして、「あなたもこちらの世界においでなさい」と誘惑されているかのように感じさせるのです。引き込まれそうな不安感を感じさせるのです。
 精神を病んだ後に傑作を書いた芸術家、そしてその作品が鑑賞する人を精神錯乱の世界に引き込むような魔力を持っている芸術家に、画家のゴッホがいると思います。シューマンのこの作品と、耳を自分で切った後のゴッホの作品に、低通したものを感じます。どうぞ一度聴いてみてください。
 お薦めのCDは、プロデューサーのアイヒャー独自の録音美学が光るECMレーベルのこのディスクです。シューマンのヴァイオリン・ソナタ全3曲がすべて聴けます。

グリーグ(1843〜1907)ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調op.45

 もう1曲はノルウェーの作曲家グリーグが円熟期 (1887) に書いた、最後のヴァイオリン・ソナタです。両端楽章はかっちりしたソナタ形式でありながら、どの楽章もノルウェーの民謡風でもあるという、言わば古典派・ロマン派的嗜好と国民楽派的嗜好が高いレベルで両立している傑作だと思います。
 第1楽章は一貫してロマンティックかつ情熱的。第2楽章は短い北欧の夏の草原に咲く可憐な草花のようなロマンツァ。中間部分は恋する乙女の幸福感・優しさを連想させる美しいメロディが魅力的。一転第3楽章 ( 最終楽章 ) は、白夜の明かりのもと民族衣装を着た男女が踊っているかのようなノルウェー舞曲で締めくくられます。
 お薦めのCDはミドルプライス国内盤が買えるこの2人の名手の共演盤 。併録は同じ作曲家若書きの1&2番という好カップリング。

 ヴァイオリンの美音を堪能するには、オーケストラバックの協奏曲もいいですが、ヴァイオリン一丁とピアノとのインティメイトな対話は、真空管アンプに格別合う組み合わせと思います。これら2曲をどうぞ味わってみてください。

 

2012年8月26日(日)今年の夏をこんな風に過ごしました

 
 8月1日(水)  昼間は35度を越える真夏日(ふうっ)。定時で仕事をあがり名古屋のしらかわホールでヴァイオリニスト、アレクサンドラ・スム(Alexandra Soumm)のリサイタルを聴きました。スムは23歳の若さにして既にパリ管、イスラエル・フィル、スイス・ロマンド管、NHK響など一流オケとの共演を重ねている若手女流で ( しかもワタシ好みの美形〔笑〕)、スイスの名門レーベルclavesから「パガニーニ&ブルッフの協奏曲」と「グリーグのヴァイオリン・ソナタ集」のCD2枚も発売済み。この日のプログラムはシューマン、グリーグ、プロコフィエフ、ルトスワフスキとラヴェル。最後の2曲の演奏は特に圧巻で、「小澤征爾もぞっこん」という宣伝文句が伊達でないことがよくわかりました。しかし招聘元の地元放送局が作ったであろうプログラム冊子は、氏名が誤字、経歴は2年前の借用、演奏曲目の解説一切なしと、プロの仕事としてはいかがなものかしらん? 演奏が素晴らしかっただけに残念!
 演奏の総合感銘度 ★★★★☆

 8月11日〜19日 キット屋さんと同じ9日間の夏休み中、読書に励みました。
・ 江戸時代に和暦を編み出した渋川晴海(=安井算哲)の生涯を描いた2009年本屋大賞受賞作。映画も間もなく封切り。「天地明察」冲方 丁=うぶかたとう/角川文庫)
・ 無謀にもシロウト学生が箱根駅伝に挑む、さわやか青春友情小説。「風が強く吹いている」三浦しをん/新潮文庫)
・ 直木賞作家の読み出したら止められない経済小説の傑作。「空飛ぶタイヤ」池井戸潤/講談社文庫)
・ 岩波現代文庫から出ている宮崎市定訳と並ぶ含蓄を期待して購入した「論語入門」井波律子/岩波新書)
・ 原本を読む前の予習として買ったEテレのテキストブック「100分で名著 フランクル 夜と霧」諸富祥彦/NHK出版)
・ この作家生前の講演録をまとめ直した「少しだけ、無理をして生きる」城山三郎/新潮文庫)
・ 100万部のベストセラーの正編から4年、大震災後の思索を綴った渾身作、「続・悩む力」姜尚中/集英社新書)
夏休み直前の夜10時過ぎの通勤電車の中、眠ったりスマホをいじったりしているサラリーマンが多い中、「続・悩む力」を一心不乱に読んでいる同年輩の男性をみかけました。なにか悩みがあり、読まずにおれない、誰かの箴言にすがりたいということだったのでしょうか?

 8月17日(金)は、名古屋市美術館で開催中の「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西洋絵画の400年」を観てきました。ルネサンス期のティツィアーノから、バロック期のルーベンス、ヴァン・ダイク、レンブラント、ロココ期のブーシェ、シャルダン、19世紀のドラクロワ、コロー、ルノワール、モネ、セザンヌ、20世紀のルソー、マティス、ピカソとまるで美術教科書そのもののような巨匠の作品を含んで全89点を心ゆくまで堪能しました。また私のような西洋絵画初心者にはなじみのない画家の作品に、上記巨匠に劣らないあるいはそれ以上と思える作品も何点か発見しました。楽しかった!!

 8月24(金)〜26日(日) 25日(土)地元・岡崎シビックセンターで催される関本昌平ピアノ・リサイタルを聴きに行くのを楽しみにしていたのですが、前日金曜日の午後から激しい腹痛と悪寒で会社を早退。翌日も体調が戻らず聴きに行くのを断念してしまいました。これを書いているのは26日(日)の夕方ですが、やっと体調も上向きに。なんとか明日月曜日は仕事に行けそうです。ほっ。
キット屋倶楽部の皆様、残暑厳しき折、どうぞ健康第一でお過ごしください。それではまた来月。







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