キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 第17報
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LEGOスピーカーの製作 第17報

 
     


写真1 LEGOスピーカー25号機記念モデル(25周年ではない)

 
  1. 製作の背景
  1−1 これまでの反省

 25号機である。25種類ものLEGOを素材としたスピーカーシステムを製作してきた。さまざまな方式を試してきたし、トリッキーなシステムにもトライしてみた。だが、最も重要な点がおろそかになっていた気がする。・・・音のクオリティである。
 LEGOで製作することの面白さ、LEGOならではの構造などを模索してきたものの、本当に音の良いスピーカーシステムを造れたのであろうか?
おそらく、スピーカー製作を趣味としている先輩方やプロの技術者の方からはこう指摘されるだろう。
    「内容積がたりないのではなイカ?」
 小型のスピーカーシステムはとても魅力的で使用する上でも便利である。小さなシステムから十分な低音をひねり出すことにも挑戦したいと思っている。しかしながら本当の音のクオリティを得るにはある程度のサイズ(内容積)は必要だと感じている。これまで製作してきたシステムは小型のモデルが多く、大型のフロアタイプでもパイプのような筒型構造で内容積は少ないものであった。
 ではなぜ小型なのか?・・・LEGOが高価だからである。製作素材として考えた場合、LEGOの価格は面積にして木製の板材に比較して10倍程度高い。だから、大型のシステムが造れなかった。もう一つ理由がある。LEGOで大きな箱を造った場合、強度の不足が懸念される。何しろ小さなピースの接合による構造体である。大面積の板状につないだらフニャフニャになるだろう。実際、10号機では見事に失敗した。
 前回の24号機でも使用したウーハーFW108Nのメーカー推奨内容積は6リットルであるが、製作したエンクロージャの内容積は3リットル程度であった。もっと大型のシステムを造ってみたい。そう思っていた。
 LEGOを素材としたスピーカーシステムの評価には一般的な木製のシステムと同じスピーカーユニット、同じディメンジョン(方式、サイズ)で製作して比較評価をしたい・・・。そうだ、記念となる今回の25号機は市販のスピーカーシステムのコピーモデルを造ってみよう。と考えたのである。これまでのLEGOスピーカー製作の経験とノウハウを最大限に活かして市販製品のクオリティに挑戦しようという試みである。
では、オリジナルとなるシステムはどのモデルを選択しようか?

 
  1−2 「NS-10M」というスピーカーシステム

 ヤマハのモニタースピーカー「NS-10M」(以下「10M」:テンエム)をご存知だろうか?1977年頃に発売された比較的小型のブックシェルフ(本棚に置けるような)スピーカーシステムである(写真2)。これは私が手にした初めての本格スピーカーシステムなのである。
 私が中学生の頃、もう30年以上前(歳がバレる!)に親類から譲ってもらったこのシステムでオーディオの勉強をした。セッテイングの重要性やアンプとの相性などさまざまな経験をした思い出のシステムである。そして、私がとても好きな市販システムなのだ。そのスペックは・・・

<ヤマハ NS-10M>
・方式:2ウェイ密閉型
・出力音圧レベル:90dB/W/m
・インピーダンス:8Ω
・許容入力:50W
・使用ユニット:トゥイーター 3.5cmソフトドーム
         :ウーハー 18cmコニカルストレートコーン
・周波数特性:60〜20,000Hz
・クロスオーバー:2,000Hz
・外形寸法:W215×H382×D199mm(サランネット含む)
・質量:6.4kg(1台、実測値)
・価格:\50,000(2台、発売当時)

写真2 ヤマハ「NS-10M」 写真3 用意したスピーカーユニット

 このスピーカーシステムがすごいのは低価格にもかかわらず、手の込んだエンクロージャであることだ。ヤマハの楽器作りのノウハウが活かされ、どこを叩いてもコチコチである。スイカじゃないが、私はエンクロージャを評価するときに指で叩いてみる。ボコボコとだらしない音がしたら×。ビンビンと歪音がしたら、どこかに問題がある証拠で再生音にこの歪が乗ってくる。必ずしも硬いエンクロージャがベストというわけではないが、一つの方向性として正しいと思う。外観はクロのつや消しリアルウッドのツキ板(きれいな薄板の木材を表面に貼ること)で仕上げられ高級感がある。なによりウーハーの白いペーパーコーンがデザインのポイントだ。このコーン紙は一枚の紙を円錐状に貼り合わせた物で、プレス加工が一般的な現在ではめずらしいものである。コーン紙の均一性が高く音質的にもメリットのある製法である。
 「10M」は日本のスピーカーシステムの名機としても有名なモデルである。おおよそ、どこのレコーディングスタジオにもころがっていて音のチェックに使用されている。業界人で知らない人はいないだろう。あなたが今聴いている音楽もこの「10M」でチェックされたものではないだろうか。
 ちまたの「10M」の評価は2分されるようである。絶賛する声に反してネガティブな意見もある。主に高音域がきつい、低音域が出ないという意見である。これはこのスピーカーがモニタースピーカーとして設計されたために与えられた性格だと思う。デッドな(吸音性の)スタジオでは高音域が吸収されレスポンスが低下する。また、低音域をスピーカーシステムが何らかの手段で強調してしまうと正確な音質判断ができない。さらに、一般のリスニング環境では再生音量が小さいことも原因であろう。「10M」はその性格上大音量で真価を発揮するシステムなのだ。ガチガチのエンクロージャに閉じ込められたウーハーを十分に鳴らすにはそれなりの音量が必要だ。
 私の「10M」は30年を経た今もすばらしい音で鳴っている。ウーハーのゴム材質エッジに損傷もなく、驚くべき信頼性である。モニタースピーカーらしい端正な音で大音量でも破綻なく、量感は少ないがタイトな密閉型特有の低音域を有している。確かに、一般的なリスニング用途では低音不足を感じるだろう。まさにプロ向けのシステムなのだ。以前、密閉型はゴムマリ音がするなどと書いたが、実は密閉型の音も好きなのである。
 このスピーカーシステムを今回の製作のオリジナルに選んだのは好きなシステムであるからだけではない。「10M」は約10年前に惜しくも生産を終了したが(20年以上も作り続けられたこともすごい)、業務用であるためか、なんと今でもスピーカーユニットがヤマハのサービスパーツとして入手可能なのである。写真3は今回の製作のために購入したスピーカーユニットであるがヤマハ製の本物である。トゥイーターは3.5cmのソフトドームで、このユニットは後期型(NS-10M STUDIO)用なのでよく見るとソフトドームの周囲に吸音材が貼ってあり音質が改善されたモデルだ。フレームはプラスチックである。ウーハーは鉄板プレスフレームでこのあたりにコストダウンがうかがえるが樹脂の補強板も入っており、しっかりとした作りである。マグネットは巨大ではないがウーハーではバランスが大切なので大きければ良いというものではない。新品の真っ白なコーン紙が大変魅力的だ。ともに防磁型ではないので作業は吸引に気をつけなければならない。
 自分のシステムをバラしたわけではないが、「10M」の情報をネットで調べてみると2ウェイの密閉型としてきわめて基本的なデザインがなされていることが解る。内部はグラスウールの吸音材でいっぱい。この吸音材の充填はエアサスペンション方式の基本であり、内容積の空気バネとウーハーコーン系の質量+コンプライアンスとで最低共振周波数foを上手にバランスさせて低音再生周波数を伸ばす工夫(強調ではない)である。この場合、密閉度も重要なファクターとなる。ウーハーユニットの強力な背圧がエンクロージャに加わるのでしっかりとしたハコが必要なのだ。
 デバイディングネットワークは2kHzでクロスする標準的な回路が用いられている。素子は各スピーカーユニットに直列と並列に接続されたコイルとコンデンサから成り、前報で解説した6dB/オクターブ、-3dBクロスより強力な12dB/オクターブ、-6dBクロスとなっている。特筆すべきはアッテネータの抵抗器が無いことである。
 実は前作の24号機に追加報告があり、当初は輝かしいトゥイーターの高音域に酔っていたが、だんだんうるさく感じてきた。あきらかに高音域が強いのである。そのはずで、能率にウーハーとの差が7dBもある。現状はやむをえずトゥイーターに8.2Ωの抵抗器を挿入(ターミナルのジャンパリードの替わりに挿入)した。これで約-6dBのアッテネータとして作用する。抵抗器には酸化皮膜タイプの高周波損失の少ないものを選んでいるが不本意ではある。正しいアッテネータとは前報のように2本の抵抗器で構成するのであるが、1本の直列接続でもトゥイーターユニットに加わる信号電圧、電流がともに半減するので発生音圧は4分の1となる。この場合、合成インピーダンスが16Ω相当になるがHPFのコンデンサは試聴から2.2μFに決めた。この調整の結果、落ち着いた音調となり初期のアグレッシブな音ではなく大人の音になった。のではあるが・・・。
 メーカー設計では、各スピーカーユニットの能率も含めて設計できる良さがある。「10M」の場合、能率の高いトゥイーターユニットと比較しても軽いペーパーコーンのウーハーユニットの能率も十分に高く、アッテネータ無しでつながるように設計されたのであろう。この結果としてモニタースピーカーとして重要な高い能率90 dB/W/mを達成したのだ。このアッテネータの無いデバイディングネットワークも高く評価したいポイントなのだ。
 なんだが「10M」の紹介記事のようになってきたが、製作するオリジナルシステムとして敬意を表したいのである。

 
  1−3 モニタースピーカーとは

 余談ではあるが、モニタースピーカーについて考えてみたい。モニタースピーカーとはレコーディングスタジオなどで音声モニター(確認)に使用される業務用のスピーカーシステムである。私も何度か仕事でレコーディングスタジオに入った事があるが、たいがいのレコーディングスタジオではTAD(業務用システムメーカー)などの大型モニタースピーカーが壁面に埋め込まれている。こういったモニタースピーカーはレコーディングエンジニアが作業しやすいようにどこのスタジオでも似たようなシステムを採用している。たいていの壁面モニタースピーカーは2ウェイで40cm級の大型ウーハーユニットが2本使われており、ウッドホーンのトゥイーターユニットがその上から突き出している。
 とっても興味があったので仕事の合間にレコーディングエンジニアの方に無理を言って音楽を聞かせてもらった。40cm2本のウーハーは強力で文字通り腹に来る低音である。それでいて風のようにきわめて自然で誇張感が無い。かるがると出ている感じだ。ウッドホーンの高音域も刺激的でなくなめらかであるが、決して癒し系の音ではない。正確ではっきりくっきりである。なによりその音量がすごい。スタジオ(調整室)は広さも大きい(20畳くらい?)が壁面に吸音材が張り巡らされ、とてもデッドな空間である。レコーディングエンジニアは大音量派が多いのだろうが、この静けさと大音量が小さなノイズも聞き逃さないための音質チェックに重要なのだ。台本をめくる音も気になるようなデッドな広い空間で大音量を出すためには、いかにスピーカーシステムの能率が大切であるかが解る。 
 ウーハーユニットが2本であるのもこのためで、おそらくシステムの能率は100dB程度あるのではないだろうか。近づいて見ると40cmのウーハーユニットはペーパーコーンでエッジはフィックスドエッジ(コーン紙の延長によるエッジ)で大面積のため振幅が少ないことが予想できる。2本ダクトのバスレフ方式だが積極的にバスレフを効かせるのではなく息抜き用と感じられた。この軽い大面積ウーハーが小振幅でも風のような軽々とした本物の超低音を再現するのであろう。デバイディングネットワークはデジタル方式であったが、技術者がスタジオごとに出向いて調整するとの話であった。
 この体験が私の目標なのである。あの軽い本物の超低音をいつの日か私のリスニングルームで実現したい・・・。
 大型のモニタースピーカーはレコーディングトラブルのチックには重要だが、一般のリスニングシステムとはかけ離れている。多くのリスナーは大型のスピーカーシステムではなくラジカセ(死語?)やヘッドホンステレオなどのコンパクトオーディオで音楽を聴いている。こういった普通のシステムで再生した際の再生バランスを確認するためにサブモニタースピーカーが必要となる。「10M」は低価格とモニタースピーカーとしての高い資質で爆発的に普及したのだ。このほかに有名なモニタースピーカーとしては12.5cmフルレンジユニットのオーラトーン5Cや1970年代に登場したイギリスBBC規格のモニタースピーカー、LS3/5Aなどがある。どれも密閉型であることが共通であるが、大音量のモニターで低音域が破綻しないためであろう。バスレフ方式では大音量でダクトがバタつく可能性があり、密閉型のように空気バネのリミッター作用が無いのでウーハーユニットのコーンがフレームに当たるなどのトラブルもありうる。
 LS3/5AはBBCの規格に従っていくつかのメーカーから製品化されたが、小型スピーカーシステムとしては「10M」とはケタ違いに高価で欲しいスピーカーシステムであったが長らく手に入れることができなかった。LS3/5Aについては後半で再び登場することになる。

 
  2.設計と製作
  2−1 設計仕様

 「10M」の外形寸法はW215×H382×D199mmであるが、サランネット(前面のネットカバー)を取るとD180mm(実測)。板厚はバッフルが15mmで残りが12mmなので内寸はW191×H358×D153mmとなる。内容積は10リットル程度だが、スピーカーユニットの奥行きがあるので実効内容積は9リットル程度であろう。
 このエンクロージャをLEGOで製作することになる。まず問題となるのは、いつもながら大量のLEGOブロックの確保である。一般的には小型スピーカーシステムに分類される「10M」であるが、LEGOスピーカーとしては大型である。現有のシステムを解体してブロックを再利用するが小型のモデルではぜんぜん足らない。今回はやむなく6号機を解体することにした。6号機はフロアタイプのスパイラルホーンシステムであったが、実験的な意味は終了していた。大型の作品であったので大量の再生ブロックが期待できるが、ブルーのブロックを多用していたのでまだまだ足りない。大量にクロのLEGOブロックを追加購入することになった。ブルーのブロックは内部の補強用に用いることにする。
 LEGOで造る場合、バーティカルタイプとホリゾンタルタイプがあることは何度も記している。バーティカルタイプとは垂直に組上げていく方法で、ホリゾンタルタイプは後ろから前方に組立てる方法である。今回のエンクロージャでは大きなハコの補強がポイントとなる。特にLEGOでは苦手な密閉型なのでウーハーの強力な背圧に耐える強度が不可欠である。さらに、18cmという初めての大口径スピーカーユニットを固定しなければならない。大穴がバッフル面に開くので強度が不安なところだ。この強度を得るにはバーティカルタイプが有利であると判断した。LEGOではプレートブロックを重ねて造るフタと底面構造が最も弱くなるが、バーティカルタイプはこの部分の面積が小さくできるからだ。図1の構造図を描いてみた。外形寸法W215×H382×D180mmに近い値として横幅はLEGOの1ピッチが8mmだから27個並べて216mmとした。高さは38段積上げて380mm、奥行きは22ピッチで176mmである。中央に上下のフタと底面をつなぐ補強柱を立てる。
・・・と考えたのではあるが、バーティカルタイプの場合、前面にLEGOブロックの側面が来るのでレンガ作りのようで見てくれが良くない。見栄えはリスニング中に視界に入るスピーカーシステムにとって重要な要素であり、おろそかにできない。これはデザインを優先してホリゾンタルタイプで行こう。

図1 バーティカルタイプ構造図
図2 ホリゾンタルタイプ構造図

 図2の構造図を再び描いた。横幅は216mmで同じ、高さは48ピッチで384mm、奥行きは18段つなげれば180mmになる。この場合、大切なバッフル面と背面の強度が不足するので十分に補強柱を入れる必要がある。図2のピンク色で示す5箇所に柱を立てることにしたが、ウーハーユニットの部分に立てることができない。ここにはデバイディングネットワーク基板も取付ける予定なので補強柱は無理だ。これは問題になるかもしれない。
 ハコの左右、上下方向の補強には24号機と同様に図2の水色で示す補強ステーを中央付近で5本、井型に渡すことにした。オリジナルにあるトゥイーター取付け部のザグリ(落し込み)も再現しよう。図にはないが、もちろん十分な補強リブをバッフル面と背面に設ける。
 デバイディングネットワークは、今回はこだわらずに標準的な回路を採用する。24号機のようにフルレンジ+トゥイーターという構成ではなく、純粋にウーハーユニットなので高音域のカットも必要である。ここはオリジナルに習ってクロスオーバー2kHzの12dB/オクターブ、-6dBクロスの回路とする。パーツで組立てても良いのだが、大きく重いコイルの固定が弱いと問題なので市販の完成デバイディングネットワーク基板を用いることにした。DaytonAudioの2ウェイ用ネットワークである。
基板の寸法は幅165mm、奥行き110mm、高さ43mmでウーハーユニットの背部に収めることができる。基板を背面に設置したのはスピーカーユニットとの磁気的結合を避ける目的もある。バッフル面はトゥイーター部分とウーハー部分で分割して製作性を確保する。背面パネルも上下で分割してデバイディングネットワーク基板と接続ターミナルが取付く下部は固定として上部をメンテナンス用に開けられるようにした。と言っても今回は調整する項目は無いのではあるが。
 密閉型で重要な吸音材には本機も活性炭を用いる。グラスウールやフェルト、綿類はほこりが出るのでいやなのだ。もちろん、活性炭の高い吸音効果と側面に貼り付けることで制振効果も期待する。十分な量の活性炭が必要だ。100円の冷蔵庫用消臭剤を40個購入した。(うぐぅ・・・、これだけで4千円!)
 オリジナルの「10M」は強固なエンクロージャでタイトな低音表現であるが、この25号機はしなやかなLEGO製エンクロージャでハコからの低音放射が期待できるので、ウーハーユニットを自由に鳴らして小音量でも豊かな低音再生を狙う。ハコ鳴りを利用してもLEGOの高い内部損失特性でいやなキャラクターは出ないと考えている。同じスピーカーユニット、同じディメンジョンのエンクロージャでも全く異なった表現になるだろう。

<25号機 基本仕様> 
・形式:ブックシェルフ2ウェイ 左右対称デザイン
・組立方法:ホリゾンタルタイプ(水平組立)
・エンクロージャ方式:密閉型
・使用ユニット:トゥイーター YAMAHA JA0518A(3.5cmソフトドーム)
         :ウーハー YAMAHA JA1801A(18cmペーパーコーン) 
・外形寸法:W216×H384×D180mm
・内容積:約10リットル(実効容積:約9リットル)
・クロスオーバー:2kHz
・デバイディングネットワーク:DaytonAudio 2ウェイ用ネットワーク
・質量:6.0kg(1台)

 
  2−2 製作過程

 まずはバッフル板というかスピーカーユニット固定フレームの製作である。ウーハー固定フレームを写真4に示す。18cmユニットなのでほとんどが穴。プレートブロック3枚重ねで10mm、これに前面の化粧パネルが付くので13mm厚さになる。穴あきプレートブロックを上手く配置してウーハーユニットの穴位置に合わせた。これだけ重いスピーカーユニットをM4ボルト4本留めで固定するが、いつものようにダブルナットで強固に固定するので不安はない。大型ユニットの方がフレームも大きく固定寸法の自由度が高いので容易である。スピーカーユニットは十分に固定フレームに密着するので密閉度は問題ないだろう。
 トゥイーター固定フレームを写真5に示す。2プレート分の厚さをザグッてあるのでトゥイーターユニットの表面とツライチになる。こちらも13mm厚さだがザグッた部分は10mmとなっている。固定のためのボルト穴は設けず、四角い取付け穴の4隅を利用して大型ワッシャでM4ボルト、ナットで取付けた。バッフル面の空いた部分にはエンブレムシールを貼る。

写真4 ウーハー固定フレーム 写真5 トゥイーター固定フレーム

 全構成部品は本機が大型なので1枚の写真に納まらない。写真6はバッフル面と背面の部品である。写真7がエンクロージャフレームになる。フレームは前後の2分割であり、一方には補強ステーが付く。写真8がその他の部品で、デバイディングネットワーク基板、内部配線のリード線、補強柱、基板固定部品、インシュレータ、吸音材がある。
 個々の部品詳細を説明する。写真9はウーハーユニット部である。前述のウーハー固定フレームにスピーカーユニットを固定したものだ。裏面には補強リブが付いている。この補強リブ部分に補強柱が立ち、3方はメインフレームに強固に固定される。

写真6 構成部品1 写真7 構成部品2
写真8 その他の部品 写真9 ウーハーユニット部

 写真10はトゥイーターユニット部。こちらは面積が小さいのでさらに強度が高い。裏面には補強リブも付いている。ザグリは4隅の斜めカット部分はあきらめた。
 メインフレームA(写真11)。後側のこのフレームには補強ステーが付いている。ステーの位置は補強柱に挟まれるポジションである。厚さはブロック8段で80mm。
 メインフレームB(写真12)はただの枠構造である。これも8段で80mm、これにバッフル面、背面厚さの各10mmを加えてトータル180mmとなる。
 ターミナルパネル(写真13)はプレート3枚で10mm厚さ。ターミナルの他に裏面(内部面)に補強リブが付く。写真14はメンテナンスパネルで同様に補強リブ付きの10mm厚さである。写真15に補強柱とデバイディングネットワーク基板固定部品を示す。補強柱はポジションにより3種類がある。固定部品は2種類。固定ボルトはM3と細くなっているが、これは基板の取付け穴との微妙な位置あわせのためである。
 DaytonAudioの2ウェイ用ネットワーク基板を写真16に示す。コンデンサにはポリプロピレンフィルムコンデンサーが使われ、トゥイーター用のコイルは空芯コイル、ウーファー用はインダクタンスを稼ぐためにコア入りコイルが用いられている。2つのコイルが直交状態に配置され干渉を防いでいる。前述のとおりクロスオーバー2kHzの12dB/オクターブ、-6dBクロスの標準的な回路である。

写真10 トゥイーターユニット部 写真11 メインフレームA
写真12 メインフレームB 写真13 ターミナルパネル
写真14 メンテナンスパネル 写真15 補強柱と基板固定部品

 それでは組立てよう。ターミナルパネルに基板固定部品とリード線を取付ける(写真17)。今回はリード線も多いので間違いの無いように各リード線の先端にラベルを付けた。ウーハー用の出力端子にトゥイーターユニットを誤って配線したら破損してしまう。

写真16 ネットワーク基板 写真17 ターミナルパネル組立て

 デバイディングネットワーク基板を取付ける(写真18)。リード線にはファストン端子を付けてあるので接続は容易である。
 補強柱をターミナルパネルとメンテナンスパネルに立てる(写真19)。基板固定部品は補強柱に挟まれる形になるので重たいデバイディングネットワーク基板が外れるトラブルは生じない。補強柱は図2に示した5箇所である。

写真18 基板取付け 写真19 背面パネル組立て

 完成した背面パネルにメインフレームAとメインフレームBを取付ける(写真20)。
メインフレームAの補強ステーにさらに補強柱を立てる。
 吸音材を挿入する(写真21)。吸音材の活性炭20個(1台あたり)は写真のように側面と補強柱に両面テープで固定した。内部は吸音材でいっぱいであるが、かさばるので活性炭の体積比は実質20%くらいである。
 トゥイーターユニット部を取付ける(写真22)。補強柱が立っているのでしっかりと押込むことができ、強固に固定できた。ウーハーユニット部を取付ける(写真23)。リード線が長めなので作業は容易だ。こちらも補強柱があるのでしっかりと固定できる。心配したユニット取付けの大穴はスピーカーユニット自身で補強されるので問題ないだろう。

写真20 メインフレーム組立て 写真21 吸音材挿入
写真22 トゥイーター部取付け 写真23 ウーハー部取付け

 いつものインシュレータを貼り付けて完成である(写真24)。オリジナルの「10M」を彷彿とさせるカッコ良さだ。ピアノフィニッシュ仕上げの「10M」に見えなくもない。遠目で見ると区別が付かない。(オリジナルのスピーカーユニットなのだから当然?)
 背面は大面積(写真25)。各所を指で叩いてみると側面などはコツコツと締まった音で問題ないが、ウーハーの裏面が予想通り弱い感じでボコボコ言う。これは問題かな?

写真24 完成した25号機 写真25 背面の様子
 
  3.性能評価
  3−1 試聴と調整

 25号機には調整項目は無い。吸音材の増減くらいであろうが、あまり変化はないだろう。早速試聴してみよう(写真26)。高音域はトゥイーターユニットのソフトドームのキャラクターか刺激的な音ではない。造りたてでスピーカーユニットのエージングができていないが音像定位や音場感は問題ない。当初、歪感があり、アレ?と思ったが、前報で述べた地震対策用のマジックテープベルトでギュウギュウに締めて固定して聴いていたためであった。スタンドとの固定がしっかりして効果的と思っていたが見事な誤算であった。ベルトのテンションでエンクロージャに歪が生じて音が歪っぽくなってしまったのである。こんなことで歪が増えるとは!・・・驚いたが良い経験になった。エンクロージャに応力歪は禁物である。(勉強は尽きない)
 低音域はどうか?・・・期待通りに小音量でも量感がある。モニタースピーカーとしては適さないが普通のリスニング用にはこの方がバランスは良いと感じる。ところが、低音に締りが無く解像感が低い。筐体放射の影響で低音域の音像が定まらない感じである。さらに、どうも低音に歪が生じている。背面パネルのウイークポイントの振動音が乗っているようである。
 この対策には困った。補強柱は立てられないし、基板があるので補強リブの追加も困難だ。しかたがないので背面に外側から補強リブを渡した。棒状のプレートブロック3枚重ね(厚さ10mm)の補強リブを写真27のように弱い部分に取付けた。ターミナルパネルが補強リブで表裏からサンドイッチされた構造になるので効くだろう。外側に補強するのはちょっと気になるが背面だからまあ良いか。LEGOならではの補強手法である。
 再度試聴。低音域の歪感は低減された。スピーカーユニットのエージングも進んで良い音になってきた。24号機のときも同じように書いたが、この音は間違いなくLEGOスピーカー歴代最高である。

写真26 25号機試聴セッティング 写真27 背面補強リブ
  3−2 まとめ

 今回の25号機によってLEGOを素材としたスピーカーシステムが十分な性能を持てることを確認できたと思う。密閉型としての動作も問題なく音のクオリティは満足できるレベルである。だが、同時に限界も感じる。これ以上の強度確保は困難であるし、あくまで筐体放射を許したエンクロージャしか造れないだろう。オリジナルの「10M」のようなタイトな低音、モニタースピーカーとしての資質は持てない。今後はLEGOのこうした素材としての特徴を活かす利用法が必要だと思う。思えばバックロードホーンのようなトンネル状の構造体による放射効率が要求されるシステムにはLEGOスピーカーは向かないのかもしれない。ヤワな構造ではロスが生じて低音の量感は期待できないだろう。
 オリジナルと比較すると外観はそっくりだが音調は全く異なる。エンクロージャがスピーカーシステムに与える影響は当たり前ではあるが甚大である。
 オリジナル「10M」の経年変化で変色した白いコーン紙がこのスピーカーシステムの30年の歴史を感じさせる(写真28)。

写真28 オリジナルとの比較
 
  4.もうひとつの名機「LS3/5A」
  4−1 「kit LS3/5A」の製作

 欲しかったスピーカーシステム「LS3/5A」が数年前にザ・キット屋さんから「kit LS3/5A」として発売されたが、すでに別のメーカーのレプリカを所有していたので購入はしなかった。しかし、今回発表された「kit LS3/5A」はすばらしい仕上げのブラックバージョンであった。これはさすがに我慢できなくて購入した。
 「LS3/5A」は11cmウーハーと1.9cmトゥイーターを配した密閉型2ウェイの有名なモニタースピーカーであるが、大変興味深い特徴がある。きわめて複雑なデバイディングネットワークである。オリジナルの「LS3/5A」のこの特徴を「kit LS3/5A」も有している。
 組立て中の写真29をご覧いただきたい、基板上にコンデンサ、コイル、抵抗器が23素子も搭載されている。私はデバイディングネットワークにはシンプルな回路が良いと思っているがこの複雑な回路は何だろう?一般的な12dB/オクターブ、-6dBクロスの回路では最小でコンデンサ2個、コイル2個の4個で済む。オリジナルの「10M」で5個、今回の25号機も5個である。この複雑な回路のノウハウを研究したくて購入したのである。また、写真は吸音材を外したものではない。内面周囲にスポンジが貼ってあるだけで吸音材が無いのである。密閉型としては私の知らない構成だ。このあたりもこのシステムのノウハウなのであろう。
 組立てが完成した「kit LS3/5A」(写真30)は完璧なピアノフィニッシュでホレボレする外観である。ゴールドのエンブレム、背面の銘板やジャンパーバーなど到底この価格は信じられない高級感である。白状すると25号機の製作コストはこの「kit LS3/5A」よりもずっと高価である。(実はオリジナルの「10M」よりも高かったりする)

写真29 「kit LS3/5A」の内部 写真30 「kit LS3/5A」外観
写真31 「kit LS3/5A」セッティング 写真32 25号機との比較
  4−2 比較試聴

 音を聴いてみよう(写真31)。・・・なんという優しい音。エージングも進んでいないのにすばらしいバランスで鳴る。高音域は柔らかく自然で、「10M」風のモニタースピーカーの音調ではないと思うが、このあたりが異国の文化の違いか。
 この「kit LS3/5A」と「25号機」の比較試聴を行ってみた(写真32)。
 スピーカーシステムの評価は難しい。どんな機材でどんなソース(音楽)で行うかでも結果は違ってくるし、なにより評価者の主観(好み)の影響が大きい。また、聴覚では絶対的な評価はできない。あくまで相対評価である。スイッチで切替えながら比較する手法もあるが、音量が少し異なるだけでも印象は変わってしまう。再生音量が大きい方が評価は良くなるのだ。だから私は一時間程度、じっくりと聴いて傾向を判断するようにしている。下記のシステムで同じボーカル曲を聴くことで比較した。したがって、この評価はあくまで私の主観である。
 比較といっても優劣を付けることではない。私はあるレベルに達したスピーカーシステムは楽器のように個性があっても良いと思う。正しい音などというものははない。むしろ音楽を楽しむための主張が欲しいのだ。低音が出ていなくてもアタックで聴かせるモデル、高音がきつくても迫力を主張するモデルがあっても良い。ただ、こういったアクの強いモデルは市販製品では失敗する。自作の独壇場であろう。

「kit LS3/5A」
 サイズからは想像できないほどの低音域の量感がある。先の回路やエンクロージャ構造の効果であると思うがウーハーユニットの放射効率を上手に高めているのであろう。まるでもっと大型のシステムのような豊かな低音表現である。それでいてバスレフ方式のようなクセが無い。スペクトラムアナライザで観察すると60Hz程度まで十分にレスポンスしている。小型の密閉型でこれほどの量感が出せるとは・・・密閉型の認識を新たにした。
 よくコントロールされた音調という印象で音楽ジャンルを選ばない良さがある。これこそがモニタースピーカーのもう一つの資質なのだろう。小型なのでさすがに音場感がすばらしい。特に奥行きに広がる印象である。高音域は優しくナチュラルに鳴り音量を上げてもうるさくならない。さらに、このような小型システムで低音を伸ばしたものは大音量の低音入力でウーハーがバタバタと異音を生じる場合があるが、さすがにモニタースピーカーというだけあって大音量にも破綻がない。大きなポテンシャルを持ったシステムだ。
 能率は86 dB/W/mと低いのでパワーアンプのボリュームは12時(の位置、つまり真上)でSV-192Sの可変出力のアッテネータはだいたい3時くらいで好みの音圧となった。この低めの能率も低音域の伸びにつながるのだと思う。
 それにしてもコストパフォーマンス抜群のシステムである。知合いから「小型のスピーカーシステムはどれが良いか教えて欲しい」とよく聞かれるが、ぜひ薦めたいモデルだ。(限定販売なのが残念)

「25号機」
 低音域の表現はさすがに18cmウーハーと内容積では2倍程度大きなエンクロージャサイズから余裕が感じられる。50Hz 程度までレスポンスしており伸びのある自然な低音だ。能率は高くアッテネータは12時程度で再生音量が同じになった。
 この「25号機」の最大の特徴は前へ前へと出てくる音像感だ。アッテネータのないトゥイーターから鮮烈な高音域を聴くことができる。近所迷惑を顧みず大音量で迫力を楽しみたくなる。ちゃんとピアノのフォルテが打楽器に聴こえる。私はこういうダイナミックな音が好きなのだ。
 ボーカルが明確に定位し、このソースは得意な音楽ジャンルだと感じる。オーケストラ曲など別のソースだと評価はまた変わるかもしれないが壮大なスケール感に期待が持てる。まだまだエージングやセッティングの追い込みでクオリティは向上しそうである。
 LEGOスピーカーもすばらしいレベルに到達したと自負している。

<試聴システム>
・音源:SONY ハードディスクレコーダー HAR-LH500(光デジタル出力使用)
・D/Aコンバータ:SV-192S(可変出力使用)
・マスタークロックジェネレーター:MUTEC MC-3
・パワーアンプ:VP-3000
・スペクトラムアナライザ:BEHRINGER DEQ2496
・測定用マイク:BEHRINGER ECM8000

(2011.1.9)

<追加報告>
 本稿はここで完成したのであるが、「kit LS3/5A」の評価に進展があったので追加報告する。このスピーカーシステムは文句なく人に薦められる物なのだが、正直に言うと私の好みの音調ではなかった。優しい音、癒し系の音という評価で、もっと明瞭さがあればと感じていた。トゥイーターのアッテネータの変更方法も聞いていたので検討していた。が、インシュレータを変更したところ、音が一変した。
 写真にあるようにいつもオーディオテクニカのインシュレータを使っているが、これは底面に1mm厚さのフェルトまたはコルクが貼ってある。4点支持ではこのコンプライアンスが必要であるし、滑り止めにも重要なのだが支点が不明確になる問題がある。試しに山本音響の黒檀材による三角ベースを挟んでみた。4点だとがたつくので前面中央の一箇所のみ挿入して、後2点が滑り止めとなる3点設置だ。重要なバッフル面の支点がリジットな点設置(実際は線設置)となり効果があると判断したのだ。高さが18mmあるので7mmほど上向きになった。
 驚いたことに眼前がパァーと明るくなった。すごい変化である。ボーカルがピシッと定位してまるでそこに居るようだ。ダイナミックな音が部屋中に満ちあふれている。これ、この音が欲しかったんだ。これがこのスピーカーの本当の実力だろう。
 改めてセッティングの重要性を再認識した。特にこのスピーカーシステムはエンクロージャを響かせているのかセッティングに敏感なようだ。これだからオーディオはおもしろい。・・・そうか、やっぱりスピーカーは楽器なんだ。

 
     
写真33 リスニングルーム全景

 
 
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