キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 第24報
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LEGOスピーカーの製作 第24報

 
     


写真1 パッシブラジエーター搭載LEGOスピーカー32号機

 
  1. コンパクトスピーカーシステム再び

 スピーカーシステム自作の目的とは何だろうか?世界にたった一つしかないオリジナルシステムの製作も目的の一つではあるが、まずはコストパフォーマンスではないだろうか。
市販製品よりも高性能なスピーカーシステムを安価に製作することを求めて自作する方も多いだろう。そういった意味ではLEGOスピーカーは失格かもしれない。大型のモデルではとにかく素材のLEGOブロックの購入費用がかさむのだ。前回の31号機では良質なコアキシャルスピーカーユニットを手に入れるために市販製品をばらしたりもした。これではコストパフォーマンス最低である。壊した製品のエンクロージャなど他の部品は廃棄処分となりエコにも反している。
 そういった訳で、今回はどなたにも製作を薦められるコストパフォーマンスの高いコンパクトなスピーカーシステムの製作である。

 
  2. パッシブラジエーター方式

 大型モデルを製作すると、次は小型モデルが造りたくなる。コンパクトスピーカーが好きなのである。最近のコンパクトシステムといえば第19報で報告したタンデムドライブ方式の27号機である。今もBGMを鳴らしている27号機はコンパクトLEGOスピーカーの集大成モデルとして活躍している。こんなに小さいのに低音感があり高音域もクリアだ。しかし、問題点もあり、大音量では内部の5cmサブユニットが悲鳴を上げる。実質的には密閉型なので背圧(スピーカーユニットの背面から出る音の圧力)が処理しきれなくなる大音量再生には向いていない。デスクトップのBGM用には最適だが、メインシステムとして使用するには能力不足なのだ。タンデムドライブの限界か?他にコンパクトスピーカーシステムで低音域の再生能力を改善する良い方法は無いものだろうか?・・・

 第22報で紹介した30号機にはOlasonicというメーカーのUSB接続デジタルアンプを搭載した。もともとこのアンプ基板は卵形の超小型USBスピーカーのために開発されたものだという。巷で評価の高いこのOlasonic TW-S5という超小型アクティブスピーカーシステムに私も興味を持ち購入してみた。外形寸法は87mm X 119mm X 87mmという卵型で内容積は0.3リットルくらいしか無いだろう。ところがメーカーが言うように結構低音が出るのだ。この製品が採用している方式がパッシブラジエーター方式なのである。
 パッシブラジエーター(ドローンコーンとも言う)方式とはエンクロージャに駆動系を持たないスピーカーユニット(パッシブラジエーターユニット)を追加して取り付けてメインのスピーカーユニットの背圧を駆動力として再利用して低音域を増強するシステムである。つまり不要な背圧の処理と低音域の増強を同時に行うという優れた方式なのである。ただし、背圧でパッシブラジエーターユニットがピストンの様に押されて駆動されるのではない。スピーカーユニット背面から出る音は位相が逆なので、この圧力で駆動したのでは逆位相の音が出てしまい、相殺してしまう。パッシブラジエーターユニットの振動系が持つ自己共振周波数で共振することで位相が反転して正相となって放出され低音域を増強するのだ。この共振周波数以外の周波数帯域ではほとんど駆動されることはなく、密閉型のエンクロージャとして作用する。と、ここまで書くと前回も採用した位相反転バスレフ方式とよく似ているやり方だと言える。パッシブラジエーター方式のメリット・デメリットをバスレフ方式と比較してみよう。

<メリット>
 ・ 低音増強の共振周波数にエンクロージャサイズが影響しない
 ・ 共振周波数における低音増強効果が高い
 ・ 高音域の漏洩を抑えられる
 ・ ダブルユニット搭載のカッコ良いデザイン

<デメリット>
 ・ 共振周波数の調整が困難
 ・ パッシブラジエーターユニットの振動板の音が出る
 ・ 逆位相で駆動される周波数帯域では相殺される
 ・ パッシブラジエーターユニットの製品が少ない

 まず、メリットとして考えてみると、バスレフ方式ではダクト内部の空気の重さとエンクロージャ内部の空気のバネ性質による共振現象のため計算上は自由な組み合わせが可能であるが、実際は十分なダクトサイズとエンクロージャの内容積が無いと共振効率が低下する。つまり小型化ができないのだ。先述の31号機では10リットルという大きな内容積で効率を得たがコンパクトサイズの14号機(第7報)などでは十分な低音増強はできなかった。このリポートを書くにあたってパッシブラジエーター方式について調べてみたのだが、あまり情報が得られず正しい考え方かどうかわからないが、パッシブラジエーター方式ではエンクロージャの内容積には関係なく共振周波数をパッシブラジエーターユニットの機械系の設計だけで設定できると考えられる。つまりは超小型化が可能となる。むしろあまりエンクロージャ内容積がスピーカーユニットのサイズに対して大きいと十分に駆動力を伝達できないかもしれない。エンクロージャ内空気のバネ性質の影響を全く受けないとは考えにくいが、このあたりは実際に造ってみなければ解らない。だが、Olasonic TW-S5での効果を考えるとスピーカーシステムのダウンサイジングには有利な方法であることは間違いないだろう。
 駆動力の伝達効率向上にはメインスピーカーユニットの背面リアパネルにパッシブラジエーターユニットを取り付けることが良さそうだが、前面に付けた方が放射効率は上がる。いずれにしろ空気の共振現象を利用するバスレフ方式よりも直接振動板で低音域を放射するパッシブラジエーター方式の方が効率は高いだろう。
 バスレフ方式では実際に穴が開いているので、ここからメインスピーカーユニット背面の高音域が漏洩する問題があるが、パッシブラジエーターユニットでフタをしてしまうのでこの問題は解決できる。また、バスレフ方式特有の音のクセ、バスレフダクトから出る"バスレフ音"が無いこともメリットだろう。
さらに、大きなメリットはダブルスピーカーユニット搭載のデザイン性かもしれない。

 デメリットとしてはパッシブラジエーターユニット単体で共振周波数が設定されているので、バスレフ方式のようにダクトの寸法を変るような共振周波数の調整が困難である。パッシブラジエーターユニットの共振周波数は振動系の質量と固定機構のバネ定数で決定されるので振動板に錘を付けるなどして共振周波数を下げることは可能であろうが、正確な調整はできないだろうし、錘の付加は効率を低下させると考えられる。
 パッシブラジエーターユニット自身からも音が出るので振動板の材質音が出ると考えられる。メインのスピーカーユニットと同一の振動板が望ましいだろう。
 超低音域ではパッシブラジエーターユニットが逆相(背圧と同相)で駆動されると考えられる。これはバスレフ方式でも同様な現象であるが、共振周波数以下では相殺して急激にレスポンスが低下する。
 このようにパッシブラジエーター方式は優れた点が多い方式なので、これまでも採用したいと考えていた。ところが実現できなかったのは手ごろな市販のパッシブラジエーターユニットの製品が存在しなかったからなのだ。

 
  3. 設計過程

 TangBandからW3-1335A という8cmパッシブラジエーターユニットが発売された。チタンコーン 8cmフルレンジのW3-1335SBとペアになるユニットである。これでパッシブラジエーター方式が採用できる・・・早速設計を行おう。今回は実際に製作される方のために製作にかかわる情報を多く述べたい。

  (1)デザイン・構造の検討

 エンクロージャサイズは27号機のフットプリントを踏襲したコンパクトサイズとしたい。パッシブラジエーターユニットはデザイン性から前面配置とする。8cm径スピーカーユニット2本を搭載した最小のバッフルパネルをデザインした構造図を図1に示す。このスピーカーユニットの仕様から取り付け穴位置は直径85mmであり、LEGOブロック8ピッチ分(毎度述べているように1ピッチは8mm)の64mmの窓穴を開ければ取り付けられるだろう。8cmスピーカーユニットはフランジも小さいので穴あきLEGO ブロックなどで取り付け穴を造ることは難しい。大きなワッシャと4mmボルトで窓穴のヘリに取り付けることにする。この方法でも木ネジで木製のバッフル板に取り付けるよりも遥かに強力である。実際はスピーカーユニットのフレームが干渉するのでバッフルパネルには細かな調整が必要となるが、このあたりは現物調整としたい。
 このデザインでバッフルパネルのサイズは幅96mm(12ピッチ)、高さ208mm(26ピッチ)となった。スピーカーユニットを2本縦に配置したことから27号機の高さ160mm(20ピッチ)よりは大きくなったが、十分にコンパクトである。
 奥行きはあまり小さいと倒れやすくなるので27号機の133mmよりも少し小さい123mmとした。これはLEGOブロックの厚さが約10mm(正確には9.6mm)なので、12段分+前面の化粧パネルブロック(LEGOブロックの製品名はタイルと言う)の厚さである。このサイズのエンクロージャで内寸はW64 H176 D100mmで内容積は約 1.1リットルである。外形寸法が2.5リットル程度あるのに内容積が少ないが、これはLEGO ブロックによる壁の厚さが上下左右のフレームで16mm、前後パネルで10mmもあるからである。このサイズのスピーカーシステムを一般的な木板で作るとなると5mm厚さもあれば十分であろうがLEGO製ではその高い強度と引きかえに分厚いのである。なお、図1から解ると思うがLEGOブロックを横倒しで積み上げるホリゾンタルタイプ(水平組み立て)とする。この方が前面にパネルブロックを使用できてカッコ良いのだ。

図1 32号機構造図 図2 部品検討図
  (2)LEGOブロック使用量

 使用するLEGOブロックの総量を計算するために図2を描いた。バッフルパネルは3.3mm厚さのプレートブロックを3枚重ねて10mm厚さで製作するが、日の字の枠構造で2X4の基本プレートブロック(縦2ピッチ16mm、横4ピッチ32mm、厚さ3.3mm)で造ると1台あたり69個必要である。実際はすべてのブロックをこの2X4サイズで造ると強度が得られずフニャフニャになってしまう。適当に2X8サイズなどの大きなブロックを混ぜて製作しなければならない。もちろんこの形状になれば良いのでどのような造りでも良いわけだが、あまり小さなブロックを使うと強度がとれず、大きなブロックばかりだと強度は得られるがLEGOブロック製パネルのメリットである内部損失を大きくできない。要は適当が肝心なのだ。さらにこの他に前面に貼る2X2サイズのパネルブロックが46個必要である。実際の製作ではスピーカーユニットの取り付け干渉に対応して細かな調整が必要となるがここでは使用ブロック総数の計算なので細かなことは考えない。
 エンクロージャのハコとなるフレーム部分は2X4サイズの基本ブロック(縦2ピッチ16mm、横4ピッチ32mm、厚さ9.6mm)が17個で1段分なので10段で170個必要だ。
 リアパネルは横12ピッチ、縦26ピッチの板であるが、4X4サイズと2X4サイズのプレートブロックで造ると3枚重ねで69個と9個必要である。ただし、実際のリアパネルにはターミナルを取り付ける穴を開けなければならないのでもっと複雑な構造となる。
 以上、LEGOブロックの総数をカウントすると1台363個、2台で726個必要であることがわかる。LEGOブロックは形状やサイズで価格が異なるが平均価格を1個20円として計算するとLEGOブロックの購入費用だけで1万5千円ほどかかることになる。今回の32号機はコンパクトでシンプルなただのハコ構造なのだが素材費用がこんなに高価なのである。実際に造るとなるとスピーカーユニット取り付け干渉の調整用に小さなブロックも多数必要となるのでさらにコストがかさむ・・・うーん、やっぱり自作には向かないのかな?
 実は、私は今回の製作ではまったくLEGOブロックを購入しなかった。前回の31号機の製作であまったブロックだけで造ってしまったのである。このブロック群は26号機を解体したもので、その前は4号機であった。豊富な残留部品を見るといかに4号機が巨大であったことか・・・だから今回の32号機も黄色いのだ。
 高価なLEGOブロックも3回使えば3分の1のコストである。このエコ性能こそが最大のポイントなのだ。
 LEGOブロックの他にスピーカーユニットの購入費用が4本で約1万5千円、その他ターミナルなど合わせて総製作費用は3万円弱と算出された。

  (3)パッシブラジエーターの共振周波数

 使用する8cmパッシブラジエーターTangBand W3-1335Aの仕様によると共振周波数は102Hzである。ペアのメインスピーカーユニットW3-1335SBの最低共振周波数はfo:100Hzなのでちょうど良いところだろう。このメインユニットにはエンクロージャ内の空気の圧力が加わるのでfoは上昇すると考えられるが正直に言ってどのような動作になるのかは造ってみないとわからない。共振する低音域では8cmスピーカーユニット2本分で10cmフルレンジユニットクラスの低音再生が期待できるのではないだろうか?

  (4)吸音材

 私は吸音材には活性炭をよく利用している。冷蔵庫の消臭剤の中身だ。低音域の音圧吸収効果があり、振動のダンピングにも効果がある万能薬なのだ。しかし、今回は背圧を積極的に有効利用する方式なので吸音材は不用だろう。内部で動いてパッシブラジエーターユニットの振動板に接触する危険性もある。ただし、LEGOブロックは表面がツルツルなので高音域で乱反射してエンクロージャ内部がやかましくなると困るので、今回は薄手のフェルトシールを用意してみた。これをフレーム内部に貼ることで静かになるだろう。

  (5)インシュレーター

 以前にも書いたがスピーカーシステムでは足となるインシュレーターが重要である。フラフラとしていては良い音が出るはずがない。確実な設置には3点固定が有利である。と言うか、確実な4点固定は不可能である。スパイクのような点接地の3本足が理想であろうが、どうも4角いハコに3本足は合わない気がする。今回のような小型スピーカーシステムでは自重が少ないのでスパイクの上で弾んでしまうかも知れない。接地摩擦が少ないと滑ってしまう問題もある。そこで私はこのようなコンパクトスピーカーシステムではウレタンシールを足として利用している。1〜2mm厚さのウレタンシールはやわらかいので4点でも確実な接地ができ、滑り止め効果も大きいのでスパイクよりも良いと考えている。自重の軽いコンパクトスピーカーシステムではフラフラすることも無い。

  (6)基本仕様

 今回の32号機はシンプルなハコ構造で、調整も無く電気的な接続においても回路素子が無く配線だけでありLEGOスピーカーとして製作は容易であるが、2本のスピーカーユニットのバッフルパネルへの取り付け部分が製作のポイントとなる。このあたりの詳細は次章で解説する。決定した32号機の基本仕様を以下に示す。

<32号機 基本仕様>
 ・ 方式:フルレンジメインユニット+パッシブラジエーター方式
 ・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
 ・ エンクロージャ方式:前面パッシブラジエーター配置コンパクトシステム
 ・ 使用ユニット:TangBand W3-1335SB チタンコーン 8cmフルレンジ
   TangBand W3-1335A チタンコーン 8cmパッシブラジエーター
 ・ 外形寸法:W96mm H208mm D123mm
 ・ 実効内容積:約1リットル
 ・ パッシブラジエーター共振周波数:102Hz
 ・ システムインピーダンス:8Ω

  4. 製作過程
  (1)部品の解説

 写真2をご覧いただきたい。これが32号機の全構成部品である。いつものように個々の部品を解説してゆく。
 写真3はバッフルパネルと成るフロントパネルである。スピーカーユニット2本を搭載する大きな窓穴が2箇所開いた日の字形状でプレートブロック3枚重ねと表面のパネルブロックで13mmの厚さがある。センター下部にロゴエンブレムも付けた。
 スピーカーユニットの取り付けではスピーカーユニットフレームの形状によって干渉することがあり、ブロックに加工が必要となる。今回選択したスピーカーユニットは思いの外フレームが大きく、干渉も大きく生じてしまった。製作の容易さからは作業が増えて申し訳ないのだがブロック加工の手間も自作の醍醐味として許していただきたい。

写真2 32号機構成部品 写真3 フロントパネル

 写真4に示すようにスピーカーユニットフレームに干渉する部分4箇所を大きく切り欠く。また、上段メインユニットの端子部分のキリカキはより大きくする必要があった。本来ならば細かなLEGOブロックを組み合わせてこのキリカキを再現した形状を製作すべきなのだが、あまり細かいパーツを使用すると強度の無いフニャフニャのパネルになってしまう。大きなブロックを加工した方が強度を得られるのだ。
 表面のパネルブロックも写真4の8箇所部分の角を落としておく。また、8個のパネルブロックは1X2サイズの小型のものを使用した。
 LEGOブロックは丈夫なABS樹脂製だがニッパーで簡単に加工できる。写真5に示すようにちょっと心苦しいがプレートブロックを加工した。ブロックの端の部分は簡単に切り欠くことができる。中間部分では、まずポッチを落としてその間をつなぐ様にすれば簡単である。

写真4 フロントパネル加工図 写真5 ブロック加工例

 写真6はフレームである。ブロック10段の奥行き100mmのシンプルな枠構造である。
写真をよく見ると解るが、最上段のみスピーカーユニットを取り付けるボルト&ナットが当たる部分8箇所を落とし込んでいる。バッフルパネルがぎりぎりの小型サイズなので本フレームと一部干渉するのだ。この部分のために1X4サイズなどの小型ブロックが若干必要である。
黄色い色は4号機からのカラーリングで、ナチュラルオーク仕上げに見立てるか?

写真6 フレーム

 リアパネルを写真7に示す。一見ただの板だがターミナルを取り付けるための穴が開いている。この構造には写真8に示す穴あきプレートブロックを用いる。このブロックは4mmボルトにちょうど良い3つの穴が開いており、写真の様に3枚をクロスに重ねることで中央の穴のみが貫通する。この部品をリアパネルの所定位置に仕込むのだが、1X4サイズなどの小型プレートブロックが必要になるので用意しなければならない。

写真7 リアパネル 写真8 穴位置拡大

 写真9はメインスピーカーユニットである。チタンコーン 8cmフルレンジスピーカーユニットのTangBand W3-1335SBは1個5千円以上する高級品で、以前3号機で採用し8号機、9号機にも載せ変えて使用したW3-1231SHの後継機種であり、チタンコーンのパワフルな駆動力は8cmクラスと思えないすばらしいものであった。私はマグネシウムコーンのスピーカーユニットには素材音のクセを感じるのだが、不思議とチタンコーンにはメタルコーン特有のクセを感じずファンなのである。
 ネオジウムのマグネットは小型で強力、円形フランジは取り付けに有利だが、このモデルは残念ながらアルミダイキャストフレームの形状が大きく、取り付け窓穴との干渉が大きかった。
 写真10が今回の主役パーツ、パッシブラジエーターユニットW3-1335Aである。メインスピーカーユニットのW3-1335SBと全く同じ振動板構造とフレームでマグネット部分が無い構造となっている。おそらくボイスコイルが無い分の振動系の重さ調整にボビン内側にメタルシートが貼られているのだと思う。この部分に錘を追加すれば共振周波数を低い方向に調整できると考えられるが良い結果が得られるかどうかは解らない。

写真9 メインスピーカーユニット 写真10 パッシブラジエーターユニット

 その他の部品を写真11に示す。吸音材のフェルトシールが大小8枚、ウレタンシールのインシュレーター、ターミナルは長い4mmボルトでリアパネル取り付けにちょうど良いサイズのものを選んでいる。配線用ケーブルには4mm端子とファストン端子を端末加工した。他に4mmX30mmの6角穴アキボルト16本、大きな4mmワッシャ16枚、4mmナット32個を用意した。

写真11 その他の部品
  (2)組み立て解説

 まずはフロントパネルにスピーカーユニットを固定してバッフルパネルを造る。
写真12の部品で写真13の様に固定するのだがフロントパネルの窓穴の角部分にワッシャで引っ掛けて固定している様子がお解りいただけるだろうか?スピーカーユニットフレームの干渉も現物調整を入念に行う。メインスピーカーユニットの端子部分が結構大きく干渉した。
 ナットの締め込み過ぎには注意したい。強度の高いABS樹脂製のLEGOブロックもナットで締めればいくらでも変形してしまう。破損しない力加減が重要である。この場合、ナットが固定されない問題がある。ボルト&ナットの固定とは強力なトルクによりボルトが引き伸ばされてその摩擦でナットが固定されるのであって、固定物が変形してしまう状態ではナットの摩擦が小さく簡単に緩んでしまう。そこでダブルナットを用いる。さらにもう一つナットを締めることでナットとナットの間でボルトが引き伸ばされて確実にロックするのである。スピーカーユニットを固定したバッフルパネルは強度も十分である。

写真12 バッフルパネル部品 写真13 バッフルパネルの組み立て

 メインスピーカーユニットに配線を済ませておき(写真14)、リアパネルにターミナルをダブルナットで固定する。(写真15)

写真14 スピーカーユニット配線 写真15 ターミナルの固定

 フレームの内側にフェルトシールを貼る。このフェルトシールはダンピング効果もあるだろう。(写真16)
 バッフルパネルをフレームに取り付ける。フレームを水平に置いて上からしっかりとバッフルパネルを固定する。(写真17)
 写真18に示すようにフレーム内部は配線以外何も無い。
次にリアパネルのターミナルに配線する。(写真19)

写真16 フェルトシール貼り付け 写真17 バッフルパネル取り付け
写真18 フレーム内部の様子 写真19 リアパネル配線

 リアパネルでフレームにフタをしてウレタンシールのインシュレーターを底面4隅に貼り付けて組み立て完成である。(写真20)
 リアパネルの取り付けは前面を下にして横に置くことができないので、立てた状態で作業するが、この程度のサイズのリアパネルであれば容易に組み立てができる。

写真20 インシュレーター貼り付け

 完成した32号機を写真21に示す。正面ダブルスピーカーユニット搭載のカッコ良いデザインにまとまったと思うがどうだろうか。デスクトップで使用するにも十分にコンパクトでフレームの黄色もポップで良い感じだ。
 写真22の様に背面にはターミナル以外はなにも無いシンプルデザインである。
今回は簡単な製作で、部品もスピーカーユニット以外は新たな購入が無かったので構想から組み立てまで連休の4日間で行ってしまった。

写真21 完成した32号機 写真22 背面の様子
 
  5. 試聴と評価

 早速アンプにつないで音出ししてみる。(写真23)
このようなコンパクトスピーカーシステムではスピーカースタンドに置くよりもテーブル上で使用する方が想定に近い使い方だ。その場合、テーブルの振動が音に好ましくないので重さのある石のベースを利用している。
 再生音は・・・十分な低音感が得られる。小音量よりは大音量の方がパッシブラジエーターの効果が感じられる。このスピーカーユニットは8cmフルレンジながら大きなストロークが可能で大音量でも破綻が無い。もちろん、大型スピーカーシステムと比較すれば低音域は物足りないのだが、音楽を楽しむという点では不満は無いのだ。むしろこのサイズでこのダイナミックな音が得られることが痛快である。
 低音域の再現はバスレフ方式とも密閉型とも、タンデムドライブとも異なるものである。最も自然で好ましい再現かもしれない。ウーハーを追加したような感じなのだ。
 中高音域は小型エンクロージャに閉じ込められたような歪み感が無い。背圧のエネルギーの影響がパッシブラジエーターの駆動に消費されてうまく解決しているようである。まさにコンパクトスピーカーシステムには理想の方式かもしれない。
 27号機と比較試聴してみよう。(写真24)
BGMや夜間リスニングなどの小音量では27号機の方がバランスは良い。ちょうどトーンコントロールで低音域をブーストしたような鳴り方である。それゆえ大音量では破綻する。使用しているスピーカーユニットが強力形でないことと、超小型密閉型の限界である。これに対して32号機は大音量で真価を発揮する。とてもこの小さなスピーカーシステムが鳴っているとは思えないスケール感である。パワフルなアンプとの相性が良さそうだ。
 パッシブラジエーター方式の採用は大成功であった。また新たなテクニックを手に入れることができたのである。

写真23 試聴の様子 写真24 27号機との比較

 さて、本報告はここで終わる予定であったが・・・。

 
  6. 追加報告 33号機の製作
  (1)新たな構想

 写真10のパッシブラジエーターユニットを見ているとメインスピーカーユニットからマグネットとボイスコイルを外しただけのものに見える。それならば、ちょっともったいないがメインに使用した同じスピーカーユニットをパッシブラジエーターユニットとしても利用できるのではないだろうか?メインスピーカーユニットW3-1335SBのfoは100Hzでパッシブラジエーターユニットの102Hzと大差ない。
 これまでこの方式が採用できなかったのは適したパッシブラジエーターユニットが入手できなかったからだと述べたが、普通のスピーカーユニットを利用しても十分な結果が得られるのではないかと考えたのである。
 早速造ってみよう。26号機を解体したときに外した手持ちのスピーカーユニットTangBand W4-927SEとTangBand W4-930SGを利用する。26号機は第18報にあるようにタンデムドライブ方式の初代モデルでスピーカーユニットが4本使われていたのだ。
 W4-927SEは何度目の登場であろうか、ポリプロピレンコーンの10cmフルレンジスピーカーユニットでアルミのフェイズプラグがカッコ良いスピーカーユニットである。高音域の再現にも優れた音質の良いモデルなのでこれをメインスピーカーユニットとする。
 パッシブラジエーターユニットとしては10cmペーパーコーンのフルレンジスピーカーユニットW4-930SGを用いる。最低共振周波数foは70Hzでメインスピーカーユニットと同じ。おそらく70Hzで共振するパッシブラジエーターユニットとして動作するだろう。このW4-930SGは振動板がペーパーなので軽く、駆動されるのにも都合が良いだろう。
 パッシブラジエーターユニットとして通常のスピーカーユニットを用いる場合はその端子をリアパネルに別に配線しておけばいろいろと実験ができるかな?とも考えた。端子をショートすれば電磁ブレーキがかかって振動がダンピングされ低音域増強効果を弱めることができ、抵抗器を接続すれば弱める量を調整することができる。また、大容量のコンデンサーを接続すればボイスコイルのインダクタンスと共振して特定の周波数でのみダンピングをかけることができる・・・だが、こんなことに意味があるのか?そもそも低音域を増強したくて用いている機構なのに弱めても仕方がない。効果を強めるには負性抵抗が必要、つまりはアンプだ。アンプをつないで低音域で駆動すればそれはウーハーである。こんなに小さな密閉型のエンクロージャでウーハーとして駆動したら大きな背圧が生じて歪が増加してしまうだろう・・・ということでこの実験は中止した。
 エンクロージャのデザインは32号機を踏襲し、10cmスピーカーユニットに合わせてスケールアップしたものである。使用したLEGOブロックもすべて在庫品を用いた。豊富な在庫部品を見るといかに4号機が巨大・・・。
 33号機の基本仕様を以下に示す。

<33号機 基本仕様>
 ・ 方式:フルレンジメインユニット+パッシブラジエーター動作方式
 ・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
 ・ エンクロージャ方式:前面パッシブラジエーターシステム
 ・ 使用ユニット:TangBand W4-927SE PPコーン 10cmフルレンジ
   TangBand W4-930SG ペーパーコーン 10cmフルレンジ
 ・ 外形寸法:W128mm H272mm D133mm
 ・ 実効内容積:約2.5リットル
 ・ パッシブラジエーター動作共振周波数:70Hz
 ・ システムインピーダンス:6Ω

  (2)33号機製作過程

 33号機の構成部品を写真25に示す。32号機と同様なシンプルな構成である。

写真25 33号機構成部品

 写真26にバッフルパネルを示す。10cmスピーカーユニットではフランジのサイズが大きく、余裕があるのできちんと穴あきプレートブロックでフロントパネルに固定穴を製作しているところがお解りいただけるであろうか。そういった意味では8cmスピーカーユニットの固定よりはブロックの加工も少なく簡単であると言える。
 写真27にフレームを示す。32号機よりも一回り大きい。奥行きも1段伸ばして110mmである。

写真26 バッフルパネル 写真27 フレーム

 リアパネルを写真28に示す。これも32号機のスケールアップ。
 組み立てはまずはバッフルパネルをフレームに取り付ける。(写真29)
リアパネルに配線して(写真30)、簡単に完成。(写真31)
 ちょっとヨーロピアンなおしゃれなデザインになったと思うがいかがだろうか?
 この33号機はすべて手持ちの部品で製作した。なんと構想から2日で造り上げてしまった。歴代LEGOスピーカーの最短製作期間の快挙である。

写真28 リアパネル 写真29 バッフルパネル取り付け
写真30 リアパネル配線 写真31 33号機の完成
  (3)33号機の試聴と評価

 テーブルに設置して試聴を行う。(写真32)
32号機と比較すると一回り大きなスケールアップモデルであることが解る。(写真33)
 さすがは10cmフルレンジユニットである。32号機のようながんばっている感覚がなく、余裕が感じられる。低音域の再現もパッシブラジエーター方式としてしっかりと機能している。よく見ると軽いペーパーコーンのパッシブラジエーターユニットも壮大にストロークしていて、いかに背圧が強力なのかと感じる。
 パッシブラジエーターユニットはパルシブなアタックではメインのスピーカーユニットと同じ動きをしている。これを見ると共振周波数帯域の増強と言うよりは空気を介して駆動されるウーハーといった感じである。この動作がバスレフのような共鳴音のクセを感じさせないのだろう。背圧の処理が効いているのか中音域もクリアである。共振周波数以外の帯域では背圧は処理されず密閉型の動作ではないかと思ったが、パッシブラジエーターユニットが適度に背圧を吸収してくれるようで密閉型特有のボンボンという密閉音も感じられない。素直できれいな音が楽しめる。
 しばらく試聴を忘れて音楽を楽しんでしまった。33号機はメインスピーカーシステムとしても通用する高性能なモデルとして完成した。

写真32 33号機試聴の様子 写真33 32号機との比較

 高度な技術を採用している訳ではない。高価なパーツも使用していない。手持ちの部品を寄せ集めてたったの2日で造ったスピーカーシステムからこんなにすばらしい音が楽しめるとは思いもしなかった。これまでの苦労はなんだったのか?解はすぐそこにあったのだ。それに気が付かなかった自分の未熟さを知ると共に可能性が無限にあることが本当に面白くて、面白くてしかたがない。だからLEGOスピーカーが止められないのだ。

 
  7. LEGOスピーカーのすすめ

 このページをご覧いただいている方から製作に関するご質問をいただいた。写真だけでは細かな製作ノウハウは伝わらなかったのだろう。今回は実際に製作できるような情報を追加したつもりである。32号機は使用するLEGOブロックも比較的少なく、初めての製作には向いていると思う。
 私の初期の作品はお世辞にも良い音であるとは言えなかった。LEGOブロックでスピーカーシステムを造ること自体が目的で、さらに世の中にないオリジナリティを追求していたからである。最近の作品は市販製品にも負けない音質だと自負している。コスト的には正直に言って既製品を購入した方が安いと思うが、自分で造る楽しみとか、オリジナルモデルを創造する喜びとか代えがたい魅力がLEGOスピーカーにはあるのだ。
 経験値の学習費用としては安いのではないだろうか?
 なにしろLEGOスピーカーは何度でもやり直せるのだから・・・。

れっつ、るっきんぐふぉーぐっどさうんどなのです

(2013.5.13)
 
     
写真34 TRIODE Rubyで聴く32号機

 
 
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