キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 第33報
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LEGOスピーカーの製作 第33報

 
     


写真1 カラフルミニスピーカーシステム43号機

 
  1. ワクワクさせるスピーカーユニット

 Stereo誌8月号にオマケでスピーカーユニットが付属していた。今回で5回目だそうだが、ついに2ウェイ4本のスピーカーユニットが付いてきた。(写真2)
 この雑誌は3810円で本誌代が約1000円だから、このスピーカーユニット1個が約700円と超安価だ。だがその割にはフォステクス製でしっかりとした造りである。またまた製作意欲がわいてきた。
 しかし、この安価なスピーカーユニットに高価なLEGOエンクロージャでは似合わない。できるだけ低コストに造るべきだろう。するとコンパクトなバスレフ方式としたいが、8cmウーハーでは低音域は期待できない・・・どうしたものか?
 これで今年の夏休みの自由研究は決まった・・・それにしても、このトゥイーターの3点固定には苦労しそうである。

写真2 2ウェイスピーカーユニット
 
  2. 設計過程

2−1 スピーカーユニットについて
 まずはスピーカーユニットの特性を確認する。下に仕様を示すが、ウーハーのPW80は8cmペーパーコーンで高音域の再生特性も良くフルレンジユニットに近いものと推定される。つまり、中音域重視で低音域の再生はあまり期待できない。フォステクスからはこのスピーカーユニット専用のダブルバスレフエンクロージャキットが発売されたが、内容積5リットル程度と大型で、低音域の確保にはダブルバスレフといった工夫が必要なのだろう。LEGOスピーカーとしては8cmウーハーのサイズを活かして、内容積1リットル程度のミニスピーカーシステムに仕上げたいところである。
 最低共振周波数は130Hzとなっており、バスレフダクトのチューニングはこのあたりになる。取り付け寸法はいつも利用している8cmフルレンジユニットと同じネジ穴間隔なので苦労はない。プレスフレームにコストダウンが窺えるが仕上げはとても良い。
 トゥイーターのPT20は20mmソフトドームでプラスチックフレームだがマグネットも大きく高級感がある。推奨クロス周波数が5kHzと高いことから中音域には弱そうである。能率がウーハーと大差ないのでアッテネーターなしでつなげることができそうだ。実際、デバイディングネットワーク用のパーツが付属していたが、ハイパス用のコンデンサーだけであった。最大の問題点は3点固定だ。LEGOバッフルパネルの四角いマド穴に3点で上手く固定できるだろうか?工夫のしどころである。

<ウーハーPW80 規格>
 ・ 形式:8cmコーン形ウーハー
 ・ インピーダンス:8Ω
 ・ 最低共振周波数:130Hz
 ・ 再生周波数帯域:fo〜23kHz
 ・ 出力音圧レベル:83dB/w(1m)
 ・ 入力:8W
 ・ バッフル穴寸法:Φ79mm
<トゥイーターPT20 規格>
 ・ 形式:20mmソフトドームトゥイーター
 ・ インピーダンス:8Ω
 ・ 再生周波数帯域:3kHz〜32kHz
 ・ 出力音圧レベル:84dB/w(1m)
 ・ 入力:5W
 ・ 推奨クロスオーバー周波数:5kHz以上
 ・ バッフル穴寸法:Φ60mm

2−2 構造設計
 このスピーカーユニットを見て思ったのは第17報で紹介したLS3/5Aのデザインである。あのコンパクトモニタースピーカーのミニチュア版をイメージしたのだ。レトロ感のあるエッジ付きのバッフルデザインにしたい。LS3/5Aは密閉型だが、1リットルの超ミニサイズではバスレフ型しかないだろう。
 本機はミニ2ウェイシステムを安価に組み立てることも狙いである。せっかくの超低価格ユニットなのだ。LEGOブロックの最も安価な入手方法は汎用パッケージの利用である。種々のブロックが650個入って約2500円で販売されている。(写真3)
ただ、細かなパーツが多く、スピーカー製作に使えるブロックは300個程度、それでも1個10円以下と破格である。今回はこれを2箱買って、エンクロージャフレームを製作する。パッチワークよろしく色とりどりのフレームになるが、この彩色もポップで楽しいだろう。
 以上の検討から図1の構造図を描いた。
バスレフ方式なのでフレームはシンプルな枠構造。スピーカーユニット2本を搭載した最小のバッフルパネル面積からできたこの寸法で、実効的な内容積は約0.9リットルである。
 懸案であったバッフルパネルのトゥイーター取り付け穴は、幸いにも下側2箇所のネジ穴間隔が約60mmでウーハーの63mmと近いものであった。だからマド穴の横幅は同じでいける。上部の1箇所のネジ穴位置はブロックに若干の加工が必要である(ニッパで切り取るだけなので簡単ではあるが)。また、表面のタイルブロックにもスピーカーユニット実寸に合わせた干渉対応の調整加工が必要である。
 次に述べるデバイディングネットワーク素子はリアパネルに実装する。コイル素子をネジ止めして、このネジも配線に利用する考えである。
 バスレフダクトは底面を一部とした取り外し可能な構造とする。これで後からの調整も容易だ。できるだけ内容積を減少しないようにダクト厚さも8mmに抑えた造りである。
 ダクト長は当初6cmで計画してバスレフ共振周波数を低めに、104Hzに設定したが、これは組み立て後の試聴の結果5cmで112Hzに修正された。
 吸音材に関しては、以前は活性炭を良く使用していたが、今回はバスレフ効果を最大限に利用したいので低音域でエネルギー吸収のない薄いスポンジシートを用いることにする。

写真3 汎用LEGOパッケージ 図1 構造図

2−3 デバイディングネットワーク設計
 一般的な6dB/oct -3dBクロスネットワークを図2に示す。コイル素子とコンデンサーを1個ずつ使用した簡単なものだ。コンデンサーに5.1μF、コイル素子に0.33mHを使用するとおおよそ4kHzクロスとなる。トゥイーターの位相は普通に逆相接続である。ただ、これでは8cmウーハーの1〜3kHz程度の中音域が強くなり、さらにトゥイーターが乗ることで高音域が強調されるだろう。トゥイーターレベルをアッテネートしたとしてもウーハーの中音域が強調された「かまぼこ型」の周波数特性になるだろう。
 そこで、不足が予想される低音域は2ウェイのクロス周波数を低めに設計して、トゥイーターレベルをアッテネーターで-6dB絞ることで相対的に改善したいと考えた。市販のミニスピーカーシステムが良く採用する能率を犠牲にした低音域改善方法である。2ウェイならではの方法だが、トゥイーターの再生帯域には少しムリをさせることになる。
 プリメインアンプにはラウドネスコントロールという機能が付いていることがあるが、これは小音量再生時に不足する低音域などの人の聴覚感度を補正するものである。要するに単なるバスブーストなのだが、この考え方で低音域のレベルを上昇しようと思う。本来の低音域の再生能力を改善するものではないので大音量では破綻するだろう。この43号機は寝室などでのBGM用途を想定して小音量で楽しむシステムと考えた。
 図3にアレンジした回路図を示すが、ウーハーのコイル素子を0.8mHにして-3dB遮断周波数を1.6kHzに下げている。トゥイーターには-6dBアッテネーターの8.2Ωを挿入して合成インピーダンスを16Ωにすると、5.1μFとの-3dB遮断数端数は2kHzとなる。少し中音域が低下するが、もともと8cmウーハーの中音域は強いので良いところだろう。高音域が弱すぎたら図3の(3.9Ω)にアッテネーターを少なくして調整する。この場合、トゥイーターの遮断周波数は2.6kHzに変化するがあまり問題にはならないだろう。抵抗器1本のみの簡易アッテネーターでは調整により遮断周波数に影響が出てしまうのである。
 -6dBアッテネートするとはいえ推奨クロスオーバー5kHzのトゥイーターを2kHzで使用することは少し気がひけるが、がんばってもらおう。(安いので扱いがひどい)

図2 一般デバイディング回路 図3 改良デバイディング回路

<43号機 基本仕様>(調整後)
 ・ 形式:2ウェイミニバスレフシステム
 ・ 方式:位相反転形バスレフ方式
 ・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
 ・ 使用ユニット:
          ウーハー フォステクスPW80 8cmペーパーコーン
          トゥイーター フォステクスPT20 2cmソフトドーム
 ・ 外形寸法:W112mm H208mm D125mm
 ・ 実効内容積:0.9リットル
 ・ バスレフダクト長:5cm
 ・ バスレフ共振周波数:112Hz
 ・ デバイディングネットワーク:6dB/oct ネットワーク
          ウーハーカットオフ周波数:1.6kHz
          トゥイーターカットオフ周波数:2.0kHz
          トゥイーターアッテネーター:-6dB
 ・ システムインピーダンス:8Ω

 
  3. 製作過程

 写真4に全構成部品を示す。ミニサイズモデルだが2ウェイなので部品は多い。実際はデバイディングネットワーク検討用のコイル素子と抵抗器を別途用意した。
 ひときわ異彩を放っているのが写真5に示すカラフルなフレームである。LEGOパッケージ商品を使用したためにこのような部品になった。以前に製作した23号機(第15報)や30号機(第22報)ではブロックの色を合わせたが、今回はランダムに使用して色合いの面白さを狙っている。部品としてはただの枠構造である。パッケージ一箱で10段の製作が限界だった。

写真4 全構成部品 写真5 フレーム

 バッフルパネルを写真6に示す。本製作で最も苦労した部品だが、トゥイーターの3点固定も少しのブロック加工で対応できた。エッジを付けて正面デザインのアクセントとしている。
 リアパネル(写真7)はターミナルとコイル素子固定用の4mmボルト穴が4箇所に空いた板構造である。プレートブロック3枚重ねの9.6mm厚さ。下部の四角いマド穴に別部品のバスレフダクトが入る。

写真6 バッフルパネル 写真7 リアパネル

 写真8がバスレフダクトである。ダクトの内寸は16mm×16mmで、これまでのダクトは振動防止から2ピッチの16mm厚さで作成していたが、今回は内容積が重要なので1ピッチの8mm厚さである。とりあえず6cmとしたが、取り外して簡単に調整できる。
 その他の部品を写真9に示す。両端を端子処理した内部配線ケーブル、ターミナル、ネジ類、足となるフェルトシール、吸音材のスポンジシートである。この5mm厚スポンジシートは100円ショップで調達したパソコン用保護ケースを切り裂いたものだ、つまり原価100円。

写真8 バスレフダクト 写真9 その他の部品

 写真10にデバイディングネットワークパーツを示す。図2と図3の2つの回路をテストするために、いつものPARC AUDIO製コアコイル素子は0.33mHと080mHの2種類、daytonのフィルムコンデンサーは5.1μF、抵抗器はMUNDORFの8.2Ωと3.9Ωを用意した。

写真10 ネットワーク素子

 組み立ては、まずはバッフルパネルにウーハーを取り付ける(写真11、12)。
4mm6角穴付ボルトとダブルナットでワッシャを使ってマド穴の隅に引っ掛けて固定するが、ボルトによる固定はとても強固で、木ネジよりもしっかりと固定できる。このウーハーユニットは長穴なので表面にも黒色ワッシャを入れた。スピーカーユニットの接続端子はバスレフダクトと干渉しないように上方に向けている。

写真11 ウーハーの取り付け 写真12 ウーハー固定の様子

 トゥイーターの取り付けを写真13、14に示す。このトゥイーターは3箇所のネジ止めで心配したが、フランジが大きかったので固定は意外に簡単であった。ウーハーと同様な方法で強固に取り付けできた。バッフルパネル裏面にはトゥイーターユニットの接続端子部分を避けるように切込みを設けてある。

写真13 トゥイーターの取り付け 写真14 トゥイーター固定の様子

 各スピーカーユニットにケーブルを接続して(写真15)、フレームに固定する(写真16、17)。
 このフレームは小さなサイズの割には板厚が16mmもあるので内寸が少ない。まさに2ユニットでいっぱいである。

写真15 ケーブルの接続
写真16 バッフルパネルとフレーム 写真17 フレーム内部の様子

 リアパネルの組み立てを行う(写真18、19)。はじめに図2の一般的なデバイディングネットワークで作成する。リファレンスがなければ図3の改良回路の評価ができないからだ。コイル素子の固定ネジは長い30mmを用い、コンデンサーの配線にも利用する。コアコイル素子が大きいのでリアパネルはとても窮屈。

写真18 リアパネルの組み立て 写真19 ネットワーク素子の実装

 リアパネルをフレームに取り付ける(写真20)。吸音材のスポンジシートは写真21のように挿入した。トゥイーターの配線を間違えると一瞬で破損するので慎重に確認する。

写真20 リアパネルの取り付け 写真21 ケーブル結線の様子

 最後に底面にフェルトシールを貼り、バスレフダクトを挿入して組み立て完了である(写真22)

写真22 バスレフダクトの挿入 写真23 43号機外観

 組み上がった43号機の外観を写真23〜26に示す。レトロ調のバッフルパネルとポップな色調のフレームの対比が面白い作品になった。リビングのインテリアにもマッチするおしゃれなデザインだと思うがどうだろうか?

写真24 裏面の様子 写真25 側面の様子
写真26 側面の様子2 写真27 エンブレム部拡大
 
  4. 試聴と調整

 音を聴いて驚いた。安価なスピーカーユニットなので正直、あまり期待していなかったが本格的な音なのだ。これはBGM用途ではもったいない。
 いつも思うことだが音質の絶対的評価は難しい。予想に反して良い結果だと、つい高い評価をしてしまう。バスレフ方式も想像していたよりも効いている。試聴のつもりがじっくりと音楽を楽しんでしまった。
 冷静に評価してみるとやはり高音域が強い。ただ、さすがにトゥイーターの高音域はフルレンジユニットと違って分割振動による歪が少なくクリアである。トゥイーターを主張して聴かせるこの音も悪くはない。
 この状態でバスレフダクトの長さを変えて見る(写真28)。音楽を聴きながら容易に調整できることがポイントである。
現状の6cm(104Hz)ではちょっと低すぎる感じでもっと効果が欲しい。4cm(120Hz)に短くしたところ動作は顕著になったが面白くない音になってしまった。間の5cmが適当と判断した。これでバスレフダクトの共振周波数はおおよそ112Hzになる計算である。スピーカーユニットのfoである130Hzと比較して低い設定であるが、計算結果よりも実際は高い周波数で動作しているとも考えられる。
 現状でも聴ける音ではあるが、教科書的でインパクトがない。デバイディング回路を図3の改良タイプに変更した(写真29)。回路素子の交換はリアパネルを外す必要があるが、たいした作業ではない・・・結果は?
 これはすごい!・・・このスピーカーからこんな音が楽しめるとは思わなかった。
低音域再生の性能が向上したわけではなく、アンプのバスブーストと同様に強調しただけなので大音量では破綻するのだが、適正音量ではすばらしいレスポンスである。
低音域に力がある。リスニングルームを支配するだけのパワーが感じられる。これは本物のオーディオシステムの音だ。
 43号機はポップな外観とは異なり落ち着いたジェントルな音のシステムに仕上がった。

写真28 バスレフダクト調整 写真29 デバイディング回路変更
  5. おわりに

 今回は通販でスピーカーユニット(Stereo誌)を入手してから企画、構想、設計、部品入手、製作を含めて10日で仕上げてしまった。これほどスピーディな作業はこれまでなかったと思う。安価に製作するためにスピーカーユニットの他にはLEGOのパッケージを2箱購入しただけで、後は手持ちの部品を利用できたことも大きい。もちろん紆余曲折の製作過程も楽しみの一つではあるのだが、LEGOスピーカーはできてからも、なお楽しみが続くのである。
 自作スピーカーで聴く音楽は至福の時間である・・・ほんとタマリマセン。

(2014.8.17)  
 
     


写真30 完成した43号機でリスニング

 
 
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