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LEGO SPEAKER 第47報
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LEGOスピーカーの製作 第47報

 
     


写真1 デュアルユニットバックロードホーン57号機

 
  1.57号機構想 スタート!

 今年も(2016年時点)Stereo誌8月号にスピーカーユニットが付属してきた。今回はメタルコーンの8cmフルレンジユニットである。このスピーカーユニットFOSTEX M800(写真2)はFOSTEX社初のアルミコーンユニットなのだそうだ。

 8cmフルレンジを使用したモデルはこれまで何台も製作してきた。

ただ、そのほとんどが実験的な目的のモデルで、音が良いと言えるもの、つまり成功したモデルは少ない。

成功モデルの代表はバックロードホーン方式の38号機(写真3)である。

現在はDIY AUDIOのSA/F80AMGを装着しているが、これをベースに57号機は製作を進めたいと思う。これは38号機改なのだが、新たな試みを取り入れているのでニューモデル57号機としての設計である。

 本機は改造が自由自在なLEGOスピーカーのメリットを活かしたリビルド作品なのだ。

写真2 FOSTEX M800 写真3 バックロードホーン38号機
 
  2.設計思想

 8cmフルレンジユニットでスピーカーシステムを造る場合、ポイントは低音再生だと思う。できるだけコンパクトに造りたいが、低音が犠牲になる。

低音再生に最も有利な方式はバックロードホーンではないかと考えている。正直、ここのところバスレフ方式ばかり造っていたので飽きてきたこともある。

 図1に構造図を示す。38号機から何を変えるかと言うと、スピーカーユニットをパラレル駆動の2本にするのだ。これでホーンの駆動力が増して低音再生により有利になると考えている。

使用する8cmフルレンジユニット M800の仕様を見ると、Qoが0.75とコーンの質量に対してマグネットがやや弱いようで、どちらかというとバックロードホーンには不向きなスピーカーユニットかもしれない。そこで、デュアル駆動を採用したのである。

 小さな38号機のエンクロージャに2本のユニットを収めるために1本はトップパネルに上向きに搭載する。これは高音域を上方に放射して音場再生に好都合な配置である。前方に放射される高音域が相対的に低下することも狙っている。

さらに、エアサス・バスレフのスポンジボールを吸音材として試してみたい。本来、バックロードホーンでは吸音材は不要と言われているが、どうなるだろうか?

バックキャビティを少し大きくしたので、音道長が6cmほど短くなったが、図2の音道図に示すように、それでも1mは確保した。

図1 57号機構造図 図2 音道図

<FOSTEX M800 仕様>

・8cmアルミコーンフルレンジユニット
・インピーダンス:8Ω
・最低共振周波数:105Hz
・再生周波数帯域:fo〜32kHz
・出力音圧レベル:82.5dB/w(1m)
・入力(NOM):5W
・mo:2.5g
・Qo:0.75
・実効振動板半径:3.0cm
・マグネット質量:103g
・総質量:280g


<57号機 基本仕様>

・ 形式:デュアルユニット・コンパクトスピーカーシステム
・ 方式:バックロードホーン方式
・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
・ エンクロージャ方式:5段フォールディングCW水平ホーンタイプ
・ 使用ユニット:FOSTEX M800 8cmアルミコーンフルレンジ ×2
・ 外形寸法:W128mm H288mm D234mm
・ ホーン音道長:約1,040mm
・ スロート断面積:15.4cm2
・ ホーン開口面積:84.5cm2(開口面積比 5.5倍)
・ バックキャビティ容積:約0.6リットル
・ システムインピーダンス:4Ω

 
  3.製作の様子

 写真4は新たに作成したトップパネルである。ここにフルレンジユニットを装着する。マウント方向が90度異なるが、LEGOブロックのポッチを取り除くなどの加工をしている。こういった複雑な形状の部品作成もLEGOの自由度があるから実現できるのだ。

 57号機の全部品を写真5に示す。
フレームを前後に分割したのは上向きに取り付けるスピーカーユニットの固定作業のためである。元となる38号機を一旦バラして、改造して再度組み立てたが、もちろん部品の劣化などはなく、LEGOスピーカーの新機種としてよみがえる。まあ、こうしてリサイクルしないと高価なLEGOブロックではコストパフォーマンスを上げられないのだが・・・。

写真4 トップパネル部分 写真5 全部品

 写真6はバッフルパネルである。バックロードホーンの場合、開口が大きいのでパネルと言うよりは枠に近い。57号機のエンブレムは新作。裏面には音道を構成するガイドパーツが付けてある。

 写真7、8は前方フレームである。先のトップパネルによるバックキャビティ部分と折り返し音道、ホーン開口部がある。

このバックキャビティ部分には内面にマスキングテープを貼った。密閉性の改善である。LEGOスピーカーも進化しているのだ。
仕切りの多い構造なので、強度は極めて大きい。

写真6 バッフルパネル
写真7 前方フレーム 写真8 前方フレーム上面

 後方フレームを写真9に示す。

音道の広がりをなめらかにするために仕切りの厚みを調整するが、かなりの容積を仕切りが占めていることがわかる。バックロードホーンは容積サイズの利用効率が良くない。

 リアパネル(写真10)はターミナル付きのただの板だが、音道用のパーツが内面に付けてある。

写真9 後方フレーム 写真10 リアパネル

 インナーパネル(写真11)はバックキャビティのフタであり、エンクロージャ内部に隠れるようになっている。

 その他の部品としては配線ケーブルとネジ類、吸音材のスポンジボールを用意した(写真12)。

写真11 インナーパネル 写真12 その他の部品

 今回はスピーカーユニットにガスケットも付けた(写真13)。密閉性の向上のために0.5mmのゴムシールをフランジ裏に貼ったのだ。

写真13 ガスケット処理

 組み立てを行う。まずはバッフルパネルにスピーカーユニットを取り付ける(写真14、15)。38号機に付いていたスピーカーユニットと今回のM800は同一寸法なので交換は容易である。

 マグネットがずっと小さいのでバックキャビティの内容積的には有利だが、駆動力は低下するものと思われる。だからこそデュアルユニットシステムなのだ。

写真14、15 バッフルパネル組み立て

 次に前方のフレームにスピーカーユニットを取り付ける(写真16、17)。この方向(LEGOブロックの側面)の取り付けでは、ボルトを締めすぎるとブロックの歪みで隙間が開いてくるので力加減が難しい。ダブルナットでの緩み防止は欠かせない。

 バッフルパネルのスピーカーユニット固定ボルトとボルトどうしが干渉しないように長さを調整している。

写真16、17 前方フレーム組み立て

 リアパネルを組み立てる(写真18、19)。と言ってもケーブルを配線するだけである。このケーブルは2本のスピーカーユニットを並列に接続するように分岐配線になっている。

写真18、19 リアパネル組み立て

 インナーパネルを後方フレームに取り付ける(写真20、21)。
完全に内部に隠れてしまうのでデザインを損なわない。こういった構造はLEGOブロックではお得意なのである。

写真20、21 インナーパネル取り付け

 後方フレームにリアパネルを取り付ける(写真22、23)。

配線ケーブルはスロートから引き出すが、音道内の気流抵抗にならないように注意する必要がある。リアパネルのターミナルを最初に配線するのはスロート内のケーブルたるみを嫌ったためである。

 なお、本機では38号機に付けていたインシュレーターをやめて薄いゴム足にした。このサイズのスピーカーシステムではゴム足の方が安定する。

写真22、23 リアパネル取り付け

 前後のフレームを組み合わせて本体部を組み立てる(写真24、25)。

ここで上方のスピーカーユニットに接続をするため、接続端子は前方に向けてある。

写真24、25 前後フレーム組み合わせ

 バックキャビティにスポンジボールを挿入してからバッフルパネルを取り付ける。

写真26に示すようにバックキャビティの中はスポンジボールでいっぱいである。この効果は試聴で確認したい。

写真26 バッフルパネル取り付け

 組み立ての完了した57号機を写真27、28に示す。

このバックロードホーンシステムは調整箇所が無い。組み立てれば完成である。

イエローのボディにブラックのバッフルパネルが鮮烈なデザインだ。シンプルなホワイトメタルコーンのスピーカーユニットも精悍で良くデザインにマッチしたと思う。

トップパネルのデュアルユニットもきれいに収まった(写真29)。

 さあ、音はどうだろうか?

写真27、28 57号機外観
写真29 トップパネル部分
 
  4.特性の評価

 特性測定結果から報告する。まずは図3に示すインピーダンス特性である。

8Ωユニットの2本並列接続なのでシステムインピーダンスは4Ωであることがわかる。システムのfoは90Hz程度に読み取れるが、これはスピーカーユニット単体のfoである105Hzよりも下がっている。この理由はバックロードホーンではホーン内の空気の質量が振動系質量に加算されるため、foが低下したものと推測される。また、このことから適切なホーンロードがかかっているものと判断する。

 良く見るとfoではダンプされたように山がつぶれており、150、250、400Hz付近に共振点が観察される。このような多くの共振特性を持つことは複雑な筐体構造となるバックロードホーン特有の特性である。しかし、明確な共振特性ではない。この理由はスポンジボール吸音材の影響もあると考えられるが、LEGOスピーカー共通の特性であり、ブロック間の多くの隙間からのエア漏れや、柔軟な構造体となり圧力変形が生じることによるダンピング効果であると思われる。

 このように明確な共振特性を持たないことが音質的に良いことなのかはわからない。低音増強効率の低下は生じるのかもしれないが、音質に与えるクセの低減は期待できる。

図3 インピーダンス特性

 周波数特性を図4に示す。下段は比較のための8cmウーハーユニット2発によるコンパクトバスレフモデル54号機(第44報 参照)の特性である。

低音域で大きなうねりがあるが、160Hz付近の膨らみ、300Hz付近の落ち込みはバックロードホーン特有の低音干渉であり、約1mのホーンでは170Hzで同相、340Hzで逆相になって放射されるためこのような特性になったと推測される。

100Hz以下ではレスポンスは大きく低下するが、もともとバックロードホーンでは低音限界の伸張は期待できないので8cmフルレンジユニットではこんなものだろう。

期待はやはり160Hz付近の増強であり、これが低音域のダイナミックな個性になると思う。

フルレンジユニットなので2ウェイの54号機に比べて高音域のアバレも大きい。

5kHz以上からゆるやかに下降するが、13kHz付近にユニット振動板の分割振動による増強が見られる。これもこのスピーカーシステムの音質を決定する大きな要素である。

図4 周波数特性

 インパルス応答(図5)は特徴的である。

上段の57号機では54号機と比べて低音域のパワー感が大きい。時遅れで10ms程度まで低音が出てくる様子はバックロードホーン方式の効果であり、いわゆる洞窟音の原因であるが、低音の充実には期待できる。ただし、明らかな300Hz付近の逆相影響によるレスポンス低下も見られる。

フルレンジユニットの利点で中高音域では位相干渉の影響が無く、素直な特性である。

 57号機は室内反射による反射波がきわめて多いが、これは上方装着ユニットの効果によるもので、豊かな音場感を狙ったものである。

こうして見ると57号機の特性はかなり個性的であり、それだけに面白い独特の音がするものと期待される。

図5 インパルス応答
 
  5.音質評価

 音を聴いてみよう。周波数特性にもあるように重低音はあまり感じられない。

しかし、このサイズとしては低音域が充実している。アタックで聴かせる低音である。

ジャズやボーカル音楽に適していると思う。

 メタルコーンの8cmフルレンジユニットは高音域も優秀でトゥイーターが無くても不満は感じられない。フルレンジユニットを活かすエンクロージャとしてバックロードホーンは最適だと感じる。

 上方ユニットによる音場再生は、特に室内楽などで効果的だ。リスニングルームいっぱいに音楽が広がる。音像定位には影響がありそうだが、音楽を楽しむにはメリットとして感じられる。なによりダブルユニットの低音域は期待どおりである。

 
  6.おわりに

 ベースの38号機でも成功していたので、この筐体には期待していたが、改良モデルとして57号機は完成することができた。

リスニングに活躍するコンパクトモデルが、また誕生したのだ。

(2017.5.7)

     


写真30 リビルド作品シリーズ第1弾 57号機

 
 
 
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