キット屋倶楽部
「JB300B改造」

こんにちは、じゅうはちです。キット屋さんのアンプの製作リポートを書くのは久しぶりです。


1.はじめに


 このたびは、自分が寝室で寝る前、または休日の朝などのゆっくりとした時間を、静かなゆったりとした、きれいな音楽で枕元を満たしてくれるシステムがほしいという事で、JB300Bシリーズを作る事にしました。音楽ソースはCD,DAT,FM,何でも良く、その時聞きたいものとします。(スピーカはmini825モニタ、スピーカーユニットはFOSTEX:FE108EΣ、オリジナル)という構成です。

 さて、JB300B改造ですが、この基本方針として、当然ながらキット屋の技術者の、このアンプに込める設計思想、思いを改変する事なく、つまり音質が大きく変化するような改造は行わない、という基本方針を立てます。そこで音の余韻、間合いを台無しにする無用なノイズ、つまり、無信号時ハムノイズをまったく出さないアンプの製作を目指します。全く出さないとは、スピーカーにぴったり耳を付けてもほとんど分からないレベルの事で、これを実現する事を目指します。

 JB300Bの回路図を見ていて考えました。無信号時に静かなアンプを手早く作るのには、初段管ドライバー管のヒーターをレギュレータ駆動にしてしまうのが、一番手っ取り早い方法です。しかしここをレギュレータ駆動にしてしまうと、とても静かなアンプが出来るが、一番重要なアンプの音の傾向が「レギュレータを使ったアンプの音」になってしまい、AC駆動方式のアンプ特有のあの馬力のあるこってりとした味のある音は出て来ません。この事は、以前、SV275の初段管/フラットアンプのヒーターをレギュレータ駆動にして、無信号時ハムを低減する実験をした時に経験済でした。そこで真空管のヒーターはAC駆動にして、配線の引き回しで加わってしまうACハムノイズを、配線の工夫で極力加えないという製作方針を立てました。


2.ACハムノイズの発生要因


 →ここに真空管アンプの製作で、無信号時のアンプの出力からACハムノイズが出る原因を整理してみました。
(1)電源部分 (トランスにハムノイズ対策が施してない事)
(2)交流配線部分 (ACの流れる配線の引き回しが影響して電磁波が空間に放射される事)
(3)電源周りの配線 (AC、脈流の流れる配線部分は、そこからハムノイズが発生する事)
(4)部品の配置方法 (コイル類は位相を1/2πずつずらしてあるか・これは当然ながらアンプ設計時に行う対策済だと考えるのでここでは考慮しない)
(5)真空管のヒーター配線 (ヒーターがAC駆動方式の場合、信号経路にAC成分が混入するのを防ぐため、各ヒーター端子とアース間に0.01μF辺りのセラミックコンデンサを取り付け、交流的にアースする事で信号源にACハムを減らす効果があるが、この対策が行われていない事)
(6)B電源の強化 (場合によっては電源部分を強化する必要がある。B電源を強化する事により、音質上での余裕は出て来るが、同時に電源投入時/充電開始時にコンデンサから整流器に戻るバックラッシュも増えるので、これを行う場合は、整流器の強化も必要になる。)
(7)真空管のシールド 一部の真空管(初段管)に施されていたMT管の静電遮蔽対策が行われていない事(真空管ソケットに真空管その物を覆ってしまう静電遮蔽専用の金属製キャップがあったのを思い出し、これの効果を実験で確認し、場合によってはこの対策をおこなう)

 ここでは、上記(1),(2),(3),(5),(6),(7)につき対策を行いました。まず(1)です。ーーではまず電源トランスの改造から始めますーー

トランス加工前

(1)トランスのハムノイズ対策
ACハムノイズ対策を施したトランスは、タムラ製の一部など確かに世の中に存在し販売されていますがその分高価です。そこで、このキットのトランスを対象に、アマチュアの特権を発揮して、これをハムノイズ対策品に改造します。トランスはその作用として、ちゃんと電圧変換を行ってくれれば良く、不要な漏洩電磁場は周囲に害をあたえるだけなので、磁界と共に発生する電界をショートさせてしまおうという事です。ここでは以下に示す2点を行います。

a.トランスのコア外周に強磁性体(厚さ0.3mmブリキ板)を10周巻き、ハムプルーフベルトを構成する。(この時、巻き終わったブリキ板の端を100Wハンダ鏝などを使用し半田メッキを行い、コア外周に誘起されるハム成分をショートさせる事が大切)

b.トランスのコイル外周に0.5mmの銅板を9周弱巻き、ショートリングを構成する。(巻く前に各端子の電圧表示、位置関係をメモしておく事!これを忘れると各タップの電圧が分からなくなり、折角巻いた銅板をはがしてやり直す事になる。確かにテスターを使えば確認可能だが、高圧タップもあり、テスター棒などを不用意にショートさせるとトランスの交換になってしまう危険性がある。)


3.実際の改造工作


(1)ハムプルーフベルトは、トランスのコア外周に沿い(薄い鉄板を重ねてある方向と直交する方向に)幅約5.8センチのブリキ板(0.3ミリ、東急ハンズ等で調達)を10周巻く。このブリキ板は30cm×20cmなので、金鋏を使って5.8センチ×30センチのブリキ板をたくさん作る。この後ブリキ板同志を糊しろ約1センチ位を取り、仕上がった後の長いブリキ製の帯の直線性を気にしながら、真っ直ぐ半田付けし、長い帯を作成する。(この後100Wハンダ鏝、ガスバーナ、ハンディートーチを使用するので準備する)

(2)ここでブリキ板を半田付けするのは、あくまでも100Wハンダ鏝で、ガスバーナはブリキ板を加熱するためのみ用いる。この時ブリキ板の色が変わり始める程加熱してはだめである。ブリキ板を少しずつ加熱し、フラックス入り半田を押し当てて、フラックスが溶け始めて来た所でバーナによる加熱を止め、後は100Wハンダ鏝でブリキ板同志を半田付する。ここでブリキ板同志の直線性を保つ事がこの帯をトランスコアに巻いた時の仕上がりに影響する。ハムプルーフベルト(0.3mmブリキ板)の終端処理は少し大変だが、ブリキ板同志を半田付し「べこべこにならないように」する。

(3)ショートリングはコイル部分(幅4.1センチ位?それぞれトランス端子面の上下の端子との間を2〜3ミリ位開け、短絡しないように注意する)に沿って8周巻き、2〜3ミリの厚さのリングを構成する。(ここで銅板を用いた理由は、ブリキ板に比べ柔らかく半田の乗りが良い等、取り扱いがとても楽な事である)トランスのコアの上から銅板を8周位巻けるように、トランスのコイルを巻いてある面の長さを計り、これの8倍強の長さの銅板を用意する。ここで銅板同志を貼り付ける糊しろが約1cm強ずつ重なる。この後、各銅板の両端をガスバーナ/ハンダ鏝等を用いて、まずは半田メッキをする。
 この後、これ等の銅坂同志が真っ直ぐな直線になるように、長い銅板製の帯を作る。トランスのコイルに沿って、コイル上から巻いたこの帯が、これ等の銅板同志がトランス端子面で互いにぴったり重なるように、半田付けを行う。ここの帯を重ねた厚みが、ある程度厚い方がショートリングとしての効果が高いようである。

(4)上記の幅4.1センチの長い帯が出来たら、トランスのコイル面、コアの上から(ハムプルーフベルトとして巻いたブリキ板に直交するように)銅板をトランス外周に沿わせながら、金鎚、マイナスドライバー等を用いて叩き出しながら巻いて行く。

 注意事項:トランス端子面のコイルを覆う4.1cm×?mの銅板同志が互いにきっちり重なるように、導体である銅板とその銅板の上下に近接する各電圧端子間の距離(安全間隔?クリアランス?)を、必ず3〜4ミリ以上確保する事。トランスの電圧端子の上部と下部との間隔は、トランスによってばらつきがあるので、トランスのコイル面に巻く銅板の寸法は、上記のクリアランスを充分確保出来るように各々実測し決定する事。

 以前に巻いたハムプルーフベルトのブリキ板のコアを銅板の帯でこれとは直交させながら、約8周覆う。銅版がコアを覆う部分(片一方のコアのみ)に薄く半田メッキを全周に対して行う。(この時、トランスの片一方のコアと8枚重なった、このコアを覆う銅板の「コの字の形状をした部分」をガスバーナを使いながら優しく温め、重なった銅板の中に半田をしみ込ませ、8周巻いた銅坂同志がコアの部分でハンダを通して導通があるようにする。ここを半田で導通させる事で→厚さ4mmの銅板でトランスにショートリングを巻いたのと等価にさせる。)


ショートリング/ハムプルーフベルト

(5)トランスの再組み立て/塗装
 トランスのコア外周に厚さ3ミリのブリキ板をハムプルーフベルトとして巻き付けた訳であり、トランスのカバー、ネジを取り付けると、当然そのままではトランスの端子面とは逆側のトランスカバーが取り付けにくくなるので、トランスカバーをクランプレンチ等を用いて加工し、エッジを平らにしておく。
 なお、トランスのコア外周を覆うブリキ板は銀色であり、このトランスを組み込んだアンプの完成後に、この部分だけが目立ってしまい、アンプが安っぽく見えてしまうので、トランスを艶消しの黒色耐熱スプレーで塗装する。(トランスの端子面を下にして段ボール箱の中に入れ、艶消しの耐熱スプレー、黒で塗装しておく)

4.トランスのハム対策の検証方法ー

  (ーショートリング、ハムプルーフベルト追加による効果の定性評価方法:ー漏洩磁束の約65%カットに成功ー)

 ここで用いた測定方法は、どこかの規格として制定されているものではありません。定性評価、つまり私の単なる気休めで、わざわざ改造したトランスに対する改造の効果はどれ位あったかにつき、自分なりに納得するための方法として考えました。

(1)漏洩磁場対策を行う前/対策後でトランスから出るACハムノイズ量を計測し比較する。この方法として、漏洩磁場対策を行う前と、対策後とのトランスの漏洩磁場を磁気センサーを用いて計測する必要がある。この方法として、ムービングコイル型のダイナミックマイクを磁気センサーとして使用した。次にこのマイクの発生電力(AC波高値)をACミリボルトメーターで直読し、トランス改造効果の検証方法として用いた。(ただし相手はマイクロホンなので、音による雑音の影響(ここではただの外乱)を無くすため、深夜に計測を行った)

(2)漏洩磁束対策を施す前のトランスのコイルの電圧端子面にマイクを固定し、(トランスのコイルから10センチ)、そこで拾ったマイクの信号出力、つまりACハムノイズつまり磁界の変化を電圧の変化として、ACミリボルトメーター(KENWOODVT-181E)で計測したところ1.88mVあった。次に漏洩磁束対策を行ったトランスのハムノイズを、上記の測定方法で計測したところ0.65mVとなった。つまり、ハムノイズを約65.4%カットする事に成功した事になる。電磁波(交流ハム成分)は距離の2乗に反比例して減衰するので、このトランスから出る漏洩磁場/電場を減衰させた事の効果は必ずや出てくると考える。

トランス加工済


5.

次に上記の2,3,5,6番ですが、これは1ヶ所1ヶ所実際に配線しながら地道に潰して行くしかありません。アンプ内の電源配線から電磁波を出さないようにする事、つまり、交流が流れるケーブル内には50〜60Hzの交流電流が流れ、このケーブル内を電子が毎秒50〜60回往復する事で、これが50〜60Hzの電磁波(交流ハム)となり、空間に放出されてしまうので、この電磁波を出来るだけ出さないようにする事です。ここで実際に行った対策は、

(1)交流配線部分
 交流の流れるケーブル同志はねじって、1本の少し太い1本のケーブルとし、これを真鍮パイプに通し、かつ、このパイプを真空管ソケットが取り付けられているパネル直近で半田付けしアースする事で静電遮蔽し、ACハムを空間にまき散らさない対策。

(2)電源周りの配線

a.ミニチュア管周りのAC電源ラインの遮蔽用として、上記真鍮パイプを使用するには、実装スペースが取れない。ここは致し方が無いので、ミニチュア管のソケット周りのACの流れる電線(各真空管ソケット間の電源配線ケーブルのみ)に金属箔(ここでは銅箔テープ)を巻き、これ自身に半田付けを行いアースする事で、電線そのものに対して静電遮蔽を施してしまう。ここで電線同志をねじってしまうと、銅箔が剥離してしまうので、銅箔処理をした電線そのものを銅箔テープでパネル下面に貼り付けてしまう。(ただしこのケーブルはAC給電用ケーブルのみとする事。これを信号ラインの配線に使用すると、このケーブル自身に巻き付けた銅箔と芯線がコンデンサとして働き、ケーブルを流れる音楽信号の高音成分を減衰させてしまう事になるため避ける)

b.トランス⇔整流器間はもちろんの事、整流器⇔300Bソケット間も脈流が流れ、不要なハムの輻射原因となる。トランス⇔整流器間は当然電線同志をねじった後真鍮パイプに入れ静電遮蔽を施すが、整流器⇔300Bソケット間はそうは行かないので、アースラインに添わせる、又は側面パネルに添わせ銅箔テープで覆ってしまう。

c.トランス1次系高圧部分(100V、700V)は、セットをひっくり返し、SP出力端子が手前に来る状態で、トランスを設置した方のパネル(左側)に直径5ミリの真鍮パイプを4本蝋付け(半田付け)し、交流1次系、700V高圧配線をねじってこの中に通す。(丁度トランス配線と5AR4間の配線のほとんどを、サイドパネルに蝋付けした真鍮パイプの中を通す事で、静電遮蔽を確実に行う) ー以下にこの蝋付け方法につき簡単に示すー

d.まずはサイドパネル長辺(長さ20cm)の両端から2.5cm辺りに、長さ約15cm直径5ミリの真鍮パイプを4本、サイドパネル長辺と平行、かつ短辺を4等分して設置するべく用意する。この後、これ等4本のパイプを4本共3等分し、幅5〜10mmの線をマジックで塗る。次にサイドパネル長辺を、短辺に平行に3等分し、線幅5〜10ミリの長方形で囲まれた部分3ヶ所(蝋付けを行うポイント)を決め、サイドパネル裏側にマジックで印を付け、これを塗りつぶす。

e.この後、この塗装をカッターで削りながらはがす。この処理を行った後、ここに半田メッキを行う。→要するにサイドパネル内側に真鍮パイプを4本半田付けするため、サイドパネル内側に3ヶ所ほど半田メッキをする。このためサイドパネル内側の塗装を(黒マジック下の透明な塗装も共に)カッターなどではがす。

f.サイドパネルの半田メッキ方法 (ここではガスバーナを使うので、ガスの炎が周囲のものを焼かないように細心の注意が必要である)
 以下の作業を行う場所は石畳、またはコンクリートブロック等を用いて、耐熱遮蔽板を作る作業をまず行う。(要するに、これから用いるガスバーナの炎が、周囲の物を焼いてしまわないような作業場所を確保する。)この後、今回蝋付けするサイドパネルをこの作業平面の中心に置き、ガスバーナで少しずつ加熱しながらサイドパネルの温まり具合を確認して行く。ここで100wハンダ鏝を共に暖めておき、サイドパネル平面に半田のフラックスが解け始める位の温度まで、ガスバーナでサイドパネルを加熱する。(ここでもくれぐれもバーナでサイドパネルを加熱し過ぎないように注意する。加熱し過ぎるとサイドパネルの色が変化し、ハンダが乗らなくなる)この後、100wハンダ鏝を使用して半田メッキを確実に行う。これが出来たら、サイドパネルが冷えない内に、先程の真鍮パイプの先端から2cm位を半田メッキし、パイプをラジオペンチで保持しながらサイドパネルに押し当て、半田付けする。同じ要領で真鍮パイプ4本共サイドパネルに確実に固定し、これが冷めたら、AC1次系、2次系の100V、700V配線ケーブルをねじりながらこれ等のパイプの中を通し、サイドパネルを固定し、5AR4⇔トランス間の配線を行う。

 注意事項:上記の真鍮パイプは両端共(8箇所とも)確実に面取りを行い、高圧電線が引っ掛からないようにする事。ーーここが不十分だと、100V,700V系の配線を傷つける事になり大変危険である!

高圧配線

(3)チョークコイル⇔ブロックコンデンサー間もトッププレート裏面に直に半田付したパイプの中を通し、交流ハム成分に対する静電遮蔽を施す。トランス2次系(ミニチュア管向け)も、ミニチュア管ソケットの直近までの配線は、これを真鍮パイプに入れて・・・と考えたが、丁度パイプが無くなった。そこでブリキ板を丸めてパイプを作り、これをトッププレート裏面に半田付けした後、この中に交流2次系(ミニチュア管用電源配線をねじったもの)を通した。

チョーク/MT管周り

(4)真空管ヒーター周りの配線
 ミニチュア管のAC給電部は、ここと直近のアースライン間に0.01μFあたりのコンデンサを実装し、信号ラインにACを流さないようにする。
 なお、部品実装面の写真からはフイルムコンデンサが確認出来るが、実際に使用しているのはセラミックコンデンサ(文章中のもの)である。フイルムコンデンサをパスコンとして使用した場合、ACの漏洩電流が大き過ぎる事を確認し、これが原因となって問題が起きるといけないので、上記セラミックコンデンサに交換した。

(5)電源部分(B電源強化)
 場合によっては電源部分を強化する必要がある。B電源を強化する事により、音質上での余裕は出て来るが、同時に電源投入時/充電開始時にコンデンサから整流器に戻るバックラッシュも増えるので、これを行う場合は、整流器の強化も考慮しなければならない。この前秋葉原のジャンク屋に行った所、500V220μFのケミコンが1個あたり100円で売っていたので、十数個購入し、その中の3個をB1,B2,B3強化用に使用した。

 → 5AR4⇔直近のコンデンサ、チョークコイル1次側は、絶対オリジナルのままにして置く事。(5AR4のカソード側に接続されているチョークコイル1次側のコンデンサの容量50μFの静電容量は絶対に増やさない事!ここの容量を増やすと5AR4を壊します)

6.

後は、分かりやすい実態配線図面を含むマニュアルに沿って、1工程ずつ確実に組んで行く事です。このキットは、SV9Tキットなどの作りがいのあるものに比べたら、部品配置もゆったりとしていて、とても作り易いです。この後、各部分の配線状況につき紹介します。

MT管周り

 ここでは、銅箔テープの内側の電源供給ケーブルに銅箔が巻いてあり、これとトッププレートとを半田付けしてある。ここで電線から出る電磁波をアースに落としている。

300B整流器周辺

 ここでは、AC1次配線は直径5ミリの真鍮パイプ内に電線を捩りながら通し、真鍮パイプその物をアースしている。

全配線


7.完成/動作確認、調整


 添付のマニュアル17/18、18/18に沿い通電確認、電圧確認を行う。全項目さっと調べ、部品取りつけが間違っていない限り、設計値±10%以内に落ち着く。
 実際の無信号時交流ハム等の計測/調整は、通電後1〜2時間ほどした後計測する。


8.真空管のシールド


 真空管アンプの配線面の静電遮蔽を完璧に行った結果、アンプ調整時に、無信号状態で無信号ハムノイズを計測してみた所、両チャンネル共3mV近く出ていた。アンプ内部の電気配線が原因でACハムノイズの増加する事はないはずなので、暫く悩んだ。ここで、ふと以前、真空管(MT管周り)のシールドに関係する実験を行った事、昔秋葉原のジャンク屋で購入した特殊な真空管ソケットがあった事を思い出しはっとした。これは確か瀬戸物製の9ピンMT管のソケットで、真空管をソケットに実装した後、真空管自体を金属製のキャップで覆ってしまう構造になっていた。(要するにゲインの高い真空管を高密度に実装する時に、他から電磁波の影響をもらわないように、真空管ソケットの遮蔽用端子に金属製キャップも接続されるようになっていた)

 この事を思い出している内にピンと来た。もしかしたら、アンプ内部(配線面)の電磁波の静電遮蔽はかなりうまく行っても、逆にトランス改造が原因で、コア周りに取り付けたハムプルーフベルト→強磁性体→(厚さ3ミリと等価のブリキ板)が悪さをし、アンプの部品取り付け面、つまりトランスのコア面から50〜60HzのACハムノイズが大量に漏出し、これを小信号増幅用のMT管が拾っているのではないかと。

 そこで、アンプの横にあった金属片(ブリキ板)をつまみ、12AX7に近ずけて行ったところ、ACミリボルト計の針がどんどんと上昇して行った。しかしこのブリキ板の端面をMT管ソケットのアースに触れた途端、ACミリボルトメーターの針がスーッと下がって行った。要するに、MT管周りのAC的な遮蔽がしていない事が、このアンプの無信号時ハムノイズが下がらなかった原因であったようである。

 次に手元にあった0.3mmブリキ板で静電遮蔽板を作成する事とした。6BQ5は、高さが約7cmあるので、手元にあった0.3mmブリキ板を7cm×20cm切り取り、長方形の長辺の両端から共に3cmの所で、ブリキ板の長辺に直交する線を引き、この線に沿ってブリキ板を手前に90度起こす。(手前に折り曲げる)

 この後、4cm×7cmのブリキ板を4枚用意し、これも長辺から幅1cmの所に線を引き、これも90度曲げて糊代とし、先程の14cm×7cmの遮蔽板の中に、この遮蔽板をMT管ソケットが4個連なった所に縦に設置した時、先程作成した、7cm×3cm(7cm×1cmは糊代)のブリキ板を、それぞれのMT管から5mm〜1cm開けた所で半田付し固定する。また、全部で4本のMT管を囲む小さなブリキ板の付いた、7cm×14cmのブリキ板を、MT管ソケット上部(MT管と300Bソケット間)のネジ4本と、遮蔽板をMT管ソケットの左右の部分の外側に差し込む事で固定する。その他の7cm×3cmの合計4枚の小さなブリキ板もMT管側面に固定し、合計10箇所を半田付けし、固定する。(これでMT管4本に対して、アンプ前面からの方向を除く3方向(左/右/後方)から影響を受ける電源トランスからの電界の影響に対して確実な遮蔽が出来るはずである。(静電遮蔽用の専用ソケットは4本以上持ってはいるが、またMTソケット周りの配線をやり直すのはいやだったのでこのような静電遮蔽を行った)

遮蔽板表

遮蔽板裏

 この作業を終えてから一服し、再度アンプの無信号時ハムノイズを計測した所、0.38mV〜0.4mVの範囲に入っていた。


メーター1


9.

最後に、MT管によるアンプの音質の違いについて考えてみたい。アンプの音は、アンプの出来、真空管、アンプとスピーカーとを接続するケーブル、スピーカー、そしてこれを聞く人によって如何様にも変化する。ここで、アンプの音質を決定する4つの要素の内、スピーカー、スピーカーとアンプ間のケーブルは変えずに、真空管のみ差し替えた時の音の特徴を私なりに考えてみた。(音による感じ方、「良い音」、「きれいな音」の感じ取り方は人によって全部違うので、「これが一番!」というのはないと思う。ここでは私なりに感じた音の傾向につき書いてみたい)

 初段12AX7をソブテック、またはEIElite、6BQ5をソブテック製にすると少し暖かみのある音質になる様に感じた。次にここを全部松下電子製にすると、音がカチッとして、かつ音が澄んで来るようである。初段管を松下電子製、6BQ5を東芝製にすると、音にどこか暖かみとパワフルさが出て来るようである。自分としては、松下電子製の真空管の音が合っているような気がする。

 アンプの全体的な音の傾向としては、SV275のスベトラーナ製KT88を実装した時の音の傾向を少しあっさりとさせたような音のような感じ・・・かも知れないこのアンプの松下電子製の真空管のエージングがやっと済んだので、これから休日の朝など、mini825モニタと共に寝室で充分に活躍してくれる事を期待している。


アンプ全景

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