キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 第21報
  «第20報   番外編その2»  

LEGOスピーカーの製作 第21報

 
     


写真1 ハイブリッドパワードLEGOスピーカーシステム29号機

 
  1. 第一部 LEGO真空管ラインアンプの製作
 
     


写真2 調整中のLEGO真空管ラインアンプ

 
  1−1 LEGOで真空管アンプを造りたい!

 ここにリポートを書かせていただいているくらいだから、私は真空管アンプの大ファンである。リスニングルームの床には多くの真空管パワーアンプが居直り足の踏み場が無い。あの柔らかな明かりと力強いトランス群の佇まいがなんとも好きなのだ。
 LEGOをケースにした真空管アンプの製作にトライしたいとずっと思っていた。しかし、真空管アンプが用いる高電圧は200V〜400Vにも達し、使用中にLEGOが外れたら高電圧がむき出しになる。これは安全上からも法律に触れそうだ。トランスの重さにもLEGOケースが耐えるかどうか不安である。だからこの企画はあきらめていた。ところが・・・
 先日、大橋さんの日記の中でYAHAアンプを使ったハイブリッドアンプを製作された方が紹介されていた。YAHAアンプ?恥ずかしながら私はこの存在を知らなかった。簡単に紹介すれば12Vという真空管アンプとしては極めて低い電圧で動作するヘッドホン用のミニアンプ回路である。YAHAとは Yet Another Hybrid Amp の頭文字だそうであるが、比較的低電圧でも動作する小信号用の真空管5687などにインピーダンス変換にトランスではなくボルテージフォロアのオペアンプを組合せただけの超シンプルな回路である。
 グリッドバイアスを与える回路すら見当たらない。12Vで本当に動作するのだろうか?インターネットで調べてみると微妙なバランスで成り立っている回路で動作点も最適点から大きく外れた使い方で、壮大にいい意味での真空管歪が出そうだ。・・・これは造って見るしかないな。そう、これならばLEGOケースに入れることができるからだ。

 
  1−2 LEGO真空管ラインアンプの構造設計

 YAHAアンプは本来ミニヘッドホンアンプなのだが、私としてはパワーアンプの前に挿入するプリアンプとして計画した。プリアンプといってもボリュームが付いているだけのシンプルなアンプなのでラインアンプと呼ぶことにする。ヘッドホンアンプの出力をそのままパワーアンプの入力に利用することができることはiPodなどを直接つないでいる事からも理解できると思うが、負荷がヘッドホンよりも軽くなるだけで信号レベル的には問題は無い。
 YAHAアンプは部品と回路基板付きのキットが安価で販売されていたのでこれを利用した。私はTIC-4というキットを購入したがオリジナルの回路よりもさらに簡素になっているそうで、とても小さな基板である。
 LEGO真空管ラインアンプの回路構成を図1に示すが、TIC-4基板の内部回路は権利の問題があるのでここには記さない。興味のある方は調べていただきたい。ケースがLEGO製でシールド効果が無くノイズが心配なので信号ラインの配線にはシールド線をきちんと用いた。入力には20kΩのボリュームを挿入し、入出力コネクタはRCAピンジャックである。12Vの電源は小型のACアダプタを用いる。指定の1A定格、100V専用品を選んだ。電源スイッチと基板の間に1000μFの電解コンデンサを追加して電源を強化し、LEDのパイロットランプも付けた。この電解コンデンサとLED電流制限用の抵抗器を取付けるL型ラグ板も用意した。
 基板、ボリューム、電源スイッチ、コネクタ類を実装するLEGOで製作するケースは単なるハコなので構造図は描かないが、外形寸法はW128mm H64mm D143mmでトップパネルに真空管取付け用の穴を開けた。基板のミニサイズからすると外形は大きくなってしまったが、これでもLEGOケースは厚みがあるので内寸はW96mm H32mm D120mmしかなく結構狭い。実際のケース設計は机上ではなく部品のサイズを見ながら現物合わせで試行錯誤をしながら行った。いつものスピーカー製作とは異なりアンプの製作では取付けるパーツが小さいので調整がクリティカルである。実はLEGOブロックの改造(テーパーリーマーで穴を広げるなどの加工)もかなり行った。

図1 回路構成図
 
  1−3 LEGO真空管ラインアンプの部品解説

 LEGO真空管ラインアンプの全構成部品を写真3に示す。今回はいつもよりLEGO比率が少ない。
 アンプフレームを写真4、写真5に示す。コの字型のハコだが底面に放熱用の穴をビームブロック(穴あきLEGOブロック)で充分に設けた。今回は初めてのアンプ製作であり、電圧的には安全性に問題は無いが熱的には経験が無い。もしかしたら真空管の発熱でLEGOケースが溶けてしまうかも知れないのだ。充分な放熱対策が必須である。放熱穴の横の1穴はL型ラグ板取付け用である。
 この部品で最も苦労したのはTIC-4基板の取付け構造である。写真の様にM3の長いボルトを4本突き出してあるが、ピッチが基板に合うように微調整して高さもトップパネルからちょうど良く真空管が出るように調整した。真空管の抜き差し時に基板には大きな力がかかるのでしっかりと固定しなければならない。基板はこの4本のボルトに長さ15mmのカラーを通した上で空中に固定される。

写真3 LEGO真空管ラインアンプ全構成部品
写真4 アンプフレーム(表面) 写真5 アンプフレーム(裏面)

 写真6、写真7はトップパネルである。なんだかお城の部品みたいだがアーチ状の窓から真空管が顔を出す算段である。裏面の段差は基板との干渉を防ぐための調整である。ビームブロックが上面6箇所に付いているが、これは後に示すプロテクトアームを付けるためのものである。

写真6 トップパネル(表面) 写真7 トップパネル(裏面)

 フロントパネルを写真8、写真9に示す。パイロットランプ部分はクリアブロックで透過性を確保し前面はクリアレッドにした。PowerとVolumeのレタリングを化粧パネルパーツに入れ、「YAHA Line Amplifier」のエンブレムを付けた。電源スイッチとボリュームの取付け穴は可変抵抗器の軸長に対する調整や干渉を避ける加工を細かく行っている。
 写真10はリアパネルである。RCAピンジャックを取付ける角穴と電源コネクタの穴がある。取付けのじゃまになるLEGOブロックのポッチは切り取ってある。
 写真11は真空管のプロテクトアームである。真空管は動作中に大変熱くなるので誤って触れると火傷をする。また、破損しやすいのでこれを防ぐための部品である。
 第19報のトビラ写真で27号機の横にバイクのモデルが写っているが、これは無関係に入れたものでは無くこのバイクもLEGO製なのだ。LEGOには通常のブロックシリーズの他にLEGOテクニックというシリーズがあり、このバイクのように歯車やチェーン、バネ部品などで可動構造を再現できる。部品のラインナップにはモーターやリモコンもあり、ロボットまでも製作できる新しいLEGOなのである。私がいつもボルト穴に利用しているビームブロックは本来このテクニックシリーズとLEGOブロックとのインターフェイスパーツであり互いにピッチが一致するようになっている。
 写真11はLEGOテクニックのバイクのフレームにも使われているリフトアームという部品でプロテクトアームを作ったもので、トップパネルの3箇所のビーム穴に取付けることで固定される。

写真8 フロントパネル(表面) 写真9 フロントパネル(裏面)
写真10 リアパネル 写真11 プロテクトアーム

 YAHA基板TIC-4と真空管5687を写真12に示す。本当にシンプルで小さな回路で基板の裏面に真空管ソケットが付いている。使用しているオペアンプはNJM4556ADで性能が期待できる。小さな真空管5687は今回のメインパーツであるが、ヒーター定格が12.6V、0.45Aととんでもなく大きく、使用するACアダプタの半分の電力はヒーターが食っている。これは発熱が心配である。
 写真13は入出力ピンジャックパネルと結線済みの可変抵抗器である。普通のアンプ製作ではパーツをケースに取付けてから配線作業を行うことがセオリーであるが、今回はLEGOのケース内が大変狭く、またLEGOブロックがハンダ付けの熱に弱いので先に結線作業を済ませてある。配線にはシールド線を用い可変抵抗器をアースするリード線も付けた。これが無いとボリューム操作時にビーとノイズが乗るのだ。
 この部品は写真10のリアパネルに付けるのだが、配線後では角穴を通らない。普通はギャボッ!失敗した!!・・・となるのだが心配は要らない。LEGOだから一旦外して通せば良いのだ。ああLEGOで良かった。
 写真14は電源配線である。電源スイッチとパイロットランプをコンデンサの付いたL型ラグ板に配線してある。別に電源コネクタがあるが、この配線を済ませていないのは取付け穴を通すためで、さすがにすべては上記の様には行かない。組立時のハンダ付けはこの部分と基板配線の3箇所だけである。
 電源スイッチにはデザイン上から小型のロータリースイッチが欲しかったのだが、適当な部品が無かったのでスイッチ付き可変抵抗器を用いた。可変抵抗部分は使わないのでちょっともったいない。LEDはビームブロックを通してフロントパネルに取付ける。
 その他の部品を写真15に示す。ACアダプタ、いつものインシュレーター、電源スイッチとボリュームのツマミ、ネジ類である。

写真12 TIC-4基板と真空管 写真13 信号ライン配線部品
写真14 電源ライン配線部品 写真15 その他の部品
 
  1−4 LEGO真空管ラインアンプの製作過程

 まずはリアパネルに入出力ピンジャックパネルと電源コネクタを取付ける(写真16、写真17)。ピンジャックはピンプラグの挿抜時に力がかかるのでM3ボルト&ナットでしっかりと取付ける。LEGOの取付けでは緩み防止のためにナットの2枚使用が基本である。

写真16 リアパネルと配線部品 写真17 完成したリアパネル

 フロントパネルに電源スイッチとパイロットランプを取付ける。電源スイッチは一旦前面の化粧パネルを外してから付ける。(写真18、写真19)

写真18 フロントパネルと配線部品 写真19 完成したフロントパネル

 リアパネルとフロントパネルを組合せる(写真20、写真21)。
作業としてはボリュームの可変抵抗器のフロントパネル取付けと電源コネクタからの配線をL型ラグ板にハンダ付けすることである。
 フロントパネルとリアパネルをアンプフレームに取付ける(写真22、写真23)。パネルは小さいので軽くはめるだけで簡単に付けることができる。
 L型ラグ板をネジ止めし、配線をきれいに整理してケースに押込む。ここで2個のツマミとインシュレーターも貼り付けてしまう。

写真20 フロントパネルとリアパネル 写真21 パネル間配線作業
写真22 パネルとアンプフレーム 写真23 アンプケースの完成

 TIC-4基板をケースに固定する(写真24)。基板の固定はM3ネジ4本に樹脂カラーを通して15mm浮かして固定する。トップパネルの厚さ分を考慮したぎりぎりの高さである。
 組立時の基板のハンダ付け作業は入出力の6箇所と電源の2箇所である。私はシールド線の端末処理は通常は熱収縮チューブをかけるだけだが今回は配線箇所が狭いのでアースラインを単線で延長して作業を容易にした。こうしてコンパクトなLEGOケースに基板が収まった。(写真25)
 真空管を挿して動作確認を行う。確認はプレート電圧とグリッド電圧を測定するだけである。プレート電圧は左右とも約6V、グリッド電圧は左右とも-0.25Vで正常範囲であった。真空管アンプとは思えない低い電圧である。
 早速音を聴きたいところだが本機はラインアンプなのでこれだけでは音が出ない。パワーアンプとスピーカーが必要である。確認はiPodを入力に接続して出力にはヘッドホンをつないで行った。(写真26)
 動作は正常である。低音が充実しており思ったより良い音だ。動作点が特性の直線部分から外れているので歪を心配したが充分に使える。ただし、電源ON、OFF時にミュート機能がないのでかなりのノイズが出る。使用時には電源操作のタイミングに注意が必要だ。
 最後にトップパネルとプロテクトアームを取付ける(写真27)。トップパネルは真空管を挿したままで装着できるように工夫してある。

写真24 アンプケースと基板 写真25 基板の固定と配線の完了
写真26 動作の確認 写真27 トップパネルの取付け
 
  1−5 LEGO真空管ラインアンプの試聴

 完成したLEGO真空管ラインアンプを写真28、写真29に示す。コンパクトでキュートなデザインに仕上がった。トップパネルのエンジ色のスロープブロックがデザイン上のアクセントである。真空管の固定位置はもう少し高くしたかったがLEGOブロックには厚さがあるのでこれが限界である。真上から覗くと基板が見えてカッコ悪いがこれはしかたがない。心配した発熱は真空管には触れられないが窓部分への熱は大丈夫そうだ(夏場はわからないが)。
 プロテクトアームやインシュレーターが高級感を演出している。後面は入出力1系統と電源コネクタのみのシンプルさである。
 さて、試聴と行きたい所であるが・・・じつはこのラインアンプはデジタルアンプを内蔵したLEGOパワードスピーカー29号機との組合せを想定して設計したシステムなのである。真空管のラインアンプとデジタルパワーアンプのハイブリッドシステムである。そこで、試聴はこのスピーカーとの組合せで行うことにする。

写真28 完成した真空管ラインアンプ 写真29 アンプ裏面

<LEGO真空管ラインアンプ 基本仕様>
・形式:真空管入力ラインアンプ(オペアンプ出力)
・機能:音量調整ボリューム付き
・外形寸法:W128mm H150mm D143mm(ツマミ、脚部除く)
・使用基板:YAHA TIC-4
・真空管:Phillips JAN 5687 WB
・オペアンプ:NJM4556AD
・電源:スイッチングACアダプタ12V 1A(GF NP12-1S1210 12V 1A)

 
  2.第二部 LEGOパワードスピーカー29号機の製作
     


写真30 LEGOパワードスピーカー29号機

 
  2−1 アンプ内蔵LEGOパワードスピーカー構想

 皆さんも良くご存知であろうがStereo誌の2012年1月号にデジタルアンプ基板が付属していたが、私も興味を持ち購入してみた。書籍とどちらが付属品かわからないハコにデジタルアンプの基板と電源のACアダプタ、ネジなどが付属していた。(写真31)
 前号の価格が1,000円で本誌が2,800円だからこのアンプは1,800円相等ということになるが、よくも安価に作れるものだ。このLXA-OT1という型式の基板にはLUXMANのマークが光る。あの高級ブランドがコラボレーションして設計しているのだ。これは性能に期待が持てる。早速27号機にバラック配線して聴いて見る。意外に良い音というか、充分な高性能である。これはなんとも製作意欲がかきたてられる。しかし、雑誌に電気回路基板を付属するとは大胆な発想である。

写真31 デジタルパワーアンプ基板 LUXMAN LXA-OT1

 このLXA-OT1デジタルアンプ基板の出力は5W+5WでBTL出力となっている。BTL出力とは位相を反転した2台のアンプ間にスピーカーを接続することで出力を増加する方法で電源電圧の小さなパワーアンプでは有効な方法だ。このため左右チャンネルのマイナス出力を共通にはできない。5Wとはソリッドステートアンプとしては非力な数値であるが実用上は問題無い音量が出る。さすがにデジタルアンプは効率が高く、動作時の基板上の部品に発熱が全くと言って良いほど無い。また、ACアダプタも熱くならない。
 基板にはステレオ2チャンネル分のパワーアンプと入力端子(RCAピンジャック)、スピーカーケーブルを接続する出力ターミナル、12Vの電源コネクタの他にパイロットランプと電源スイッチを兼用したボリュームまで付いている。まさにこれだけで完結である。
 私は以前デジタルアンプを使ってみたことがあるが、そのときの評価はあまり良いものではなかった。高音域が荒れた感じがしたのだ。先入観かも知れないが高速にスイッチングされた音楽というものはどうかと思った。もっとも、ソースのCDもすでにそうなっているのではあるが・・・。
 この基板の音は違う。こんなに小さく安価なのにたいした存在である。さて、こいつをどう料理しようか?
 普通、アンプを内蔵したパワードスピーカーは片チャンネルのエンクロージャにアンプ回路を内蔵し、もう一方のチャンネルのエンクロージャとの間をスピーカーケーブルでつないで構成する。こうすることで信号の入力は片方で済むし電源供給も1つで良い。しかし、この場合左右のエンクロージャの内容積や重さが異なり、音響的に左右差が生じることが懸念される。これは一長一短ではあるが左右をケーブルでつなぐ点も使いにくい。今回、このデジタルアンプ基板を2個用意した。つまり左右のスピーカーそれぞれにパワーアンプを内蔵したパワードスピーカーをLEGOで造ろうという考えである。
 パワードスピーカーはそれだけで音が出せるので省スペースになり、手軽に音楽を楽しめる点がデスクトップのコンパクトオーディオにマッチしている。したがって8cmフルレンジユニットを使ったコンパクトなエンクロージャをLEGOで製作してこの中に入れてしまおうという計画である。では、ステレオアンプの2チャンネルをどう使うのか?
 以前からやってみたい方式があった。タンデムドライブスピーカーの独立ドライブである。タンデムドライブでは前面のメインユニットと後側のサブユニットがあるが、これまでの26号機、27号機、28号機では1台のパワーアンプで両者を駆動してきた。この場合、メインとサブの両スピーカーユニットの音量を独立に設定できない。26号機ではサブユニットに抵抗器を挿入して音量を制限したが、これはダンピングファクタを悪化させ低音のキレが低下する原因となる。また、スピード感も後退するだろう。そもそも抵抗を入れたのは合成インピーダンスが低くなりすぎたためで、このように並列に合成接続されるタンデムドライブ方式では制限が多いのだ。メインユニットとサブユニットの能率差に影響されずに自在に音量比率を変えるには独立ドライブしかないのである。これを実現するのが今回のLEGOパワードスピーカー29号機なのだ。

 
  2−2 29号機の設計

 29号機を製作するにあたって17号機と18号機を解体した。実験的役割を終え使用していなかった両機の部品を再利用することでほとんどLEGOブロックの新規購入無しに製作ができた。スピーカーユニットも再利用した29号機はエコなリサイクル作品なのである。したがって使用するスピーカーユニットは17号機のウッドコーン8cmフルレンジの名機PARC Audio DCU-F101Wをメインに、サブユニットは18号機からこれまた名機の8cmマグネシウムコーンユニット、DIY AUDIO SA/F80AMGを採用した。
 SA/F80AMGをサブで内部に使用するとは贅沢な使い方であるが、どうも私にはこのユニットはマグネシウムコーン独特の高音域にキャラクターを感じてしまう。今回は定評の低音再生能力を縁の下で発揮してもらおう。
 この2本のスピーカーユニットと先のデジタルアンプ基板を納めたエンクロージャ構成を図2のようにデザインした。
 DCU-F101Wは8cmサイズながら一回り大きなフランジを持っている。また、タンデムドライブにするにはSA/F80AMGを完全に内蔵する必要があり、このサイズからスピーカー部を図のように128mm×128mm×173mmの密閉2ボックス構造とした。できるだけコンパクトにしたかったが、これでも実質的な内容積はおのおの約0.5リットルしかない。この2つのスピーカーユニットはマグネットがフェライトなのででかいのだ。
 後側のサブキャビティにのみ吸音材の活性炭を2袋挿入する。体積比率で30%程度であろう。たったの0.5リットルの密閉箱である。普通なら全く低音は期待できないがタンデムドライブの効果は実証済みである。スピーカーユニットからのケーブルはM4のボルトでエンクロージャを貫通して接続される。ケーブルの付け外しは不要なのでターミナルはいらない。ここでもビームブロックが活躍である。
 スピーカー部の下にアンプ部を取付ける。アンプ部の内容積もスピーカーエンクロージャに利用できるとさらにコンパクトになるがアンプ部を密閉にすることは困難であるし、いくら発熱が少ないとはいえ密閉は危険である。また、アンプ基板が音圧にさらされるのも問題であろう。今回は音質重視でスピーカー部とアンプ部は独立とした。
 アンプ部の横幅サイズはスピーカー部と同じ128mmの内寸96mmであるが、この基板の幅はこのように使われることを想定したかのようにピッタリ。アンプ部の高さは基板上のコネクタ類に高さがあるので80mm(内寸64mm)とした。
 基板はボリュームツマミが前面のアンプ部パネルに取付けられるように前端に固定するが、この固定には2穴のビームブロックを利用する。ツマミがちょうどアンプ部フロントパネルのセンターに来るように調整した。また、アンプ部フロントパネルの基板上LED前面部にクリアパーツを付けパイロットランプとする。
 当初はアンプ部の奥行きもスピーカー部と同じ173mmにしようと考えたが、奥行きがむだにありすぎるのと後述のメンテナンスリッドの関係から143mmに縮めた。まだアンプ基板背部の空間が広く感じるかもしれないが、ここには接続のためのケーブル類が収納されるのでこのくらいは必要である。さらに、アンプ部はスピーカー部に対して10mm前方にスライドしてデザインした。
 基板を前端に配置したが、入力のRCAピンケーブルとスピーカー出力ケーブルは組立時に内部で結線するので問題無い。問題なのはACアダプタとの接続である。ACアダプタは外せるようにしておかないと移動や収納時に不便である。そこでアンプ部リアパネルの一部をメンテナンスリッドとして外せるようにしてACアダプタの挿抜に対応する。複雑な構造のハコとなるがLEGOなので自由自在である。
 今回はLXA-OT1基板のコネクタ類は改造せずにそのまま使用する。これを外してケーブルを直付けすればアンプ部をさらにコンパクトにできるが信頼性優先である。

図2 29号機構造図 図3 29号機結線図

 図3は本機の結線図である。アンプ部リアパネルにはRCAピンジャックが1つあり、この入力をリアパネルのメイン/サブ・バランスボリュームで調整して分割し、パワーアンプの2チャンネルに入力する。このバランスボリュームは頻繁には操作しないのでリアパネルで良いだろう。メインユニットのDCU-F101Wはインピーダンス6Ωで能率82dB/W/m、サブユニットのSA/F80AMGは8Ωで84.3dB/W/mなのでバランス調整が難しいところだがバランスボリュームがあるのでコンティニュアスな調整が容易である。この20kΩの可変抵抗器は音量調整用ではないのでリニアなBカーブとした。しかし、可変抵抗器の挿入により感度が低下する。中点では10kΩが両チャンネルにシリーズに入ることになり、LXA-OT1の回路図を見ると基板上の音量調整可変抵抗器も20kΩなので3分の1に感度が低下する。この分ボリュームを上げなければならないが支障は無いだろう。また、信号ソースから見た入力インピーダンスが両チャンネルの並列接続により低下するが、単純な並列接続の10kΩを下まわることはないので問題は無い。
 予想ではメインユニットのバランスを高めればタンデムドライブの効果が少なくなり高音域重視のはっきりした音に、サブユニットのバランスを高めれば低音が強調されBGM向きの音になると思うのだが、どうだろうかな?

<29号機 基本仕様>
・方式:デジタルアンプ内蔵タンデムドライブ方式密閉型(独立ドライブ2アンプ) 
・組立方法:ホリゾンタルタイプ(水平組立)
・エンクロージャ方式:2キャビティ複合密閉型(アンプ部付属)
・使用ユニット:メインユニット DCU-F101W(8cmウッドコーン)
サブユニット SA/F80AMG(8cmマグネシウムコーン)
・外形寸法:W128mm H208mm D183mm
・内容積:メインキャビティ約0.5リットル、サブキャビティ約0.5リットル
・機能:メイン/サブ・バランス調整
・デジタルアンプ部仕様:使用基板 LUXMAN LXA-OT1
               最大出力 5W+5W(8Ω)
               電源電圧 12V(専用ACアダプタ)

 
  2−3 29号機の部品解説

 写真32に29号機の全構成部品を示す。今回はアンプ内蔵ということもあり、部品点数が多い。こうして並べてみると、まるで組立キットのようで壮観である。もちろんここまでには個々の部品製作の地道な作業があったのである。

写真32 29号機全構成部品

 写真33はメインユニットモジュールである。スロープブロックがアクセントであるが、このコーナーカットデザインでバッフルパネルには厚みがあり極めて強固である。音質的にも効果的だろう。スピーカーユニットは4本のM3ボルト&ナットで強固に固定されている。取付け穴ピッチとの関係からここはM3を使用した。このDCU-F101Wというユニットは大変高級感がある。ウッドコーンもナチュラルな音調が期待できロングストロークなので8cmながら低音も良いだろう。本来は大容積のエンクロージャで真価を発揮するユニットであるが、今回の0.5リットル+タンデムドライブでどんな音がするか楽しみである。
 内蔵されるサブユニットモジュール(写真34)。SA/F80AMGがM4ボルト&ナットで取付けられている。密閉度を保つためにバッフルパネルの一部に化粧パネルが付いている。
 このスピーカーユニットは本当にマグネットが大きい。強力な磁気回路と軽量メタル系振動板が低音再生力の源なのだろう。メインユニットのウッドコーンとの振動板のハイブリッドも今回のポイントである。サブユニットには内容積の小さな密閉箱が負荷となるので適材適所といったところだ。

写真33 メインユニットモジュール 写真34 サブユニットモジュール

 メインフレームを写真35にサブフレームを写真36に示す。128mm角のロの字枠だがそれぞれ下面に電気接続のためのM4ネジ穴2箇所とアンプ部とつなげる固定部分がある。
 アンプ部フレームを写真37に示す。底面には放熱用の穴が8箇所あり、アンプ基板を固定するM3ボルトが付けられている。後端が複雑な形状となっているが、ここにメンテナンスリッドが付く。音圧を直接受けるところではないがスピーカーエンクロージャの一部となるので強度も高く製作した。
 写真38はアンプ部フロントパネルである。先述のラインアンプとそろえたデザインでボリューム軸の穴がセンターにあり、パイロットランプが透過するようにクリアパーツを用いている。写真では良く見えないが「Powered by LUXMAN」のエンブレムを付けた。

写真35 メインフレーム 写真36 サブフレーム
写真37 アンプ部フレーム 写真38 アンプ部フロントパネル

 スピーカー部リアパネルを写真39に、アンプ部リアパネルを写真40に示す。アンプ部リアパネルは入力のコネクタパネルを取付ける角穴があり、これは内面から取付けるのでこの部分のLEGOブロックのポッチを切り取った。また、固定部の厚みを6mmにしてコネクタが奥まりすぎないようにしている。
 写真41の小さな部品がメンテナンスリッドである。写真42は2台のデジタルアンプ基板LXA-OT1である。このACアダプタはコンパクトで良い。今回のシステムではラインアンプを含めて3個のACアダプタが必要になるのでコンセントまわりが大変である。

写真39 スピーカー部リアパネル 写真40 アンプ部リアパネル
写真41 メンテナンスリッド 写真42 デジタルアンプとACアダプタ

 入力のコネクタパネルは写真43の2PのRCAピンジャックを加工して一方の穴に20kΩの可変抵抗器を取付けて作製した。
 加工後のケーブル類を写真44に示す。1個のRCAピンジャック入力がバランスボリュームをかえして2本のRCAピンケーブルにつながっている。スピーカー接続用のケーブルはスピーカー部内側用と外側用の2種類で8本製作した。
 写真45はその他のツマミ、吸音材、インシュレーター、ネジ類である。

写真43 加工前のコネクタ部品 写真44 加工後のケーブル類
写真45 その他の部品
 
  2−4 29号機の製作過程

 いつも述べていることだが製作の手順も重要である。今回はまずサブユニット側から組立を行う。写真46の様にサブフレームにサブユニットモジュールを取付ける。サブユニットにはケーブルを付けておき、2本のM4ボルトでフレームを貫通してケーブルを外側に引き出す。この外側ケーブルの先端に端子は付けないが、アンプ基板のスピーカーターミナルが線材用だからだ。
 吸音材の活性炭を2袋挿入してサブフレームにスピーカー部リアパネルを取付ける(写真47)。このような内容積の少ない場合は特に活性炭吸音材が有効だと思っている。スピーカーユニット面を上にして押付けて強固にブロックを結合した。
 同様にメインフレームとメインユニットモジュールを組立てる(写真48)。外側ケーブルの引き出し向きがアンプ部フレームに干渉しないように注意する。
 サブユニット部分とメインユニット部分を組合せてスピーカー部が完成する(写真49)。前面から押付けて完全に結合した小さなハコ構造なので極めて強度も高い。下面から4本の接続ケーブルが出ている。

写真46 サブユニット部分の組立 写真47 吸音材の挿入
写真48 メインユニット部分の組立 写真49 スピーカー部の組立

 次にアンプ部の組立を行う。アンプ部フレームにアンプ基板を固定する(写真50)。4本のM3ネジで固定するが、基板に無理な力が加わらないように注意して固定する。先に記したように内寸の96mmにジャストサイズである。基板を取付けたアンプ部フレームを写真51に示すが底面の放熱穴との位置関係がわかる。
 アンプ部フレームにアンプ部フロントパネルを取付ける(写真52)。また、ボリュームツマミも取付けておく。この基板はセンターに電源スイッチ兼用のボリュームが付いているがパイロットランプのLEDがそのそばにありフロントパネルのデザインに苦労した。大きなツマミはパイロットランプを隠してしまうので使えない。この基板はなにか別の製品用にデザインされたものなのだろうか?

写真50 アンプ基板の固定 写真51 アンプ部フレームの様子
写真52 アンプ部フロントパネルの取付け

 スピーカー部にアンプ部フレームを取付ける(写真53)。このとき、4本のケーブルをアンプ基板のスピーカーターミナルにつないでおく(写真54)。このターミナルは基板との取付けが弱いので注意して接続する必要がある。

写真53 アンプ部の取付け 写真54 スピーカーターミナル接続

 アンプ部リアパネルにコネクタパネルを2本のM3ボルトで固定する(写真55)。バランス調整ツマミは小さいが設定用なので問題無い。
 本体にアンプ部リアパネルを取付ける(写真56)。このとき写真57の様にアンプ基板の入力コネクタにRCAピンケーブルを接続する。内部接続にこのような大きなプラグを使うことはスペースが必要であるが充分な余裕を作ってある。
 インシュレーターを底面に貼り付けるが、インシュレーター貼り付け位置はパネル部分を避けてパネルを外す場合に備えておく。
 ACアダプタからのDC電源プラグをメンテナンス用の窓からアンプ基板の電源コネクタに接続する(写真58)。ちょっと狭いが作業は可能だ。最後にメンテナンスリッドを閉めて完成である。

写真55 入力コネクタ部分の組立 写真56 アンプ部リアパネルの取付け
写真57 アンプ入力プラグの接続 写真58 DC電源プラグの接続

 完成した29号機(写真59)。エンジ色のコーナーカットがデザインのアクセントでありメインユニットのウッドコーンとゴールドフェイズプラグとともに高級感を演出している。この中にサブユニットが有りタンデムドライブ方式であることは外観からは解らない。
 アンプ部のデザインも良い感じに仕上がった。エンブレムがデザインのアクセントである。ただ、残念ながらパイロットランプは基板のLEDが暗いオレンジ色で搭載位置もずれているので発光が充分でない。ブラックボディには赤のパイロットランプが似合うのだがラインアンプのようには灯らなかった。
 今回もいつものオーディオテクニカ製の真鍮インシュレーターを採用したがメッキ色を選択した。このインシュレーターも質感の演出に重要なのである。
 しかし、後から見ると何処ぞのロボットの様でなんとも不格好になってしまった(写真60)。スピーカー部が大きいのが要因であり、もっとコンパクトにしたかったがタンデムドライブとはいえ内容積の確保からは限界だろう。まあ、あまり見る機会は無いので音質最優先で良しとしよう。重さのバランスはスピーカーユニットが前方に位置しているので後に倒れる心配は無い。

写真59 29号機の外観 写真60 29号機の前面と背面
 
  2−5 29号機の試聴と評価

 本機はアンプを内蔵したパワードスピーカーなので入力ソースを直接接続して楽しめる。iPodを接続して試聴を行った(写真61)。デジタルアンプの出力は5Wだが1台で2チャンネル使用しているので10W相等であり充分なパワー感がある。低音域はタンデムドライブの効果で不満の無い再現性だ。8cmフルレンジとは思えない量感がある。高音域も端正でデジタルアンプの荒さは無い。ウッドコーンの音調が効果的に効いている感じだ。
 以上はメイン/サブ・バランス調整ボリュームが中点での評価だが、メイン側に回して行くと音量が増加するとともに高音域が強くなり、明るくはっきりした音調になるが低音の量感は後退する。反対にサブ側に回して行くと音量が小さくなると同時に低音域が強調されトーンコントロールに似た変化である。下がった音量を戻すために前面のボリュームを調整すると低音が強調されたバランスとなる。有効な調整機能だが、一方に回しきるとメイン側では低音が不足しサブ側ではこもった音になってしまった。バランスボリュームの位置は9時から15時くらいが適当な範囲でソースによって使い分けると面白そうだ。また、深夜のリスニングなど音量が小さい場合はサブ側に調整してラウドネスコントロールの様に利用できる。通常の使用ではちょうど12時の中点でバランスが良いようである。
 独立してそれぞれのスピーカーユニットを駆動するマルチアンプでのタンデムドライブはやはり効果的であった。調整の容易さや自由なバランスコントロールもあるが、なにより両スピーカーユニットの電気的な干渉が無いことが良い。理想的なタンデムドライブ方式ではないだろうか。
 コンパクトでデスクトップでの使用に最適なパワーアンプ不要の使いやすく音の良いスピーカーができた。(写真62)

写真61 29号機試聴の様子 写真62 デスクトップリスニングに最適
 
  3.総合評価

 完成した29号機であるが、本機だけでは完全ではない。音に潤いが足りない。また、音量をスピーカー本体の左右2つのボリュームで調整することもやっかいである。そこで真空管ラインアンプの登場なのだ(写真63)。デザインを合わせて製作したのでシステムセットとして違和感が無い。音はどうか?

 ボーカルの咽び泣くような表現がぜんぜん違う!!電気特性的には偶数次歪の付加なのかもしれないが、なんとも心地よい音に変化した。これが本来のパワードスピーカー29号機の音だ。真空管とデジタルパワーアンプのハイブリッドシステムは大成功である。
 このリポートも机上に設置した本機をかたわらに執筆している。かつて無い素晴らしい音のBGMを聴きながら。
 この浸透力。・・・まったく、真空管は最高だぜ!!

(2012.2.5)
 
     
写真63 ハイブリッドシステム29号機

 
 
第20報 «  LEGOスピーカーの製作 » 番外編その2
 
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