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LEGO SPEAKER 第1報
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Y杉さんから、LEGOスピーカー製作記をご寄稿いただきました。ご購入・ご製作の参考にしてください!


  1. 背景
 
     

 「長岡先生のスワン」を作りたい。常に思っていた。しかし、私の木工技術であんなに複雑なものが作れるのか?仕上げはどうするか?ラワンむき出しの木箱をリスニングルームに持ち込むのはいやだ。でも、あのデザインはすばらしい。フルレンジを耳の高さに浮かべて、低域をバックロードで増強する。理想のスピーカーだと考えていた。
どうしてそういう発想に至ったかは覚えていないが、トイレで不意に思いついた。
「LEGO」で作ろう!

LEGOならばデザインは自由自在だ。仕上げもいらない。色も自由。黒いパーツで作って磨いたらピアノフィニッシュみたいになるぞ。想像して喜んでいた。
 私はスピーカーが好きでさまざまなシステムを使っていた。しかしバスレフの遅れた低音が好きになれず、結局たどり着いたのがハセヒロさんのバックロードホーンであった。
バックロードホーンは背圧を有効に利用して低音を増強するすばらしい方式。共鳴現象を用いないので特定の周波数が増強することもなく、バスレフのような空気ばねを利用したことによる遅れもない。実際、すばらしい音でハセヒロバックロードは鳴っていた。が、ひとつ不満があった。音像定位と音場の両立である。この点は小型バスレフにかなわない。
だから「スワン」が作りたかった。

 
  2. 問題点の抽出

LEGOのサイズは高さ約10mm、最小の1X1ブロックで8mmX8mmという形状である。基本の2X4ブロックで10mmX16mmX32mmというサイズ。これでサブロク板1枚作るとなると・・・約5000個!いる。一個10円で購入したとしても5万円かかる。これはコスト的にあわないなあ。
しかたない、ダウンサイズしよう。スリムなトールボーイにして8cmユニットで作ろう。
(LEGOには組み立てる方向性があるので自由なデザインといっても煙突状が製作しやすい)
基本ブロックを4つでチューブ形状を作るとして、400個で1mのパイプになる。教科書にはバックロードは1.5mはほしいとある。2本で1200個。テーパー状に広げる必要があるからさらに数は必要になる。
 ここで問題発生。大量のLEGOをどうやって入手するか?最近のLEGOはパーツ単位では売っていない。プラモデルのようなセットばかりである。
ネットでなんとか部品単位でLEGOを購入できる店を発見し、早速さまざまなパーツを2000個ほど注文した。

LEGOでスピーカーを作るメリットとしては


(1) スロートの長さなど設計変更が自由自在
(2) 失敗しても作り直せる(コスト低減)
(3) インテリアになる

想定される問題点としては


(1) マトモな音がするのか?
 当然プラスチックの音になる可能性がある。ねんどでもつめてダンピングするか。
(2) ブロック間の音漏れ
 密閉にはできない。でもバックロードなら背圧はそれほどないから問題ないか。必要ならば接着しよう。
(3)ユニットの固定方法
 ブロックに穴あけ加工することを考えていたが、ビームと呼ぶ穴あきパーツがあることを発見。M4にぴったりの穴で、これと3mm厚さのプレートブロックで調整して固定することにした。端子の固定もこれで解決。
(4)細長形状の構造強度
 1m近い煙突を作ったら簡単に折れそうだ。これはセロテープで補強しよう。実際補強したら驚くほど強度があった。
(5)地震でたおれる
 足部分に錘をつけて対処しよう。ネットで1.25kgのダンベルのウエイトを多数注文した。筋肉マニアかと思われたかもしれない。
  3. 試作1号機(スリムバックロードホーン)
 
  3−1 ユニットの選択

 8cmユニットで定評あるDIYのマグネシウムコーンを選択した。しかし、このユニットは重い。普通はうれしいことなのだが今回は危険である。TBのネオジマグネットのユニットも用意した。また、実験にTBの5cmユニットも準備した。

 
  3−2 ヘッドユニットの作成

 基本ブロックで12X12(96mmX96mm)の箱を作り8cmユニットを固定した。吸音材は紅茶でいいや。(写真1、2)
底面にスロート用の2X2(16mmX16mm)の穴を付ける。3個のヘッドユニットを作成した。(写真3)
これだけで鳴らしてみる。意外にマトモな音がする。どうも組み立てたLEGOはブロック間の摩擦で内部損失が高いようだ。接着は逆効果だろう。ねんども不要だ。これなら音響素材として使える。確信を得た。

写真1 写真2 写真3
  3−3 設計

 1号機なので綿密に設計した。

形式:点音源型バックロードホーン
使用ユニット:8cmフルレンジ TB W3-926SC
構造:3段フォールディング・コニカルホーン
ホーン長:約1.4m
スロート面積:2.56cm2 (8%)
ホーン開口面積:約66cm2
開口率:26.4倍
H:1008mm W:176mm D:160mm

ホーン開口率の計算グラフを図1に、ブロック設計図の一部を図2に示す。
内部は複雑な段階構造となっており、比較的滑らかな開口カーブとなっている。木製ではこうはいかない。

図1 ホーン開口率 図2 1号機 設計資料
  3−4 結果と考察

完成した試作1号機の外観を写真4〜7に示す。
早速音出し。結果は・・・・失敗!。まったくホーンロードがかからない・・・。
ユニットを変えてもだめ。5cmは問題外。スカスカの低音。なぜか?
そうか・・・細すぎたのか。こんなスリムな形状のバックロードホーンは世の中にない。
効率向上にはパイプの面積が必要と考え、勢いでLEGOを4000個注文してしまった。
黒パーツばかりでどんな大作を作るのかとLEGOショップも驚いたことだろう。
入手には3ヶ月の歳月を要した。

写真4 写真5
写真6 写真7
写真4〜7  1号機外観
  4. 試作2号機(バックロードホーン)
 
  4−1 設計

10cmユニットでできるだけ大型化を図る。また綿密に設計した。


形式:点音源型バックロードホーン
使用ユニット:10cmフルレンジ TB W4-927SC
構造:4段フォールディング・コニカルホーン
ホーン長:約1.9m
スロート面積:10.24cm2
ホーン開口面積:約123cm2
開口率:12.1倍
H:900mm W:160mm D:224mm

設計資料の一部を図3に示す。


図3 2号機設計資料
 
  4−2 結果と考察

 完成した2号機の外観を写真8〜10に示す。手持ちのストロボなし撮影で、黒い筐体のため、きわめて写真写りが悪い点は許されたい。
結果は・・・またまた失敗。ホーンロードがかからない。10cmユニットなのでそこそこ低音は出てきたがホーンの音ではない。
  普通はここであきらめてしまうのであろうが、この失敗はLEGOという素材のせいではない。部品をけちってスリム形状にしているためではないだろうか。
考え方を変えて、LEGOで作りやすいチューブ形状のスピーカーを設計することにした。

写真8〜10 2号機外観
 
  5. 試作3号機(3チューブ共鳴管)
 
  5−1 設計方針

ハセヒロバックロードはどうしてこんなにすごい低音が出てくるのであろうか?ホーン開口部に手をあててみるとすごい勢いで風が吹き出してくる。8cmユニットを用いたアクリルバックロードでも十分な低音が出ているのはこの風のおかげか。しかし、これは不思議だ。本来のホーンの動作は大振幅小面積と小振幅大面積の変換器である。8cmユニットの振幅がこんな風になるとは思えない。もしかしたら共鳴管として動作しているのではないか?両端開口のホーンはλ/2の共鳴管としても動作する。2m長で約85Hz。
もしも共鳴管動作が低音の効率向上に重要だとしたら、はじめから共鳴管を設計したほうが良い。当初、バックロードホーンは共鳴音がなくて良いと思っていたが、これは勘違いなのではないか?

 共鳴管としては一端を塞いで片開放とするとλ/4で共鳴する。1mで約85Hzである。共鳴管の方がずっとコンパクトにできる。ただの管では面白くないので3種類の長さを組み合わせた複合共鳴管とする。ラフスケッチを図4に示す。約100Hz、85Hz、75Hzで共鳴するはずである。
今回から綿密な設計はやめた。LEGOの良さは自由な発想であり、その場の気分で楽しく組み立てることにした。
(実際は2度の失敗で設計するのがいやになった)
ユニットにはTBの8cmチタンコーンをおごろう。

  5−2 結果

 製作した3号機の外観を写真11〜13に示す。青いのは青パーツが特価で安かったからである。


図4 3号機設計資料
写真11〜13 3号機外観

結果は・・・成功である!!
十分な低音が出ている。これは使える。しばらく感動に浸った。
しかし・・・よく調べてみると短い管しか共鳴していない。さすがに100Hz以下は欲張りすぎか。開口部を上部に持ってきたのも失敗である。低音には床の増強効果を狙った下噴出しが基本だろう。上部開口では高域の漏れの影響も大きい。実際定位があまい。
これは作り直さなければ。

 
  6. 4号機(テーパード共鳴管)
 
  6−1 設計

今度の4号機は試作ではない。成功する自信があった。方式は下部開口のテーパード共鳴管とする。共鳴管の長さは・・・試聴して決めよう。これがLEGOの特権である。
10cmユニットを用い、ユニット高さは90cmに固定する。共鳴管は2/3位置でたたくのがセオリーだから高さは約140cm程度を想定した。
当初共鳴管は2種類としてダブル共鳴を狙ったが、最終的には1本にした。共鳴効率には断面積が広いほうが有利と判断したためである。
ユニットはフォステクスの強力10cmを準備したが(写真14)、これは失敗であった。マグネットが強力すぎてオーバーダンピングで低音がでなかった。第一重くて危ない。TBの紙コーンを選んだ。

  6−2 結果と試聴

外観を写真15〜18に示す。黄色いのはブロックが特価で・・・。
その後、PARCの10cmウッドコーンが発売されたので、第一ロットを購入して置換した。(写真19)
このスピーカーは現在でも私のメインシステムとして君臨している。アンプにはトライオードの300Bシングルをつないでいる。
耳の高さに設置された点音源に近いユニットで優れた音像と音場の両立。フルレンジなので、クロスオーバーやアッテネータの影響がなくシンプル。LEGOの十分な内部損失で箱鳴きが感じられない。低音は共鳴管で十分な効率。最終的には管長は125cmにした。65Hz程度の共鳴と思う。
共鳴管は共鳴動作としては十分に早く低音が出てくる。バスレフのような遅れは感じられない。ハセヒロバックロードや市販スピーカーと比較すると低音が痩せている感はあるが、私はこの程度が好みである。(部屋の定在波の影響?で低音が増強される感がある)
問題点としては、若干洞窟音がある。ユニットが後面開放に近い動作なので大音量に弱い
(音量を上げるとf0でばたつきだす)という点があるが、適性音量でゆったり聴くには問題ない。

写真14 4号機組み立て  写真15〜16 4号機外観
写真17〜18 4号機外観 写真19 ユニット置換
 
  7. 5号機(小型テーパード共鳴管)

 ほこりをかぶっていた1号機を解体して5号機を作成した。4号機の縮小版である。
全長1mのスリム共鳴管。今度は一発で成功した。十分な低音感がある(90Hzの共鳴で聴かせるので本当の低音再生ではないが「感」は十分。大切なのはバランスだと考えている)
アンプはKT88のPP(カイン)にして十分な駆動力を得る。定位感は4号機をしのぐ。(写真20〜22)

写真20〜22 5号機外観
 
  8. 2号機の改良

 LEGOスピーカーとしては大型(2本で4500ピース!)の2号機が小型の5号機よりも低音が出ないのはおかしい。どこかに設計不良があるのではないか?
じつは5号機はヘッドユニットにポートを設けて超小型バスレフとしてこれを共鳴管に接続している。(設計図は3号機以来ないのでカンで作業している。同じものが作れない!)
この考え方を2号機に適用したらどうか?
早速ためしてみる。ヘッドユニットをはずしてスロート部分に2X2(16mmX16mm)長さ5(50mm)のチューブを挿入してみる。
結果は・・・成功!。ホーンロードがかかった。
ポートの追加でホーンの駆動力が上がったようである。どうもスロートが太すぎたようだ。不勉強を反省。
このTBのW4-927SCというユニットはアルミのフェイズプラグの効果でトゥイーターのようなシャープな高域が出る。非常に優秀なユニットだと感じている。コーンの素材音が乗るユニットが多いが、PPは癖がなく好みである。
トライオードのKT88シングルをつないで、以降サブ機として活躍することとなった。

 
  9. 6号機(スリム密閉型)

 ほこりをかぶっていた3号機をどうしようか考えていた。
LEGOで絶対に作れないスピーカー。それは密閉型である。ブロックの隙間があるから背圧に耐えない。どう考えても無理だと思っていた。

 
  9−1 活性炭の効果

あるとき、ネットで記事を見つけた。活性炭を吸音材として利用する?
携帯の音質改善に活性炭が利く。低音域の吸音効果があるという。
これなら・・・。早速100均ショップに走って冷蔵庫の脱臭剤を大人買いで買い占めた。
もちろん最新のゲルタイプはだめである。消臭剤には使い捨てカイロ様の袋に収まった活性炭が入っており好都合である。
あんまり連日買いに行くから、よっぽど店の人はくさい生活をしていると思ったろう。
 実験。あまっていた5cmユニットをLEGOの簡単な密閉箱に入れて鳴らしてみる。
LEGOだけでは案の定マトモな音はしない。強い背圧で歪が多く、箱全体が鳴ってなんともひどい音である。低音はもちろん出なくて聴くに耐えない。
活性炭を詰め込む。詰め込んで内容積が減るので本当に効果があるのか半信半疑である。
結果は・・・聴ける。驚いた。低音が明らかに出てきた。砂を詰め込んだようなダンプ効果もある。これはいける。

  9−2 製作と試聴

3号機を解体して再度組み立てる。相変わらずその場設計で作業する。これが無性に楽しい。ヘッドユニットに活性炭をつめる(写真23)。支柱兼用の胴体部分にも3袋つめて密閉型が完成した(写真24、25)。
 音はどうか?・・・想像していたより良い。ちゃんと密閉型の音がする。弾んだような低音。意外に低音も出ている。どうもユニットからの放射だけではなく、エンクロージャ全体が振動して低音を発するようである。だから音像感は後退するが共鳴現象を用いない良さは感じられる。調子にのって支柱部分にも活性炭を詰め込んでみたが、これは失敗。歪が増加した。ある程度の気室は必要なのだろう。
このスピーカーもしばらく活躍しそうである。

写真23 活性炭の挿入 写真24〜25 6号機外観
 
  10. 7号機(小型バスレフ)

 もともとバックロードホーンが作りたくてLEGOでスピーカーを作り始めたのだが、1年でさまざまなトライをしてしまった。多くの経験をし、得た結論は方式が重要なのではないということ。それぞれに良さがある。こうなってくると嫌っていたバスレフに挑戦したくなる。

 
  10−1 デザインコンセプト

 せっかくLEGOで作るのだから独自のデザインにしたい。バッフルは最小にして構造で強度を稼ぐ。ユニットはミクセルから購入したTBのPPコーンフルレンジで決定。
ピラミッド型デザインで底板の振動を緩和するための支柱を立てる。リアダクトのバスレフとしてポートの調整を容易にする。狙いとしてはチューニングをあえて低めに取ってバスレフくささを抑えよう。

  10−2 製作と試聴

 ユニットの固定はお手の物(写真26)。活性炭を3袋つめて支柱を立てる。部屋の消臭効果もあるかな?(写真27)。完成した小型LEGOバスレフ(写真28、29)。
早速音出し。これには驚いた。すごい低音がでる。バスレフ恐るべし。いや、出すぎ。ポートのチューニングを取る。といってもブロックはめるだけだが・・・。
低めにチューニングして試聴。なかなか良い。活性炭の効果か箱鳴感がまったくない。
趣味で内外の小型スピーカーを集めていたが、どれよりも良い音に感じる。親ばかかな?

写真26 ユニットの固定 写真27 7号機製作中
写真28〜29 7号機外観
  10−3 評価
写真30 製品写真?

 7号機の完成で従来不可能であったことが可能になった。これなら持ち出せる!。
LEGOでスピーカーを作り始めた時からぜひ聴いていただきたい人がいた。ザ・キット屋の大橋さんである。プロの耳で聴いて評価して欲しい。ずっと考えていた。初めはおもちゃと思うだろうなあ。でも音をきいてもらえば驚かれるかもしれない。
 きれいに写真を撮り直して(写真30)評価をお願いした。快く引き受けていただき。某日、名古屋までかついで行った。

なんて言われるだろうか?大変不安であった。「ポートのチューニングが低いようですね」
さすがプロ!「すぐに調整します」その場でブロックをはずして再度試聴。
大橋さんが真剣になるのがわかった。・・・
大変高い評価をいただいた。私の設計は間違っていなかった。これはとてもうれしい。
ユニットの良さにも助けられているが、LEGOスピーカーの可能性を認めていただけた。
私はぜひ、このテクニックを広めたいと思っている。
大橋さんの勧めで、いまこのリポートを書いているのである。

 
  11. おわりに
 
     

 私のリスニングルームは実験室のようになってしまっている(写真31,32)。スピーカーの干渉でよい音はしていないかもしれない。聴くより作るのが目的になってしまった。
LEGOという素材を得て、短期間に多くの経験をすることができた。教科書だけではわからない実践である。なによりLEGOで造ることは無性に面白い。
今、8号機を製作中である(写真33)。テーマはコンパクトである。8cmユニットで聴けるスピーカーをどこまで小さくできるか試作中である。
そういえばフォステクスの強力ユニットがあまっていたな。
いつかはフルサイズのLEGOスワンに挑戦したいな。
予算がいくらあっても足りない・・・・。

写真31〜32 実験室?
写真33 8号機外観
 

最後に、私のLEGOスピーカーを評価いただいたザ・キット屋 大橋様に感謝いたします。本当にありがとうございました。

2号機設計資料.pdf [ 71.8KB ]

 
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