キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 第12報
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LEGOスピーカーの製作 第12報

 
     


写真1 20号機 フロント&バックロードホーン・コンパクト

 
  1. フロントホーンにトライ!

 20号機はどうしようか?10号機のときは記念すべきアニバーサリーモデルとして生物デザインに果敢に挑戦して見事に大失敗した。まあ20号機は気軽にコンパクトモデルにしようかな?・・・といってもコンセプトはどうするか。
実は、今まで採用していなかった方式がある。フロントホーンである。
私の考えではスピーカーユニットの前面は何もない空間が望ましい。と思っている。フロントバッフルも不要な振動輻射が生じるので最小面積が望ましいと考えていた。スピーカーユニットの前面に何らかの構造が存在すると壮大に一次反射を起こし、歪みの原因となる。これがそのスピーカーシステムのキャラクターとなるが、歪みはない方が良いだろうと考えていた。だから、1号機からスピーカーユニットの装着されるヘッドユニットは小型キューブで自由空間設置を多くのモデルで実現してきたのである。
ところが、先の19号機でやむをえず設けたフロントフードが多少のホーン効果を持ち、好ましい影響を感じた。よーし、20号機はフロントホーンの採用で行こう。


 
  2.パーツの調達

 LEGOスピーカーを製作するにあたって、最大の問題は何か?・・・実はLEGOブロックの入手なのである。LEGOスピーカーを造るには大量のブロックが必要になる。小型モデルでも2000個以上。大型モデルでは5000個以上使っている。この大量のブロックを購入するのに通信販売を利用しているが、とても時間がかかる。欲しくても同色(ほとんど黒色)の同タイプのブロックは数百単位の在庫が無いのである。一時期米国から個人輸入で取り寄せていたが、コストが2倍以上かかり、納期も1ヶ月以上待たされた。ピンクのブロックで超ラブリーモデルも作ってみたいがブロックの入手が絶望的なのである。
海外ではLEGOブロックを煎餅のように計り売りするショップもあるようだが、国内ではLEGO人口が少ないのか、そのようなショップは無いようである。これを読んだ関係者の方、何とかしてもらえませんか?
 前報のまとめで廃止機種となったモデルが1、3、8、10、13号機の5機種あることを述べた。もちろんこれらの機種は破棄されたのではなく、パーツを全て再利用して生まれ変わっている(実にエコなシステム!)。
1号機は5号機に、3号機は6号機に、8号機は11号機に、10号機は12号機に、13号機は16号機になった。
今回は、再度5号機を解体して再利用することにした。当初5号機は失敗作1号機のパーツで造った小型共鳴管システムであったが、簡易スパイラルピースの挿入で現在はトールデザインの8cmユニットスパイラルホーンシステムとなっている。しかし、スケールでは同種の6号機にかなわないし、簡易スパイラルも無駄な構造が多い。そう、飽きたのである。
これで20号機を造るのに十分なパーツを確保できた。使用スピーカーユニットは1号機から継承された8cmフルレンジ TB W3-926SCである。もう国内では販売していないようであるが、ポリプロピレンコーンの音質が気に入っており、アルミのフェイズプラグもカッコ良い。フロントホーンシステムにマッチしそうだ。マグネットは小型だがネオジウムで強力。小型マグネットはバックキャビティの容積確保からも望ましい。本来ホーン用のスピーカーユニットではないが、低音を欲張らなければ使えるだろう。

 
  3.フロントホーン方式

 これまでフロントホーン方式は歪み付加の可能性から敬遠していた。では、フロントホーンのメリットとは何であろうか?
 フロントホーンは往年の大型フロアタイプシステムに採用例が多い。最近ではPA(拡声装置)用途での採用がある。要は効率向上が最大の効果である。アンプの出力が小さかった頃の高能率システムや大音響が必要な高効率PAシステムで使われている。バックロードホーンでは長いホーン構造で低音域の効率向上を狙うが、極めてショートホーンとなるフロントホーンではカットオフ周波数が高くなり、中域にしか効かない。つまりボーカル帯域が効率向上する。中域は音楽のファンダメンタルであって最も大切である。そして、効率の向上は単に音量の増加ではなく感度の改善でもある。微小信号の再現性が向上すると考えられ、これは明らかな音質向上となる。19号機で感じた魅力はこのような由来かもしれない。
 もう少し考えてみる。ホーンは音響インピーダンス変換装置であって、小面積大振幅を大面積小振幅に変換する。ちょうど大型スピーカーユニットに交換したような効果である。
さらに、スピーカーユニットのコーン振幅による直接空気駆動よりも、ホーンによって空気の振幅が空間放射されるのでロスが少ない。つまり、振動板が空気になったようなもので軽くトランジェント(過度)特性が良いのである。これも音質向上につながるだろう。デメリットとしては音質面のキャラクターの付加以外に指向性の低下(狭くなる)が考えられるが、一人で聴く分には問題ないだろう。
 せっかくフロントがホーンなのだからリアもバックロードホーンで行きたい。フロント&バックロードホーンによる高効率、ハイトランジェントが20号機のコンセプトである。

 
  4.デザインと仕様

 使用スピーカーユニットが8cmなのでコンパクトに組みたい。図1に示すY字型のエンクロージャ構造を検討した。
フロントセクションはフロントとバックロードのホーン開口部とバックキャビティである。リアセクションにはスパイラル構造がインストールされる。各モジュールは前方からホーンモジュール、キャビティモジュール、ターミナルモジュール、スロートモジュール、スパイラルモジュールとなる。今回のようなホリゾンタル組立方式では各段ごとにモジュール化すると製作しやすい。
 ホーンモジュールは上部にフロントホーン、下部にバックロードホーン開口部が配され、厚みは50mmである。キャビティモジュールはターミナルモジュールと共にロート状のバックキャビティを構成し、下方に広がる複雑な空間となる。これは定在波防止に望ましい。ターミナルは横に配置した方が使いやすいが、今回は構造上から上下に配置した。
 バックロードホーンではスロート構造が重要であると経験している。本機ではスペースが無いので上下方向にストレートに8mm×18mmのスロートを96mmの長さで2本設けた。2本に分けたのはダブルスロープのスパイラル構造に対応するためである。
 スパイラルモジュールはD100mm、H128mm、W32mmのスパイラルキャビティを持ち、ここにスパイラル構造を挿入する。
 スパイラルキャビティの狭い空間を有効に利用する構造を考えなければならない。
当初、図2(a)に示すホリゾンタル方向のストレート音道を考えていた。しかし、この構造ではブロックの厚さが8mmあり、無駄なスペースが多い。(b)はバーティカル方向のストレート音道であるが、プレートブロックでは強度が心配である。この(a)や(b)の構造はスパイラルではなくストレートなので音道長は確保できるが180度の折返しが多く、気流抵抗が大きい。また、100mmまたは128mmの音道が続くので定在波が生じやすくクセのある音になるだろう。そこで(c)のスパイラル構造だが、これまでのスタンダードなスパイラル(螺旋階段構造)ではバネ状の構造となり、内部で振動する恐れがあると考えた。
今回は(d)に示すダブルスロープ構造のスパイラルを採用した。詳しい構造は後ほど写真で示すか、パンタグラフ状の構造を対に組んだものである。音道長としてはちょっと短い感じだが、複雑な構造はスパイラル長を拡散してクセが少ないだろう。また、強度も十分である。平均音道長は推定が難しいが全長の3倍、300mm程度であろう。この双対の構造のためにスロートを2本に分けたのである。

<20号機 基本仕様>
・方式:8cmフルレンジ フロント&バックロードホーン
・組立方法:ホリゾンタルタイプ(水平組立)
・バックロードホーン方式:フロント開口スパイラルホーン(ダブルスロープ構造)
・使用ユニット:TangBand W3-926SC(ポリプロピレンコーン)
・外形寸法:W208mm H208mm D290mm
・ホーン開口寸法(開口率):フロント176mm×96mm バック176mm×64mm(39倍)
・ホーン長:平均700mm(内スロート長96mm)
・吸音材:なし

図1 20号機構造図
 
図2 各音道方式
 
  5.構成部品

 写真2に全構成部品を示す。コンパクトシステムであるが複雑なモジュール群となった。
個々のモジュールを紹介しよう。
 写真3はホーンモジュールである。本機から採用したNo20のエンブレムがポイントである。5号機のテーマカラーであった赤色をホーン内面にあしらった。このブロック本当は屋根用だろうなあ。でも強度増加に効いている。
 写真4はスピーカーユニットパーツ。今回も上手くパズルが解けた。強固に固定されている。四方にフロントホーンを付けるスペースがある。
 今回のキーパーツ、ダブルスロープ・スパイラルピース(写真5)。単なる音道の抵抗体の様だが複雑な音道を有し、バックロードホーンのクセを低減する(ハズだが正直ロスが多そう、低音が弱かったら交換するか?)。

写真2 全構成部 写真3 ホーンモジュール
写真4 スピーカーユニットパーツ 写真5 スパイラルピース

 キャビティモジュール(写真6)。バックキャビティと下部のホーン開口をスロート状に変形する。50mmの厚さ。
 ターミナルモジュール(写真7)。上下にターミナル取り付け。厚さ30mm。
 写真8はスロートモジュールである。写真では分かりにくいが、内部に8mm×18mmのチューブが2本互い違いにあり、上下に開口がある。厚さ50mm。
 リアエンクロージャ(写真9)。スパイラルピースを内蔵してスパイラルモジュールとなる。厚さ100mm。
写真10はエンドプレートである。

写真6 キャビティモジュール 写真7 ターミナルモジュール
写真8 スロートモジュール 写真9 リアエンクロージャ
 
写真10 エンドプレート  
 
  6.製作過程

 まずはエンドプレートにスパイラルピースを取り付ける。左右で方向を違えてある。
(写真11)
 リアエンクロージャに組み付けてスパイラルモジュールの完成。挿入には苦労する。
(写真12)
 これにスロートモジュールを付ける。スロートの出口がスパイラルピースの入口と方向が合うように注意する。(写真13)
 リアセクションの完成(写真14)。密度が高いので重くて極めて強度が大きい。内部のスパイラルピースもガッチリ固定されている。まるで無垢の削り出し部品の様で音響的に好ましい。

写真11 スパイラルピース取付 写真12 スパイラルモジュール
写真13 スロート取付 写真14 リアセクション

 キャビティモジュールとターミナルモジュールを組み立てる(写真15)。こちらもモジュールが組み上がって行くと強度が確保される。
 スピーカーユニットパーツを取り付ける(写真16)。バックキャビティが狭いのでマグネットの大きなスピーカーユニットには交換できないな。今回も吸音材は用いない。
 ホーンモジュールの取り付け(写真17)。カッコになってきた。
 フロントセクションの完成(写真18)。本当はこのサイズでまとめたかったが、低音確保にはリアセクションが必要である。

写真15 ターミナル取付 写真16 SPユニット取付
写真17 ホーン取付 写真18 フロントセクション

 リアセクションと合体(写真19)。ここで前後に分けたのはメンテナンスのためである。
なるべくならいじりたくないが、一度で成功した例は少ない。
 インシュレーターを取り付けて完成した20号機(写真20)。赤いホーン開口にインパクトのあるデザインだ。
 システム外観(写真21)。Y字型構造が良く分かる。インシュレーターは3点接地。

写真19 フロント+リア 写真20 完成した20号機
 
写真21 20号機外観  
 
  7.試聴と評価

 早速試聴しよう。(写真22、23)
 このドキドキ感がたまらない。どんな音がするのか?
フロントホーンは初めてである。中域の効率が上がるからやかましい音になると予想していた。低域もこのサイズでは期待できない。まあ、PA用のパワフルサウンドシステムかな?
 ・・・・驚いた。なんという柔らかい音。私は真空管アンプを常用しているので始めの3曲は評価に使えない。真空管(正確にはトランス)が暖まるまできれいな音は出ないのである。ところが、一音目からしなやかな音。アンプが300Bだからか?パワフルなKT88のプッシュプルにつなぎ変えてみる。やはり傾向は変わらない。
・・・冷静に評価しよう。
 低音は予測どおり弱い。バスレフの量感たっぷりの低音は出ない。バックロードホーンならではのスピードで聴かせるアタック的低音である。小型のエンクロージャだからこんなものだろう。中高域にフロントホーンのキャラクターを感じる。これは個性として許容できる範囲である。
 驚くべきはその柔らかな音質である。スピーカーユニットの個性ではないと思う。5号機はこのような音ではなかった。とすると、この音質はどういった効果なのか?
 まず、バックキャビティが複雑な構造で不要な定在波が生じず、歪み感が少ないのではないか。5号機のようなこれまでの立方体ヘッドユニットでは壮大に定在波が生じていた可能性がある。小型のエンクロージャが強固で不要振動が少ないのではないか?これもあるだろう。だが、やはりこの効果はフロントホーンによるものだと考える。
私の予想がまったく外れていた。まるで空気のフィルターを通したような音である。前面のホーンロードがこの柔らかな音質を生んでいるのではないだろうか。
認識を新たにした。フロントホーンファンになってしまいそうである。

写真22、23 試聴の様子

本機は大変勉強になった。大成功である。試聴どころか楽しんでしまっている。
試聴の時はどうしてもアラ探しをする聴き方になってしまう。低音がどうとか、音場感がどうとか・・・良い点ではなく悪い点を聴いてしまうのである。本機は一聴してそんな考えが吹き飛んだ。「良い音」なのだ。キャラクターは個性であり否定するものではない。本当に楽しめるスピーカーシステムがまた一つ増えた。

  8.追加報告

 話題のスピーカーユニットを入手した。MarkAudio CHR-70 である。アルミ・マグネシウムコーンの10cmフルレンジ。カッコ良いユニットだ。
早速、16号機に載せてみた。(写真24)
16号機は縦横のリブで補強したスパイラルド・バスレフのリファレンスモデルである。(リファレンスと言いながらいじりまくっている)
ブルーのバンド状の部分に補強枠がある。内部は活性炭吸音材でいっぱい。
 このスピーカーユニットはメタルコーンらしく、高域が明るくさわやかに輝く。低域も力強い。また良いユニットが増えて自作派としてはとてもうれしい。
うーん。バスレフの豊かな低音もいいなあ。やっぱり方式ではないな。可能性はいくらでもあるんだ。

写真24 SPユニットの置換 写真25 16号機改
 
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