モーツアルト     ベートーヴェン
 
 

2012年9月1日(土) 女性JAZZヴォーカルに首ったけ(5)

 
 相変わらずクラシックはほとんど聴かず、女性JAZZヴォーカルのCDばかり聴いています(汗)。この1か月間に黒人女性歌手のCDを3枚購入し、白人女性歌手のCDを5枚図書館から借りてきました。今日はその "極私的" 感想です。

 黒人女性JAZZ歌手を真剣に聴くのは今回が初めてでした。まずはナタリー・コール( Natalie Cole) のスタンダード曲集「Stardust」。コールの歌だけは有名なアルバム「Unforgettable」で馴染みでしたので、このアルバムでの歌唱もある程度予想できました。想像していた通りの伸びのある歌声で私の好きなスタンダード・ナンバーを次々と歌ってくれて満足。
 それからナンシー・ウィルソン ( Nancy Wilson) のクリスマス・ソング集「Nancy Wilson Christmas」と、ダイアン・リーヴズ( Dianne Reeves) の傑作アルバム「When You Know」の2枚も買ってみました。うーん、2枚とも歌が素晴らしく上手いのはわかったのですが、曲調がリズム&ブルースやソウルっぽく感じられるものが多くて、私が聴きたい "昔からあるオーソドックスなJAZZヴォーカル" のイメージとはかけ離れていました。残念。
 やっぱり白人歌手のものを中心に聴いていこうと思い直したところデス。

 という訳で、図書館から借りてきたCD5枚はいずれも白人歌手のもの。まずご報告したいのはカーリン・アリソン ( Karrin Allyson ) という名前のベテラン歌手。これまで私が抱いていた女性JAZZヴォーカルの概念を覆すような歌唱で驚きました。女性JAZZヴォーカルというのは、私の乏しい試聴経験では、多かれ少なかれ " 情感 " を歌い上げるのが常だと思っていたのですが、彼女の歌はそうではなく、まるでトランペットか何かの楽器が音を "掴む" ような歌唱なのです。物凄く上手い歌 ( 特にスキャット ) ですが、感情移入して歌うというより、唖然とするほど正確な歌に聴き惚れる感じ。初めて耳にする類の歌唱でした。彼女に注目したのは、医師でありJAZZ評論家でもある後藤誠一氏の紹介文がきっかけで、今回聴いたのは1996年発表の「Azure-Te」という題名のアルバム。今度は最新作を聴いてみたいところです。
 続いては既に馴染みの歌手のアルバムを3枚。ロバータ・ガンバリーニ( Roberta Gambarini) の「You Are There」と「Easy To Love」。彼女のCDはどれもいいですねえ。次回作が待ち遠しいです。それからシェリル・ベンティーン( Sheryl Bentyne) の「Sings Waltz For Debby」。こちらもオーソドックスな選曲と編曲と歌唱で私好みでした。
 最後はサラ・ガザレク( Sara Gazarek ) の「Return To You」。うーん、"ちょっと歌の好きな近所の女の子がJAZZフレーバーを取り入れて歌ってみました的アルバム"で、私好みからは外れていました。残念でした。

 こうやってオーソドックスなJAZZヴォーカルから "周辺的" JAZZヴォーカルまで聴いて来ると、自分の好みがだんだんはっきりしてくるものですね。私は女性JAZZヴォーカルを聴きながら、ゆったりした気分で寛ぎたいようなのです。変な例えかもしれませんが、一流ホテルのバーで飛び切り上等のアルコールでも嗜みながら、リッチでゴージャスな雰囲気に身を委ねたい、そんな気分でJAZZヴォーカルが聴きたいのです。決して歌に「人生のほろ苦き真実」を求めているわけではないのです。だって毎日の実生活がほろ苦さの連続なのですから(苦笑)、JAZZ聴いて寛ぐ時くらい、いい気分でいたいじゃないですか。 ねっ、わかってくれますよね、ご同輩 !!

 

2012年9月8日(土)  ワーグナーとヴェルディの傑作オペラ群をブルーレイ録画で

 
 私の場合クラシック音楽を聴いて来た年数は長いのですが、分野別にみると抜けているところがいくつかありまして、その中でもオペラは熱心に聴いて来なかった分野のひとつです。これをなんとかしたいと思い、昨年春、液晶TV購入を期にNHK-BSとWOWOWに加入して、放送されるオペラを片っ端からブルーレイに録画し始めました。
 1年半が経ち50数作品を録画できました。それらを一通り観た限りでは、どうやら私は数あるオペラの中で、ヴェルディ(1813〜1901)とワーグナー(1813〜1883)の作品に強く惹かれることがわかってきました。
 ヴェルディ作品に関しては、その複雑かつ周密な人物描写と緊張感あふれる心理ドラマに、魅力を感じています。( 日本文学研究の第一人者で先頃帰化されたドナルド・キーンさんはクラシック音楽の造詣が深いことでも知られていますが、氏が一番好きな作曲家はヴェルディなのだそうです。) 一方ワーグナー作品の、まるで媚薬のような和声推移の魅力の虜になり始めているところでもあります。( 特にブルーレイで録画したものをTVのちゃちなスピーカーではなく、キット屋製のDAコンバーター&真空管アンプを使い、きちんとしたスピーカーから再生すると、この和声推移の魅力が体感できるのです。)

 来年(2013年)は両者の生誕200年の記念イヤーですので、世界中の歌劇場でこの二人の巨人の作品がたくさん上演されます。当然それらを収録したものが来年から再来年にかけてTVで放映される、と期待してよいでしょう。これを期に二人の円熟期の名作各10作、計20作品を録画してじっくり鑑賞し、その魅力に浸ろうと考えているところです。
 日本語字幕のついたブルーレイのオペラ・ソフトはまだほとんど発売されていない状況ですので、自分でTV録画したもので理解を深めようという訳です。20作は次のとおり。
  ヴェルディ作品 : リゴレット、イル・トロヴァトーレ椿姫シモン・ボッカネグラ、仮面舞踏会、運命の力、ドン・カルロアイーダ、オテロ、ファルスタッフ
  ワーグナー作品 : さまよえるオランダ人、タンホイザー、ローエングリントリスタンとイゾルデ、ニュルンベルクのマイスタージンガー、ラインの黄金ワルキューレ、ジークフリート、神々の黄昏、パルジファル
下線は既に録画できているものです。中には「ワルキューレ」のように、メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、バイロイト音楽祭と3つの上演を録画できた演目もありますので、演出や舞台セットや歌唱の違いも楽しめそうです。できれば毎月1作演目を決めて、何度も観てその魅力をたっぷり味わいたいと思っているところです。
 それにしても、世界を代表する歌劇場での上演が、上質な画像と日本語字幕付きで、自宅で寛ぎながら鑑賞できるなどということは、昔は想像すらできませんでした。技術の進歩は凄いですね。
 この「ヴェルディ&ワーグナーの傑作オペラ20選ブルーレイ鑑賞計画( ←長い ) 」は、「女性JAZZヴォーカル」と並ぶ、私の二大プロジェクト( 笑 )です。

 

2012年9月15日(土)  ベルリン・テルデクス・スタジオでのピアノ録音3選

 
 キット屋倶楽部の皆様は、ベルリン・テルデクス・スタジオ( Teldex Studio, Berlin ) をご存知でしょうか?  室内楽、器楽、独唱など少人数編成の楽曲に適した、録音技師と機材を伴ったスタジオ ( より正確に言えば455uの「小ホール」) でして、とりわけピアノ曲に数々の優秀録音を生み出している場所です。そうした録音例として、以前この日記でアリス・沙良・オットのショパン・ワルツ集をご紹介したことがあったと思います。
 このスタジオ、もともとはテルデック ( Teldec ) レーベルの持ち物だったのですが、同レーベルのリストラ時に、同社のプロデューサー&トーンマイスターだった3名が独立し、このスタジオを買い取ったのでした。今から10年前のことでした。以来数々のレーベルから録音を請け負い、次第に評判を高め、スタッフも10人を数えるまでになっています。

 ところで良いピアノ録音の必要条件とはどんなものなのでしょうか? 録音技術に関してズブの素人の私ですが、少なくともこんな条件が必須なのではないかと考えます。
@ 適度な広さと残響を伴ったホール
A 素晴らしいピアノ (スタインウェイD274もピンからキリまであります)
B そのピアノを熟知している良い調律師 (楽器を生かすも殺すもこの人次第)
C 良い録音機材
D ホールの音響を熟知しているトーンマイスター
このうちDは、ホールのどこにピアノを置き、どんなマイクをどこに掲げれば、どういう音で録れるかが、手に取るようにわかっているというイメージです。テルデクス・スタジオはこれら全てを満たしている訳です。従ってここでのピアノ録音は試し録りが不要なので、演奏家は初日のスタート時から演奏のことだけに集中できるとのこと。よい「録音」ができるスタジオはよい「演奏」ができる確率も高くなるようです。

 近年のテルデクス・スタジオのピアノ録音から3枚ご紹介します。( @は手持ちCD、ABはレコ芸付録CDで部分試聴したものです。)
@ ポール・ルイス「ベートーヴェン ディアベリ変奏曲」(HMF)
2005〜7年にかけて完成されたベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の追加編として2009年12月に録音されたもの。ソナタ集よりさらに明晰度のアップした好録音。近めの距離感で適度な大きさのピアノが感じられ、フォルティッシモでも崩れない音像が素晴らしい。トーンマイスターは同スタジオのフィリップ・クノップ。
A アレクサンダー・ロマノフスキー「ラフマニノフ 音の絵op39ほか」(DECCA)
トーンマイスターは同スタジオ創立者のひとりトビアス・レーマンですが、いつもとやや音調が異なり寒色系。距離感も若干遠目。2008年9月録音。聴いたトラックが音の傾向を判断しにくいものだったので聴き間違いかもしれませんが・・・。
B ユジャ・ワン「ファンタジア」(DG)
2011年12月録音の彼女の最新作。超絶技巧アンコールピース集です。4枚ある彼女のCDの中ではピカイチの演奏と思います。録音は深々とした低音、豊かなホールトーン、暖かみのある音色。トーンマイスターはテルデクス専属者ではなく、DGのシュテファン・フロック。なお国内盤と輸入盤ではジャケット写真が異なるのでご注意あれ。
 私の装置では@とBが特に優秀な録音と聴こえます。共通しているのはタッチの明晰さと豊かな響きの両立、暖かみと深みのある音調でしょうか。この場所でのピアノ録音はスイスのラ・ショー・ド・フォンでの録音と並んで、"現代ピアノ録音のスタンダード" だと思います。

 

2012年9月23日(日) 9月の演奏会通い

 
 9月は2つの演奏会に行きました。毎回恐縮ですが、少々感想を書かせてください。

9月15日(土) パク・キュヒ(朴葵姫 Kyuhee Park) ギター・リサイタル(宗次ホール)

7月に聴いたミロシュのギターに深い感銘を覚えたので、是非またクラシック・ギターを聴きたいと思い探した演奏会です。パク・キュヒは韓国と日本で育った26歳。日本を代表するギタリスト福田進一さんなどに師事し、今年6月のアルハンブラ国際ギター・コンクールで優勝&聴衆賞受賞を飾った、才色兼備の「クラシック・ギター好きの中年男性のアイドル」(笑) です。当日の曲目は、DENONレーベルから発売されたばかりのアルバムに収録された曲を中心としたスペイン・プログラムでした。具体的にはスカルラッティのK178とK14のソナタ、ファリャの「恋は魔術師」から"漁夫の物語"と"狐火の歌"、「三角帽子」から"粉屋の踊り"、トローバの「ソナチネ」、タレガの「グラン・ホタ」、L・バークリーの「ソナチネ」、リョベートの「カタルーニャ民謡」より小品4曲、アルベニスの「カタルーニャ奇想曲」と「アストゥリアス」、最後がバリオスの「森に夢みる」。
 演奏の特長は「繊細さ」と「肌理細やかさ」と「しなやかさ」。ただしその代償として音楽の構えが小さく浅め。世界に羽ばたきたいならここを直すべきというのが、第九のIのシロウト見立て(失礼)。演奏の感銘度は★★★(満点は★5つ)かな。
彼女の弾く「アルハンブラの思い出」の映像を掲げておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=e5_NS0bXkek

9月22日(土) サンドリーヌ・ピオー ソプラノ・リサイタル (電気文化会館)

 ピオーはパロック・オペラやロマン派から近代までの歌曲の分野で活躍している、フランスを代表するソプラノです。音楽をよく知っている人ほど好きになるタイプの歌手。今回の来日でも、東京での2回のリサイタルはソールド・アウトになり、クラシックでは珍しい追加公演も組まれました。名古屋まで来てくれて本当にうれしいです。当日のプログラムは、「夢のあとに」をテーマとしたフォーレ、ショーソン、プーランク、メンデルスゾーン、R・シュトラウス、ブリテンなどの歌曲。うーん玄人好みのプログラムですね。ピアノ伴奏は長年コンビを組んでいるスーザン・マノフ。
 さて実際の歌唱ですが・・・1曲目を歌い出して数秒、彼女が噂にたがわぬ素晴らしい歌手であること、そしてこの日とても声の調子が良いことがわかりました。そのせいでしょうか、冒頭から"乗って"歌ってくれていることも。
 そのスレンダーな体躯から出る声は、高域から低域まで統一感のある音色(←これだけでもハイレベル)と、正確な音程が長所の歌声です。そしてなによりの美点と思ったのが、上の「ド」からさらにその上の「ソ」あたりまでの音域での、まるで真珠の輝きに例えたくなるようなつややかな高音。まれに見る美音と言ってよいでしょう。その音域を歌うたびに真珠の珠がひとつまたひとつ現われる錯覚にとらわれました。こうした声で歌われるフォーレのアンニュイ、ショーソンのデカダンス、プーランクの洒落っ気は、まさに飛び切りのご馳走!
 続いての長所は"言葉ひとつひとつに込めた思いの強さと確かさ"でしょうか。ピオーの一言一言には詩の言葉を吟味し尽くす努力と知性が感じられました。さらにもうひとつ長所をあげるとすれば、演技と動作。休憩後の後半は軽快なドレスに着替えて、洒脱な演技をまじえての歌唱で、前半にも増して聴衆の集中を一身に浴びていました。
 アンコール3曲を含め全30曲のこの日のリサイタルの楽しさを何に例えたら、私の満足感をわかっていただけるでしょうか? 甘党の女性なら、色とりどりのデザートバイキングで極上のプチデザートを30種類ひと口ずつ賞味した時の幸せ感と申し上げたら、わかっていただけるでしょうか? (笑)  演奏の満足度はもちろん満点の★★★★★。
 「ピオーさん、今回の東京3回&名古屋1回の演奏会があなたの来日初リサイタルだったとのこと。日本と日本の聴衆はお気に召していただけましたか? 私たちはあなたをとても好きになりましたよ。その証拠にあなたの今回の歌唱を賛美するコンサートゴアのブログがいくつもアップされています。どうぞまた日本に来てください。あなたの歌ならどんなプログラムでもOK。またの来日を心待ちにしています!!」

 いよいよ長く厳しかった残暑も和らぎ、芸術の秋到来。10月は4回か5回、11月は6回演奏会に足を運びます。名演期待。







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