キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 第44報
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LEGOスピーカーの製作 第44報

 
     


写真1 スリム&コンパクトLEGOスピーカー54号機

 
  1.はじめに

 少し前の話題で恐縮だが、DigiFi誌19号(2015年8月31日発売)にスピーカーユニットが付属していた。8cmフルレンジユニットだがグラスファイバーコーンが特徴だ。黒いグラスファイバーはカーボンファイバーみたいで精悍な意匠である。
このスピーカーユニットから54号機を製作するのだ。(リポートの完成に1年もかかってしまいスミマセン)
ところが、組み合わせるペアのトゥイーターユニットが11月発売のDigiFi誌20号付属予定なので、とりあえずFOSTEXのトゥイーターユニットPT20Kで組み上げてしまおう。
 今回のトライアルはLEGOスピーカーの欠点の一つであるサイズのわりに内容積が少ないという問題の解決である。これは本体フレームを通常の2ピッチ16mm厚さではなく1ピッチの8mmで造るのである。8mmフレームは超コンパクトキューブスピーカー45号機(第35報)でも採用したが、大きなサイズのモデルでははじめてである
これまで、1ピッチでは強度不足どころか簡単にバラバラになってしまうので、実現不可能であったフレーム構造なのだ。今回これが実現できるのは、密閉性確保の内面マスキングテープ補強のためだ。最新の製作技術の応用である。
さらに、フニャフニャの構造強度不足には大きなスポンジボールの内部テンションで補強する計画だ。
・・・はたして上手くいくかな?

 
  2.設計

 本機はダブルウーハー&トゥイーターによるスリムな2ウェイシステムを設計した(図1)。もちろんエアサス・バスレフ方式も採用。
デザインの特徴は薄いフレーム構造を活かしたスリムなトールスタイル。トゥイーター部分を引っ込めたリニアフェイズマウント。コーナーカットのサーフェイスデザインバッフルパネルといった内容。エアサス・バスレフ方式のスポンジボールは2個挿入している。
 以前の44号機(第34報)ではトゥイーターを2本のウーハーで挟み、仮想同軸配置にしたが、今回は36号機(第26報)と同様に、ウーハーを下に2本配置した。これは見た目のバランスが良いからだ。
 バスレフダクトはスリットタイプにして下部に設ける。デバイディングネットワーク素子はコンデンサーとコイルだが、リアパネルの内面にマウントパーツを使って固定する方式である。エンクロージャの密閉性を確保するため、素子の固定穴をリアパネルに開けない工夫である。ただし、ターミナル用の穴はやむをえないので下部に付けた。
 このスリムなエンクロージャサイズでも薄型フレームの効果で約2リットルの内容積が確保できた。バスレフダクト長は7cmの設定で共振周波数は90Hzとした。
 意匠的にはフレームをブラウンのLEGOブロックで造り、ウッドボディのような効果を狙う。黒いグラスファイバーコーンの精悍なスピーカーユニットとのマッチングでスタイリッシュなモデルにまとめたい。

図1 54号機構造図

 54号機は2ウェイシステムなのでデバイディングネットワークが必要になる。
8cmフルレンジユニット2本とトゥイーター1本を搭載した2ウェイなので、1本のフルレンジユニットをアンプ直結で使って、これに低音域を入力したフルレンジユニットと高音域のトゥイーターをプラスすることを考えてみた。(図2)
しかし、この接続では明らかに中高音域が強調されてしまうし、中音域ではネットワーク素子で位相の異なった信号が合成されることになり、問題が生じると思われる。そこで、図3のオーソドックスな2本のフルレンジユニットをダブルウーハーとして使う回路を採用した。ウーハーといっても8cmフルレンジなので、むしろフルレンジ+スーパートゥイーターといった感じだろう。
 ネットワーク素子値は以前の43号機の検討結果から、計算による設計はやめてスピーカーユニットの特性と経験からコイルを0.33mHとし、コンデンザーは1.5uFを設定した。もちろん、これは製作後の実測結果で最適値に変更したい。

図2 デバイディング回路案1 図3 デバイディング回路案2

<スピーカーユニット仕様>
DigiFi 19
・ 8cmフルレンジスピーカーユニット
・ インピーダンス:8Ω
・ 出力音圧レベル:82dB/w(1m)
・ 最大入力:12W
・ マグネット:フェライト
・ 振動板:グラスファイバー
PT20K
・ 2cmソフトドームツィーター
・ インピーダンス:8Ω
・ 再生周波数帯域:3kHz〜32kHz
・ 出力音圧レベル:84dB/w(1m)
・ 最大入力:15W
・ 推奨クロスオーバー周波数:3kHz以上
・ マグネット:フェライト
<54号機 基本仕様>
・ 形式:ダブルウーハー2ウェイバスレフ方式スピーカーシステム
・ 方式:エアサス・バスレフ方式
・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
・ 使用ユニット:
     ウーハー DigiFi 19 8cmグラスファイバーコーン(フルレンジ)
     トゥイーター FOSTEX PT20K 2cmソフトドーム
・ 外形寸法:W96mm H304mm D140.8mm(ターミナル部除く)
・ 実効内容積:約2リットル
・ バスレフダクト長:7cm
・ バスレフ共振周波数:90Hz
・ デバイディングネットワーク:5kHz 6dB/oct -3dBクロスネットワーク
・ 内蔵ボール:PS-2296 2個(9cmφスポンジ)
・ システムインピーダンス:4Ω

 
  3.製作

 54号機の全部品を写真2に示す。コンパクトモデルだが、ダブルウーハーの2ウェイモデルなので部品数は多い。スポンジボールの黄色とリアパネルの緑色がカラフルだが外からはこれらは見えないのでグラスファイバーコーンのスピーカーユニットで精悍なデザインになる予定だ。
 写真3はバッフルパネル。この54号機はスリムなトールデザインなのでバッフルパネルも細長い目の字型構造。パネルというよりも枠である。トゥイーターを3.2mm引っ込めた若干のリニアフェイズデザイン。左右と上のエッジはスロープタイルブロックで反射を抑えた高音質サーフェイスデザインを採用し、エンブレムも専用のスリムタイプにした。バスレフダクトもスリムなスリットタイプである。

写真2 54号機全部品 写真3 バッフルパネル

 今回のトライアルは写真4の薄型フレームである。従来ではこの1ピッチ8mmの厚さではフニャフニャでフレームには使えなかった。密閉性向上のための内面マスキングテープが補強になり、破壊が防げるので採用したのだ。
 ブラウン色はウッド調の演出。LEGOブロックの色はロットで微妙に色合いが異なるが、それが良い感じの乱尺的風合を醸し出している。
 リアパネル(写真5)はシンプルな板形状だが、グリーンのパネルブロックが大きな板状(128mm×64mm×2枚)で密閉性を向上する。さらにフレームにはまり込む形の枠を設けた。下部にターミナルを固定する穴が2個開いている。

写真4 フレーム 写真5 リアパネル

 写真6の小さな部品がバスレフダクトである。このコの字型と底面で7cmのダクトを構成する。
 写真7はリアパネル内面に固定するデバイディングネットワーク素子用のマウントパーツである。

写真6 バスレフダクト 写真7 マウントパーツ

 今回のキーパーツ、DigiFi誌付属の8cmフルレンジユニットを写真8に示す。
黒いグラスファイバーコーンが精悍なイメージでカッコ良いスピーカーユニットだ。グラスファイバーコーンは内部損失が大きく、静かできれいな音がする印象がある。これはどうだろうか?
 トゥイーターユニットのFOSTEX PT20Kソフトドームトゥイーターを写真9に示す。43号機(第33報)から何度か使用しているStereo誌付属のトゥイーターPT20に良く似ているが、製品版のPT20Kは放熱用の磁性流体を充填しているなど性能向上したモデルの様である。

写真8 8cmフルレンジユニット 写真9 ソフトドームトゥイーター

写真10はデバイディングネットワーク素子であるコイルとコンデンサー。コイルは固定のしやすいPARC Audio製コアコイル、フィルムコンデンサーも高品位なものを選んでいる。
 写真11はその他のパーツ類。黄色い大きなスポンジボールが異彩を放っている。

写真10 ネットワーク素子 写真11 その他パーツ

 製作作業はまずはバッフルパネルにスピーカーユニットを取り付ける。
下側のウーハーユニットの取り付け(写真12、13)。M4ボルト&ダブルナットで強固に固定。スピーカーユニット付属のパッキンも用いて密閉性の向上と振動による異音を防止する。

写真12、13 ウーハー取り付け1

 上側のウーハーユニットも同様に取り付ける(写真14、15)。このバッフルパネルは枠が細くて強度が足りないが、スピーカーユニットをボルト固定することで強度が確保される。

写真14、15 ウーハー取り付け2

 トゥイーターユニットを取り付ける(写真16,17)。
3本ボルトによる三点固定は43号機からの習得でお手の物。
 3つのスピーカーユニットが装着されたバッフルパネルは隙間があまりなく、限界のスリム&コンパクトデザインであることがわかる。

写真16、17 トゥイーター取り付け

 バッフルパネルをフレームに取り付ける(写真18、19)。ここで各スピーカーユニットに配線も行っておく。
 薄型フレームは内容積確保に有利であるが、このサイズのスピーカーシステムなら8mm厚さは普通であろう。

写真18、19 フレーム取り付け

 スポンジボールの挿入とバスレフダクト取り付け、ゴム足貼り付けを行う(写真20,21)。9cm径のスポンジボールは内部のテンションでフレームの補強を行う設計であったが、大きすぎてフレームが歪んでしまった。これは誤算である。マスキングテープの補強だけでも十分であることがわかったため、このスポンジボールは後に7cm径のものに交換した。

写真20、21 スポンジボール挿入

 リアパネルの組み立てを行う(写真22、23)。
リアパネルにターミナルとネットワーク素子を載せたマウントパーツを取り付ける。ネットワーク素子の配線はコイル固定用のボルトも利用して行う。

写真22、23 リアパネル組み立て

 リアパネルに配線してフレームにフタをすれば組み立て作業は完了である(写真24)。
スピーカーユニットからの配線ケーブルは3組出ているが、ウーハーの2組はターミナル側の圧着端子で並列接続にまとめている。また、2個のスポンジボールはバスレフダクトに干渉しないように上方に入れている。
 組み立ての完了した54号機の外観を写真25、26に示す。
黒のグラスファイバーコーンの採用もあり、なかなかスタイリッシュな意匠である。
フレームのブラウンカラーもウッド調でコンパクト&スマートなグッドデザインのモデルに仕上がった。
・・・さて、音はどうだろうか?

写真24 リアパネル取り付け
写真25、26 54号機外観
 
  4.試聴と測定

 音のファーストインプレッションはワイドレンジで素晴らしいものであった(写真27)。
サイズから想像していたよりも低音域が良く伸びている。バスレフも効果的に効いており、ダクトから風が吹き出してくる。エンクロージャの密閉性は良好のようだ。
心配していた1ピッチフレームの強度不足の問題も感じない。ダブルウーハーによる音源の分散は、小口径なので影響は少ない様である。むしろ横幅が少なくエッジを落としたスリムバッフルの効果で音像はしっかりと定位する。これはコンパクトスピーカーシステムの最大のメリットである。
 8cmユニットのダブル使用なので振動板の面積的には10cmクラスである。このフルレンジスピーカーユニットのfo仕様は入手できていないが、発表された特性からすると130Hz程度と思われる。このfoの高さが10cmフルレンジユニットに対しての不利な点であるが、軽い振動板と相対的に強力な駆動系はメリットになる。やはりダブルウーハーの効果は大きいと感じる。
 中高音域もエアサス・バスレフ方式の効果で歪み感が少ない。
このグラスファイバーコーンのフルレンジユニットは大変優秀で、クリアな中高音域が楽しめた。高音域はトゥイーターをアッテネーター無しでつないだが、強調されることも無く、きれいにつながっている。
 それでは、各特性を測定してみよう。

写真27 試聴の様子

 まずはインピーダンス特性である。図4のインピーダンス特性を見ると、8Ωのフルレンジユニットがパラレル接続なのでシステムインピーダンスは4Ωであることがわかる。
 残念ながらバスレフ周波数でのインピーダンスディップは十分ではないのでエンクロージャの密閉性は完璧とはいえない。しかし、バスレフダクトがスピーカーユニットの機械的負荷になっていることは見られるので合格としたい。このあまいデップ特性は薄型フレームの変形による影響もあると考えられる。
 スピーカーユニットのエンクロージャ装着状態でのfoは130Hz程度と読み取れるので、背圧負荷によるfo上昇は抑えられているようだ。
バスレフダクトの共振周波数は100Hz程度で、設計値の90Hzとずれたようである。

図4 インピーダンス特性

 次に図5の周波数特性であるが、これは正面軸上50cmでの特性なのでリスニングポイントとは異なるので注意されたい。
 周波数特性は概ね良好である。大きなうねりも無く、中域のレスポンスは76dB程度で-10dBまでの再生周波数範囲は100Hzから20kHzといったところ。もっとも、20kHz以上はこの測定システムでは測れないので、さらに高域は伸びていると思われる。
 バスレフ周波数は先のインピーダンス測定から100Hz程度の動作だが、周波数特性上からも低域を伸ばしていることがわかる。ダブルウーハーの効果で中低域が充実している。
インパルス応答(図6)を見ると、クロスオーバー周波数である5kHz付近の乱れもなく、きれいにつながっていることがわかる。
 この54号機では調整項目として、バスレフダクト長とデバイディングネットワークのコンデンサ変更を考えていたが、現在の状態で問題は無いようである。

図5 周波数特性
図6 インパルス応答特性
 
  5.トゥイーターユニット交換

DigiFi誌20号が発売された(2015年11月30日)。予定どおりペアになるスーパートゥイーターユニット(写真28)が付属していた。

写真28 DigiFi 20付属スーパートゥイーター

<スピーカーユニット仕様>
DigiFi 20
・ 18mmソフトドームスーパートゥイーター
・ インピーダンス:8Ω
・ 再生周波数帯域:2kHz〜40kHz
・ 出力音圧レベル:88dB/w(1m)
・ 最大入力:15W
・ マグネット:ネオジウム
・ 振動板:ポリエステル 18mmφ


 取り付け寸法はPT20Kとまったく同一。振動板サイズが18mmで若干小さいのと、前面のコアユニット固定ネジが無いのが外観の違いである。
 最大の相違点はマグネットで、DigiFi 20がネオジウムマグネットでとても小さい。ネオジウムは磁力のパワーが約10倍あることを考えると、このマグネットはとても強力と言えるが、高級感は重いPT20Kの方が上。
 さすがにスーパートゥイーターと言うだけありDigiFi 20の再生帯域は40kHzまでと広い。トゥイーターは振動板が軽いが高速に駆動する必要があり、強力なマグネットを要求するのだ。
 注目すべきは音圧レベルである。4dBもDigiFi 20の方が大きい。これもネオジウムの力であろう。出力音圧レベル82dBのフルレンジユニットと上手くつながるのか心配ではある。
ハイ上がりのうるさい音にならないか?だが、とりあえずデバイディングネットワークは5kHzクロスの現状のままで、トゥイーターユニットを交換してみることにした。

写真29 スーパートゥイーター仕様54号機

 トゥイーターユニット交換の結果、外観はほとんど変わらないが、音は明るい音調に変化した。(写真29)
心配していたハイ上がりというほどではなく、ワイドレンジを感じる明確な音となった。さすがにハイレゾを明示するだけのことはある。ハイレゾ再生に本当にスーパートゥイーターが必要かは疑問ではあるが、高音帯域の伸張よりもインパルスレスポンス向上によるアタック音の改善に期待ができる。
 周波数特性を測定すると差は明らかである(図7)。赤線のDigiFi 20での高音域の特性が改善している。5kHz付近に落ち込みがあるが、これは意図したものだ。
 中低音域の変化はトゥイーターの影響ではなく、同時にスポンジボールを9cmから7cmの小径タイプに交換したためと考えられる。フレーム側板のテンションが無くなり、エンクロージャの振動モードが変化したのだろう。内面のマスキングテープだけでも強度は保たれているのでテンションは不要と判断した。(9cmだと側板が膨らんでカッコ悪いのだ)
 スーパートゥイーターを搭載した54号機はダブルウーハーの豊かな低音再生とともにハイレゾクラシックも楽しめるハイクオリティモデルに仕上がったと思う。
 まったく、書籍付録のスピーカーユニットとは思えないすばらしい性能である。

図7 周波数特性比較
 
  6.おわりに

 Stereo Sound刊 DigiFi 20号において、19号に付属していた8cmフルレンジユニットの製作例としてこの54号機を紹介していただいた。簡単な製作リポートを早々にまとめて編集部に送ったのだ。1/3ページであるがカラーページで記載してもらえたのはとてもうれしい。
 このDigiFi誌やStereo誌の付属スピーカーユニットにはいつも大変お世話になっている。 毎回、次の付属スピーカーユニットを楽しみに待っているのだ。本当に自作スピーカー愛好家の大きな味方である。今後もよろしくお願いします。

(2016.8.17)

     


写真30 LEGOスピーカー54号機 DigiFi 20号記載モデル

 
 
 
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