キット屋倶楽部
SV-9T の製作記」

開梱
梱包を解いて並べてみました。 以外とパーツが少なく感じましたが、これ以上あるととてもではないですが、本体に収まり切れません。 全体に比べて、特に電源トランスの大きさが目立ちます。

カスタマイズ(その1)− 真空管マルチ化
左がキット付属の6GW8です。AWV-Japanのプリントがあります。
右は某オークションで入手した14GW8です。無印で東欧製らしいです。
この14GW8という球は、6GW8の兄弟的な存在で、ヒータが14.5Vという他は基本的な仕様は6GW8と同じです。 今となってはかなりの高額となってしまった6GW8に比べて、割合安価に入手できるところがあります。
大橋店主にメールでお尋ねしたところ、「9Tの電源トランスは12.6Vで、2本ずつシリーズ接続することに より定格の6.3Vに落としているため、パラレルに接続すれば12.6Vは出せますよ。」と教えていただきました。 真空管の定格では14.5Vですが、12.6Vで動作可能と聞いていますので大丈夫だと思いました。 あとは電流ですが、一本0.3Aを総パラとしても1.2Aとなり、電源トランスの耐電流量が1.6A以下と いうことでトランスから煙りが上がることはないでしょう。ちなみに6GW8は0.7Aの2パラなので1.4Aです。
今回はヒータ回路にスイッチを設け、この両真空管を差換えて楽しめるアンプにしたいと思います。 しかし、恥ずかしいですが、キットを説明書通りに作ることはできても、電気の知識はまるでありません。 勤務先の先輩でありますT氏に基本知識を教えてもらいながら、素人ながら設計してみました。
配線図を最後に載せております。

カスタマイズ(その2)− 三極−五極マルチ化
キット屋倶楽部でもお馴染みの「加藤モータース」様のアイデアを頂き、三極−五極の切換えにも挑戦しようと思います。
かねてから五極管の三極結線にも興味があったのですが、この製作記を拝見して非常にやってみたくなりました。
三極−五極の切換えと、真空管の切換えに必要なスイッチ達です。
 ・極切換え用の「3接点×2回路」2個 (写真左上と中)
 ・極切換え用の「3接点×1回路」1個 (写真右)
 ・ヒータ切換え用の「3接点×2回路」1個 (写真左下)
切換え回路図を最後に載せております。

カスタマイズ(その3)− DALE巻線抵抗
三極側の入力信号用として新たに追加する抵抗(100オーム1/2W)には、DALEの巻線抵抗を準備しました。
同時に五極側の抵抗(2.2kオーム1/2W)も同じグレードで揃えました。

カスタマイズ(その4)− 入出力端子
入出力端子を変更します。
RCA入力端子は金メッキタイプを使おうと思います。
また、この9TのSP出力は兄貴分の275を継承したフロントタイプとなっています。 これはこれで雰囲気があるのですが、実用的には少し太めのSPケーブルを使う 場合に工夫が必要となり、できれば顔の部分をスッキリさせるために バインディングポストをリア側に増設しようと考えました。
ハッキリ言って、この穴加工が一番大変でしたが...

カスタマイズ(その5)− テフロン線
トランスからの線や、下部の電源部と上部の増幅部を接続するライン以外は、テフロン線を使うことにします。 固いので形を整えてからハンダする等、手間がかかりますが、少々熱をかけても溶けないので、逆に初心者の 私にとっては扱い易かったりします。ただし、私の持っているワイヤストリッパーでは表面が滑って 芯出しできませんでした。
今回は銀メッキの撚線を入手しました。

穴加工
端子およびスイッチ用の穴の加工を行います。
まずフロント下部の入力端子用の穴ですが、準備した物の方が径が大きかったので、ドリルとヤスリで広げました。 次にヒータ切換えスイッチ用の穴を上部に一ヶ所開けました。 (三極−五極の切換え用のスイッチ3つは放熱用の穴を少しリーマーで広げる程度で使えます) でも、何だか硬くてなかなか開けられません。かなり質の良いステンレスが使われている様です。 鉄工用のドリルでも刃が立ちません。後になって知ったのですが、ステンレス用のドリルが別に売られている みたいです。でもこのステンレス用を使ったとしてもハンドドリルでは厳しいらしいです。
細いドリルから段々と大きくして行き、何とか開けられました。 リーマーで仕上げますが、これも刃がボロボロになってしまいました。
こんな状態で、リアのバインディングポスト用の穴を4ヶ所も開けようとするのですから無謀ですよね。 写真は、グッと力を掛けた際に作業台ごと倒れてできた大きなキズ跡です。
即座にペーパーと研磨材で何とか目立たないくらいにまで処置できたので、ホッとひと安心です。

切換えスイッチ
シャーシの保護シートをハガして、切換えスイッチを取りつけました。下からはこんな感じです。
端子が小さいので配線に不安が残りますが、スペース的にはこれが限界でしょう。

切換えスイッチ
上からです。左上のスイッチが穴を増設して取りつけたヒータ切換え用の物です。
本当に美しいシャーシだと思います。

トップ部の部品取付け
トップ部にチョークコイルとアウトプットトランスを取付けます。 スピーカ端子をリアに配置するため、共締めするアースの位置も変更しました。 ソケットとラグ板を取付け、配線変更に伴うラグ板の増設も行います。 ネジ止め剤も使用しました。

フロント部の部品取付け
細かい部品が多いフロント部も出来ました。
今回は使用しないSP端子ですが、ダミーとして取付けます。

外装完成
ボリュームノブや配線後に設置するバインディングポスト以外の外装が完成しました。
いい感じですね。追加したスイッチ類もあまり違和感なく収まっていますし、金メッキ端子も ほど良いアクセントとなっていると思います。
このトランスのカバーが外れる日を楽しみに製作を進めて行きます。

電源部の部品取付け
下部のベース部分にインシュレータとラグ板を取付けます。 電源トランス、シールド板、ブリッジダイオードを順に配置していきます。 配線は上部の増幅部からの接続を考えて後回しにします。
この3日後、インシュレータをキット屋さんの「真鍮&ステン インシュレータ」 に交換しました。

ヒータ配線
ヒータ回路の配線が完了しました。
写真では非常に分かり難くてスミマセン。
スイッチの端子が小さいので、複数の線が集中する箇所ではラグ板の効率を考えながら配線しました。
スイッチ切換えによる導通確認をしたところ、正常に配線できている様です。果たして設計通りに電圧が かかるでしょうか?不安ですが、楽しみでもあります。

ACラインと入力ラインの配線
フロントまわりのACラインおよび入力ラインの配線ができました。
出力側はリアで、バインディングポストの突起がソケットまわりの配線の際にやりにくくなるので、 一番最後に配線します。

エージング
オーディオの恩師でもあるO様に、SDサウンドの「SV-2」を譲り受けました。 これは、バルブのチェック機能とエージング機能を兼ね揃えており、そのエージング自体も2段階に 行うことが出来ます。ヒータ電圧を定格の半分にして6時間、定格にしてもう6時間、更にB電圧をかけながら 6時間、と古い真空管をじっくりと目覚ますには重宝する機械だと思います。
アンプ制作中の横で、球のエージングも進めておきます。この灯火が表現してくれる世界とは...

増幅部まわりの配線
CR類取付け前までの配線が終わりました。
何だかかなり複雑です。今回はテフロン線の種類も少なく、色分けすることが出来ないため、配線状況を 余計に分かりづらくしている様です。

スイッチ周辺
三極−五極の切換え用のスイッチ周辺の拡大ですが、ゴチャゴチャしてて何だか分かりませんね。

抵抗取付け
一部を除き、抵抗の取付けが終わりました。
ラグ板の4本の抵抗がDALEの2.2kオーム1/2Wで、切換え用のスイッチから6番ピンへの抵抗4本が 同じくDALEの100オーム1/2Wです。

アクロバット配線
配線や部品が密集しているため、抵抗の足は全てエンパイアチューブにて絶縁しておきます。
非常に狭く、アクロバット的なハンダワークを強いられる箇所が多くあります。 この時はテフロン線のありがたさがよく分かりました。少々ハンダゴテが線材に触れても、焦げたり溶け たりし難いのが嬉しいです。
元々、制作の難易度の高いアンプをより一層複雑にしてしまったことに、少しだけ反省の念がよぎります。

コンデンサ取付け
コンデンサの取付けが終わりました。
抵抗と同様に、足にはエンパイアチューブを使用し、部品の干渉によるトラブルを防止します。

入力配線
RCA入力端子とボリュームへの配線で、シールド線を使用します。

出力配線
バインディングポストを取付け、端子への配線を行います。
シャーシに穴を開ける前に、念入りにコンデンサの位置等を考慮した結果、「ここしかない」 という間隔に収めることが出来ました。ただ、このナットを締め付けるのにはスリムなスパナと 根気が必要ですが。

電源配線
ベースの電源部にコンデンサやスパークキラー等を取付け、ブリッジダイオードにも配線を施します。
交流部分は丁寧に撚ります。

ドッキング
電源部と増幅部の配線を行います。
最終確認の後、電源コードを接続し、真空管は差さないで電源を入れてみます。 異音や異臭、発煙なども無いのを確認し、電圧チェックに進みます。
真空管が無いため、測定電圧は多少高めになりますが、一応OKの様です。 ヒータスイッチを切換えて電源を入れ直し、ヒータ電圧を測定してみます。 パラレル接続の12.6Vはこのままで測定が可能ですが、シリーズの6.3Vは真空管 を差さないと測れません。とにかく12.6Vは正常に出ており、ひと安心です。

完成
出来ました!
毎日、少しずつ進めながら10日間もかけて完成させました。このごろは、出来るだけ作る課程を 大事にしようと心掛けています。「早く聴いてみたい」という気持ちは当然ありますが、のんびりと 好きな時間を楽しむことは素晴らしいことです。仕事を終えて自宅に戻り、夕食の後、机に向かって 作りかけのキットを前に「今夜はどこまでやろうかな」なんて考えているだけでワクワクしてきます。

フロントビュー
とても片手でヒョいと持ち上がるアンプには見えませんね。
この後、それ以上に信じられない音場を体験することになりました。

リアビュー
バインディングポストも美しく、後ろ姿もセクシーでしょう。

三極−五極切換え用スイッチ
合計3つのスイッチを同時に操作します。奥に倒すとノーマルの五極結線、手前に倒すと 三極結線に切り換わります。球が熱い時は別にして、操作性は悪くないです。

ヒータ切換え用スイッチ
真空管とトランスの間にヒータの切換えスイッチがあります。

点火
14GW8から試してみます。
パァぁ! って、真空管の下部がフラッシュの様に一瞬明るく輝きます。 「爆発か!?」思わず電源を切ってしまいました。 (後で解ったことですが、真空管によっては、管が冷えている場合に 起こる現象で、問題は無いようです。)

再点火
先ほどの現象は異常だと思い、ノーマルの6GW8に換えて電源を入れ直しました。
今度は何事もなく立ち上がりました。

音出し
入出力をSV-353に接続して、いよいよ音出しです。
 1) タイタニック(サントラ)
 2) ヨーヨー・マ(ベスト・コレクション)
 3) アート・ペッパー(ミーツ・ザ・リズム・セクション)
 4) ヒラリーハーン(バッハ:シャコンヌ)
乾いた軽快なイメージです。しかし、球アンプらしく倍音感も十分で低音でモタつく所もありません。 中域の押しは実に立派で、中堅クラスの石アンプなど問題にならないくらいに凄いです。 曲によっては高域でキツく感じることもありますが、鳴らし込みによって変化することでしょう。
三極に切換えてみると、高域のキツさも取れ、より繊細感が増してきます。替わりに中域の押しが少し 大人しくなります。この辺はソースや気分によって切換えることができるので、大変便利で楽しい仕様 だと思います。

クラプトン
14GW8のフラッシュ現象の原因が、低温時に下がってしまう抵抗値によるものと解り、6GW8から戻して みます。五極に切換えて上の4枚のCDをランダムに聴きながら、そのスピード感の違いに気が付きました。 「これは!」と思い、2階からエリック・クラプトンの「BALLADS」を取ってきました。
意外とロック・ポップス系が美味しいのです。普段のジャンルとしては、クラシック:ジャズ:声楽: ロック・ポップスで、4:4:1:1くらいで、最後のロック・ポップス系は主に2階にある石アンプで楽しんでいました。 なんとなく、今までのアンプ(SV-501SE、VP-3488、SV-91B)ではあまり聴かなかったのですが、やっとそれに 似合う球アンプに巡り会った気分です。最後の一割を埋める、それは私にとって大きな意味のあることです。 結局、視聴も忘れてこのCD一枚をフルに聴いてしまいました。特に最後のライブ3曲はもう涙ものですよ。
当然の事として、ジャズやクラシックもかなりレベルの高い音を奏でています。
ちなみに14GW8の三極接続は何処かバランスが悪く、いまいちお勧めできません。

小さな巨人
ラックを新調しました。
下から2段目の左側にSV-501SEの横にチョこっと置いていますが、その音の存在感たるや、ソースによっては SV-91Bさえも越える実力を持っています。9T(キューティー)という名は外見だけで、演奏内容はまさに小さな 巨人の称号を与えるに相応しいと言えます。

最後に
本当は、まずキットのまま作り、設計者の音を聴くことがセオリーだと思いますが、今回のような改造は 製作する前から周到な準備をしておかないと、後日にカスタマイズできる内容ではないと判断しました。 (大橋さんごめんなさい)
今回、別途購入した部品代です。
 14GW8 \400 * 4 = \1,600
 3接点×2回路スイッチ \150 * 3 = \450
 3接点×1回路スイッチ \120 * 1 = \120
 Dale抵抗 100オーム \300 * 4 = \1,200
 Dale抵抗 2.2kオーム \250 * 4 = \1,000
 RCA入力端子 \400 * 2 = \800
 バインディングポスト \300 * 4 = \1,200
 テフロン線 16AWG \350 * 4 = \1,400
 真鍮-ステン インシュレータ \4,000 * 1 = \4,000
 合計:\11,770
結果に関しては非常に満足できる内容となり、誰にでもお勧めできるアンプであることは確かです。 話題のiPodとも相性抜群なのでは...?
14GW8の追加発注もできましたので、長い間付き合っていこうと思っています。 機会があればもう一台、今度は切換えスイッチ無しで、14GW8の五極結線のみで作ってみたいです。
ノーマルのキット自体がそうですが、今回の様な改造は全て自己責任のもとで行う事が大前提です。

三極−五極切換回路図 1
「加藤モータース」さまの回路図の考え方を、そのまま使わせてもらいました。
3接点×2回路のスイッチを使って片チャンネル分を改造します。もう片方も同じです。

三極−五極切換回路図 2
こちらは3接点×1回路のスイッチを使い、左右分でひとつの改造です。

ヒータ配線図
ヒータの配線はこんな感じです。
12.6V側がONになると、赤と青が繋がって4番と5番が各々独立してパラレル接続となります。
反対に6.3V側がONになると、青と緑が繋がって2本ずつシリーズ接続することになります。
12.6Vはそのままで電圧が測れますが、6.3Vは真空管を差さないと測れません。


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