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2012年10月6日(土) BISレーベルのトーンマイスターが語ったしらかわホール評

 
 今日はふたつの話題を書かせていただきます。
 スウェーデンのクラシック・レーベル「BIS」のことは、その優秀な録音と今だ衰えないSACDの積極リリースにより、オーディオ・ファイルの間でも知られていることと思います。そのBISレーベルを代表する録音に、鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパンによるバッハのカンタータ全曲シリーズがあります。同団体の本拠地・神戸松蔭女学院大学の教会で録音されてきた「宗教カンタータ」シリーズは最終盤を迎えており、先頃いよいよ「世俗カンタータ」のリリースが、録音場所を名古屋・しらかわホールに換えて始まったところです。同ホール会員向けリーフレットに、BISトーンマイスターのアンドレアス・ルーゲ氏のインタビューが載っていますので、一部をご紹介します。
 世俗カンタータの録音場所にしらかわホールを選んだ理由について同氏は、「石を多用することにより低い周波数帯域がよく響く『教会』は宗教作品には最適。しかし世俗カンタータのためには、歌が明瞭に聞こえ、かつ全体の残響が短すぎることがない同ホールが条件を満たしている。」 6月のこの日記でしらかわホールの印象を私は「豊かな残響と明晰さの両立」と書きましたが、同じことを言っているのだと思います。そしてルーゲ氏はさらに具体的に「この大きさではトップクラス。音色は際立って柔らかくてバランスがよく、残響は豊かでむらがない」と続けています。うーんさすがプロは的確でうまい表現をしますね。確かに言われてみるとまるで石鹸の泡のようにクリーミーで "際立って柔らかい" 響きですし、高域から低域まで残響に "むらがない" のは、同ホールをご経験の方なら賛同いただけることと思います。
 音や音楽を言葉で表すことは、実体とかけ離れてしまう危険性を常にはらんでいるわけですが、適切な言葉を使えば、音や音楽を理解するのに大きな助けになります。ルーゲ氏の言葉は、同ホールの音響に関する私の理解を深めるのに大きな助けになりました。大橋さんの日記にあった数々の音を表す表現も、そうした好例のひとつでしたね。(なくなってしまいとても残念です)

 "音を表す言葉" つながりで、もうひとつ話題を。
 7月終わりに第九仲間に自宅のオーディオを聴いてもらったお話はすでに書かせていただきましたが、今回はそのメンバーの感想を紹介させてください。散会後もらった携帯電話の "御礼メール" からの抜粋です。
 「最近はめっきりオーディオから遠ざかってiPadばかりになってしまって、せめてとばかりにカナル型ヘッドフォンに散財しておりましたが、やっぱり本物に触れるのはいいですね。」←かつてオーディオファイルだった男性。
 「音が懐を持って届いてくるように感じました。」←女性
 「演奏者の息遣いを感じられる様な臨場感あふれる音色、至福のひと時をありがとうございました」←女性。
 自分の音を自慢したいから書いたのではありません(笑)。また、あらかじめ「真空管アンプはこんな音ですよ」と吹き込んだことも一切ありません。まっさらな耳での初めての真空管アンプ体験の感想です。こうしてみると、普段オーディオに縁遠い女性にも、真空管アンプの音の良さ、もっとはっきり言えばサンバレー・キット屋アンプの音の良さ・特徴はしっかり伝わるものなのだ、と思いましたが、皆様いかがお思いですか? 真空管アンプユーザーになる可能性のある人は案外多いのかもしれないと感じた1日でもありました。

 

2012年10月15日(月) 祝・デカチョーさん新リスニングルーム完成!!

 

 10月14日(日)の午後、いつものオフ会のメンバー、デカチョーさん宅に皆が集まりました。そう、デカチョーさん渾身のオーディオルームが完成し、そのお披露目があったのです。1か月前にご案内を頂いてからずっと楽しみにしてきました。集まったのは大橋さん、タケさん、I瀬さん、I原さんと私の5名。
 通されたのは17.5畳という十分な広さと天井高3.5mはありそうな広々とした空間。詳しいノウハウはいずれキット屋さんのHPにアップされると思いますが、なにしろデカチョーさんのこれまでの経験・知識・ノウハウがぎっしり詰まった、こだわり抜いたオーディオルームです。
 まずはアナログでクラシックをひと通り聴かせていただきました。ターンテーブルはマイクロ、カートリッジはSPU、アンプは310と91B ( 確かオールWEのはず ) を使い、イギリス往年の名ユニット・ステントリアンと "ランドセル" で、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ、ギター、室内楽、声楽そしてオーケストラ物、順番に聴かせていただきましたが、実は冒頭の数分で全員一致の結論が出ていたように思います。素晴らしい音!!! タケさんが仰っていましたが、演奏の細部まで実にクリアに聴こえながら、響きも豊かなのです。この両立し難い要素がこれ以上望めないほど高いレベルで両立しています。そして低域から高域まで変な響きが乗ることがありません。

 第二試聴室という "男の城" をお持ちの大橋さんの顔にも、それぞれ自分専用のリスニングルームを既にお持ちのタケさん、I瀬さん、I原さんの顔にも、「脱帽」と書いてあったように思います。そしてその眼には「密かなる羨望の眼差し」が含まれていたのを、ワタシは見逃しませんでしたヨ。それほど素晴らしかった。音も部屋の居心地も、です。
 かく言う私も、正直うらやましくてたまりません。3時間に及ぶお披露目会から帰宅して、すぐマイ・オーディオとの音の比較をしてみました。過日開催された真空管オーディオ・フェアのデモCDの1枚で、この日のデカチョーさん宅での再生音も格別素晴らしかった、女性ジャズ・ヴォーカリストgacinthaの「AUTUMN LEAVES」というCDです。トラック10の冒頭3分で比較試聴してみました。デカチョーさん宅の再生音は、シングルアンプ+100dB高能率ユニットのメリット全開で、ピントのピタリと合った、極めてクリアで、微細な吐息まで捉え切った超リアル感が秀逸。それでいてふくよかで暖かみのある音! 大橋さんご指摘の1分59秒から始まるピアノ音の微かなテープ転写音も、とてもクリアに聞こえました。それに対して拙宅ではここまでのリアル感は逆立ちしても出ませんでした。テープ転写のピアノ音も何とか2度聞き取れた程度。彼我のあまりの差に、ちょっとヤケになりそうでした。デカチョーさん宅はそれほど素晴らしかったです。

 ご本人から念願のオーディオルーム建築の決意を伺ったのが1年近く前。その話しに私も刺激を受け、「いつか我が家でも・・」との思いを抱いた時期もあったのですが、最近は「同じお金を生演奏に使ったほうがいい」との考えに傾いておりました。ですから昨日も「どんなに素敵な空間でも、どんなに素晴らしい音でも、自分は自分」と堅く心に誓ってから伺ったはずなのに・・・部屋に通され音を数秒聴いた途端、あれほど堅く誓ったはずの「オレはコンサートに金を使う」という決心は脆くも崩れ去り、「こんなリスニングルームがほしい! 」という気持ちがふつふつと湧いてくるのを押さえることが出来ませんでした。昨晩は夢にオーディオルームが出てくる始末(大苦笑)。
 デカチョーさん、おめでとうございます。渾身のオーディオルーム大成功ですね。奥様に感謝ですね。是非またお招きください!!
 
 

2012年10月20日(土) クラシック・アーティストが演奏するビートルズの名曲たち

 
 今日は軽め ( いつも「軽い」というウワサもありますが・・・苦笑 ) の話題でまいります。
 6041のS様が7月31日付けの「ジャズ・オーディオの雑記帳」で、サリナ・ジョーンズが歌うJポップスのアルバムがあることを書いておられました。そういう世界に全く疎い私は初めて知り軽い驚きを覚えました。そして「クラシックの世界でも似たようなアルバムはないかな」と考えてみたのですが、さすがにパバロッティやドミンゴはサザンやユーミンや尾崎豊は歌っていないです。当たり前と言えば当たり前。そのかわり思いついたのが、クラシック・アーティストが演奏したビートルズのアルバム2種でした。

(1) イョラン・セルシェル(ギター)による「ビートルズ名曲集」
長年ドイツ・グラモフォンの専属アーティストだったベテラン・ギタリストのセルシェル ( Goran Sollscher) がクラシック・ギターで ( 一部の曲は11弦ギターで ) 演奏した全16曲の名曲集。セルシェル自身がビートルズの大ファンとのことで、自ら編曲すると同時に、友人の作曲家にも編曲を依頼、加えて何と武満徹編曲バージョンも取り上げています。1994&2000年録音。
@ハニー・バイ Aヒア・ゼア・アンド・エヴリホエア Bヘイ・ジュード Cミッシェル Dイエスタデイ Eエリナー・リグビー Fフール・オン・ザ・ヒル Gイエロー・サブマリン Hデイ・トリッパー Iヒア・カムズ・ザ・サン Jアクロス・ザ・ユニヴァース Kノルウェーの森 Lイン・マイ・ライフ Mキャント・バイ・ミー・ラヴ Nザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード Oアイ・ウィル

(2) キングズ・シンガーズ(無伴奏コーラス)による「ザ・ビートルズ・コネクション」
 普段はバロックより古いルネサンス期の無伴奏声楽ポリフォニーを主に歌うイギリスの男性6人組「キングズ・シンガーズ」( カウンターテナー2人、テナー1人、バリトン2人、バス1人 )が歌ったビートルズ名曲集。曲によっては控えめに楽器もフィーチャーされて全19曲。1986年録音。
@ペニー・レイン Aマザー・ネイチャーズ・サン Bオブラディ・オブラダ Cアンド・アイ・ラヴ・ハー Dヘルプ!  Eイエスタデイ Fア・ハード・デイズ・ナイト Gガール Hゴット・トゥー・ゲット・ユー・イントゥー・マイ・ライフ Iバック・イン・ザ・U.S.S.R Jエリナー・リグビー Kブラックバード Lレディー・マドンナ Mアイル・フォロー・ザ・サン Nハニー・パイ Oキャント・バイ・ミー・ラヴ Pミシェル Qユーヴ・ゴット・トゥー・ハイド・ユア・ラヴ・アウェイ Rアイ・ウォント・トゥー・ホールド・ユア・ハンド

 「第九のIは合唱をやっているからキングズ・シンガーズのCDの方が好きなのでは」と思う方もみえるでしょうが、実はセルシェルのギターが奏でるビートルズがとても気に入っていまして、時々BGMにかけています。このディスクはミドルプライスの国内盤で買えますので、一度お聴きになってみてはいかがでしょうか? この手のアルバムは品切れになるとなかなか再発売されませんから。

 

2012年10月25日(木) 今月は4つの演奏会に足を運びました

 
 まず4日(木)名古屋・しらかわホールで聴いたのが、わずか15歳でドイツ・グラモフォンと契約を結んだ、1995年カナダ生まれの若手ヤン・リシエツキのピアノ。結論から言いますとバッハのパルティータ第1番BWV825とモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付」での、よく流れる、極めて上品かつ詩的な演奏の素晴らしさ! 夭折した名ピアニスト・リパッティを思い起こさせたほどでした。しかし後半のショパンの練習曲op10では、残念ながら作曲家の魂の叫びに肉薄するに至らず。感銘度は前半★★★★☆、後半が★★★。"天賦の才に恵まれた未完成のサラブレッド" というのが正直な印象です。 まだ17歳なのですから当然と言えば当然なのでしょう。なおいつものクラシック演奏会に比べ若い女性が目立った会場で、終演後のサイン会に先頭で並んでいたのは短いスカートのセーラー服女子高校生2人組(^_^)。このイケメン・ピアニストはすでに人気上昇中のようデスネ。

 続いて19日(金)豊田市コンサートホールで聴いたのが、今年80歳になるロシアのベテラン指揮者フェドセーエフと彼の手兵チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ( 旧名モスクワ放送交響楽団) 。演奏された曲はチャイコフスキーの歌劇「エフゲニー・オネーギン」より"イントロダクション""ワルツ""ポロネーズ"の小品3曲、続いて幻想序曲「ロメオとジュリエット」、そしてショスタコーヴィチ交響曲第5番。
 このコンビは既に40年近い歴史を刻んでいますが、初期(=LP末期)の頃の「まるで暴れ馬のような音の奔流」から、「ヒステリックに怒号しない、気負わず余裕を持った演奏」へと変貌を遂げていました。演奏の感銘度はチャイコ★★★★、ショスタコ★★★★☆。しかしこの日のクライマックスは2曲のアンコールでした。1曲目はスヴィリードフ(Sviridov 1915〜1998)という作曲家が1964年の同名映画のために作曲した管弦楽を、後に9曲からなる交響組曲「吹雪」として編み直したものの1曲「ワルツ・エコー」。退廃的でシニカル、甘苦い香りの漂うドイツ風ワルツで、このコンビのアンコール定番曲とのこと。2曲目は一転、速いテンポで駆け抜ける「スペインの踊り」(チャイコフスキーの「白鳥の湖」の1曲)。例のごとくタンバリン氏とカスタネット氏の大活躍に会場はやんやの喝采 ! なおこの日の様子についてはsoundbox様のブログ「気儘なクマの気儘日記」も是非ご参照ください。

 続いて23日(火)は名古屋・伏見の電気文化会館で、庄司沙矢香(Vn) ジャンルカ・カシオーリ(p) デュオ・リサイタルを聴きました。日本ツアーの一環で名古屋に来てくれたもので、プログラムは、ヤナーチェク、ベートーヴェン10番、ドビュッシーそしてシューマン2番というソナタ4曲。
 事前に手持ちのCD (ベートーヴェンはファウスト、ドビュッシーはデュメイ、シューマンはヴィドマン) で予習して行ったのですが、これら選りすぐりのベテラン、中堅、新鋭の演奏を聴いてしまうと、庄司さんの演奏のなんと言う平板さ、味気なさ、重たさ、そして一本調子! 最近は「五島みどりを除けば日本人トップ」との呼び声もある彼女ですが、上記実力者に比べると明らかな差があるのです。同朋のひとりとしてちょっぴり悲しかった。私の耳が間違っているといいのですが・・・。(感銘度★★)

 翌24日(水)に聴いたのがクリスティアン・ティーレマン指揮ドレスデン国立歌劇場管。場所は愛知県芸術劇場コンサートホール。曲目は前半がティーレマンの最も得意とするワーグナー3曲、「タンホイザー」序曲、「トリスタンとイゾルデ」から"前奏曲と愛の死"、「リエンツィ」序曲、後半がブラームス交響曲第1番です。現在ドイツで最も存在感がありカリスマティックな指揮者ティーレマンと、私が世界で最も好きなオケ、ドレスデン国立歌劇場管(ドレスデン・シュターツカペレ)。ティーレマンと組んでワーグナーを最良の形で演奏できるのは、ベルリン・フィルが良くも悪くもインターナショナル化した現在、ウィーン国立歌劇場管(ウィーン・フィル)とここドレスデンであることは、クラシック好きならどなたも賛同されるはず。
 演奏は果たして予想どおりに、いや予想を超えて展開いたしました。「良い」「素晴らしい」「立派な」演奏はままありますが、「偉大な」という形容詞をつけたくなる、この日のような演奏には滅多に出会えるものではありません。ワーグナーもブラームスも聴きながら何度も胸が熱くなり、感動の涙が頬をつたいました。今年最高のオーケストラ演奏であっただけでなく、一生記憶に残る、そして語り継ぎたい一夜になったと感じました。感銘度★★★★★。 アンコールの「ローエングリン」第3幕への前奏曲が終わり、オーケストラ全員が帰った後も、当地には珍しくスタンディング・オベーションが続きました。

 最後に、音楽に続く趣味にしたい美術鑑賞の話題をひとつ。10月18日(木)に地元・岡崎美術博物館で開催されていた「水野美術館コレクション名品展 近代日本画を築いた巨匠たち」と題する絵画展を鑑賞しました。明治から平成にわたる日本画の変遷を、横山大観、橋本雅邦、川合玉堂、下村観山、菱田春草、上村松園、伊東深水、高山辰雄、加山又造、平山郁夫などの巨匠たちの作品60点で振り返るもの。平日のお客の少ない時間にじっくり鑑賞できて大満足。西洋画もいいですが日本画もいいですねえ! 日本人に生まれて良かった! と思えた絵画展でした。
 来月(11月)は名古屋市近郊にある「名都美術館」で開催される『麗しき女性の美 上村松園・鏑木清方・伊東深水展』で近代日本の美人画を見てこようと思っているところです。
 それでは皆様、秋の夜長をご自慢のオーディオでお楽しみください!!







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