キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 第45報
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LEGOスピーカーの製作 第45報

 
     


写真1 ハイテンション・エンクロージャ研究機 55号機

 
  1.はじめに

 第42報で紹介した52号機は簡単LEGOスピーカーシリーズの一つで、FOSTEXの6.5cm、8cm、10cmの3種類のフルレンジユニットで3セットを製作した。このシリーズはキューブエンクロージャの前後に、スピーカーユニットを長い貫通ボルトで固定して組み立てることで製作を容易にしている。パッシブラジエーター方式を採用し、背面の音場改善のための高音域放射も特徴である。
 ところで、このシリーズの音の傾向はとても明るい軽快な音であることだ。スピーカーユニットのキャラクターとも異なる明らかな音調の共通性がある。
この理由はなんなのだろうか?・・・

写真2 簡単LEGOスピーカーシリーズ

 それは・・・4本のボルトで強く締められたエンクロージャの影響ではないかと考えている。スピーカーユニットの背圧はきわめて大きく、これによるエンクロージャの振動を押さえ込むことは、分厚いコンクリート製でもなければ困難である。したがって、エンクロージャからの輻射は意外に大きいと思うのだ。
 不要な振動を嫌ってエンクロージャの強化をするが、完全な対策が困難ならば、むしろ好ましい音で自然に鳴らしてやるのも方法である。実際にそのような指向のスピーカーシステムも市販品には多い。あえて薄い板でエンクロージャを構成して楽器のように鳴らすのである。
 ところで、弦楽器のすべては弦の強く張られたテンションで胴体が緊張状態にある。実は、この緊張状態が美しく響くためには必要なことなのではないか? おそらく、緊張状態(内部応力の大きな状態)では胴体の音速が早まり、自己共振動作が澄んだきれいな高音になると想像する。これが美しく響く楽器のメカニズムではないか? つまり、スピーカーのエンクロージャも緊張状態にすることで音質改善ができるのではないかと仮定したのである。今回の55号機はこのハイテンション・エンクロージャの実験機なのである。
 ・・・55号機の研究・開発は56号機も巻き込んで、その後半年間にもおよぶ壮大なシステムスピーカーに発展することになるとは思ってもいなかった・・・。

 
  2.設計

 本機で使用するスピーカーユニットには54号機でも採用したDigiFi 19号に付属していた8cmフルレンジユニットを再度使用する。このスピーカーユニットは黒いグラスファイバーコーンが精悍なデザインで音質も大変気に入っており、ぜひフルレンジユニットとしても使って見たかったのだ。

 グラスファイバーコーンといえば48号機でも使用したVifaのユニットを思い出すが、これも高音質なユニットであった。グラスファイバーコーンは内部損失が適度にあって良質なスピーカーユニットだと感じる。

 図1に55号機の構造図を示す。シンプルな内容積1リットル程度のミニバスレフエンクロージャで、スポンジボールを1個挿入したエアサス・バスレフ方式。54号機からつながるスリムなコーナーカットデザイン。下端のバスレフダクトが意匠の特徴である。

 ダクト長は8cmでバスレフ周波数は90Hzとした。異彩を放つのが4隅の長いM4貫通ボルトである。このボルトのリアパネル側の蝶ネジを締めることでエンクロージャに加わるテンションを調整できる。トルク管理をすることは困難だが、おおよその手加減で調整したい。構造強度の弱い薄型1ピッチフレームもこの貫通ボルトで締めつけることで強靭なエンクロージャにできるという効果もある。

 本機の研究目的は、このボルトを締めない、強く締めるといった状態変化で、
 (1)音質に変化が生じるか?
 (2)その変化はどちらの場合が最良か?
 (3)音質の変化を測定できるか?
 (4)最良状態を維持できるか?(経時変化)
 を検証することなのである。

図1 55号機構造図

<55号機 基本仕様>

・ 形式:ハイテンション・エンクロージャバスレフスピーカーシステム
・ 方式:エアサス・バスレフ方式
・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
・ 使用ユニット: DigiFi 19 8cmグラスファイバーコーンフルレンジ
・ 外形寸法:W96mm H176mm D118.4mm(ターミナル部除く)
・ 実効内容積:約1リットル
・ バスレフダクト長:8cm
・ バスレフ共振周波数:90Hz
・ 内蔵ボール:PS-2289 1個(7cmφスポンジ)
・ システムインピーダンス:8Ω

 
  3.製作

 55号機の全部品を写真3に示す。シンプルな構造なので部品点数は少ない。

写真4にバッフルパネルを示す。スリムタイプフレームなのでスピーカーユニット部分のサイドが8mmしかなく、強度が低いがスピーカーユニットの固定とフレームに取り付ければ強度は改善されるだろう。4つのコーナーにはM4ボルトを通す穴が開いている。

54号機との共通デザインだが、タイルブロックに加工してボルト穴を開けた。

バスレフポートは32×8mmで、54号機の半分のサイズ。開口にはスロープを付けて風切り音を低減する。良く見ると新採用の薄型エンブレムもスロープブロックでデザインされている。

 同様にリアパネル(写真5)にも4コーナーに穴を開け、裏面には1枚板プレートを付ける等、密閉性向上の工夫をしている。54号機とおそろいのウッド調スリムフレームにはお約束のマスキングテープを貼る(写真6)。

写真3 全部品 写真4 バッフルパネル
写真5 リアパネル 写真6 フレーム

 写真7はバスレフダクト、写真8はDigiFi 19付属の8cmフルレンジスピーカーユニットである。写真9はその他の部品であるが、配線ケーブル、ターミナル、ネジ類、エアサス・バスレフ方式のスポンジボールと今回のキーパーツ、エンクロージャにテンションを与える長い貫通ボルトには熱収縮チューブを被せている。これは振動によるボルト鳴き防止対策である。

写真7 バスレフダクト 写真8 スピーカーユニット
写真9 その他の部品

 組み立て。まずはスピーカーユニットを固定してバッフルパネルを組み立てる(写真10、11)。次にバッフルパネルにフレームを取り付ける(写真12、13)。

写真10、11 バッフルパネル組み立て
写真12,13 フレーム取り付け

 バスレフダクトを内部床面に取り付け、中にスポンジボールを入れる(写真14、15)。

リアパネルにターミナルを取り付け(写真16、17)、配線してフタをする(写真18)。

この写真ではスポンジボールは入れてあるだけだが、実際はスピーカーユニットのマグネットとバスレフダクトの間に挟み込んで固定した。これはボールが踊ってしまうのを防止するためと、バスレフダクトの制振効果が目的である。

写真14、15 内部組み立て
写真16、17 リアパネル組み立て
写真18 リアパネル取り付け

 最後に4隅の穴に貫通ボルト4本を通して組み立て完了である。(写真19)

前面には黒ワッシャ、背面には大きめのワッシャをかませて穴の隙間を塞ぐ。

裏面の蝶ナットを締めることでエンクロージャに加わるテンション力を調節することができる。ボルトの先端はそのままでは危険なので、樹脂製の袋ナットを付けた。小さな気配りが使い心地に影響するのだ。(写真20)

写真19 貫通ボルト取り付け 写真20 背面の様子

 組み立ての完了した55号機の外観は4隅のボルトがデザインのアクセントになり、ヘビーデューティーなPA機のような、なかなかカッコ良いモデルになった。大きさも手頃なコンパクトサイズで、8cmフルレンジユニット搭載スピーカーとしてまとまりが良い。

さあ、音はどうだろうか?(写真21、22)

写真21、22 55号機外観
 
  4.試聴と評価

 55号機の研究目的はテンションボルトを用いて、エンクロージャに締めつけ応力を与えて音質に変化が生じるか? を検証することである。

実際にボルトを締めつけて試聴を行ったところ、従来の私が製作してきたLEGOスピーカーとは異なる音が出てきた。何と言うか、とてもしっかりとした音なのだ。

 これまでLEGOスピーカーの音調はソフト&マイルドな音を感じていた。もちろん悪い音ではない。エンクロージャの内部損失が大きいことから不要な筐体振動が生じず、スピーカーユニットからのダイレクトな音を楽しめると考えていた。だが、どうもエンクロージャに変形が起こりアタックレスポンスは低下していたのかもしれない。

55号機の音はコンパクトな外形に似合わずにとてもパワフルでダイナミックな音である。ボルトを緩めて聴くと音調は聴き慣れたLEGOスピーカーの音になって行く。

 これはとても面白い。音質変化は確実に有る。しかし、強く締めすぎると明らかに歪み感が増してしまう。筐体振動が強くなり高音の不要放射を生じるのだと推測する。

したがって、適度な締めつけトルクが最適と言えるだろう。しかし、この変化はとても微妙だ。はたして測定結果に反映できるのだろうか?

写真23 試聴の様子

 ボルトを締めない(loose)、締める(tight)の2種類で測定を行った。

まずはインピーダンス測定結果を図2、3に示す。測定誤差とも思えるわずかな変化であるが、looseよりもtightの方がバスレフ共振動作は強まり、インピーダンスピークの山の形がつぶされたように見える。この現象を考察する。

ボルトの締めつけにより以下の変化があったのではないか?

 (1)バッフルパネル、リアパネルの密着性が高まり、より密閉したエンクロージャとなり、バスレフ効果の増加によりインピーダンスピークのダンプが生じた

 (2)フレームの変形が抑制され、バスレフダクトの駆動力が高まり、ピークダンプが増加した

 インピーダンスカーブからは中高音域の音質変化は見ることはできない。おそらく、エンクロージャの振動モードが変化しているはずであるが、この影響はインピーダンス特性への反映は少ないのであろう。この測定は連続してインピーダンスを測定しながらボルトを締め、緩めしながら行い、変化の再現性を確認している。確実に変化はあるのだ。

図2 インピーダンス(loose) 図3 インピーダンス(tight)

 周波数特性を測定した。(図4)

tightではわずかな違いではあるが、バスレフ効率が向上したためか低音域が延びている。

中高音域では赤ラインのlooseと比較して少しレスポンスが下がっている。これはエンクロージャの筐体振動が減少して不要な輻射が低下したのではないかと考えられる。

図4 周波数特性比較

 スピーカーのエンクロージャは強度が重要であるが、あえて楽器のように鳴らして音作りをするシステムも存在する。設計思想が異なるのだ。LEGOスピーカーのエンクロージャは決して強固ではない。内部損失が大きく、いやな音で鳴らないのが利点であった。

今回のハイテンション・エンクロージャは内部応力の音質に与える影響を知りたくて研究機を造ったのだが、結局強度の高いエンクロージャを造ることになった。

 ボルトの調整でこのようなエンクロージャ強度による音の違いを楽しめることも面白いが、やはり強固なエンクロージャは良い。この貫通ボルト構造で強固なエンクロージャをLEGOブロックで製作できたということが今回の最大の収穫である。

 手に乗るミニスピーカーから大型システムのダイナミックな音を出すという目標にまた一歩、近づいた気がするのだ。

 
  5.追加研究 密閉性の影響

 本来、バスレフ方式のシステムではインピーダンス特性が低音域で2山になるはずで、この谷がバスレフダクトの共振周波数となる。

ところが、55号機をはじめとした私のLEGOスピーカーでは明確な谷がインピーダンス特性に存在しない。これをずっと疑問に思っている。

おそらく、明確な谷が無いことはバスレフダクト共振のQ値が低く、バスレフ効率の低下を起こしているのだと考えられる。つまり低音の再生特性が低下しているのだ。これは解決しなければならない問題点である。インピーダンスの測定システムを構築したことでこの実験、評価が可能となった。

 このために評価システムを用意した。FOSTEXのエンクロージャキットP802-Eである。

これは、2014年のStereo誌8月号付録の8cm2ウェイスピーカーユニットを入れるハコだが、ユニットサイズが共通なのでDigiFi誌No.19とNo.20のペアでも装着できる。

 両者を比較すると、Stereo誌付録のFOSTEX製ユニットはペーパーコーンのウーハーでエッジがウレタン。トゥイーターは20mmで若干大きい。対してDigiFi誌付録のOlasonic製ユニットはグラスファイバーコーン、ゴムエッジのフルレンジ+18mmソフトドームスーパートゥイーターという差異がある。(写真24)

写真24 実験システム 写真25 実験の様子

 エンクロージャ密閉性の影響評価実験は、エンクロージャキットP802-Eの背面にトゥイーター用のターミナルが別途設けてあるので、この止めネジを緩めて隙間を開けることでエンクロージャの密閉性を意図的に下げてインピーダンス特性がどのように変化するか測定するのだ。(写真25)

 このP802-Eはマルチアンプドライブ用に独立したターミナルを有するが、使いにくいので配線を変更して上のターミナルをトゥイーターのHPF用コンデンサー接続端子に改造した。これでフルレンジユニットにトゥイーターを追加し、簡単にコンデンサーを交換できる。コンデンサーを付けなければフルレンジ単独動作である。

また、吸音材にはふわふわの綿状シートが入っていたが、スポンジボールに交換してエアサス・バスレフ化している。

 図5がオリジナルのインピーダンス特性である。明確な2山特性できちんとバスレフが動作していることがわかる。谷の周波数は100Hzなのでバスレフ共振周波数が100Hzであるとわかる。エンクロージャキットP802-Eの仕様では90Hzであるが、共振周波数はスピーカーユニットの影響も受けるので上昇したのだろう。2山の大きさが高い周波数に偏っていることからスピーカーユニットのfoが130Hz程度にあることが予想される。

なお、この特性測定はトゥイーターを接続していない。

 図6はターミナルの固定ネジを緩めてわずかな隙間を開けた状態でのインピーダンス特性である。驚いたことに特性が大きく変化した。

バスレフ共振周波数が120Hz程度に上昇し、Q値が低下して谷が浅くなり、影響を受ける周波数範囲が広がり、山のピークも低下した。強いダンプ状態に見える。

ほんのわずかな隙間でもこれだけの影響が出るとは思わなかった。本当にバスレフ方式ではエンクロージャの密閉性が重要だと認識した。

 私は以前にはバスレフ方式では大きなバスレフダクトが開口しているのだからLEGOブロックの隙間程度の影響は出ないと考えていた。これは大きな誤りであった。

 さらにターミナルを緩めて行くと(図7)バスレフ周波数がさらに上昇してユニットのfo付近になった。だが、面白いことに谷は深くなっている。これはターミナル部分が明確な開口となり、新たな第2のバスレフダクトとして機能してきたためであろう。

 ターミナル穴を完全に開口すると(図8)、共振周波数が180Hz程度のバスレフ特性となった。2箇所の開口を持つバスレフエンクロージャとしての特性である。この場合のQ値は再び上昇したため谷の深い2山特性に戻っている。

図5 オリジナル特性 図6 わずかな隙間特性
図7 隙間特性 図8 完全開口特性

 図2、3に示した55号機のインピーダンス特性は谷のないつぶれた山型であったが、これはLEGOブロックの隙間から空気が気流抵抗を伴って漏洩しているために顕著なQダンプがかかったものと推測される。もちろんバスレフ方式はQ値が高いほど優秀と言うわけではなく、あえてダンプドバスレフにする場合もある。だが、コンパクトスピーカーシステムで効率よく低音を出すには、できるだけQ値を高めたいのだ。

さて、この対策はどうしたものか?・・・

 
  6.55号機の密閉性強化

 55号機はバッフルパネルからリアパネルへの4本の貫通ボルトが特徴だが、このためバッフルパネルとリアパネルに8箇所の大穴が開いている。この穴が密閉性を大きく低下させたのだと推測できる。したがって55号機はバスレフ効率が低下しているのだ。

 この穴を埋めるには粘土などを利用できるが、痕を残さずにきれいに除去できる方法を考えたい。また、LEGOブロック間の僅かな隙間も問題であろう。接着してしまう手段もあるが、せっかくの高い内部損失が無くなるし再利用ができなくなってしまう。

そこで、型取り用のシリコン樹脂を用いることにした。(写真26)

これは加熱すると水飴状になり、冷えると硬化樹脂となる素材でとても具合が良い。これを用いてリアパネルの貫通穴4箇所とターミナル周辺、バッフルパネルの貫通穴を塞いでみた。(写真27)

写真26 シリコン樹脂 写真27 加工したリアパネル

 この効果は十分にあった。インピーダンス特性(図9)ではつぶれた1山であった特性が明確な2山特性となりバスレフ周波数がおおよそ100Hzとなっていることがわかる。まだシールは完全ではないが、かなりバスレフ特性は改善していると考えられる。不要な空気漏洩が減り、バスレフ共振のQ値が改善された状態である。

 周波数特性(図10)ではオリジナルの特性と比較して、シールを強化した状態での特性は明らかに低音域特性が改善している。バスレフ周波数の100Hzでは+3dBほど強化された。

図9 改良インピーダンス特性 図10 改良周波数特性

 もともとエンクロージャに加わる応力が音質にどのように影響するのかを研究しようとして始めた本機であったのだが、結局、エンクロージャ強度の必要性と密閉度の重要性を再認識する結果となった。特にコンパクトなエンクロージャでは内部の背圧もきわめて大きく、隙間からの空気漏洩の影響も大きくなる。私はこれをミニスピーカーではバスレフ方式の効果が少ないと考えていた。バスレフ方式とは背圧によりダクトを駆動するのだから、この圧力減少は効率に大きくかかわるのだ。まったく、まだまだ勉強が足りない。

だが、この失敗の経験と実践こそがLEGOスピーカー製作の真の目的なのである。

確実に昨日よりも進歩した私がいるのだ。これでLEGOスピーカーもやっと人並みの性能にすることができた!

 しかし、周波数特性を見ると高音域の減衰が大きい。フルレンジユニットとはいえ8cmでもこんなものだろう。10kHz以上は出ているのだから問題は無いだろうが、ハイレゾ聴くにはちょっと物足りないかな?・・・

写真28 55号機と評価実験機
 
  7.スーパートゥイーターの製作

 高音域の強化にはトゥイーターが欲しい。55号機に使用した8cmフルレンジユニットはDigiFi 19号に付属していたものだが、これにはペアになるスーパートゥイーターがある。

54号機でも使用したDigiFi 20号に付属しているトゥイーターユニットである。

このスーパートゥイーターは面白いことにコアユニットを外すことができる(写真29)。

小さなコアユニットを専用のLEGOマウントに装着して独立型の55号機オプショントゥイーターを造ってみよう。

 

 オプショントゥイーターの部品を写真30に示す。これは図面を描かずにLEGOブロックを自由に組み合わせて現物合わせで製作した。このようなフリーの製作も楽しいものである。

 ショートホーンをデザインしたフロントベゼル(写真31)、55号機と合わせたブラウンのフレーム(写真32)、配線部品(写真33)である。このスピーカーターミナルは接続用ではなく、HPFのコンデンサー用で交換を容易にするため。接続ケーブルは直結で、本体とはU型端子でターミナルに接続する。

写真29 トゥイーターコアユニット 写真30 オプショントゥイーター部品
写真31 フロントベゼル 写真32 トゥイーターフレーム
写真33 配線部品 写真34 配線作業

 配線作業は写真34に示すようにトゥイーターコアユニットにコンデンサーをかえしてU型端子をつなぐ。U型端子による接続ではセオリーの逆相接続、または同相接続を簡単に切り替えできるメリットがある。

 トゥイーターコアユニットの固定はベゼルとフレームで挟むだけである(写真35、36)。フルレンジユニットなどと比べて背面の空間も必要ないし、固定強度も問題にならないので簡単だ。ただし、55号機本体に乗せるので振動対策は必要。小さなゴム足で振動フローティングしている(写真37)。また、写真のウレタン片を挟んでいるのは両面テープで貼り付けたターミナルのはがれ防止である。

 組み立ての完了したオプショントゥイーターを写真38に示す。ミニサイズでカワイイできになった。

写真35、36 トゥイーターコアユニット取り付け
写真37 裏面の様子 写真38 オプショントゥイーター外観
 
  8.HPFの検討

 オプショントゥイーターの追加にあたって、最適なコンデンサー容量を検討する必要がある。事前に前述したFOSTEXのエンクロージャキットに55号機と同じスピーカーユニットを収めた実験機を使って、コンデンサー容量を変えながら周波数特性を測定してみた。

裏面上側のスピーカーターミナルをコンデンサー接続用に改造してあるので実験は容易なのだ。使用したコンデンサー容量はおおよその計算から0.68、1.0、1.5μFである。

この結果を図11に示す。Offはトゥイーターの無い状態、1.5、1.0μFではクロス付近の落ち込みは少ないが、ハイ上がりが気になる。0.68μFではハイ上がりが抑えられてちょうど良いと感じる。5kHz付近の落ち込みは落ち着いた音調のスパイスである。フルレンジユニットの高音域を落とさないコンデンサー接続のみの簡易デバイディングネットワークなのでハイ上がりになりやすいのだ。

トゥイーターがOffの状態と比較して10kHz以上の高音域と5kHzあたりの中高音域が改善されているのが良くわかる。

 さらに、タイムドメインのスペクトラムも測定してみた。逆相接続で低音域、高音域でほぼきれいにつながっていることがわかる。

 以上からコンデンザー容量は0.68μFを選択した。-6dB/octのシンプルなHPFである。

このスーパートゥイーターは能率が88dBと高く、フルレンジユニットと6dBも異なるのでクロス周波数を高くしてつなげる算段である。

 スペクトラム図12は一般的ではなく、見方がわかりにくいと思うので改めて説明すると、横軸が時間でインパルス応答の0から20msを示す。マイナス時間が存在するのは周波数応答からの計算シミュレーションによるため。

縦軸は周波数で50Hz〜20kHzである。色彩は相対的な音圧レスポンスを表しており、赤色の方が音圧は大きい。

 注目点はクロスオーバー周波数付近の5kHzあたりであり、この部分が均一に赤色であることが望ましい。つながりが良くないと色彩が寒色に変化し、時間軸上の位置もずれる。

 周波数が下がると1波に必要な時間分布が伸びて行く(1kHzで1ms、100Hzで10ms)ので、この図はきれいな山型を描くのが正しい。いびつなのは周波数特性の乱れであり、100Hz以下の色彩が暗いのはレスポンスが無いため。

6ms付近に明らかな反射波が見られるが、これは測定マイク後方の壁からの反射(往復で約2m)である。

図11 実験機周波数特性 図12 実験機インパルス応答
 
  9.追加トゥイーターシステムの試聴と評価

 完成したオプショントゥイーターシステムを55号機本体に乗せてみる。

55号機が一段とサイバーなデザインになった。(写真39、40)

 一聴したところ、明らかな高音域改善効果が得られた。このキレ味、鮮度感。もう元にはもどれない・・・。やっぱりトゥイーターは必要なのだなと感じる。

写真39、40 55号機+トゥイーターシステム外観

 実は今回のオプショントゥイーター製作はある実験が目的であった。それはトゥイーター設置位置の影響の確認である。だから独立型の別ケースにしたのだ。

以前、私のリポートでもトゥイーターの接続位相の問題を検討したことがあったが、この検証をしたかったのだ。

図13の周波数特性はトゥイーター設置位置を前後に変えながら特性を測定したものだ。 結果は驚くほど変化した。これは逆相接続で、5kHz付近の特性変化で上から-1、0、1、2cmの特性で、トゥイーター前面の後退位置を示している。すなわち0cmがツライチであるが、組み立て写真を見るとわかるように実際のトゥイーターコアユニットはベゼルのショートホーンのため2cmほど後ろにある。つまりトゥイーターユニットで見れば55号機本体表面から後ろに1cm〜4cmにおける設置特性である。

 この結果を見ると、明らかに逆接続では、クロス周波数付近で特性が落ち込んでいる。-1cm設置が最も良いが、トゥイーターが前方に突き出てしまい見た目がよろしくない。

 この測定はマイク位置がメインユニットの軸上50cmなので実際のリスニングポジションとは異なるが、こんなにもトゥイーターの設置位置で周波数特性が変化するものとは予想外でとても勉強になった。これではデバイディングネットワーク定数をいくら精密に設計しても設置位置の影響を考慮しないとまったくの無意味だ。

まあ、5kHzでは逆位相がたったの3.4cmなので、このシビアさはアタリマエといえばそうなのだが、目の当たりにすると驚くものだ。本当に測定器の威力はすばらしい。恥ずかしながら、とても私の聴力だけでは良し悪しは判断できない。

 逆相接続ではうまくいかないので同相接続にして同様の周波数測定を行った。この結果、図14に示すようにトゥイーター設置位置は同相接続で本体ツライチから2cm後退したポジョンが良好と判断した。

 この状態ではトゥイーターOffの場合と比較して15kHz以上でレスポンスに向上が得られ、5〜8kHzでは落ち込みが改善してフラットに近づいている。10kHz付近にトゥイーターの特性と関係なくレスポンスが見えるが、これはフルレンジユニットの分割振動による特性ピークであり、できればLPFで落としたいものだが今回のような簡易デバイディングネットワークではやむを得ないものだ。

 タイムドメイン解析(図15)でもスペクトラムのつながりが良好であることがわかる。

なお、参考につながりの悪い例として逆相接続の設置2cmでの特性を図16に示す。

図13 トゥイーター位置によるf特性 図14 オプション付55号機f特性
図15 最終55号機インパルス応答 図16 つながりの悪い例
 
  10.おわりに

 オプショントゥイーターを追加した55号機の音は高音域のクリアネスが改善され、満足のゆくものとなった。先にも述べたが、やはりトゥイーターの効果はすばらしい。アタック音のレスポンスにも寄与するので低音の音質までもが改善するのだ。

 これでやっと55号機の完成・・・だがしかし?

(2017.1.9)

     


写真41 55号機オプショントゥイーター追加仕様

 
 
 
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