モーツアルト     ベートーヴェン
 
 

2013年7月6日 (土) 無人島に持っていく1枚

 

 今日は「無人島に持っていく1枚」を選んでみたいと思います。「たった1枚だけディスクを持つことが許されるなら、何という曲の誰の演奏を残しますか?」という質問だと、言い換えられるでしょう。
 私はやはりバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンの傑作、とりわけ晩年の作品に強く惹かれます。具体的な候補としては、バッハ「ミサ曲ロ短調」、モーツァルトの「ピアノ協奏曲第27番」「クラリネット協奏曲」「レクイエム」、ベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第30~32番」、後期の弦楽四重奏曲・・・このあたりが候補作でしょうか。
 そして散々迷った末、「ロ短調ミサ曲」と「レクイエム」を最初に外します。絶対神の存在を肯定する一神教のキリスト教にどこか馴染めないものを感じるからです。合唱団でこうしたキリスト教の宗教曲を歌い、その教義に触れるにつれてこうした感覚を持つようになってきました。
それから長調から選びたいという気持ちがあります。たった1枚なのですから、明るい曲調のほうがいいです。この点からはモーツァルトの協奏曲2曲が有力ですが、もうひとつ深みがほしい気もします。またベートーヴェンには中期の作品ほど頻出しないとは言え、彼特有の”叱咤激励”が、時に疎ましく感じることもあるのではないでしょうか?
? などということを考えた末、バッハの「無伴奏チェロ組曲」に決めたいと思います。全曲だとディスク2枚になってしまうので、全6曲の中から1,3,4,6番という長調4曲を選び、CD-Rに焼くことにいたしましょう。
 数年前の私なら演奏者にも拘ったでしょうが、最近はそれほどでもありません。往年の名人、現代の俊英、はたまた古楽器演奏か否か、誰のものでもいいと思っています。

 これでディスク1枚を選び出しましたが、できればもう1枚持って行きたいものがあります。それは絵画です。古今東西の名画から1枚だけ所持が叶うことにいたしましょう(笑)。
ダ・ヴィンチやラファエロなどのイタリア・ルネサンス絵画、北方ルネサンスのデューラー、バロック時代の到来を告げるカラヴァッジョ、17世紀オランダのフェルメール、皆大好きです。時代が下り19世紀後半フランスで花開いた印象派のモネやルノワールももちろんお気に入りです。しかし、たった1人最も好きな画家と問われたら・・・レンブラントと答えるでしょう。
レンブラントの一番有名な作品は大作「夜警」ですが、私が気に入っているのは自画像なのです。それも晩年のものがとりわけ魅力的です。彼の自画像を眺めていると、いつの間にか自己の内面との対話が始まる気がするのです。

 バッハの「無伴奏チェロ組曲」とレンブラント晩年の「自画像」には共通するものがあると思います。共に人間なら誰もが持つ人生の光と影を色濃く映しているだけでなく、作者の眼差しが、気高く、崇高です。人間精神の奥深さを感じさせます。さらに大自然と一体になった呼吸感や、暖かく、柔らかく、大きな包容力があるように思うのです。この2枚があれば、一生飽く事なく聴き続け、眺め続けられる気がします。
「無人島に持っていく1枚」、あなたなら、どの1枚&1枚になさいますか?

 

 

2013年7月13日 (土) 一番好きなレーベル

 

 かつて一流アーティストはメジャーレーベルと契約するのが当たり前でした。しかし1990年代半ばからの世界的音楽ソフト不況のあおりで、クラシック・レーベルでもアーティストとの契約解除が相次ぎ、実力ある演奏家の多くは自分のレーベルを立ち上げたり、独立系レーベルに移ったりしました。そして今のメジャーレーベルは、経費削減のためでしょうか、契約金の安い若手アーティストの新録音と、旧録音のボックス化で糊口をしのいでいる感無きにしも非ず、と悪口を言う人もいます。

 そんなクラシックディスク界の中で、現在新譜の質と量でメジャーを含む他社を圧倒しているのが、私見ではフランスの独立系レーベル「ハルモニア・ムンディだと思います。アンモナイト風の巻貝マークと言えば、おわかりの方も多いでしょう。(似た名前のレーベルに「ドイツ・ハルモニア・ムンディ」がありますが、これはSONY-RCA資本傘下の古楽系レーベルで、私が話題にしたいレーベルとは現在無関係です。)
「ハルモニア・ムンディ」は有望なアーティストと長い関係を結びながら、そのアーティストを育てていこうとする姿勢がすばらしいですし、プラスチックの安っぽい包装・装丁ではなく、上質で高級感のある紙によるデジパック仕様に拘っているのも好きな点のひとつです。フランス・オフィス企画製作のHMCで始まるナンバーのディスクと、アメリカ・オフィス企画製作のHMUナンバー品の2通りがあり、私は特に前者を好んでいます。買いたい新譜の3~4割がHMCナンバーと言ってもいいくらいです。

「ハルモニア・ムンディ」の存在感は、日本では若干わかりにくいのです。音楽雑誌や大手CD通販店のサイトを眺める限り、それほど際立っているとは言い難い。しかしヨーロッパの音楽雑誌を見ると、このレーベルに対する業界の尊敬の念が伝わってきます。
一例を挙げます。優れたディスクに与えられる賞は色々ありますが、概ね自国のレーベル・演奏家・作品が受賞作の大半を占めており、ストレートに参考にしづらいのが通例です。しかしinternational classical music awardsという、独仏伊西、スイス、オーストリア、ベルギー、フィンランド、ハンガリー、ロシアなど数多くの国の専門家が集まって決める賞があり、毎年200~300枚のディスクをノミネートし、その中から受賞作十数点を選ぶのですが、ここ数年ノミネートディスクの数で、「ハルモニア・ムンディ」レーベルが最多を続けているのです。それも他のレーベルを圧倒的に引き離してのトップです。母国フランスだけでなくヨーロッパ全土から、その新譜の質と量の両面で高い評価を得ていることの証と思います。
また、あるメジャーレーベルと契約成った若手アーティストが、「本当はハルモニア・ムンディから声がかかれば一番うれしかった」とオフレコでつぶやいているのを読んだこともあります。どうぞ「ハルモニア・ムンディ」レーベルにご注目ください。

 最後にここ3~4年の間に発売された同レーベルのHMCナンバーCDの中から、特に優れていると思うディスクを数点挙げさせてください。

◇ JSバッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ イザベル・ファウスト(Vn) 分売
◇ JSバッハ 管弦楽組曲(全4曲) フライブルク・バロック・オーケストラ
◇ モーツァルト ピアノソナタ集vol4(K311,K283他) ベザイデンホウト(fp)
◇ ベートーヴェン ディアベリ変奏曲 アンドレアス・シュタイアー(fp)
◇ ベートーヴェン&ベルク ヴァイオリン協奏曲 ファウスト(Vn) アバド指揮オーケストラ・モーツァルト
◇ シューベルト 弦楽五重奏曲D.956 アルカント四重奏団&マロン(Vc)
◇ シューベルト 歌曲集「白鳥の歌」 マティアス・ゲルネ(Br) エッシェンバッハ(p)
◇ ドビュッシー&ラヴェル&ディティユー 弦楽四重奏曲 アルカント四重奏団
◇ ショスタコーヴィチ ピアノ協奏曲1&2番 メルニコフ(p) クルレンツィス指揮マーラー室内管

 

 

2013年7月14日(日)どこよりも早い 2014年来日オーケストラ情報 名古屋編

 

 今秋の来日オーケストラ最大の話題は、最後の来日になるかもしれない80歳の名匠アバドとスーパーオケ・ルツェルン祝祭管でしょうか?? それ以外にもラトル指揮ベルリンフィル、ティーレマン指揮ウィーンフィル、ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管など、超のつく一流オケが次々来日、オケファンの懐具合は、夏のボーナスが出た直後にもかかわらず、さぞ寂しいことでしょう(笑)。何を隠そうワタシもデス(苦笑)。
 そして今年来日するオケの全貌がわかったので、オケファンの関心は2014年の来日オーケストラ&指揮者に移りつつあることと思います。今日は主催者未発表情報も多数含んで、2014年前半に名古屋で聴ける来日指揮者&オーケストラをいち早く紹介いたします。

◆ 1/18(土) ルイージ&N響 モーツァルトP協奏曲20番(=ブフビンダー) ブルックナー交響曲9番
◆ 1/30(木) テミルカーノフ&サンクトペテルブルグ・フィル チャイコ4、ラフ2、展覧会のいずれかがメイン
◆ 2/9(日) ギルバート&ニューヨーク・フィル バーンスタイン「ウエストサイド物語」から”シンフォニック・ダンス” チャイコフスキー交響曲5番
◆ 2/9(日) フライブルク・バロック・オーケストラ(長久手文化の家) バッハ ブランデンブルグ協奏曲全曲
◆ 2/15(土) ティチアーティ&スコットランド室内管 シューマンP協奏曲(=ピリス) ベートーヴェン交響曲5番他
◆ 3/13(木) ワシリー・ペトレンコ&オスロ・フィル グリーグP協奏曲(=沙良・オット) ショスタコーヴィチ交響曲5番他
◆ 4/12(土) ジンマン&チューリヒ・トーンハレ管 ベートーヴェンVn協奏曲(=クレーメル) ブラームス交響曲1番
◆ 6月 大植英次&ハノーファー北ドイツ放送フィル 小曽根真=P
◆ 6月 大野和士&フランス国立リヨン歌劇場管
◆ 7月 山田和樹&スイス・ロマンド管 樫本大進=Vn
この他、5月ネゼ・セガン&フィラデルフィア管、7月スラットキン&リヨン国立管(Vn=五嶋龍)の可能性もありそう。一方3月シャイー&ライプチヒ・ゲヴァントハウス管、5月マゼール&ボストン響の可能性は低そう。

 何故こんな来日オーケストラ情報を、読者の大半が真空管アンプファンと思われるこのページで書いたかといいますと、クラシックファンに真空管アンプの魅力をもっと知ってもらいたいと思ったからなのです。生演奏に親しんでいる音楽ファンの多くは、この先どんな指揮者&オーケストラが来日してくれるのか、自分の住む地域まで来てくれるのか、演奏曲目は何なのか、早い情報を求めて、「来日オーケストラ 2014」といったキーワードで検索している方も多いことでしょう。そんなクラシックファンにこそ、真空管アンプの音の魅力に触れてほしいというのが、10年前その音の虜になった私の願いです。

?真空管アンプには、石のアンプにはない、生の音が持つ暖かみ・深みと濃厚な味わいがあります。石のアンプの、きれいだけれど蒸留水のような味気なさに、「所詮ステレオはこんなものさ」と諦めているあなたにこそ、真空管アンプの音に触れてほしいと思うのです。数ある真空管の種類の中で、「300Bこそクラシックに最適」という方が多いです。弦楽器の音色を出すのならシングル方式、マッスの響きを重視するのならプッシュプル方式が良いとのこと。使いこなしに特別な知識は不要です。真空管は今も旧東欧諸国やロシア・中国で盛んに製造されているので、枯渇の心配なし。数万円から20万円出せばプリメインアンプが買えるのは、石のアンプと同じです。自分ではんだごてを握って自作するのを楽しみとする方が多い趣味ではありますが、組立済みの完成品もちゃんと売っています。
私が愛用しているのは、プロの演奏家の愛好者も多い、サンバレー「ザ・キット屋」の300Bプッシュプル・アンプです。愛知県刈谷市に居を構え、試聴室も完備していますので、可能ならいくつかのアンプとスピーカーを聴き比べてから購入することもできます。もちろんメールでも店主・大橋さんが親切に相談に乗ってくれます。最後に留意点をひとつ。アンプの型番は、通常アルファベットと数字の組み合わせで、数字が大きくなる(あるいは小さくなる)につれてグレードがあがりますが、サンバレーの場合はまるで違います。最初は戸惑いますが、「300B」を使っているか否かを目印に探せば、候補はおのずと数点に絞られますので、ご安心を。
生の音をよく知るクラシックファンのあなたこそ、真空管アンプの魅力がわかっていただけると信じます。


 

2013年7月19日(金)ありがとうございました=最終回

 

 2009年8月から始めたこの日記も、今月で丸4年が経ちました。その前に書いていた分も足すと通算6年半になりますので、ここで一区切りつけたいと思います。これまで読んで下さった皆様に心から感謝申し上げる次第です。
 4年前に、モーツァルトとベートーヴェンの顔、オケと合唱と深紅のベルベットからなる、高級感あふれるページデザインを作って頂いたのを拝見して、「このデザインに負けないように頑張ろう。3年は続けなければ」と考え、毎月空っぽの頭をひねり続けてきました。
 毎回最初の読者であった大橋店主の”褒め言葉”に乗せられ、また6041のS様はじめ多くの”同士”の皆様の日記やブログにも励まされ、なんとかここまで続けてまいりました。ありがとうございました。

 オーディオの思い出をひとつ書かせてください。キット屋さんの真空管アンプと出合ってからちょうど10年になりました。この間SV722+VP3000というアンプ群こそ不変なものの、スピーカーは1度買い替え、CDプレーヤーとDAコンバーターも買い換えました。真空管も色々試しました。どれも音はよくなったと思うのですが、この10年間で一番再生音の向上を実感したのは、実はSP台の下に敷いていたコーリ○ンボードを取り去った時でした。このボードがいかに音楽・演奏の生命感を見事なまでに”殺して”いたのか、如実にわかったのでした。(苦笑) 同じ石のボードでも、御影石とコーリ○ンでは180度違う結果になるとは・・・オーディオの奥深さを思い知りました。
この駄文を書いている役得で、N響ヴァイオリニストの根津様、チェリスト宮城様、score1204様とsoundbox1960様、いつものオフ会メンバーの皆さんに、拙宅の音を聴いていただくという僥倖に恵まれましたが、いずれもコーリ○ンボードを敷いていた時だったというのが、今となってみると少々心残りです。(苦笑)

 この日記では、オーディオと音楽の交わるあたりの話題が書ければと思っていましたが、なにぶん真空管アンプをはじめとするオーディオの知識・経験に乏しいため、どうしてもクラシック音楽の話題が多くなってしまいました。力不足をお詫び申し上げます。わずかに自慢できることと言えば、4年間一度も欠かさず、締め切りにも遅れず原稿をお送りできたこと位でしょうか。
先月大橋店主には「続きはブログで」と申し上げたのですが、しばらく休憩しようと思っています。こんな駄文でも、ネタを出し切ったという感じがありまして、充電の時間がほしいのです。
これまでこの日記をお読みいただきありがとうございました。皆様の良き真空管オーディオ・ライフをお祈り申し上げます。それでは・・・さようなら。

 







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