キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 第16報
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LEGOスピーカーの製作 第16報

 
     


写真1 24号機 LEGOスピーカー初の2ウェイシステム

 
  1. マルチウェイシステムの魅力

 これまで、フルレンジのスピーカーユニットでLEGOスピーカーは造られてきた。21号機(第13報)で変則的な2ウェイは造ったが、本格的なマルチウェイシステムには手を出さなかった。これは、フルレンジのスピーカーユニットが好きだからである。
(1)点音源が実現できる
スピーカーユニットが1つなので発音位置の分散がなく音像定位が良い。特に近くで聴く場合にはこの特性は重要である。
(2)価格的、製作的メリット
コストパフォーマンスが良く、小型にまとめられるので造りやすい。大型のマルチウェイシステムは設計が難しく、自作では市販製品にかなわないと思う。
(3)デバイディングネットワークが不要
実はこれが最大の理由である。デバイディングネットワークについては13報に記したがマルチウェイのシステムには必須の信号帯域分割回路である。これが音質に与える影響が甚大だと考えている。システムはシンプルな方が好ましい。パワーアンプとスピーカーユニットの間に何らかの回路(特に抵抗器)があると情報の鮮度が低下するように思えてならない。少し神経質かも知れないが、無いにこしたことはないだろう。だからフルレンジでがんばってきた。しかしフルレンジのスピーカーシステムには欠点もいくつかある・・・
(1)再生帯域が狭く中音域重視のかまぼこ型特性になる
一般的にフルレンジのユニットは低音域と高音域が苦手である。結果、中音域重視の特性になる。まあ、中音域が最も重要なのではあるが、低音のレスポンスを良くしようと大きなコーンにすると高音が出ない。バランスが悪くなるのである。
(2)ルックスが良くない
市販製品にフルレンジシステムが少ないのはこの理由かも知れない。いかにも安い感じで高級感がない。スピーカーユニットはいっぱい付いている方がうれしいのである。
(3)分割振動による歪が多い
今回、マルチウェイに挑戦したいと思ったのはこのためである。
高音域を再生するにはダイアフラム(振動板)を高速に駆動するために小口径が望ましいが、それでは低音が出ない。そこで、ダイアフラムの複数の振動モードを利用して再生帯域の広帯域化を図る。ピストンモーションと呼ばれるダイアフラム全体が均一に同一の振幅運動ができるのは低い周波数の範囲であり、高い周波数になると駆動に振動の伝播が追いつかなくなったり、エッジで反射して戻ってきた振動との干渉でダイアフラムに定在波が生じ、振動のモードが変わる。これにより高い周波数の振幅にも追従するようになり高音域の再生が可能となる。問題なのはこの振動のモードが変化する周波数で歪が発生することである。簡単な実験をしてみると解るが、フルレンジのスピーカーシステムに発信器からサイン波を入力し周波数をスイープしてみると、ボー、ブー、ポー、ピー、と音が高くなり、あるポイントでピー、がビー、になる。ここがモードの変化周波数であると推測できる。スピーカーユニットの口径にもよるが10cm径だと2kHzから4kHzにこの点が有るようである。人間の耳は他人から悪口を言われるヒソヒソ話の周波数帯域で最も感度が高くなるように設計されており、まさにこのあたりの周波数で大変うるさく感じる。この問題を解決してさわやかな中高音が聴きたいのである。
では、マルチウェイシステムのメリットは?
(1)再生帯域が広い
専用の周波数帯域に限られた複数のスピーカーユニットを配しているので、再生帯域が広くでき、特に低音域の再生に有利である。
(2)ダイアフラムの分割振動の発生が少なく歪が少ない
これはまさしく音が良いと言うこと。マルチウェイシステム最大のメリットであろう。
(3)スピーカーユニットごとに再生音域、発音レベルの調整ができる
先にマルチウェイシステム最大の問題点と記したデバイディングネットワークの介在を逆に有効に利用すると、システムの音調を電気的に調整することができる。これはメリットだ。
最近のスピーカーシステムではバイワイヤリング対応と言って、高音域のユニットと低音域のユニットから別々に接続ターミナルが出ているものがある。ここに別のパワーアンプを接続してマルチアンプ方式とするといろいろな調整ができて大変面白い。クオリティ的にもメリットが大きな方式だ。
LEGOにハマる以前の私のメインシステムは16cmフルレンジユニットによるバックロードホーンシステムであった。低音域のレスポンスは申し分なかったが、先述の分割振動による歪が気になりトゥイーター(最近はついったー?)を追加した。マルチアンプにしてさまざまな方式のトゥイーターを試したが、最も歪感が少なく、さわやかな音調であったのはリボントゥイーターであった。以来、リボンファンとなった。他の方式ではトゥイーターといえども、先の実験で分割振動や共振の発生による歪を感じた。ただし、この歪感は音調を決める要素でもあり、必ずしも否定されるべきものではないだろう。
そのメインシステムではデジタルチャンネルデバイダー(演算で帯域分割する機器)やパラメトリックイコライザー(任意の周波数を増減できる機器)を接続してさんざん調整したが、この調整の複雑さこそがマルチウェイシステムの醍醐味かもしれない。
・・・今回のミッションは「オペレーション・マルチウェイ」である。
オペレーション、スタート!
注:私はスピーカー設計のエンジニアではないので、ここに記していることは
私見であり間違いがあるかもしれないことをご了承いただきたい。

 
  2.24号機 設計仕様

 マルチウェイシステム最大の問題点がデバイディングネットワークだとするなら、今回のテーマはできるだけこの回路をシンプルにすることである。
 マルチウェイと述べてきたが、スピーカーユニットはいくつにするか?もう一つのマルチウェイシステムの問題点はクロスオーバー周波数(帯域を分割する周波数)付近の干渉であろう。先にマルチウェイシステムは歪が少ないと言っておきながら矛盾するが、2つのスピーカーユニットからの発音が重なるこの周波数部分では互いの干渉により歪が生じると考えられる。発音位置の異なる合成、ダイアフラムの違いによる音調差などにより好ましくない影響が生じる。このあたりの「つながり」の良さもスピーカーユニット選択のポイントとなる。
 クロスオーバー周波数をどこに設定するかも重要である。音楽の基礎となる低〜中音域(300Hzから3kHzくらい、最も重要な周波数帯域であり、音声情報の伝達はこの帯域で十分なので電話やAMラジオはこのくらいの特性である)にクロスオーバー周波数をもってきたくないのでクロスオーバー周波数を上下2つに分けて3つのスピーカーユニットを用いた3ウェイシステムもあるが、今回はコストと実現性からウーハーとトゥイーターによる2ウェイとして、クロスオーバー周波数を高めに設定したいと思う。
(1)ウーハーユニットの選定
 ウーハーにはフォステクスのFW108Nを選んだ。10cmの小口径ウーハーであるが、アルミダイキャストのフレームが高級感があり、バカでかいマグネットも頼もしい。
重すぎて取り付けが心配だが低音再生能力に期待が持てる。
低音の再生には口径が大きい方が圧倒的に有利であるが、LEGOでエンクロージャを造るには大口径は強度が問題になるのだ。10cm口径といってもさすがはウーハー、foは55Hzとたいしたものである。低音用の専用設計によりフルレンジユニットとは違ってコーンを重く丈夫に作れて、エッジもコンプライアンスを大きく(ゆるく)できるのだろう。また、逆に10cm口径なのでフルレンジユニットのように比較的高音域のレスポンスも良く、スペックでは8kHzくらいまで使える。つまりクロスオーバー周波数を十分に高く設定できるということである。高音域の分割振動による歪が心配ではあるが、フルレンジユニットのように積極的に分割振動を利用するようにはできていないだろう。このあたりは聴いて確かめるしかない。
(2)トゥイーターの選定
 トゥイーターユニットは同じくフォステクスのソフトドームトゥイーターFT48Dである。10cmウーハーにはちょっとオーバースペックな組み合わせかも知れないが、実験的にクロスオーバー周波数を低めにも設定したかったので900Hzから使えるこのモデルにした。好きなリボントゥイーターを選択しなかったのもこの理由である。(価格もあるが・・・)
また、10cmのウーハーと同じサイズのアルミダイキャストフレームなのもうれしい。ルックスが良いし何より取り付けがしやすい。
問題は93dB/Wという高い能率であろう。本来は感度が高いことは良いことなのだが、ウーハーのFW108Nの能率は86dB/Wなので差は7dBもある。
今回、ぜひともやりたいことはアッテネータ(減衰器)の排除である。トゥイーターのレベルをウーハーに合わせて調整するアッテネータは音の鮮度を低下させると考えている。先述のマルチアンプ方式はスピーカーユニットごとに個別のレベル調整がアンプ側で可能なのでトゥイーターのアッテネータを外せることが最大のポイントだろう。
(3)エンクロージャの設計
 これまではエンクロージャにトリッキーな方式を試してきたが、この24号機ではごく普通のバスレフ方式とする。トゥイーターの付加で高音域のレスポンスが非常に良くなるので、これに合わせて低音域を増強しなければならない。10cmウーハーではバスレフしかないだろう。効率優先でシンプルなエンクロージャ設計とする。
 図1に24号機の構造図を示す。上下に2つのスピーカーユニットを並べ、低音の放射効率の良い前面ポートのバスレフ方式である。当初、22号機や16号機と同じ128mm幅で設計していたが内寸が96mmしかなく、ウーハーの100mmもあるマグネットが入らないじゃん!・・・ということで急遽、横幅を144mm(内寸112mm)に大型化した。
トゥイーターが20mmバックしているのはリニアフェイズ(ボイスコイルの位置を合わせてスピーカーユニット間の位相差を少なくする)と意匠の特徴を狙ったものである。バッフル面の強化にもなるだろう。弱くなるリアパネルの補強と前面バッフルの振動抑制のために補強柱を中央に立てる。LEGOエンクロージャならではの簡単にできる工夫である。さらに側板の制振のために補強ステーを中央付近で左右に渡す。このあたりの設計も自由自在。リアパネルは上下に2分割してメンテナンスに備える。補強リブを設けて強化しよう。これだけ補強すれば強度はバッチリだろう。なにしろ強力なウーハーの背圧に耐えなければならない。
 2個描かれたターミナルが赤なのは間違いではなくトゥイーター用とウーハー用を別に引き出すからである。単なるバイワイヤリングではなく、自在な実験を目的としたスピーカーユニット直出しである。間違ってトゥイーターのターミナルにパワーアンプを接続したら破壊してしまう危ない方式だ。良い子はまねをしないように。
 バスレフダクトの長さは100mmからはじめる(図では調整して90mm)。計算では55Hzくらいの共振であるが、実内容積の減少や吸音材の効果で正確なバスレフ共振周波数の予測は難しい。LEGOの簡単に調整できるメリットを活かそう。
最終的なエンクロージャの設計仕様を以下に示す。

<24号機 基本仕様> (調整後)
・方式:2ウェイバスレフ
・組立方法:ホリゾンタルタイプ(水平組立)
・エンクロージャ方式:前面ポートバスレフ(リニアフェイズ)
・使用ユニット:ウーハー FW108N(10cmペーパーコーン)
トゥイーター FT48D(2.8cmソフトドーム) 
・外形寸法:W144mm H304mm D170mm
・内容積:約4.0リットル(実効容積:約3.2リットル)
・ダクト長:85mm(実効値)
・ダクト開口:32mm×16mm
・ダクト共振周波数:65Hz(推定)
・質量:4.3kg(1台)

図1 24号機構造図

(4)デバイディングネットワークの設計
 2ウェイシステムにおける基本的なデバイディングネットワークの回路を図2に示す。
トゥイーターはコンデンサ直列接続によるHPF(ハイパスフィルタ:低音域カット)とウーハーにコイル直列接続によるLPF(ローパスフィルタ:高音域カット)を接続したものである。特にトゥイーターの低音域カットは重要で、これがないとパワーアンプからの低音域出力で破損してしまう。
 ATTはアッテネータで、トゥイーターユニットのインピーダンスが8Ωの場合、R1に4Ω、R2に8Ωを接続すると-6dBの減衰器を構成できる。これでトゥイーターの音圧出力は4分の1になる。
ちょっとややこしいのだが、信号量(電圧)は-6dBで2分の1である。音圧がなぜ4分の1かと言えば音圧は電力に比例するので、電圧が半分になると電流も半減して音となる電力はこの掛け算なので4分の1ということになる。したがって音圧を半分にしたければ信号は-3dBに減衰させる。
この図2の回路ではオクターブで-6dBのカーブで減衰(周波数半分または倍で音圧4分の1)が得られる。適切にコンデンサとコイルの値を選ぶとクロスオーバー周波数を調整できる。クロスオーバー周波数は-3dBで交差する周波数ポイントである。この結果ウーハーとトゥイーターの音圧が半分ずつとなり、合成されてもとの音圧になるという算段である。現実には部品の値は市販品から選ばなければならないので計算値とは一致しない。誤差などもあるので正確にはできないがあまり問題にはならないだろう。むしろ聴きながら調整すべきであり、計算は目安だ。LPFとHPFの素子定数(コンデンサの容量とコイルのインダクタンス)は独立して選べる。片方を変更して相互に影響しないの?と疑問に思うかもしれないが、理論的にはパワーアンプの出力インピーダンスがとても小さいのでスピーカーシステムから見るとターミナルがショートされたようにふるまうので影響しないのである。(あくまで理論的に、である)
 ところで、トゥイーターの極性が逆になっているがこれも間違いではない。クロスオーバー周波数ではコンデンサは信号位相を90度進ませる性質があり、コイルは逆に90度遅れるのでトータル180度の位相差となる。だから逆相接続で正しいのだ。
 本機のデバイディングネットワークでは先に述べたようにトゥイーターのアッテネータは使いたくない。コンデンサによるHPFの調整で強引につないでしまおうという考えである。ウーハーのコイルも問題だ。スピーカーユニットは振動による発電作用があるが、この電力を吸収して不要な動きを妨げる効果がパワーアンプにはある。スピーカーユニットのインピーダンスをパワーアンプの出力インピーダンスで割った値をダンピングファクター(DF)と言うがトランジスタアンプで数100程度である。つまりパワーアンプの出力インピーダンスは0.08Ω以下なのである。こういった回路に何mものエナメル線を巻いたコイルを接続するのはどうだろうか?スピーカーケーブルの太さがどうの、ターミナルの金メッキがどうのと言っている世界で、このコイルの線材抵抗はいやなのだ。というわけで取ってしまった。ウーハーのFW108Nは比較的高音域までも使えるのでLPFはなくても良いだろうという考えである。もちろん、ウーハーに高音域が入力されてもトゥイーターのように破損することはない。

図2 デバイディングネットワークの基本回路
図3 24号機のデバイディングネットワーク
 

 24号機のデバイディングネットワークは図3のようにコンデンサのみという究極のシンプルな回路になった。けっしてデバイディングネットワークの部品をケチっているわけではない。
 図3の表のようなコンデンサの容量値でクロスオーバー周波数fcを調整する。コンデンサとしては10μF、4.7μF、2.2μFの3種類を用意すれば図のように直列に接続して5種類のクロスオーバー周波数を選択できる。コンデンサの直列接続は音質的には好ましくないが実験して値が決まったら交換しよう。
 なお、この回路ではクロスオーバー周波数の位相差は90度であり、接続極性を迷うところであるが、ピークを作りたくないので逆相とした。
 感覚的にはウーハー+トゥイーターというよりはフルレンジ+スーパートゥイーターという感じになる。ウーハーにLPFを入れていないし、クロスオーバー周波数が高いからである。クロスオーバー周波数の選定としては一般的な2kHzも試すが、おそらく強烈なハイ上りになるだろう。なにしろトゥイーターの方が4倍以上も音圧が高いのである。
コンデンサの値を調整することによってHPFの-6dB/オクターブという減衰量や、高音域は指向性が鋭く、環境による減衰が大きい点やリスナーの聴力の高音域減衰などなど総合的な要因で強引につなごう。
 とはいえ、心配なのでシミュレーションプログラムで周波数特性を計算してみた。図4がこの結果である。水色がウーハーのレスポンス、黄色がトゥイーター、白線がシステムトータルであるが、位相が回っているので単純な加算にはなっていない。
(a)の10μFでは明らかなハイ上り。そうとうやかましいだろう。これは使えないな。(b)の2.2μFではだいぶフラットになってくるが高音域がまだきつそう。(c)の1.5μF、クロスオーバー周波数13kHzくらいが無難かな?13kHzとは本当にスーパートゥイーターなみだが能率の差が大きいので十分にトゥイーターの効果はあるだろう。だが、これ以上高いクロスオーバー周波数ではトゥイーターがもったいない感じである。
20kHz付近のピークは特性上は大問題だが、現実にはスパイス程度に効くと思う。
いちおう、(d)の一般的な-6dBアッテネータ接続タイプも試してみたい。もっとも、ウーハーにLPFを入れていないので図のようにフルレンジのような、かまぼこ型の特性になってしまうだろう。
なお、低音域に関してはバスレフダクトの周波数を低めに設定して計算したのでダラ下りな特性となっている。

図4 周波数特性のシミュレーション結果
(Bachagi.h氏 自作スピーカー設計プログラム より)
  3.製作過程

 それでは組み立てにはいろう。写真2が24号機の構成部品である。前報でLEGOの入手が困難と苦言を述べたが今回はさらっとパーツを集めている点は気にしないでいただきたい。
比較的大型のシステムなのでテーブルがパーツでいっぱいになったが、構造はただのハコである。
 写真3はウーハーユニット。本来、このスピーカーユニットは8本のネジで固定するのだが、LEGOの穴位置を8箇所合わせるのは至難である。4本で我慢しよう。と言ってもM4ボルトとダブルナットで強固に固定されるので問題ない。空いたネジ穴は目隠しした。
それにしてもマグネットがでかい。うれしい反面、固定に苦労する。一般的に磁気回路は強力な方が好まれるが、ウーハーではオーバーダンピングになって低音が弱くなることもある。何事も適正が大切だ。

写真2 全構成部品 写真3 ウーハーユニット

 写真4にトゥイーターユニットを示す。同じフレームなので容易に固定できた。小型のスピーカーユニットの方が固定は難しい。フランジに余裕がなくなるし、穴位置の調整がクリティカルになるからだ。このトゥイーターユニットもマグネットが大きい。強力な磁気回路が高能率に必要なのだろう。期待の持てる頼もしいスピーカーユニットである。前面に反射防止のドーナツ型フェルトが貼ってある点も評価できる。
 フレームAを写真5に示す。補強ステーを左右に渡してある。よく見ると下面の左右角にキリカキがあるのが見える。メンテナンス時にリアパネルを外すための工夫である。強固に勘合したLEGOを外すのは容易ではない。以前はタブをつけていたがこの方が目立たなくて良い。それにしてもLEGOブロックはシャープエッジで危ない。何度も外すときにケガをしそうになった。本当にこれ子供の玩具?まあこのシャープさがスピーカー製作には欠かせないのではあるが。

写真4 トゥイーターユニット 写真5 フレームA

 写真6はフレームBである。ここには下部にバスレフダクトがある。ダクトの面積はもっと大きい方がバスレフの効率が上ると思うが、同じ共振周波数にするために長さが必要になるのでコンパクトにできなくなる。前面のバスレフポートが目立ちすぎるのもいやなのでこのサイズにした。
 写真7がフレームC。ここにウーハーユニットが付く。ダクト長はフレームBの60mmとこのフレームCの30mmにバッフル厚さの10mmを足してトータル100mmで組んだ。長めなのは外しながら調整するためだ。

写真6 フレームB 写真7 フレームC

 ターミナルパネルを写真8に示す。それぞれのスピーカーユニットに独立してターミナルを設けたので2セットである。裏面には土の字型に補強リブが見える。
 写真9がリアパネル。こちらもリブで補強する。こうしたパネル構造は最も弱くなるところであるがプレートブロック3枚を重ねて厚さ10mmで製作している。木製と比較してしなやかで強度もあり、内部損失が高いのが特徴である。が、しなやかなのは変形しやすいと言うことで補強リブや補強柱が必須だろう。がちがちのコンクリート製のようなハコが理想と言うわけでもないと思う。

写真8 ターミナルパネル 写真9 リアパネル

 前面を飾るフロントベゼルには24号機のエンブレムが光る(写真10)。
 その他のパーツを写真11に示す。吸音材の活性炭は左右2台で8個用いる。
インシュレータはいつものオーディオテクニカ製。真鍮の小型インシュレータで重宝している。ジャンパリードとコンデンサ類には付け外ししやすいようにU字端子を付けた。前述のように実験用なので全ての素子を同時に使うわけではない。実験用の抵抗器も用意した。アッテネータは使わないつもりだが、問題点も把握することが重要である。
他に内部配線用のリード線。いつもファストン端子を使っており、音質的にはハンダ付けすべきだがメンテナンスを考えるとハンダ付けは困るのである。

写真10 フロントベゼル 写真11 その他のパーツ類

 写真を見ながら組み立て手順を紹介する。
まずはフレームAとフレームBを組み立てる(写真12)。このくらいのサイズだととても強固に勘合して丈夫なハコ構造ができる。左右の補強ステーも振動を止めることはできなくとも振動モードを拡散するくらいの効果はあるだろう。

写真12 フレームの組み立て1 写真13 フレームの組み立て2

 個々のパーツで紹介しなかった補強柱であるが、補強ステーを挟んで前後に取り付ける(写真13)。補強柱はたったこれだけのパーツだが、スピーカーユニットを取り付けたバッフル面とリアパネルを強力に連結する。組み立ての際にバッフル面をしっかりと押し込むためにもこの柱が重要なのである。正確に組み立てられるLEGOならではの構造だ。
 フレームCを前方に取り付ける(写真14)。このフレームCは補強柱を挟む形で左右の補強構造にもなる。
 リード線を接続したトゥイーターユニットを組み付ける(写真15)。
今回は在庫の関係で前面のポッチを目隠しするタイルパーツにはいつもの2×2サイズではなく、2×1サイズの小型のタイルを用いてみたが良い印象である。

写真14 フレームの組み立て3 写真15 トゥイーターユニット取り付け

 ウーハーユニットを装着するとがぜんかっこ良くなってきた(写真16)。リニアフェイズの段差がデザイン上の良いアクセントになっている。
 フロントベゼルを付けて前面の完成(写真17)。過度な装飾はない。エンブレム程度が美しいのだ。

写真16 ウーハーユニット取り付け 写真17 フロントベゼル取り付け

 吸音材の活性炭はこのように4個を側面に貼り付けた(写真18)。多少は側面の制振にも効くだろう。ターミナルパネルにそれぞれのスピーカーユニットからのリード線を接続する。トゥイーターからの配線(上側ターミナル)が赤黒で逆になっているのがお解かりだろうか?逆相接続のためである。間違って上側のターミナルにパワーアンプを直接接続しないように注意しなければならない。
 リアパネルを取り付ける(写真19)。このパネルは内部調整(主にバスレフダクト長の調整)のために何度も外すことになるだろう。
 インシュレータを付けて24号機の完成(写真20)。
私は作業時間が無いときは夜中に少しずつ組み立てを楽しんでいるが、リスニングルームのテーブル上で手も汚れず、部屋も汚さず、騒音も出さず、塗装の臭いも無く作業できる自作スピーカー製作がLEGOスピーカー以外にあるだろうか?

写真18 ターミナルパネル取り付け 写真19 リアパネル取り付け
写真20 完成した24号機 写真21 コンデンサの接続
 
  4.試聴と調整

  ワクワクの試聴である。デバイディングネットワークのコンデンサは2.2μFを接続してみた(写真21)。マイナスターミナルにはジャンパリードを付ける。
 完成した24号機は実に精悍なイメージである(写真22)。やっぱり2ウェイはカッコいいなあ。今回採用したフォステクスのウーハーとトゥイーターユニットのデザインも実に良い。アルミダイキャストのダイヤモンドカットがリング状に輝いている。
システムの質量は実測4.3kgとかなり重い。細長いエンクロージャデザインでスピーカースタンドに乗せるとちょっと地震が心配である。十分な重さで4箇所レッグでも安定はしているがトップヘビーな設置が怖いのだ。そこで、マジックテープのベルトでスタンドと固定した。写真には写ってないがマジックテープのベルト固定はテンションがかけられるのでしっかりとスピーカースタンドに固定できる。がたつきもなくなるのでスピーカーシステムの天板にウエイトを置いたりするより効果的だ。
・・・どうでも良い話はこれくらいにして、期待の音である。

写真22 セッティング状態

 まずはコンデンサの接続をいったん外してウーハーだけで聴いてみる。予想以上にこもった音である。8kHz程度までレスポンスすると思ったが、10cmといえどもやはりウーハーはコーンが重いのか高音域の再生はできないようである。幸い分割振動に伴う歪感はない。これならばLPFとしてのコイルの挿入はなくても問題ないだろう。それでは、トゥイーターをつないで見る。・・・予想通り2.2μFでは高音域がすさまじい。これは聴いていられない。バスレフの効果も弱い感じだ。大丈夫かなあ?
 図3の回路になるようにコンデンサを追加する(写真23)。ターミナルに付けるだけなので部品の定数変更も実に簡単である。2.2μFに10μFを追加してトータル1.8μFにしてみた。カットオフ周波数は11kHzくらいになるはずだ。また、リアパネルを外してバスレフ長を90mmに短くした。
 うん。だいぶ聴ける音になってきた。低音も増し、良い方向だ。次に10μFを4.7μFに交換して合成容量1.5μFとしたら暗いイメージになってしまった。少ない容量変化だが大きく変化する。バランスは悪くは無いのだがせっかくのトゥイーターのスパイスが効かなくなってきた感じである。1.8μFがベストチューニングかな?
 バスレフダクトの長さもさらに80mmにしてみたが、むしろ低音感が後退した。チューニングが高すぎだろう。10mm単位の調整は10%に相等するので少々荒い感じである。そこで、バスレフダクトを構成するブロックの一部を外してみた。筒構造としてはいびつになるが、空気の流体動作には問題ないだろう。等価的に85mm(実効長)というダクト長で落ち着いた。このあたりの調整も簡単で楽しい。リアパネルを外しやすくしておいて正解であった。
 実験としてアッテネータを用いた回路も試してみた。図4の(d)の構成である(写真24)。これは予想通り良くない。ウーハーの中音域をLPFで落としていないのでトゥイーターの中音域と合成されて上昇し、フルレンジシステムのようなナローレンジになってしまった。アッテネータの影響もあり、高音域の輝かしさが失われてつまらない音である。やはりシンプルなデバイディングネットワークの効果は歴然であった。

写真23 コンデンサの追加接続 写真24 アッテネータの挿入実験

 コンデンサの直列接続は気持ちが悪いので1.8μFのフィルムコンデンサを用意して交換したところ明らかにハイ上りのきつい音調に変化してしまった。あれ?容量値は同じはずなのに?・・・コンデンサの直列接続は性能劣化が大きいようである。結局、コンデンサは1.5μF一個に決定した。少しトゥイーターに主張感がありドンシャリ傾向(低音と高音が強調された音)であるが、精悍なイメージと共通したアグレッシブな音である。
 さすがに2ウェイは歪感が少ない。高音域もキラキラと冴え渡り、バスレフの効果で低音も迫力十分である。この音はLEGOスピーカー歴代最高であろう。デバイディングネットワークがシンプルな分、音の鮮度も高いと感じる。本当に聴いていて楽しい魅力的な音のするシステムに仕上がった。
トゥイーターの効果はまるで楽器の編成が増したようなリッチな音になると感じられる。ボーカルの澄んだサ行を聴くとD/AコンバータSV-192S+MUTEC MC-3のありがたみを実感することができる音だ。
方式が一般的なバスレフシステムという点が残念ではあるが、どこに出しても恥ずかしくないシステムが完成した。
・・・LEGOスピーカーはこれでやっと人並み?

 
  5.次回予告

 次回は記念すべき25号機の製作である。基本を見直し音の良いスピーカーを造りたい・・・。あの名機の製作に挑戦する。お楽しみに。

       (2010.11.27)

 
     
写真25 25号機の製作風景

 
 
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