キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 第42報
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LEGOスピーカーの製作 第42報

 
     


写真1 簡単製作キューブLEGOスピーカー52号機

 
  1.はじめに

 2015年のStereo誌8月号の付録は自作の王道!10cmフルレンジスピーカーユニットである。 このスピーカーユニットを4本(2冊分)使って、LEGOキューブスピーカーを企画してみた。
コンセプトは簡単製作である。本来、LEGOスピーカーは簡単に造れて改造も容易なので、 スピーカー動作の研究に最適であると考えて製作を始めたのであるが、複雑な構造の大型モデルは きわめてコストがかかると言う問題がある。せっかく安価な書籍付属のスピーカーユニットを使用するのだから、 今回はだれでも簡単に、安価に、すぐに造れて、それでいて音も良い実用的なモデルを考えて見たい。

 
  2.設計

 デザインはコンパクトなキューブスピーカーで、10cmフルレンジユニットを搭載した限界サイズに挑戦したい。 外観は有名なモニタースピーカーシステムAURATONE5Cに似たデザインとするが、密閉型ではない。 そのままでは低音が出なくなるので、これまでの製作経験からこのような場合の最適手法である、 対向スピーカーユニット配置のパッシブラジエーター方式を採用する。

 実はこの企画はある目的があって、7月18日の書籍発売前にスタートした。 このため、付録のスピーカーユニットのサイズをFOSTEXの既製品P1000Kから推測した。

 取り付け穴位置の直径φ116mmから、間隔が82mmでM4ボルトの太さを加えて86mmの取り付け内寸が 必要であることがわかる。LEGOのピッチ8mmの11個分、内寸88mmのフレームで良いだろうか?  仕様を見るとスピーカーユニット裏面のサイズがφ93.2mmであることがわかる。 これを納めるには12個分の96mmが必要だ。

 フランジの外形は107mmなので96mmの穴でも片側5mm程度の余裕があり、取り付けは大丈夫。 スピーカーユニットの4隅に若干隙間が開きそうだが、ウレタンシールで塞げば問題はないだろう。 このサイズのフレームでは1ピッチ8mmの板厚では不安なので、2ピッチ16mmとしてフレームの外形は 16ピッチ128mmとする。キューブスタイルにしたいので、奥行きも128mmとすると、 対向して取り付ける2つのスピーカーユニット間には4cmほどの間隔があるのでここも問題ない。

 以上の検討から図1の構造図を描いた。 図にあるようにLEGO製のフレームは枠構造で前後にスピーカーユニットを配置して、 4本のM4ボルトで貫通して強固に締め付ける。 リア面がいっぱいなのでターミナルは側面にあり、穴の開いたLEGOブロックを利用する。 さらに、今回は背面のサブスピーカーユニットにも工夫をしてみた。ただの従属ユニットでは フルレンジスピーカーがもったいない。

図1 構造図 図2 回路図

 図2に示す回路は背面のサブユニットに1.8uFのコンデンサーをつないで、 おおよそ10kHz以上の高音域で駆動している。 これは背面に高音域を放射することで音場感の改善を図る狙いである。 さらに、パッシブラジエーターとして駆動されるサブユニットには100Ωのダンピング抵抗器を付ける。 普通のスピーカーユニットをパッシブラジエーターに使用した場合、 端子開放ではコンプライアンスが大きいためバタつくので、この抵抗で電磁ブレーキをかけるのだ。 抵抗値を小さくすると低音が締まり、低音増強効果が減少して密閉型の動作に近くなるが、 これまでの製作経験から100Ω程度が適当と判断した。

 パッシブラジエーター方式はこのようなコンパクトなエンクロージャでは最適な手法と考えられる。 その効果としては・・・

(1)パッシブラジエーターユニットの共振動作による低音の増強
(2)メインユニットの背圧低減による歪み改善
(3)バスレフ方式のような内容積が共振周波数に影響を与えることがない

といったことが考えられ、さらに背面にも高音域を放射することによる音場改善効果を期待したい。


<52号機 基本仕様>

・ 形式:コンパクトキューブスピーカーシステム
・ 方式:パッシブラジエーター方式 リア高音域放射音場型
・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
・ 使用ユニット:FOSTEX P1000 10cmペーパーコーンフルレンジ ×2
・ 外形寸法:W128mm H128mm D128mm(ターミナル部除く)
・ 実効内容積:約0.5リットル
・ サブユニットHPF:11kHz
・ パッシブラジエーターダンプ抵抗:100Ω
・ システムインピーダンス:8Ω以下

 
  3.設計の補足

 Stereo誌8月号が発売され、付属してきた10cmフルレンジユニットP1000は予想に反してFOSTEXの 既製品P1000Kとはだいぶ異なっていた。(写真2)
まず、マグネットが小型になっている。ちょっと残念だが、取り付け易くなったとも言える。 取り付け穴寸法は同一なので設計変更はない。エッジがゴムから布製になり、これは改良だろう。 他にもボイスコイルボビンなど改良があるようだが、2014年の本誌付属の2ウェイユニットはとても お買い得感があったが、今回の価格はP1000Kと比較してほぼ同価格である。 しかし、書籍付録に立派な10cmフルレンジユニットが付いてくるのは結構オドロキである。

<P1000規格>

・ 形式:10cmコーン形フルレンジ
・ インピーダンス:8Ω
・ 最低共振周波数fo:90Hz
・ 再生周波数帯域:fo〜16kHz
・ 出力音圧レベル:88dB/w(1m)
・ 入力(NOM):12W
・ mo:3.3g
・ Qo:0.8
・ 質量 :303g
  



写真2 P1000
 
  4.製作

 全部品を写真3に示す。本機は簡単な構造なので部品数は少ないが、このように部品を並べると 製作キットのようで楽しくなる。
LEGO製部品であるフレームの製作にはLEGOブロックを600個ほど使用した。

写真3 全部品

 写真4は前方のフレームAである。今回、フレームを前後に2分割したのはターミナルのボルトを締め、 内部配線作業を行うためである。前面はレトロな意匠としてエッジを形成してある。 内側の4角に小片のウレタンシールを貼り、スピーカーユニットとの隙間を埋める。 側面にはターミナルと配線ポスト用の穴あきブロックを3個設ける。底面には薄いゴム足を貼った。

 写真5は後方のフレームB。同様にウレタンシールとゴム足を貼ってある。 スピーカーユニットを固定する背面にはプレートブロックを用いて補強している。 薄い3.2mmのプレートブロックは通常の9.6mmのブロックよりも強度が高いのである。

写真4 フレームA 写真5 フレームB

 HPF(ハイパスフィルタ)のコンデンサーは配線を容易にするためにあらかじめ配線ケーブルに ハンダ付けしてある。(写真6)
配線にはM4の丸型端子とファストン端子を用いるが、これは組み立てを容易にするためと熱に弱い LEGOブロックの固定後にハンダ付け作業を行わないためである。
ダンピング用の抵抗器はパワーアンプにつながる形になるので電力抵抗器を使用した。

 ネジ類を写真7に示す。いつものM4ターミナルと配線ポスト用のM4ボルトとM4ナット、ワッシャの他に、 本機の特殊部品である貫通固定用の長いM4黒色6角穴付きボルトを用意する。長さは長めにして135mmとした。 ぎりぎりの長さのほうがカッコ良いのだが、作業性優先である。固定は緩みを防止するためにダブルナットとする。
なお、この長い6角穴付きボルトはネジの通販専門店で入手が可能である。

写真6 配線ケーブル他 写真7 ネジ類

 組み立ては、まずはフレームAにターミナルの固定と配線作業を行う。 写真8に示すように、ターミナルのカラーを外すことで固定ネジの長さを確保した。 できればこのカラーのある方が固定強度は大きいが、16mmの板厚に届かないのだ。

 写真9に示すようにターミナルと配線ポストに素子を固定して配線する。

写真8 フレームA組み立て 写真9 内部配線の様子

 次にフレームBと組み合わせる。(写真10)
フレームBと一体化することでターミナル部分は接続時の力にも十分に強固となる。(写真11)

写真10 フレームB組み立て 写真11 エンクロージャ完成

 4本の貫通ボルトで前後のスピーカーユニットを固定する。(写真12)
黒色のM4ワッシャを用いて見栄えにも配慮している。配線はコンデンサーをつないだケーブルが サブユニット用なので間違えないように行う。

 簡単製作をうたったが、この4本のボルトを貫通する作業が結構難しい。 長いことと磁石に引かれるのでコツがいるのだ。ナットを締めすぎないようにすることも重要である。 LEGOブロックは強度の高いABS樹脂製であるが、ぎゅうぎゅうと締めこむと破損してしまう。 緩み防止にダブルナットは欠かせない。しかし、本機は使用しているうちに緩みが生じてしまった。 長いボルトは温度による伸縮も大きいのだろう。そこでネジロックと言う緩み防止接着剤を 塗布してナットを固定した。

写真12 スピーカーユニット取り付け

 組み立ての完了した52号機を写真13、14に示す。(どちらが前面かわかりにくい) 10cmフルレンジユニットを2本搭載しているので結構重さもあり、以前製作した キューブスピーカー45号機(LEGOスピーカーの製作 第35報)と比較すると意外と大きく感じる。 だが、10cmフルレンジスピーカー搭載モデルとしては限界サイズの128mmキューブでコンパクトにまとまったと思う。 側面のターミナルはちょっと使いづらいが、これは仕方のないところだ。

写真13、14 52号機外観
 
  5.試聴

 早速音を聴いてみよう。(写真15)
再生音は低音域の量感もあり、オーケストラ曲でも十分に楽しむことができた。 このコンパクトサイズなので重低音は期待できないが、バスレフ方式のような共鳴音の癖の無い自然な低音だ。 背面にも高音域を放射しているので音場が広く、バッフル面がほとんど無いので音像もシャープ。 これはフルレンジユニットの最大のメリットだと思う。

 ただ、高音域の背面放射とボルトで締めたLEGOフレームが高音域で振動するので若干明るめの音調に感じられる。 これもこのスピーカーシステムのキャラクターだろう。 スピーカーユニットのエージングで音がさらに良くなると思うので楽しみである。

写真15 試聴の様子
 
  6.第6回「Stereo」誌 自作スピーカーコンテスト

 冒頭に述べた、この52号機製作のある目的とは、自作スピーカーコンテストへの挑戦である。
前回は43号機で参加したが、音質評価では散々であったことを報告した。 今回は本52号機でのエントリーである。応募条件は「Stereo」誌8月号付属の10cmフルレンジユニットのみを 使用していることだ。(他にもサイズ制限などあり)
だが、もう前年のようにLEGOブロックで造ったということだけでは入選できない・・・


 本機のコンセプトはだれでも造れる簡単スピーカーという点である。このコンテストは匠の祭典であって、 だれも簡単製作の作品で応募はしないだろう。そこが狙いだ。
アピールポイントとしては

(1)すばやい製作

8月号の発売が7月18日であったが、7月20日に応募した。
事前に準備を進めていたのはこのためだ。

(2)最小サイズ

128mmキューブサイズの本機は10cmフルレンジ搭載システムとしては応募作品の最小サイズだろう。

(3)特徴技術

・低音再生のためのパッシブラジエーター方式搭載
・リアユニットからの高音域放射による音場再生
・ミニキューブエンクロージャの背圧処理による歪み改善
・前後ユニット貫通ボルト固定方式の簡単製作


今回の自作スピーカーコンテストは王道の10cmフルレンジユニットということで、 おそらく多数のすごい作品が応募されたと思う。 だが、幸運なことに今回も、私のLEGOスピーカー52号機は一次の書類審査を無事パスして 最終審査会に招待いただいた。


 某日、受賞式が神楽坂の音楽の友社ホールで行われ、私も参加した。 残念ながら今回も入賞はできなかったが、楽しく貴重な経験であった。 応募総数の報告は無かったが、昨年同様とのことなので200件以上の応募があったのだろう。 そのなかで一次審査パスの22機種に選ばれ、本会に出席できたことはとてもうれしい。

 前回は各作品の試聴は会場ホールの隅で行われ、聴いている人は少なかった。 授賞式で入賞作品のみがホール全体での演奏を許されたのだが、今回は22作品すべてが100名以上の 参加者全員の前でホールでの試聴形式となった。
大きさ順の試聴ということで、予想通り私の52号機が最小作品でトップの開始となった。 ちなみにやはり応募も最初であったそうだ。

 この大きなホールでこんなに小さな52号機がちゃんと鳴るだろうか? ハラハラしながら試聴を見守った。課題曲はボーカル、声楽、オーケストラ、ジャズといった具合で 1作品5分程度。それでも22作品もあるので相当な時間がかかる。

 ・・・低音は豊かとは言えない。だが、とても健闘している。 特に教会録音と思われる声楽曲では最小バッフルの点音源システムとリアユニットの高音放射方式の効果で スピーカーの存在が消えた。会場ホール中に響くすばらしい音で鳴ってくれたのである。
このホールで、この数のオーディエンスの前で、この最小サイズの52号機がこれだけの音で鳴れば大満足である。

 今回も入賞は家具職人のような方たちの匠の作品であった。 書籍付録の安価なスピーカーユニットにそこまでやるかという執念の作品からは、10cmフルレンジユニットとは 想像もできないすばらしい音楽が鳴っていた。エンクロージャの影響はとても大きいと今回も痛感した。 もちろん、私のLEGOスピーカーがこういったすごい作品に音質でかなうはずもないが、 前回も書いたが自作スピーカーコンテストの甲子園に参加することにこそ意義があるのだ。

(2016.1.3)

     


写真16 第6回「Stereo」誌 自作スピーカーコンテスト応募作品

 
 
 
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