キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 第25報
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LEGOスピーカーの製作 第25報

 
     


写真1 双指向特性コンパクトLEGOスピーカー34号機

 
  1. はじめに

 前回報告した32号機、33号機のパッシブラジエーター方式は大成功であった。コンパクトスピーカーシステムにはこれしかない!と言えるくらいの効果に感激している。しかも33号機で実践したように、専用のパッシブラジエーターユニットは別に必要なく、通常のスピーカーユニットを端子開放で利用すれば十分にパッシブラジエーターユニットとして利用できることも確認できた。こうなってくるとモリモリと新たな発想が湧いてくる。できるだけコンパクトにまとめたミニスピーカーも良いが、それだけでは面白くない。ひとひねりしてみよう・・・。

 
  2. 呼吸球という発想

 多くの楽器の音は四方に広がる。コンサートホールなどの現実の音響空間では楽器などの発音体からの直接音よりも多くの間接音を聴いていることになる。これに対し、リスニングルームでのスピーカーシステムでは発音に方向性があり、特に高音域はほとんど前方に放射される。この指向特性により最適なリスニングポイントが制限され、また、部屋の環境により偏って反射した高音域が影響して、聴く位置で音質が異なる現象が生じる。
   ためしにリスニング中に頭を前後してみると音像感はもとより音質まで大きく変化して驚くことがある。特に問題なのは部屋左右の壁面の音響特性差である。片方だけが窓といった状況ではそちら側の高音域の反射が強くなり、音像が引っ張られることは容易に想像ができる。だから私のリスニングルームはできるだけ左右の音響特性がそろうように工夫をしている。スピーカー周囲の壁には厚手のカーテン(奥に窓があるのではなく壁にカーテンを吊っている)、窓にはブラインド、低音域の吸音体として利用しているソファーも座る目的ではなく左右に置き、もちろん、スピーカーシステムは左右均等に設置している。また、スピーカーシステムの周囲に十分な空間を空けることも重要である。
 余談であるが、私のリスニングルームには多くの楽器を配置している。ヴァイオリン、チェロ、アコースティックギター、ソリッドギター、フルート・・・これらは再生音に反応して自身も発音体となる。音に潤いを与えるための重要なデバイスなのだ。巨大なコンサートホールでたった1本のソロヴァイオリンがあれだけ雄大な音を奏でられるのはソリストの力量も重要であるが、ステージ上の多くの楽器たちが共鳴して鳴り響いているからだと思う。この効果を私のリスニングルームにも欲しいのだ。実際、バッハの無伴奏チェロ組曲を聴いているときに部屋のチェロに触れてみると壮大に共鳴していることがわかる。これはノイズだというひょうかもあるだろう。しかし、好ましい音ならば潤いなのである。

 この指向特性の問題に取り組んだスピーカーシステムもある。BOSEの有名な901というスピーカーシステムは11.5cmフルレンジユニットが9本使用されており、なんと、そのうち1本だけが前面に付けられていて残り8本は背面にあるのだ。これはボーズ博士がホールの音響特性を測定した結果、直接音に対して8倍の間接音が測定されたということから開発されたものだという。
 指向特性の無いスピーカーシステム方式として有名なのが呼吸球である。これは多面体の周囲に球状に取り付けられた多くのスピーカーユニットからあたかも風船のように呼吸をしているような駆動を行い、AIM拡散力場の効果により全方向に音圧を放射するシステムである。理想的な点音源であり、なおかつ指向特性が無いので音場が広がり音像定位も良い。私も一度トライしてみたい方式であると考えているが、このスピーカーシステムは空中に吊る必要があり、しっかりとした設置が難しい側面もある。しかし最大の問題はアンプを内蔵したアクティブスピーカー方式としないと多くのスピーカーユニットを1台のアンプで駆動することは困難であることだ。BOSEの901の説明資料によると直列にスピーカーユニットが接続されているらしい。スピーカーユニットは並列の接続ならば互いの干渉は生じないが、直列では互いに負荷となることが考えられ、よほどの技術力が無ければ難しい方法である。しかし、並列接続ではインピーダンスが低下するので、一般的な8Ωのスピーカーユニットでは2本が限界である。このような理由から無指向特性の呼吸球システムは見送っていたのだが・・・。

 
  3. 双指向特性システム34号機の設計

  2本のスピーカーユニットが並列接続の限界であれば、これを前後に配して双指向特性システムを造ることができる。1対1の放射であるが背面のスピーカーユニットが十分に音場感を広げてくれると期待できる。私の好きなINFINITYというメーカーのスピーカーシステムには背面にトゥイーターを配して双指向特性としたモデルも多く見られる。さらに、34号機ではパッシブラジエーター方式として同じスピーカーユニットを左右側面にも取り付けて4スピーカーユニットにより低音域では四方に音を放射する亜呼吸球としての動作を狙う。(低音域では指向特性の問題は少ないのではあるが・・・)
 図1に構造図を示す。どちらが正面かわかりにくいが、三角の造形のある面が正面で、100mm四方で高さ200mmのコンパクトなエンクロージャに4本の8cmフルレンジスピーカーユニットを装着している。4本のスピーカーユニットを納める限界サイズとした。
上側の前後面2本のスピーカーユニットがアクティブユニットで背面のターミナルに並列に接続される。下側左右面の2本のスピーカーユニットは空気を介して駆動されるパッシブラジエーター動作である。内部はスピーカーユニットのマグネットでギュウ詰めだが、内容積に関係しないパッシブラジエーター方式ならではの超コンパクト設計だ。これがバスレフ方式ならばもっとサイズを大きくして内容積を確保しないと低音域がスカスカになることだろう。
 今回はスピーカーユニットの選定にも気を使った。8本も使用するので安価である必要がある。さらに、そのうち4本はパッシブラジエーター使用なので高価なスピーカーユニットではもったいない。8cmフルレンジスピーカーユニットで適当な機種としてTangBand のW3-1053SCを選んだ。このスピーカーユニットは千円台で購入できる安価品にしては作りもしっかりしており、ポリプロピレンコーンも良好な音質が期待できる。いにしえの7号機では同種のW3-881SJを用いたが高い評価のできるスピーカーユニットであった。W3-1053SCはこのフレームをダイキャストからプレスフレームにした廉価版なのだ。
 しかし、ここで問題発生。マグネットのプラスチックカバーがわずかに邪魔して、この設計サイズに対向配置できないのだ。今回の設計ではギリギリの内容積なのでスピーカーユニットのマグネットもコンパクトなネオジウムが条件であったのだが・・・。ちょっと乱暴だがプラスチックカバーを外してしまい、これに対処した。
 組み立て方式は最近ではめずらしい垂直組み立てである。これはエンクロージャの4面に同じようにスピーカーユニットを配するためで、底面がLEGOブロックの裏面になる。
 実効的な内容積はたったの0.4リットル程度しかなく、パッシブラジエーターの効果に期待である。

<34号機 基本仕様>
・ 形式:双指向特性音場型コンパクトスピーカーシステム
・ 方式:ダブルフルレンジメインユニット+ダブルパッシブラジエーター方式
・ 組み立て方法:バーティカルタイプ(垂直組み立て)
・ エンクロージャ方式:4面スピーカーユニット搭載密閉型
・ 使用ユニット:TangBand W3-1053SC ポリプロピレンコーン 8cmフルレンジ
・ 外形寸法:W96mm H195mm D100mm
・ 実効内容積:約0.4リットル
・ パッシブラジエーター共振周波数:104Hz
・ システムインピーダンス:4Ω

図1 34号機構造図


  4. 製作過程

 写真2に全構成部品を示す。コンパクトシステムなので左右でもこれだけであるが、8本のスピーカーユニット群が誇らしい。普通だとハコとなるエンクロージャフレームがあるのだが、今回はパネル工法なのでフレームが存在しないのが特徴である。では個々の部品を説明しよう。
 写真3にスピーカーユニットパネルを示す。このスピーカーユニットW3-1053SCは四角いフランジが大変狭く取り付けに苦労した。LEGOブロックを繊細に加工して取り付け枠を調整している。ネジ穴は用いずにいつものように枠のエッジにワッシャで引っ掛けてフランジを固定している。三角のサイドの部分がかんごうしてエンクロージャを構成する。
 プラスチックカバーを外したマグネットには接着剤の跡が残ったのでフェルトシールを貼ったが、高音域の吸音材として少しは効くだろう。このスピーカーユニットパネルを8個製作した。

写真2 全構成部品 写真3 スピーカーユニットパネル

 写真4はトップパネルである。プレートブロック3枚+タイルブロック(これまでパネルブロックと呼んでいたが正式名称はタイルであったので今後はこう呼ぶ)で12.8mmの厚さである。LEGO Speaker No.34のエンブレムが光る。
 写真5はボトムパネル。プレートブロック3枚で厚さ9.6mmである。このサイズではとても強固だ。

写真4 トップパネル 写真5 ボトムパネル

 パネルB(前)を写真6に示す。このパネルは三角の構造を利用したデザインパネルであり前面だけに用いるもので左右用に2枚ある。
 パネルA(前)を写真7に示す。これも前面専用。写真8はパネルB(ターミナル)である。背面下部に用いる。  写真9がパネルBで4個、写真10のパネルAは6個製作した。よく見るとこれらの三角パネルはスピーカーユニット固定ネジとの干渉防止のために一部が8mm幅となっている。
 写真11がその他の配線ケーブルとインシュレーターのウレタンシールである。ターミナルからの2つのスピーカーユニットの接続は単なる並列接続なのでケーブルで分配した。

写真6 パネルB(前) 写真7 パネルA(前)
写真8 パネルB(ターミナル) 写真9 パネルB
写真10 パネルA 写真11 その他の部品

 組み立て過程は写真を用いて説明する。
まずはトップパネルにパネルAを2個取り付ける(写真12)。次にスピーカーユニットパネルを前面に付ける(写真13)。
 さらに背面にスピーカーユニットパネルを対向に取り付け(写真14)、パネルBを2個付けると上部のBOXが完成する。中はマグネットだけでいっぱいだ。(写真15)

写真12 パネルA取り付け 写真13 スピーカーパネル取り付け
写真14 スピーカーパネル追加 写真15 パネルB取り付け

 ケーブルを2本のスピーカーユニットに配線してパネルA(前)を前面に付ける(写真16)。背面にもパネルAを付け(写真17)、さらにスピーカーユニットパネルを取り付ける。(写真18)
 最後のスピーカーユニットパネルを対向に取り付けて(写真19)、配線を済ませたパネルB(ターミナル)を付ける。(写真20)

写真16 ケーブル配線 写真17 パネルA取り付け
写真18 スピーカーパネル追加 写真19 スピーカーパネル取り付け

 パネルB(前)を付けて下側BOXも出来上がる。内部はさらに窮屈(写真21)。最後にボトムパネルを付けてインシュレーターを貼り付ける(写真22)。

写真20 ターミナル取り付け 写真21 パネルB取り付け
写真22 ボトムパネル取り付け 写真23 完成した34号機

 完成した34号機を写真23に示す。大変コンパクトな外観に組みあがった。背面、側面にもスピーカーユニットがあるのが特徴である。どこが前面かわかりにくい。(写真24) コンパクトだがスピーカーユニットが4本も搭載されており重くて密度感が高い。(写真25)

写真24 背面の様子 写真25 34号機外観
 
  5. 試聴と評価

 早速試聴を行う(写真26)。この34号機は実験的要素の強い作品なので失敗の可能性も高い。特に低音域のレスポンスには大きくは期待できないがどうだろうか?
 結果は意外にも良好である。双指向特性の効果で音場感が大変良い。リスニングポイントも限定されずにどこでも聴ける。ステレオ感が左右中央でなくても感じられ、環境反射による音質の変化も少ない印象である。音像感は独特でふんわりと定位する感じ。シャープなフルレンジスピーカーシステムの定位とは全く異なるもので、このあたりは好みが分かれるところだろう。背面のスピーカーユニットからの反射音が部屋を包み込む感じであり、34号機は気合を入れて聴くシステムではないと思う。BGM用に部屋の隅で鳴らしておくのが正しい使い方だ。
 低音域はまあまあといった感じ。さすがに十分とは行かないが、このサイズにしてはがんばっている。パッシブラジエーター方式でなかったらBGM用にも実用には耐えなかっただろう。
 というわけで名機27号機(タンデムドライブのコンパクトモデル)を押しのけて現時点のBGM用システムの座に着く事になった。今もBGMを奏でている34号機はサイドに設置して、どこでも良い音が聴けると言う点ではベストのモデルとなったのだ。

写真26 試聴中の34号機
 
  6. 今回のおまけ

 じつは8本のスピーカーユニットの入手に時間がかかったために34号機の製作は途中で中断した。この間に計画を進めていた35号機が先に完成してしまった。こちらも簡単に報告させていただきたい。
 35号機はLEGOスピーカーのコンパクトモデル27号機と同サイズでパッシブラジエーター方式を実現したいという発想のモデルである。最小と言う点では5cmフルレンジユニットを搭載した15号機の方がコンパクトだが、音質的にはメインには8cmフルレンジユニットを使いたいので27号機のサイズで製作する。27号機は内部に5cmユニットを内蔵したタンデムドライブ方式だが、このサイズでは8cmユニットを追加してパッシブラジエーター方式にすることは難しい。そこでユニークな4.3cm角形の平面振動板を持つHiWaveのBMR12というスピーカーユニットをパッシブラジエーターとしてチョイスしてみた。パルプ製ハニカム構造平面振動板をもつこのフルレンジスピーカーユニットは大変コンパクトで外形が65mmX65mmしかない。LEGOブロックの7ピッチ(56mm)と6段(58mm)の角穴にちょうど取り付けできる。
 最低共振周波数foは164Hzなので、このくらいの周波数の低音増強が期待でき、このスピーカーユニットを34号機のように左右下部に2本取り付けることにする。
 35号機の製作にあたってLEGO部品確保のために11号機(第5報参照)を解体した。使っていなかった11号機に付いていたスピーカーユニットがVifa のTG9FD10-04だったのでこれをメインスピーカーユニットとして利用する。TG9FD10-04は白いグラスファイバーコーンの9cmフルレンジスピーカーユニットで、もともと10号機の製作のために用意した思い出のユニットである。じつに久しぶりの再登場であるが、11号機の青色の筐体と白いコーンは印象が良かった。だから、35号機も青色なのだ。

 写真27に35号機の全構成部品を示す。写真28はメインのスピーカーユニットモジュールである。TG9FD10-04は9cmフルレンジユニットなのでプラスチックフレームだが若干サイズが大きい。8mm幅のLEGOブロックでハコを造って固定した。
 写真29はエンクロージャフレームであるが、パッシブラジエーターを固定する角穴が左右下部にある。写真30がHiWaveのフルレンジ平面振動板ユニットBMR12である。角形なので固定がしやすい。今回はパッシブラジエーター使用なので関係ないがマグネットはネオジウムでとてもコンパクトだ。

写真27 35号機全構成部品 写真28 メインスピーカーモジュール
写真29 エンクロージャフレーム 写真30 パッシブラジエーターユニット

 組み立ての様子を写真31から示す。パッシブラジエーターはM3ボルト&ナットで角穴の4隅に固定する。こんなに小さなフルレンジユニットだがメインユニットとして使用したらどんな音がするのか興味のあるところだ。エンクロージャ内面には吸音材のフェルトシールを貼る。
 スピーカーユニットモジュールとフロントパネルをエンクロージャフレームに取り付ける。(写真32)
 リアパネルを取り付けて35号機の完成。青いエンクロージャにホワイトコーンのスピーカーユニットと左右の四角いユニットがサイバーで良い感じだ(写真33)。
 27号機と比較すると同一サイズのコンパクトスピーカーシステムだが高級感は無い。音はどうだろうか?(写真34)

写真31 パッシブラジエーター取り付け 写真32 メインユニット取り付け
写真33 完成した35号機 写真34 35号機と27号機の比較

 自作感丸出しのデザインがSV-16Kに妙に似合う(写真35)。音調はグラスファイバーコーンのメインユニットの明るい音が印象的だ。低音の再現性もタンデムドライブの27号機には及ばないが使えるレベルである。前報でも述べたがタンデムドライブではアクティブ駆動の限界があり、大音量での破綻が感じられるがパッシブドライブの35号機では自然な増強感である。やはりコンパクトスピーカーシステムにはパッシブラジエーター方式が最適な手法であると確信した。
 ところが、残念ながらこの35号機はBGMシステムでの使用は短命に終わり、遅れて完成を見た34号機が現在のBGM用のスピーカーシステムとなったのである。

<35号機 基本仕様>
・ 形式:パッシブラジエーターコンパクトスピーカーシステム
・ 方式:フルレンジメインユニット+ダブルパッシブラジエーター方式
・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
・ エンクロージャ方式:3スピーカーユニット搭載密閉型
・ 使用ユニット:
  メインユニット Vifa TG9FD10-04 グラスファイバーコーン 9cmフルレンジ
  パッシブラジエーター HiWave BMR12 ハニカム平面振動板 4.3cmフルレンジ
・ 外形寸法:W96mm H160mm D120mm
・ 実効内容積:約0.8リットル
・ パッシブラジエーター共振周波数:164Hz
・ システムインピーダンス:4Ω

写真35 試聴中の35号機
 
  7. おわりに

 この4ヶ月で32号機から4機種のパッシブラジエーター方式コンパクトスピーカーシステムを製作した。それぞれが個性的で面白いのだが、やはり絶対的なスピーカーシステムサイズから来る低音域の不足感は否めない。大型のモデルをパッシブラジエーター方式で造ったらどんな音がするのだろうか?期待感が湧いてきた。
 大型モデルの製作では大量のLEGOブロックの確保が第一課題となる。保管棚に眠っている19号機を解体しよう。これで部品問題は解決だ。さあ設計に入ろう・・・。

つづく   
 
     


写真36 パッシブラジエータ方式シリーズ

 
 
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