Tube A Go Go!!!
by S藤さん

第1回 真空管サウンドとの出会い



さて、ぼくが「真空管オーディオ」と出逢って、その「魅力的なサウンド」ノックアウトされて今年で丸々三年の月日が経つ訳ですが。

その前に此処に至るまでの経緯を説明しなければいけません。


ぼくは、もう、かれこれ約二十年前から音楽制作を生業としています。音楽制作と言っても実に様々な業種、ポジションが有りますが「シンセサイザープログラマー&マニピュレーター」と言う分野で、ハッキリ言いまして「デジタルバリバリ」でこの世の最先端のデジタル音声処理技術を用いて「音楽制作」していて様々なアーティストの創造のお手伝いをさせて頂いています。
これからお話しする「真空管」と云う世界とは全く真逆の「対極」を成す世界に棲んでいます。。。

分かり易く言えば「打ち込みで音楽を創っています」ってヤツです。(笑

そのぼくが何故、真空管アンプにのめり込み、挙げ句の果てには「キット屋倶楽部」にまで寄稿する事に成ったかをお話し致します。

そして、真空管オーディオをこよなく愛して止まない人、また、これから真空管オーディオの世界に踏み込もうとする方たちの参考に多少なりとも成れば幸いと思います。

さて、そのきっかけの始まりはすごっく単純で有りまして、ミュージシャン、音楽エンジニア又はオーディオに詳しい方々にはよくご存知のスタジオモニターの定番中の定番の「YAMAHA NS-10M」と云うスピーカーが「製造中止」に成ると云うメーカーからのアナウンスが有りました。

それは今から10年位前の事だったと記憶しています。

そして、この「YAMAHA NS-10M」と云うスピーカーは良くも悪くもというより世界中の録音スタジオには必ずあると云う業界ではスタンダード中のスタンダードのスピーカーで有ります。

良く、TVでミュージシャン等がスタジオでインタビューされる時にミキシングコンソールの上にちょこんと乗っかっている「真っ白なコーン紙」のアレです。といえば分かり易いのかも知れません。

その、あれがそのスピーカーのウーファーに用いている「コーン紙」供給がワシントン条約により難しくなったとの事でした。

それまで、何の疑問も抱かず慣れ親しみほとんど盲目的に誰もが使い倒していた「YAMAHA NS-10M」通称「テンモニ」が無くなる???(ぼくは高校三年の時から愛用していて、現在まで自宅でもこれでした)

「そっか〜無くなるのか、、、?、、、じゃ、代わりは?何になるの?この世界」ってことはボクだけじゃなく周りのみんなも思っていた様でした。

そして、なんだか心の支えが無くなった様な、そんな感じです。。。


「しかっし、よ〜く考えてみたら不思議っていうか変だよね、世界中で何千何万と云う機種のスピーカーがこの世に満ちあふれているのになんで、この世界だけ「テンモニ」なの?という疑問が今更ながら湧いて来たのも事実です、、、

「でも、もう無くなるんだからしょうが無い、なんか探さなきゃね」という事で国内のメーカー、海外製品の代理店に片っ端から連絡を取りまくって、スタジオにプレゼンを掛けに来て頂きました。(業界人はこの辺のフットワークが妙にカルいヤツが多いのです)(笑

まあ、大体「テンモニ」と同じくらいのいわゆる「ブックシェルフ型」ってヤツですね。それを、トータル一週間、機種で言うと40機種ぐらいも聴いたでしょうか。

様々なスピーカーが有りました。従来のスピーカーに加えアンプ内蔵アクティブ型、サブウーハーとセットの2.1型、パッシブラジエター式

そして、ゲンコツサイズで有りながら驚異の重低音が出る例のアレまで。。。
それをとっかえひっかえ、またとっかえひっかえの日々。

他の人は超真剣に試聴していましたが正直ぼくは飽きて来て居ました。(元来の飽きっぽい体質も加味されています(笑

サウンドも千差万別バラエティーに富んでいて、、、てか世の中の人はこんな多種多様な音で音楽を聴いていたんだなと、、、感心しきり、、、


「だったら,何でも良いじゃん」と自分勝手な理由を付けたりして。でも、基準と成るべきモノが無いのは困る。

でも今更「オーラトーン」ってのもあり得ないし、しかもそれさえもとっくに製造してないし。

という中で全体的には結局「GENEREC」に落ち着いたみたい。。。何だか張り切っていた分、がっくり、、、

というのも「GENEREC」と云うスピーカーは確かに分かり易く集中できる音では有るが長時間(10〜16時間)聴いているとぐったりと疲れる感じがします、というかグッタリするのです。何だか耳に張り付いて来る感じというか、、、

ま!でもみんなが決めたのだから従っておく事にしましょうか。。。


「でも気になるなぁあのチビッこくてやたら元気のいい奴、、、しかもデジタルアンプで駆動だぜ、デジタルなオレにはピッタリかもデザインも近未来的でスタイリッシュだしさ、この大きさならどこででも持って行けて便利そう」

「決めたぞオレ!これで音楽創る!」

自宅で使っていた大飯食いの業務用アンプ「YAMAHA PC2002」と「テンモニ」を早々に友人に譲り渡し


「BOSE Micro Music Monitor M3」を発売当日と同時に張り切って買った訳ですが、、、


腰を据えて聴いてみると意外や意外いつもの使っている「楽器」「シンセ」からはアリもしない重低音が出て来てしかも、よく聴くとご丁寧にピークを押さえるためのリミッターまで効いていてアタマを押さえつけられてしまって居るではないですか。。。

ピアノもやたらサイズがでかく感じベースのボディーは勿論ネックの長さまでどこまで有るのよ!ってな感じです。。。

「縮尺が違う〜〜〜〜」「勝手に台本変えんな〜〜〜〜」

しかも、となりの部屋まで小音量にも関わらず重低音がまわってしまって、家族にもすこぶる評判がよろしく無い、、、更には「ネコ」まで走り出す始末。

「あっちゃ〜失敗か、、、これ、、、」

    「BOSE憎けりゃ袈裟まで憎い」。。。

昔の人はよく言ったものです。。。全くその通りで、もう、嫌と思ったら視界に入るのも嫌です。。。

と云う事で早々に段ボールにしまって「ヤフオク」に出してしまえ〜〜〜。。。

    「イイ人そうな人に落札されるとイイなぁ。。。」(その後、 定価で落札されたのはラッキーでした)

「それを元手に違うヤツを買うど!」
「でも、ジェネレックだけはイヤだ!」
「そうそうに揃えないと今、ウチには再生装置が無いじゃん、、、」



そして、それからしばらくの後、全国ツアーからの帰り道に何気なく立ち寄った目黒駅前の「パイオニアのショールーム」でそいつと巡り逢いました。。。ほんとに「偶然」。。

パイオニアのショールームなのでパイオニア製品だらけなのはアタリ前ですが、

なにやら係のオネーさんが熱心に説明してくれていた「ウィスキー樽」を再利用して組上げたと云う新製品のスピーカー「ピュアモルト」音もなんだか気持ちがいい。

その繋がっているその先にはナント!!!「他社製品」の「アンプ」が繋がっているのでした。しかも「真空管」???今時???

ぎゃはは、これじゃ〜、オネーさん「TOYOTAのクルマにNISSANのエンジン積んでTOYOTAのショールームで売ってる様なもんだね」

「はい、私どもは良い物はより良くお使い頂く為のアイディアをお客様にご提供致しています。。。」

そっか〜〜〜、、、そ〜いえばボクの「MacBook」もAPPLEなのに「Intel」積んでるもんな。。。

とみょ〜に納得。。。


そして、そして、肝心のその「サウンド」はと云うと。。。

真空管なんて古くさい前世紀の遺物的「デバイス」、全くアテにしてなかったのですが、、、

出てくるサウンドは「クリビツテンギョウ!」「インド人もびっくり!」


で、何とも言えないような、それぞれの楽器が生き生きとして煌めいて聴こえて来ました。。。

演奏者の気持ちまで手に取る様に聴こえて来る感じです。。。

なんだか魔法に掛かったかの様です。。。

「あぁ、リアルってこんなことのこと言うんだ」
「心地いいな」「サラサラのシルクに頬ずりしているみたいだ」

目から鱗が落ちてしまいました。。。完全に!

まさかの展開です。。。
冷やかしがてらに入ってみただけなのに、、、

そしてオネーさん(メガネ掛けていて、キツそうで結構、ボク好み)にお願いして、日常、聴いている「音源」を試聴して見る事にしました。。。

ジミヘンの「リトル ウィング」です。イントロのギターで完全ノックアウトギターアンプそのものの音です。

スピーカーとスピーカーに置かれた真空管アンプのボンネットの上に「チビッコなジミヘン」が立っている様です!

定位感もハッキリくっきり、リバーブ感も最後の最後まで聴こえる。。。「真空管アンプ」の先入観は簡単に崩れさって行きました。。。

「イェーイ、真空管さいこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜これ」。。。

その瞬間にはボクの心は決まっていました。。。



「ぼく、これ欲しい、、、」

「こちらのスピーカーはペアで96,000円で御座居ます」。。。

「いや、こっちの真空管アンプの方だよ」

「こちらのアンプは20,790円で組み立てキット式になっています」

お〜お、二万ちょっとかネットショッピングだともっと安く買えるな、、、よしよし。。。



んで???なに???キットって???


え〜〜〜〜〜!自分で組み立てるの???(因に、完成品は36,540円なんだってさ!!!)


もしかして、ハンダ付けってヤツすんの???

が〜〜〜ん、世の中の苦手な行為の一つが「ハンダ付け」、、、産まれてこの方旨く行ったためしがないハンダ付け。。。

しかしもう、あのサウンドを聴いてしまった以上、もう後戻りは出来ない様な気がしました。。。

メーカーと型番覚えとかなきゃ。

「ELEKIT TU-870」か、、、
http://www.elekit.co.jp/material/japanese_product_html/TU-870.php

なんだ、「エレキット」じゃん。。。
なんだかなつかしい響きだな。。。
むかし、、、お風呂ブザー作った様な気がする。。。(失敗して、シビれた、、、(爆


「このスピーカー、スッゴイいいじゃん!オネーさん又来るね!」と早々に帰路につき「ELEKIT TU-870」をネットで検索、最低価格を調査!!!

あははは、有るじゃん「15,600円」で。。。速攻「ポチっ」!!!

と、そして、次の日には来ていました。。。(オプションパーツ&消費税&送料&代引き手数料を含めなんだかんだで18,950円は掛かってしまった、、、が、、、)

でも、ネットショッピングは便利だな。。。二日後の朝には到着。

外箱には「プンアーワパオレテス管空真」と書いてある。。。なかなか凝ってるじゃん。。。

空けてみたらやっぱりバラバラの部品だらけ、、、


更には、「半田ごて」と「ハンダ」がウチには無い事に気が付いた。。。

現場には半田ごてなんてどこでも転がってて、旨くおだてれば作ってくれそうな人たちがゴロゴロしてんだけどな、、、今は現場は無いし失業中だし、、、自力で作るしかないか、、、

よっしっ!!!半田ごてセット買ってこよう。。。ルンルン。。。

そして、格闘すること6時間(取り説に製作時間6時間書いてあった通り)あまり。。。

とっても、易しい取り説に従って作業。。。(ハンダ付けの虎の巻、なる物まで付いていて至れり尽くせり)

「おお、これが真空管かカワイイな」

そして、朝には一応完成し、おんぼろの「オーラトーン5C」スピーカーを繋ぎ電源のスイッチを入れて真空管の明かりがオレンジ色に「心のともしび」の様に灯って来ただけで「感動」。。。(涙

やがて、一分後に左右のスピーカーから「カーペンターズ」の「Yesterday Once More」じんわり、やんわりと流れはじめて来た時には、もう涙が出て来ました。。。

「居るよ、立ってるよ、カレンが、歌ってるよ」「これだよなやっぱ」
「聴きたかった歌声がそこに在る」

    「はっはは、俺も、やれば出来る子なんだ!!!」(爆

みんなにもこの感動を味わって貰いたいな。。。

普段は滅多な事で家で「音楽」は聴かなかったボクですが、以来、ずっと流しっ放しです。。。

「真空管アンプ」で聴く音楽は不思議と疲れない感じで、ずっと聴きたくなる感じです。。。
そして「ネコ」もその前ですやすや寝ています。


うんうん、満足、満足。。。

出力は「2W+2W」とは思えない充実したサウンド。。。理由は良く解らないけど、とにかく音が気持ちいい。。

ボリュームも13時の位置で、なんだか精神的にもいい、石のアンプだとせいぜい10時ぐらいしか上げられなかったのにね。。。うちの「オーラトーンの5C」もいい相棒に巡り逢えて喜んでいる様です。。。(この後、5Cにある悲劇が襲いかかる訳ですが、、、この時点では知る由も有りません、、、


とまぁ、全く、いい週末を過ごしました。。。(笑


そして、たぶん、「物語」はさらにつづきます、、、

皆さん宜しくお願い致します。









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