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LEGO SPEAKER 第36報
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LEGOスピーカーの製作 第36報

 
     


写真1 ダブルパッシブラジエーター方式46号機

 
  1. クラシックを聴こう!

 ミニスピーカーシステム43号機の低音強化改良でクラシック曲を聴くことが多くなった。これまで、LEGOスピーカーではボーカル曲を中心に楽しんでいたので、低音は締める方向に設計していた。これは最近の音楽はホールで生音を収録するクラシック曲と異なり、コンピューターで合成した電子音が主流で、低音がものすごく強力に入っているからだ。そのような音楽は低音を強化して膨らませたスピーカーシステムで再生するとボコボコでしまりのない低音になり、ひどい場合には過振動で振動性の低音になる。

 今回の46号機はクラシック音楽を楽しむために、たっぷりとした低音が出るモデルを製作するのだ。

 
  2. 低音強化方法

 最近はパソコンやスマホに無線で接続するタイプのコンパクトパワードスピーカーが数多く市販されている。その中には驚くような低音を再生するモデルもあり、そのほぼすべてがパッシブラジエーター方式を採用している、もはや、超コンパクトスピーカーの決定番技術と言って差し支えないだろう。私も先に報告した45号機でも採用している。

パッシブラジエーターユニットを搭載するスペースがあるならば、小型のウーハーユニットを装着したほうが良いのでは? と思うかも知れないが、ウーハーユニットの背圧をコンパクトなエンクロージャでは処理できないのだ。

 パッシブラジエーター方式はメインユニットの背圧処理と低音増強を両立できる、優れた方式なのである。

 そこで、本46号機はこの方式を発展して、強力な10cmフルレンジユニットに2本の従属スピーカーユニットを追加したダブルパッシブラジエーター方式の低音増強システムを考えてみた。

 
  3. 構造設計

 46号機の構造図を図1に示す。内容積は約5リットルでLEGOスピーカーとしては大型だが、一般的にはコンパクトスピーカーである。10cmスピーカーユニットを3個縦に配置したトールデザインで、転倒防止の目的もあり横幅をユニットサイズより少し広げている。3ユニットは上側に後退して並べたが、これはデザイン的要素とフレームの構造強度の向上、背圧の気流抵抗減少、組み立て性向上などの目的がある。

図1 46号機構造図

 パッシブラジエーターには専用のユニットPeerless 830878 SDS 10cmパッシブラジエーターを用いる(写真2)。なんと最低共振周波数foは29Hzである。振動板に錘を付けて自己共振周波数を下げているのだ。逆ドームのコーティングパルプコーンで、ゴムの大型エッジは振幅ストロークが大きく取れそうな設計である。ユニットの固定穴は6箇所であるが、変形しているので4箇所を用いて専用の固定フレームに取り付けた。

 このユニットは本来、同種のウーハーで駆動するものなので、10cmフルレンジユニットで十分に駆動できるか心配である。そこで、フルレンジユニットをもう一つ追加してサブのパッシブラジエーターとして駆動するのである。本機は共振周波数の異なるダブルパッシブラジエーターでフルレンジユニットの低音を増強しようという考えなのだ。

 2つのフルレンジユニットのターミナルは独立してリアパネルに取り出して、どちらもメインユニットとして使用できるようにする。また、パッシブラジエーター側のユニットは抵抗器でダンプする。この抵抗値で効果を変化させることができるが、とりあえず51Ωを用意した。

写真2 パッシブラジエーターユニット

 2つのフルレンジユニットはPARC Audio のDCU-F121K ケブラーコーン10cmフルレンジ(写真3)とDCU-F121W ウッドコーン10cmフルレンジ(写真4)を用いる。この2本はスピーカーフレームが同一で、コーンセンターのフェイズプラグデザインも共通の姉妹モデルなのでデザイン上もまとまりが良い。振動板の材質が異なるが、DCU-F121Kは内部損失の大きなケブラー振動板を採用し、音調はウッドコーンと似ている。foは69.6Hzである。

写真3 ケブラーコーンユニット 写真4 ウッドコーンユニット

 DCU-F121W はウッドコーンのフルレンジでサペリマホガニー材の多層構造ウッドコーンを採用し、いかにもオーケストラ楽器のクラシック再生に向いていそうなユニットである。超大型のマグネットで重さは1.16kgもある。foは72.4Hzである。

 どちらもメインユニットにできると記したが、本命はウッドコーンユニットであり、ケブラーコーンユニットはパッシブラジエーターとして使う。したがって、69.6Hzと29Hz を中心としたダブル低音強化である・・・が、そう上手くいくかな?

おそらく、2本のパッシブラジエーターユニットが干渉して複雑な共振モードを持ち、独立した働きにはならないだろう。しかし、1本よりは2本の方が低音増強は期待できるのではないか? ダブルパッシブラジエーターシステムは理論が難しくシミュレーションも困難であろう。だからこそ、LEGOスピーカーなのだ。造ってみれば良いのである。

<46号機 基本仕様>
  ・ 形式:フルレンジパッシブラジエーターシステム
  ・ 方式:ダブルパッシブラジエーター方式
  ・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
  ・ 使用ユニット:
         メインユニット PARC Audio DCU-F121W 10cmウッドコーン
         サブユニット PARC Audio DCU-F121K 10cmケブラーコーン
         パッシブラジエーター Peerless 830878 SDS 10cmパルプコーン 
  ・ 外形寸法:W144mm H400mm D224mm
  ・ 実効内容積:約5L
  ・ 接続ターミナル:メイン・サブ独立方式 ・ サブユニットダンピング抵抗:0〜200Ω可変方式
  ・ システムインピーダンス:6Ω

 

スピーカーユニット仕様
<10cmフルレンジユニット PARC Audio DCU-F121W>
  ・ 振動板材質:多層構造ウッドコーン
  ・ インピーダンス:6Ω
  ・ 効率:86.5dB(/1W/1m)
  ・ 耐入力:30W(RMS)
  ・ 最低共振周波数:72.4Hz
  ・ 周波数レンジ:72.4Hz〜16kHz
  ・ Qts:0.51
  ・ Mms:5.05g
  ・ 質量:1160g
  ・ マグネット:フェライト

 

<10cmフルレンジユニット PARC Audio DCU-F121K>
  ・ 振動板材質:ケブラーコーン
  ・ インピーダンス:6Ω
  ・ 効率:88dB(/1W/1m)
  ・ 耐入力:30W(RMS)
  ・ 最低共振周波数:69.6Hz
  ・ 周波数レンジ:69.6Hz〜16kHz
  ・ Qts:0.35
  ・ Mms:5.01g
  ・ 質量:982g
  ・ マグネット:フェライト

 

<10cmパッシブラジエーター Peerless 830878 SDS>
  ・ 振動板材質:コーティングパルプコーン
  ・ 最低共振周波数:29Hz
  ・ Mms:38.5g (注目!)
  ・ 質量:96g

 
  4. 製作過程

 46号機の1台分の全部品を写真5に示す。大型モデルのわりにはシンプルなハコ構造なので部品点数は少ない。

 写真6に3ユニットを取り付けるメインフレームを示す。目の字構造で極めて強固である。取り付け部の角穴は正方形ではなく16mm下に長くしてあるが、大きなマグネットの気流抵抗対策である。

 最下部にエンブレムを付け、サブフレームで横幅を左右に8mm広げるのでスロープタイルブロックが側面に付いている。黄色いラインがデザインポイント。

写真5 全部品(1台) 写真6 メインフレーム

 写真7はサブフレームである。サブフレームはLEGOブロック調達の関係で黄色いデザイン。実は31号機を改造した際にできた大量の黄色ブロックの再利用品なのだ。
左右に1段角を付ける事で強度をアップしている。長さは10段で96mmのシンプルな枠構造。

 リアパネルを写真8に示す。今回はリアパネルにも工夫をした。大面積のリアパネルは最も弱くなるところである。3.2mm厚さのプレートブロックは2段では弱いが、3段で互いに組むと厚さ9.6mmの丈夫な板構造になる。しかし、曲げ・ひねり強度はまだ弱い。
そこで、船型の立体構造にしてみた。これは少ないプレートブロックで最大の強度を得るための構造なのである。厚さ19.2mmのこの船型リアパネルは曲げ・ひねりに強く内容積も圧迫しない、優れた構造体なのだ。十分に補強リブも入れ、パネル下部にはターミナルを2組付けるための穴が4箇所開いている。

写真7 サブフレーム 写真8 リアパネル

 その他の部品を写真9に示す。ターミナル、インシュレーター、配線ケーブル、サブユニットのダンピング抵抗(51Ω)と実験用のジャンパーピンである。

写真9 その他の部品

  組み立てはまず、メインフレームにパッシブラジエーターユニットを取り付ける(写真10、11)。
メインフレームは裏側が平らなのでしっかりと固定できる。

 次にメインユニットをフレームに固定する(写真12、13)。ここでスピーカーユニットに配線をしておく。メインユニットの巨大なマグネットで背圧に気流抵抗がかかるが、取り付け穴を下に広げてあるので緩和できるだろう。

写真10 パッシブラジエーター取り付け 写真11 固定の様子
写真12 メインユニット取り付け 写真13 メインユニット固定の様子

  サブユニットを取り付ける前にサブフレームと組み合わせる(写真14、15)。
これはサブユニットのマグネットがメインフレームの厚さでは収まらないからである。
さらにインシュレーターを底面に貼り付ける。

  配線したサブユニットをフレームに取り付ける(写真16、17)。
2個の巨大マグネットのフルレンジユニット装着でとても重くなったが、フレームの強度は十分である。

  ターミナルに配線してリアパネルでフタをして、組み立て完了である(写真18、19)。
パッシブラジエーター方式では背圧を有効に利用するので吸音材は使用しない。
写真14 サブフレーム組み合わせ 写真15 インシュレーター貼り付け
写真16 サブユニット取り付け 写真17 フレーム内部の様子
写真18 リアパネル準備 写真19 リアパネル配線

 46号機の外観を写真20に示す。黄色いエンクロージャと3段のメインフレームが独特のデザインに仕上がった。スロープタイルの横幅拡張もデザインのアクセントになっている。

 リアパネルのサブユニット側ターミナル(上側)にはダンピング抵抗器をバナナプラグで接続する(写真21、22)。白いバナナプラグケーブルはショートピンでダンピングを強めて低音の増強効果を抑える実験に使うものである。

写真20 46号機外観
写真21 外観背面 写真22 外観側面
 
  5. 試聴と評価

 御影石ベースに乗せて試聴を行う(写真23)。46号機はかなり個性的なデザインだが、黄色いフレームは前面からは見えないのでリスニング時は意外と落ち着いて見える。

 期待の音は・・・なかなかのダイナミックな音だ。下のパッシブラジエーターユニットPeerless 830878は予想通りあまり積極的には働いてはいない。だが、良く聴くと重低音を伸ばしているようだ。驚いたのはフルレンジユニットDCU-F121Wがこれまでの39号機などに搭載した時と比較して明らかにひずみの少ないきれいな音になったことだ。内容積5リットルと決して小さくはないが、このパッシブラジエーター方式での背圧が少ないことが効いているようである。

 本機は2つのフルレンジユニットを使い分けできるので、クラシック曲はウッドコーンで、ボーカル曲はケブラーコーンと考えていたが、ウッドコーンの自然な音にオールマイティな魅力を感じる。

写真23 試聴の様子

 ところが、背圧によるダンピングのなくなったメインフルレンジユニットはフラフラで、バスドラの一発で振動音になってしまった。サブユニットのパッシブラジエーターも壮大に振幅している。これは51Ωのダンピング抵抗器をショートピンに交換しないとならない。

 ショートしたサブパッシブラジエーターは良くダンプされて、適度な背圧でメインユニットの低音域でのばたつきも低減した。ボーカル曲でのドラムスや強力なベース、電子音の超低域の入ったソースではこうした調整が有効である。

しかし、クラシック曲のフルオーケストラではコントラバスやティンパニの再現にもっとゴォーという低音感が欲しい。これは抵抗値を上げて積極的にサブパッシブラジエーターを働かせたくなる。そこで、ダンピング抵抗をバナナプラグの交換方式から前回の番外編その5で紹介した可変抵抗器方式に切り替えた。

写真24に示す200Ωの可変抵抗器は使用電力も小さいので小信号用で十分である。
これで容易にソースに応じて低音域の再現を調整できる(写真25)。
ボリューム7時で0Ωショートの低音タイト、5時で200Ωの低音ブースト、12時で100Ω(Bカーブ)のデフォルトといった具合である。

 46号機はフルオーケストラ曲をダイナミックに楽しめるコンパクトなスピーカーシステムを目的として開発したが、低音域の調整機能や縦配置3ユニット、黄色いエンクロージャデザインも含めて、使いこなしの面白いシステムになった。

写真24 可変抵抗器 写真25 低音域調整機構
 
  6. ハイレゾクラシック!

 46号機はシンプルなフルレンジユニット1発のシステムで、高音域はウッドコーンの柔らかさが、低音域はダブルパッシブラジエーターの迫力がクラシックリスニングに最適である。

 46号機の開発でLEGOスピーカーでも本格的にクラシック曲を楽しむことができるようになった。そこで、私も話題のハイレゾ環境を構築した。

 D/Aコンバーターには愛用の96kHz24bit以上にも対応したサンバレーのSV-192Sを使用する。コントロールパソコンには小型のノートパソコンを選んだ。ハードディスクレス、ファンレスの完全無音PCであることが選択の理由である。アプリケーションはフリーの定番foobar2000。

 残念ながらSV-192Sは本体のUSB接続でダイレクトにハイレゾ信号を受けられない。
そこで、USB信号を同軸デジタル信号に変換するハードウェアとしてStereo Sound刊のDigiFi誌15号に付属していたD/Dコンバータを利用した(写真26)。
専用のケースに入れると雑誌付録とは思えない立派なオーディオ機器としての佇まいである(写真27)。また、上に乗せた機器は同誌16号の付属ヘッドホンアンプ付きハイレゾD/Aコンバーターである。

 さて、ハイレゾミュージックとはどんな音がするのだろうか?
ハイレゾの効果を確認するためにヘッドホンでCDフォーマットとの違いを聴いてみた。
ダウンロードサイトで購入したハイレゾミュージックはサンプリング周波数96kHzで分解能24bitであるが、foobar2000の設定でCDフォーマットの44.1kHz、16bitにリアルタイムにダウンコンバートできる。パソコンの内蔵スピーカーで再生するためにもデフォルトがこの変換状態なのである。この比較が正しいかはわからないが、写真のヘッドホンシステムで聴いてみてフォーマットの違いを聴き分けることができるだろうか?

写真26 D/Dコンバーター基板 写真27 ハイレゾサウンド再生環境

・・・結果は驚くほどの明らかな違いであった。
CDフォーマットでは音場が頭の中央に定位する、いかにもヘッドホンの音であるのに対してハイレゾサウンドではヘッドホンを忘れるほどの自然な音場感である。
まるで大ホールと小ホールの違いのようだ。余韻の情報量がまったく違うのである。
これはすごい。

 1982年にCDが登場したとき、一部のオーディオマニアたちはその音を否定していた。
当時学生だった私は未来的な光ディスクの製品化にワクワクしていたが、当時の技術の限界とはいえ、これほどフォーマットの違いを人の聴覚が認識できるとは思わなかった。

 

 ここのところハイレゾクラシックを聴きまくっている。まるで空気感がちがう。
もちろん、録音によってクオリティは異なるが、総じてすばらしい。
音のなめらかさが明らかに良いのだ。演奏者の椅子のきしみ音まで実にクリアに聞こえる。
これまでノイズとしか思えなかったこれらの環境音までもが楽器を構える気迫のように感じられるのだからオドロキである。

 96kHzサンプリングだと40kHz以上のレスポンスがある。10cmフルレンジだけではちょっと再生困難だ。そこでスーパートゥイーターを追加した。TAKET製のBATONEである。これは高分子圧電ハイル型駆動方式と言い、ピエゾフィルムを用いたスーパートゥイーターだ。

この製品の特性は 再生周波数帯域:20kHz〜60kHz 出力音圧レベル:90dB±3dB/W/mという、まさに超音波発生器なのだ。

 これ単体で音を聴いてもまったく聴こえない。ところが不思議なことに、スピーカーシステムの上に乗せると刺激的な高音が柔らかくなる。どうも、超音波を再生するというよりはアタック音のレスポンスを改善する効果が高いようだ。手をたたいたようなインパルス音にはすべての帯域の音が含まれる。楽器の倍音も超高音域まで生じており、このレスポンスが良くないと低音域にも影響が出る。ハイレゾサウンドは本来必要な特性であると思える。

 
  7.おわりに

46号機でハイレゾクラシックを聴く・・・
音が良いなどというレベルではない。
素直に感動している。私のリスニングルームでこんな音が聴けるようになるとは。
天才の作曲家に、天才の演奏家に、そしてこの技術を提供してくれたエンジニア達に感謝するのみである。

Bravo! High-Resolution Audio.

(2015.5.6)

 
     


写真28 ハイレゾクラシック再生環境

 
 
 
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