キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 番外編その6
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LEGOスピーカーの製作 番外編その6

 
     


写真1 LEGOスピーカー ニュージェネレーションズ

 
  1.驚愕の真実!

 とある日、オーディオ仲間の大先輩の家に遊びに行った。
すごいスケールの自作スピーカーシステムの音を楽しませてもらったのだが、私も48号機(第38報参照)を持参して行った。 48号機はエアサス・バスレフ方式の研究機で、この音を聴いてもらおうと考えたのだ。結果は・・・
「確かにソフトボールを入れた状態の音がやわらかくなる。理由はよくわからないが良いほうに変化する面白い方法だ」との評価をもらえた。
 先輩はスピーカーシステムの測定システムを構築していて、早速、周波数特性の違いを見たところ、ソフトボールの挿入により1kHz付近の落ち込みと2kHz付近のふくらみが改善されてフラットに近づくことが観察された。2dB程度の差であるが、この付近の帯域は耳の感度が最も高いので影響は大きい。
 しかし、「この48号機は低音が足りない」と言われた。私も、どうもLEGOスピーカーは低音域がもの足りないといつも感じていた。実際、周波数特性も300Hz付近からだら下がりでまるで密閉型のような特性である。そこで、インピーダンス特性を測定して見た。
・・・この測定結果を見て唖然とした。バスレフ方式ならば2つあるはずのインピーダンスピークが1つしかないのだ! これはいったいどうしたことか??
「これはおそらくエア漏れじゃないか?」
ということでマスキングテープを周囲に貼って目張りを行った。(写真1)
無残な姿になった48号機であるが、インピーダンス特性には2ピークの雰囲気が出てきた。確かにこれが理由であった・・・。
 図1(a)の48号機オリジナルのインピーダンス特性からスピーカーユニットの装着状態でのfoは140Hzで、(b)の改善特性からバスレフダクトの共振周波数は110Hz程度であり、インピーダンスピークがつぶれて2山になっていることがわかる。
 バスレフ方式ではダクトの駆動のためのエネルギーがスピーカーユニットに対して負荷となるため、ダクトの共振周波数でインピーダンスディップ(谷)になる。
改善後もきれいな2ピークではないが、これはQ値が低いためでダンプドバスレフの特性に似ている。マスキングテープでは完全なシールはできないのでこのような特性なのだろう。
バスレフ方式では大きなダクトの穴があるので、多少のエンクロージャからのエア漏れは問題ないと考えていたが、大変な間違いであった。エア漏れは共振効率を著しく低下させることがわかったのだ。
 これまでバスレフ方式であると思って製作をしてきたLEGOスピーカーがまったく見当違いだったとは・・・衝撃の事実である。だが、これが経験なのだ。もう理由がわかれば怖くない。改善するぞ〜!!
本当に測定器の威力はすばらしい。私も、もっと早く導入すべきであった。

(a) オリジナル (b) 改善特性
図1 48号機インピーダンス特性

<インピーダンス特性グラフについて>
 Dayton Audioのインピーダンスアナライザ「DATS」による測定結果。
横軸は周波数〔Hz〕、縦軸は青色がインピーダンス〔Ω〕と赤色が位相〔deg〕である。
並列共振特性を示す最低共振周波数foではインピーダンスにピークが生じ、位相は正から負に変化してゼロと交差する。高音域でインピーダンスが上昇するのはスピーカーユニットのボイスコイルインダクタンスによる特性である。

 
  2.LEGOスピーカー ニュージェネレーションズへの進化

 私のこのリポートには決定的な問題があった。それは肝心の音質評価が定性的、主観的であったことだ。「音が良くなった」「低音が出るようになった」ではどの程度かわからない。人によっては異なる評価かもしれない。これでは研究報告になっていない。

 私がLEGOでスピーカーを造っているのは、もちろん造る楽しみや聴く喜びもあるが、さまざまなスピーカー方式を実践するための手段であったのだ。

 これをご覧いただいている方にも音を実際に聴いてもらおうと、動画配信サイトに録音した音声をアップしたらどうかとも考えた。だが、この方法では聴く方の再生環境で結果が変わってしまう。そもそも配信サイトの高圧縮音声では微妙な音質の変化は聴き取れない。

 先輩に紹介された測定システムは、Dayton Audioのインピーダンスアナライザ「DATS」(Dayton Audio Test System 写真2)と周波数特性測定マイク「OmniMic」(写真3)である。これまでずっとあきらめていた自作スピーカーの特性測定を行う手段をついに手に入れた、強力な開発ツールを得たのだ。

「DATS」はパソコンにUSBで接続して使用するインピーダンスアナライザであるが、私も以前仕事でこの目的の高価な測定器を使っていたが、こんなに安価にパソコンアプリで実現できるとは良い時代になったものである。

「OmniMic」はハードウエア的には高精度なUSBマイクである。そして、アプリケーションがすこぶる使い勝手が良い。パソコンでサイン波の周波数スイープシグナルなどを再生して、このマイクでパソコンのUSBに戻すだけであっけないくらいに、実に簡単に結果が得られる。これは面白くて、面白くてやめられない。

 これまでも周波数特性の測定は何度かトライしてみたが、部屋の音響特性の影響が大きく、何を測っているのかわからない結果ばかりであった。そこで今回はリスニングルームでの測定をあきらめて寝室で測定することにしたのだ。本来、周波数特性は吸音材の貼り尽された無響室で行うものである。適度にライブにチューニングされたリスニングルームでは不向きなのだ。

 いままでわからなかったバスレフ周波数のチューニングも、デバイディングネットワークの最適化も簡単に行える。そして、その結果を提示することができるのだ。

もちろん、測定結果がすべてではなく肝心なのは実際の音であるが、客観的、定量的評価がリポートには重要なのである。

写真2 「DATS」 写真3 「OmniMic」
 
  3.48号機の特性測定

 改良するとは言え周囲にマスキングテープではみっともないので内面に貼ることにした。 フレームの上下、左右側面はこれでほぼ完全にシールできる(写真4)。問題はリアパネルの接合部だが、差込構造にすることで改善したい(写真5)。考えて見ればオリジナルの48号機はこの接合部をあえて弱くしてメンテナンスの外し易さを実現していた。これは壮大なエア漏れの原因だったのだ。残念ながらバッフルパネルのシール改善は困難である。今回はこの部分はあきらめよう。これでインピーダンス特性はどうなるだろうか?

写真4 フレーム内面シール 写真5 リアパネル構造

図2に示す48号機(改)のインピーダンス特性はきれいな2ピークとまではいかないが、つぶされた形になっている。これはバスレフの動作が機能している証拠である。図1(b)の外側テープ巻きと比較するとバスレフの共振周波数が上昇してつぶされたピークの偏りが変化していることがわかる。密閉構造の追加で内容積が減少して共振周波数が上昇したものと考えられる。

図2 改良後インピーダンス特性(ボールなし)

 客観的な測定手法を得たので、エアサス・バスレフ方式の効果を探ってみたいと思う。 私には低音増強と音質改善の効果が感じられるのだが、本当にそうなのだろうか? 方法は48号機(改)にソフトボール(スポンジボール)を出し入れして各測定を行う。また、内容積減少と吸音材効果の影響を確認するためにハードボール(硬式テニスボール)も比較測定する。

 まずはインピーダンス特性である。ボールなしの状態(図2)ではバスレフ共振周波数はディップ特性が顕著ではないが、おおよそ160Hz程度と読み取れる。

 ソフトボールの挿入(図3)では、バスレフ周波数はほぼ変化していない。

ハードボールの挿入(図4)では、若干バスレフ周波数が上昇しているのがわかる。これはつまり、同じ大きさの内容積の減少に対して、ソフトボールでは挿入によるバスレフ共振周波数への影響が少ないことを意味している。やはり、単純な内容積減少でははく、バスレフ周波数はソフトボールの有無ではあまり変わらないと考えて良いだろう。

図3 ソフトボール挿入時 図4 ハードボール挿入時

 次に周波数特性を測定した。(図5)

この結果、残念ながらソフトボールの挿入で低音域特性の改善はみられなかった。

だが、逆にボールの無い状態と特性がほぼ変化しないことから、ボール挿入による内容積減少の悪影響は無いとも言える。

ハードボールの挿入では、内容積が減少したため、若干バスレフ効果が低下している。 注目したいのは1〜2kHz付近の変化である。この中高音域の帯域は人の聴覚に最も敏感であり影響が大きい。ボール無しの状態で存在していた特性の凸凹がボールの挿入で改善されている。ソフトボールを入れたときが最もレベルが下がっているのだ。聴感上で感じた音量の変化はこのためであろう。グラフではわずかな変化に見えるが、最大で2dB程度変化しており結構大きな変化と言える。

この変化は吸音材としての効果もあるが、低音域に影響なく中高音域の特性を改善したことはソフトボールの効果として評価できるのではないだろうか?

 以上の測定結果から、エアサス・バスレフ方式におけるソフト(スポンジ)ボールの効果は、低音域の改善作用は無いが、主に中高音域の特性改善に効果がありバスレフ動作に与える共振周波数変化などの影響は無いと判断できる。つまり、悪影響はなく、音質の改善効果が有ると判断したい。

 それにしても図5の周波数特性を見ると、48号機(改)もバスレフ方式の特性にはなっていない。低音域がだら下がりで小型の密閉型エンクロージャのような特性に見える。これはバッフルパネルなどの未対策の部分からのエア漏れの影響であろう。まだまだ改善が必要である。

図5 48号機(改)周波数特性

<周波数特性グラフについて>

 Dayton Audioの周波数特性測定システム「OmniMic」による測定結果。

横軸は周波数〔Hz〕、縦軸はレスポンス〔dB〕である。測定マイクはスピーカーシステム正面軸上50cmに設置した。

このレスポンスは相対値であり、測定音量で変化するのでスピーカーシステムの能率を示しているのではない。200〜700Hz付近の凸凹特性は測定した部屋の反射音響特性の影響を受けていると考えられる。50Hz付近にもレスポンスがあるが、これは外部の騒音であり、この測定系では50dB程度(暗騒音)が測定限界であることがわかる。

 
  4.リファレンスシステムによる基礎評価

 測定手段を構築したところで、リファレンスシステムが欲しくなった。LEGOスピーカーではなく、基準とする一般的な木製エンクロージャのスピーカーシステムである。

OmniMic が優れていると言っても、部屋の音響特性の影響は受けている。もっとも、その部屋で聴くのだからこれはあたりまえとも言えるのだが、それでは正しいスピーカー特性の評価にならない。そこで、相対評価のための基準モデルが必要になったのである。

 市販スピーカーシステムは何機種か所有しているが、どれを基準にするか迷った。

結局、基準と言うかスピーカーシステムの基礎実験のためにFOSTEXのスピーカーボックス P802-E に2014年のStereo誌8月号付属のスピーカーユニット PW80 と PT20 を搭載したモデルを用意した(写真6)。じつに安価なスピーカーシステムであるが、43号機(第33報参照)とほぼ同様な構成のこのシステムは比較にはちょうど良いのである。さらに P802-E はマルチアンプ駆動を想定してデバイディングネットワークが付いておらず、外付けとなる。これは実験に都合が良いのだ。写真7のようにLEGOでネットワークボードを作成して実験の準備をした。

写真6 リファレンスシステム 写真7 ネットワークボード

 「番外編その5」で述べたように43号機のデバイディングネットワークは図6の回路に変更している。しかし、これは計算で求めた素子値を用いただけで、聴きながら確認はしたものの最適値になっているかはわからなかった。いわば造りっ放しの状態であったのだ。ネットワーク素子値は図6からL:0.33mH、C:3.3uF、R:2.2Ωである。スピーカーユニット構成の同様なリファレンスシステムにこの値を設定して周波数特性を測定してみた。また、HPF(ハイパスフィルタ)のコンデンサーは3.3uFの他に1.0uFと2.2uFも測定した。トゥイーターは逆相接続である。(図7)

図6 43号機オリジナル回路 図7 Ref周波数特性(C交換)

 低音域は150Hz付近から低下するが、このサイズのスピーカーシステムではこんなものであろう。マイクのセッティングは正面軸上50cmの位置なので現実のリスニングポイントとはかけ離れている。こんな位置で聴く人はいない。空間配置のスピーカーユニット近接では低音の充実は期待できないが、こうしないと部屋の影響が大きく出てしまうのである。 スピーカーボックス P802-Eのバスレフダクト周波数は仕様では90Hzとなっている。だからといって90Hzが壮大に出るわけではないのだ。

 このオリジナル素子設定(下段)では中高音域が盛り上がった特性であることがわかる。5kHz付近の落ち込み、10kHzからの低下も気になる。これは再調整が必要だ。

 コンデンサーを1.0uF、2.2uFに交換した周波数特性みると、コンデンサーを小さくすることで相対的に高音域のレスポンスは向上するが、中高音域はあいかわらず高く特性をコンデンサー容量の変更だけでは改善できないことがわかった。

図8 Refインピーダンス(オリジナル) 図9 ウーハーインピーダンス

 オリジナル素子定数でインピーダンス特性をDATSにより測定してみた。結果は図8の見事な2ピークのバスレフ特性となった。このバスレフ周波数は図から約100Hzと読み取ることができる。仕様では90Hzであったが実際は100Hzに上昇しているようである。

 ウーハーユニットのfoは130Hzであるが、100Hzよりも高いのでピークは右側が大きくなっている。もしもfoが100Hzのユニットならばきれいに2分割されただろう。

 3kHz付近にもピークが見られるが、これは共振特性ではなくウーハーのインピーダンスとトゥイーターのインピーダンスが合成されたカーブである。

 この特性をみると、エンクロージャP802-Eのエア漏れは無く理想的な特性であることがわかる。LEGOスピーカーでこのような特性の得られる完全シールは本当に困難であろう。

 ウーハーのみに接続してインピーダンスを測定してみたところ、設定クロスオーバーの4kHz付近ではボイスコイルのインダクタンスの影響で12Ω程度に上昇している。(図9) デバイディングネットワークの設計はウーハーユニットのインピーダンス仕様値8Ωで計算しているが、実際はこのようなインピーダンス上昇があるので補正が必要であることは以前から考えていた。もっと大きなコイルを入れる必要があるのだ。

 図10上段に示す0.33mHでのウーハーのみの周波数特性をみると、この状態でも2kHz程度が膨らんでおり10kHzあたりにピークも生じている。このピークは初め外来ノイズかと思ったが、スピーカーユニットの資料を見たところ特性であることがわかった。

おそらくコーン紙の定在波ではないかと考える。驚いたことにこのウーハーユニットの周波数特性は10kHzのレスポンスが最も大きいのである。もちろん、この帯域は歪みも大きいので減衰させたいところ。

図10 ウーハー周波数特性(L交換) 図11 Ref周波数特性(L変更C交換)

 デバイディングネットワークはスピーカーユニットの周波数特性が平坦であることが前提になっている。しかし、実際のスピーカーユニットは平坦であるはずがない。この8cmウーハーではフルレンジユニットと同程度のサイズなので特性も中高音域が大きくなってしまうのだ。以上から設計値を変更してコイルを0.8mHに大きくすることにした。

 変更後のウーハーの周波数特性(図10下段)は2kHz程度から減衰し、10kHzも-6dBは落とすことができた。

 デバイディングネットワークの最適値は計算だけでは決定できないことが良くわかった。これまでは設計変更の評価を音に頼るしかなかったので最適値の判断が極めて困難であったのだ。

 コイルを0.8mHにした状態でコンデンサーは2.7uF、3.9uF、4.7uFを接続してみた。 コイルを大きくしたことで、ウーハーの中高音域が低下したので、トゥイーターの-2dBアッテネーターである2.2Ωは外すことにした。10kHzから上の低下を防ぐためである。できればアッテネーターは入れたくはない。(図11)

この結果から3.9uF、4.7uFでは中高音域がまだ強く、2.7uFが適当であると判断した。 また、図12にウーハー、トゥイーターそれぞれの周波数特性も示したが、これが合成されることになる。この測定グラフからウーハーの-3dB周波数は約3kHz、トゥイーターの-3dB点も約3kHzと読み取れる。つまりこの定数で3kHz 6dB/oct -3dBクロスネットワークを構成したことになる。

 この検討はリファレンスシステムを用いて43号機の最適なデバイディングネットワークを探ることが目的であるが、リファレンスシステムの内容積が1.4リットルと43号機の1リットルよりも大きく、密閉性が良いためにバスレフ効率も大きい。このことを考慮してコンデンサー容量は2.2uFにさらに小さく調整したいと思う。

図12 W/T周波数特性 図13 Ref周波数特性(位相交換)

 ここでトゥイーターの位相について考えてみる。ためしにコイル0.33mH、コンデンサー3.3uF、抵抗器2.2Ωの初期設計値でトゥイーターを逆に、つまり正相(同位相)につないでみた。図13の周波数特性(下段)を見ると、一見、中高音域が低下してフラットに近づいたように見える。たしかに周波数特性だけみれば良いのであるがこれは正しくない。タイムドメインの解析を行ってみる(図14)。インパルス応答にマイナス時刻の信号が存在することが奇異に感じるかもしれないが、この解析は本来のインパルス特性ではなく、周波数レスポンスから変換したものであるからだ。

 図14下段の正相のインパルス応答はクロスオーバー周波数である3〜5kHzにおいてレベルが低下し、位相が異なるために引き算になっていることがわかる。ウーハーとトゥイーターの複雑な位相干渉のために多くの反射波が生じてしまっている。これでは良い音で聴けない。図14上段の逆相に接続すると、ウーハーとトゥイーターがきれいにつながりクロスオーバー周波数で多少レスポンスが持ち上がっているが、反射波も明らかに改善している。6msのポイントに存在する大きな反射波は往復距離2mに相当するが、測定環境背面の壁(実際は窓)からの反射波であると推測される。

 8cmウーハーと2cmトゥイーターのきわめてコンパクトな2ウェイシステムなので、特別に位相特性を調整しなくても逆相接続で問題ないことがわかる。大型の2ウェイシステムでは位相調整(またはリニアフェイズ設置)を行わないとこのような特性にはならないだろう。

図14 Refインパルス応答(位相交換)

<インパルス応答グラフについて>

 Dayton Audioの周波数特性測定システム「OmniMic」による測定結果。

横軸が時間〔ms〕、縦軸が周波数〔Hz〕、色合いがレベル〔dB〕を示している。

正しいインパルス特性は時刻0を中心にして富士山の様に美しい山型に同一色で広がるように表示される。時遅れで存在する信号群は反射波によるもの。特に時刻0での周波数によるレベル不均一は問題である。

 
  5.43号機の最適化

 改良を繰り返している43号機であるが、「番外編その5」でハイブリッドフレームによる内容積増加にて低音域改善を実現した。しかし、このコンパクトなバスレフ方式の43号機こそ新技術エアサス・バスレフ方式がふさわしいモデルなのではないだろうか。

 イタリアンデザインと評したモザイク調のカラーリングにも飽きてきた。43号機のレトロなデザインにはシンプルなブラウンフレームの方がマッチするだろう。(写真8)

ブラウンフレームの内面にマスキングテープを貼り、エア漏れを防止する。(写真9) スポンジボールは1個を挿入した。リデザインした43号機(写真10、11)の新たなカラーリングは良い感じにまとまった。

写真8 43号機のエアサス・バスレフ化 写真9 フレームのシール処理
写真10、11 リデザイン43号機

 リファレンスシステムを用いて43号機のデバイディングネットワーク定数検討を行ったが、もうひとつ最適化するパラメータがある。バスレフダクト長である。これは実際にダクト長を変えながら測定して決定する。

ダクトサイズは16mm×16mmで、長さは2cm、4cm、6cm、8cmを試してみた。2cmと8cmのインピーダンス特性を図15、図16に示す。ダクト長2cmの場合のバスレフ共振周波数は160Hz程度に見える。リファレンスシステムと比較するとインピーダンスディップが少ないが、残っているエア漏れの影響だろう。

ダクト長8cmではバスレフ共振周波数は110Hz程度とみられる。

図15 インピーダンス(ダクト長2cm) 図16 インピーダンス(ダクト長8cm)

 周波数特性(図17)ではバスレフ方式の効率が低いためかダクト長による変化が少ないが、ダクト長2cmと4cmでの差は認められる。ダクト長は長すぎても効率が低下すると考えられるので、この測定結果から最適値として6cmを選択した。

図17 43号機周波数特性(ダクト長交換)

 デバイディングネットワーク、ダクト長の最適化をした43号機のインピーダンス特性を図18に、周波数特性を図19に示す。改めて記すがダクト長は6cm、L:0.8mH、C:2.2uF、逆相接続の特性である。

 リファレンスシステムと比較するとインピーダンス特性ではバスレフ共振周波数のQ値が低いが、バスレフ動作は機能しているのでダンプドバスレフのような動作になっていると推測する。これは低音のクセの改善には良いかもしれない。

 周波数特性の低音域はリファレンスシステムほどには伸びていない。この原因はバスレフ方式の効率低下と内容積がリファレンスシステムの1.4リットルに対して約1リットルと少ないためであろう。-10dB特性では110Hz程度が低音域再生限界で、もうちょっと欲しいところである。

 5kHz付近の中高域にアバレがあるが、これはエッジ付きバッフルのレトロデザインの影響かと考えている。リファレンスシステムと同じスピーカーユニット、ほぼ同じデバイディングネットワークなのでバッフル構造の違いのためであると思う。

 インパルス応答(図20)を見ると若干クロスオーバー付近で特性の劣化が見えるが、つながりは悪くはないだろう。

 さて、肝心の音であるが、エアサス・バスレフ化して完成した43号機の音は・・・

低音域のクオリティは明らかに向上した。低音の量感が違う。中音域はクリアになり歪み感が改善した。この違いはフレームの強化による筐体輻射の低減も理由の一つと考えられる。マスキングテープの貼り付けは密閉性の改善だけでなく強度の向上効果も期待できるのである。ボールの変形作用で背圧が減少するので中音域の歪みもさらに改善していると感じる。ブラウンのエンクロージャデザインにマッチした、落ち着いた音に改良することができた。

図18 43号機インピーダンス(調整後) 図19 43号機周波数特性(調整後)
図20 43号機インパルス応答
 
  6.おわりに

 客観的な測定手段によってLEGOスピーカーの最適な調整を行うことが可能になった。今後はこの測定システムを製作に活用して性能、音質を向上して行きたい。

 完成した43号機のインピーダンス特性をみると、この特性ではバスレフ動作の効率はまだまだ低いと推測されるが、確実に低音域の特性は改善された。一昨年の辛酸をなめたスピーカー自作コンテストでの敗北は、実はバスレフ方式になっていなかったという恥かしい結論なのだが、何事も経験なのだ、それこそが成果なのである。

 次回作53号機は徹底した密閉エンクロージャのエアサス・バスレフ方式に挑戦する。

 

(2016.5.8)

     


写真12 43号機とリファレンス機

 
 
 
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