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LEGO SPEAKER 第48報
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LEGOスピーカーの製作 第48報

 
     


写真1 フロアタイプ密閉型スピーカー 58号機

 
  1. LEGOスピーカー史上最大のモデルを造る!

 ずっとLEGOスピーカーが最も苦手なのは密閉型であると思っていた。
隙間だらけのLEGOブロックでは密閉は不可能であるし、強大なウーハーの背圧でエンクロージャがタイコの様に鳴ってしまうだろう。

しかし、いろいろと経験してきてわかったのは、実は最も密閉性が必要なのはバスレフ方式なのであった。

密閉型では完全密閉である必要はない。実際、過去に製作した25号機(第17報 参照)でも密閉型特有の弾むような低音が出ている。エンクロージャの振動は低音の筐体輻射に積極的に利用することも可能だ。あえて薄いハコを楽器のように鳴らすスピーカーシステムもあるのだ。LEGOのハコは内部損失が大きいので、クセの無いきれいな音で鳴ることだろう。

 と言う訳で今回の58号機は密閉型でいこう。
LEGOスピーカー最大のフロア型スピーカーシステムの開発構想スタートである。

 
  2.検討

 58号機は大型の密閉型システムに挑戦したい。
大型と言ってもLEGOで造るのだから限度があるが、私の作品としては大型と言うことである。
ここで、これまでの大型モデルを振り返ってみたい。

 

(1)2号機 バックロードホーン

 スワンタイプのバックロードホーンを造りたくてスタートしたLEGOスピーカー造りであったが、約4000個のLEGOブロックを投じて製作した本機でも内容積が足りず失敗。
番外編その3で述べたように、現在はタンデムドライブ化してホーンウーハーシステムとなっているが音は良くない。

(2)4号機 高さ1.7mの共鳴管システム

 しばらくはメインスピーカーであったが強度が足りず、地震で崩壊。大量のブロックは26号機の素材となった。

(3)異形のスパイラルホーン10号機

 10号機記念と言うことで大量のプレートブロックで製作した複雑なサザエ形状のスパイラルホーンであったが、あまりにもデザインが悪いのと、強度不足で音が悪く、すぐに解体。

(4)25号機 NS-10Mコピーモデル

オリジナルと同じ18cmウーハーの内容積10リットル密閉型。
これは音も良く現在も使用中。ただしオリジナリティは少ない。LEGOスピーカーでは10リットルでも大型モデルである。

(5)31号機 コアキシャルユニット搭載バスレフスピーカー

 内容積約10リットルのバスレフ方式だが、ただのハコでは面白くないので番外編その4で記したように小型化してパッシブラジエーター方式に改造された。

 

 こうしてみると大型システムでは、これまであまりうまくいっていない。LEGOブロックでは大きなエンクロージャは強度の低下が問題なのだ。それになにより大量のLEGOブロックの入手がコスト的にもきわめて困難なのである。
さて、今回はどうしたものか?・・・結論は2号機(写真2)を解体することにした。これで十分な量のLEGOブロックを確保できる。
 初代2号機は2007年9月製作の大作で思い出の作品ではある。しかし、私の製作テクニックの向上した現在では音質における性能は満たしていない。10年も前に購入したブロック群であるが、素材としてはまったく問題なくすべて新作品にリサイクル使用できる。なんというエコ性能であろう。すばらしい。

写真2 2号機改
 
  3.設計

 まずは外観図を描いてみた。高さ約90cmのトールデザインによる大型フロアタイプモデルである。総使用ブロック数5000個を超える、まさに最大モデルとなる予定なのだ。デザインの特徴は下側で細くなるテーパー型エンクロージャだ。これで10リットル以上の内容積がある。このテーパー形状はエンクロージャの強度の向上、不要な内部共振の回避、そして使用ブロック数の抑制といった目的がある。

 スピーカーユニットは15cmウーハーと25mmトゥイーターを使用した2ウェイシステム。デザイン的にウーハーが上に設置されているのも特徴で、トゥイーターを下に配置することで椅子に座った状態での耳の高さに合わせるという狙いなのだ。

図1 58号機外観図

 本機は大型のモデルなので5つのモジュールに分割して、正確に図面を起こして製作にあたった。以下、図は左が正面図、右上が上部断面図、右下が下部断面図である。

 図2はウーハーモジュール。15cmウーハーユニットを収めた実効内容積が約2.8リットルのハコで、独立したウーハー用ターミナルとデバイディングネットワークのコイル素子を内部に固定している。このコイル素子はコア入りなのでウーハーユニットの強力なマグネットの漏洩磁場でコアが磁気飽和しないように、できるだけ離してモジュール内部のトップに配している。

ウーハーモジュールのトップパネルはタイルブロックで仕上げ、周囲をスロープブロックでデザインする。

この図からもわかるように本機はブロックを上に積み上げていくバーティカルタイプの組み立て方法を用いている。今回のように背の高いモデルでは定番の構造である。

密閉型なのでブロック間の隙間を塞ぐため、内面にマスキングテープを貼って処理する。

図2 ウーハーモジュール 図3 トゥイーターモジュール

 トゥイーターモジュールはテーパーデザインの2段を組み合わせたハコであり、内容積は約3.1リットルある(図3)。

トゥイーターユニットは上段に取り付け、やはり独立した専用のターミナルを背面に付ける。ウーハーモジュールのターミナル間にデバイディングネットワーク用の素子、コンデンサーと抵抗器を接続することで配線する構造である。
細かなことだが、ウーハーモジュールのターミナルとはターミナルの極性を入れ替えている。これは逆位相接続のためである。
下段の前面には58号機のエンブレムを付ける。

図4 ボトムモジュールA 図5 ボトムモジュールB

 フロアタイプのスタンド構造となるボトムモジュールは3つに分かれている。それぞれが2段のテーパー構造となっており、下段では内容積が減ってゆく。

 ボトムモジュールAは高さ172.8mm、内容積2.4リットル。内部には吸音材のスポンジボールを挿入する(図4)。

 ボトムモジュールBも同様に高さ172.8mmで、内容積1.6リットル。ここにもスポンジボールを挿入する(図5)。

 ボトムモジュールCはボトムパネル込みで高さ182.4mm、内容積は0.9リットル。内部が狭いのでこのボトムモジュールCにはスポンジボールは入れられない(図6)。

各モジュールのリア側には図にあるようにパネル構造があり、強度を稼いでいる。また、ボトムモジュールCの背面には転倒防止ウエイトを引っ掛けるフックがある。

 このエンクロージャのトータル内容積は約10.8リットルで、高さは867mmとなる。

図6 ボトムモジュールC

 スピーカーユニットを選択する。

まずはウーハーであるが、これは15cmウーハーとしたい。低音再生にはできるだけ大きなサイズが有利であるが、重くなり、固定も困難になる。
バッフルパネルであるスピーカーシステムの横幅を192mmとしたので、この寸法に収まるちょうど良いサイズが15cmウーハーなのである。

 市販の15cmウーハーをいろいろと物色して迷ったが、結局、SB Acoustics の SB15NAC30-8 メタルコーンウーハー(写真3)に決めた。

放射状に成型パターンの入ったアルミニウムコーンが特徴的なウーハーユニットである。
メタルコーンはクセもあるが、強力な駆動力が期待できる。メタルコーンの重さはfoを35.5Hzと低下させる効果もあるのだ。なによりX-max(最大振幅)が10mmもあり、密閉型のエアサスペンション方式(内部の空気をバネに利用する)にマッチしたハイコンプライアンス(ふらふらな)ユニットとして最適と判断した。
意匠もなかなかカッコ良いモデルである。

写真3 SB15NAC30-8 写真4 SB26STCN-C000-4

 トゥイーターユニットには私の好みのハイトランジェントなリボントゥイーターとしたいところであるが、コーンの重いウーハーにはスピード的に合わないだろう。ここはオーソドックスにソフトドームトゥイーターにする。

同じ SB Acoustics の25mmソフトドームトゥイーターSB26STCN-C000-4 (写真4)を選択した。ファブリック素材を採用したソフトドームで、マグネットはネオジウム。高音域は34kHzまで伸びている。foは960Hzと低く、クロス周波数を低めに使いたいメタルコーンウーハーとの相性も良い。

デザイン的にはプラスチックフレームで派手さはないが、同一メーカーにしたので音調もマッチングするだろう。

 

<ウーハーユニットの主な仕様>

・形式:15cmウーハー
・振動板材質:アルミニウムコーン
・エッジ材質:ゴム
・フレーム材質:アルミニウム
・マグネット:フェライト
・インピーダンス:8Ω
・出力音圧レベル:85.5dB
・最低共振周波数:35.5Hz
・再生周波数帯域:35.5〜2,500Hz
・定格入力:50W
・Qts:0.37
・X-max:10mm
・重量:1,460g

 

<トゥイーターユニットの主な仕様>

・形式:25mmソフトドーム
・振動板材質:ファブリックソフトドーム
・フレーム材質:プラスチック
・マグネット:ネオジウム(防磁型)
・インピーダンス:4Ω
・出力音圧レベル:92.5dB
・最低共振周波数:960Hz
・再生周波数帯域:960〜34,000Hz
・定格入力:120W
・重量:95g

 

 デバイディングネットワークの設計を行い、図7に回路図を示す。

ウーハーユニットの能率は85.5dBでトゥイーターユニットの能率が92.5dBなので、この7dBの差を調整しなければならない。-6dBのアッテネーターとして簡易式に3.9Ωの抵抗器R1をトゥイーターユニットにシリーズに入れる。

 ウーハーユニットの再生帯域が2.5kHzでトゥイーターユニットは1kHz程度から使えるので、クロス周波数を2kHzに設定した。ドーム型トゥイーターは比較的低音域まで使えるので使いやすい。
回路形式はシンプルな6dB/octネットワークである。ウーハーユニットのインピーダンス上昇を考慮してコイルL1は0.8mHを選択した。いくら厳密に計算しても、実際に回路素子の数値が存在しなければ意味は無いのだ。

 トゥイーターユニットはシリーズ抵抗を加えて8Ωとして計算し、少しクロス周波数を高めてコンデンサーC1を8.2μFとした。これで2.4kHzになる予定である。

クロス周波数を高めたのは2kHz付近が干渉して暴れるとうるさく感じるからである。これまでの経験から、トゥイーター側が強く出る傾向が多いのと、ウーハー側に入れたコイルの挿入損失、能率差の補正残1dBを考慮すると、クロス周波数をさらに高めたくなる。
そこで、コンデンサーは6.8μFと4.7μFの3種類を用意して、特性測定と試聴により決定したい。本機は裏面のターミナル間にコンデンサーを接続する方式なので、変更は実に容易である。

図7 デバイディングネットワーク

<58号機 基本仕様>

・形式:フロアタイプスピーカーシステム
・方式:密閉型
・組み立て方法:バーティカルタイプ(垂直組み立て)
・使用ユニット:

ウーハー SB Acoustics SB15NAC30-8 15cmメタルコーン
トゥイーター SB Acoustics SB26STCN-C000-4 25mmソフトドーム

・外形寸法:W192mm H867mm D160mm(ターミナル部除く)
・実効内容積:約10.8リットル 
・デバイディングネットワーク:2kHz 6dB/oct -3dBクロスネットワーク
・内蔵ボール:PS-2296 10個(9cmφスポンジ)
・システムインピーダンス:8Ω

 
  4.製作

 準備した58号機の部品を写真5に示す。

本機は大型フロアタイプで、先の図に示したように5つのモジュールに分かれている。1台分で作業テーブルがいっぱいになっているが、シンプルなハコ構造なので意外と部品点数は少ない。吸音材のスポンジボールは写真には2個しかないが、実際は1台に10個使用している。

 全体が黒色ブロックだと面白くないので、アクセントとしてライトオレンジのラインをテーパーエッジに入れてみた。

写真5 全部品(1台分)

  写真6、7は最上段のウーハーモジュールのケースとトップパネルである。

フロントのバッフルパネルは大穴が開いているので強度不足になる。そこで、バッフルパネル部分は3.2mm厚さのプレートブロックで構成して強度を得ている。

ウーハーユニットの固定穴位置を正確に調整することは困難なので、穴ではなくスリットとしてワッシャを用いてM4ボルトで固定する。内面にはマスキングテープを丁寧に貼り、空気漏れを防いでいる。トップパネルや各モジュール間の接合部には目張りができないが、ガスケットは用いていない。密閉型ではそこまでの密閉性は不要と判断した。

 トップパネルはタイルブロックを貼った、ただの板であるが、プレートブロックの4層構造としてずしりと重く、極めて高い曲げ・耐振強度を確保している。

写真6 ウーハーケース 写真7 トップパネル

 写真8はトゥイーターモジュールである。ウーハーモジュールと同様にバッフルパネル部分はプレートブロックで強化。ただし、トゥイーター穴部分のみで写真でもわかるが下段は通常の9.6mmブロックで構成されている。

トゥイーター取り付け穴はシンプルな四角形状。使用するトゥイーターユニットはフランジが大きくて固定しやすい。

58号機のエンブレムを装着し、背面にはトゥイーターユニット用の独立したターミナルを付ける。

デバイディングネットワーク配線はエンクロージャ背面外側なので、モジュール間の内部で配線が渡らないようにして製作しやすい構造とした。

 写真9は今回の特殊LEGOブロック。垂直組み立て方式のバーティカルタイプでは正面がLEGOブロックの側面になる。化粧パネルのタイルブロックを正面に使用できないので、困るのはエンブレムである。そこで、ブロック側面にポッチを持つ側面スタッドブロックというものを使ってみた。これで正面にエンブレムを貼ることができた。

写真8 トゥイーターモジュール 写真9 特殊ブロック

 写真10、11、12にボトムモジュールA、B、Cを示す。

それぞれのボトムモジュールは2段のテーパー形状である。一番下側のボトムモジュールCには背面にウエイトを掛けるフックがある。内面にはマスキングテープを貼り密閉性と強度を向上している。
T字型断面となる背面のプレート形状とテーパー構造により単純なロの字型の筒構造よりも強度が大きいが、内容積は犠牲になっている。
もっとも、この形状はデザイン面の優先度が高い。

 写真13はボトムパネルである。裏面にすべり防止のウレタンシールが貼ってある。

写真10 ボトムモジュールA 写真11 ボトムモジュールB
写真12 ボトムモジュールC 写真13 ボトムパネル

  配線部品とデバイディングネットワーク素子を写真14に示す。
コンデンサーは先に述べたように交換用の3種類を用意した。

 写真15は吸音材のスポンジボールである。
一般的に密閉型では内部に吸音材をいっぱいに押し込むことが多い。YAMAHA NS-10Mもグラスウールの充填でそうなっているし、私のかつてのメインスピーカーInfinity RS-7Kappa(現在もホームシアター用途で活躍中)ではウールがいっぱいに充填されている。内容積のみかけの拡大効果を狙って空気バネ性質を増強する、さらにウーハーの巨大な内圧のエネルギー処理が目的である。
この58号機ではスポンジボールの充填によりこれらの効果を狙う。特にボールだけに空気バネ性の拡大には効果的であろう。

写真14 配線パーツ 写真15 吸音材

 実は、この58号機の製作にあたって、最大の懸案事項は転倒対策であった。
重さ1.5kgもある15cmウーハーユニット使用のトップヘビーに加え、ボトムの細いテーパーデザインでは極めて不安定なのである。

 その対策には、元となった2号機での転倒対策手法を利用した。2号機もフロアタイプの大型モデルで転倒の危険があったため、黒御影石のベースの上に構築してテープで止めていたのだ。さらに背面の下部にフックを設けてダンベルのウエイトを引っ掛けてオモシとしていた。また、細長いスワンデザインのネック部分には、折れ破損対策としてマジックテープベルトによる縛り補強を施していた。これらの対応策により、地震にも耐えたのである。

 転倒対策は実は音質的にもメリットがある。質量の増加による支点の明確化、ベルトによる張力印加は構造強化にもつながる。
よくスピーカーシステムにウエイトを乗せて音質向上を図るが、私はスタンドやベースとのベルトによる張力印加の方が効果的であると考えている。ただし、やりすぎて張力が大きく加わるとエンクロージャに応力歪が生じ、音質劣化を起こすので注意が必要だ。

 写真16の御影石ベースは重さ4.6kgある。58号機の横幅192mmはこのベースの幅200mmから決定したのだ。

 ダンベルウエイトはこれ1個で1.25kg。私はよくこのダンベルウエイトを利用しているが、ゴムカバーのあるものを使って金属音で鳴かないように配慮している。
オモシとして使用する際は、真ん中の穴部分に大理石のコースターを置いて高級オーディオアクセサリーの雰囲気を醸し出して使っている。

写真16 転倒対策パーツ

 組み立て作業を行う。まずはウーハーモジュールから。
ウーハーケースにターミナルとコイルの配線を済ませて(写真17、18)、15cmウーハーユニットを4本のM4ボルト&ダブルナットでしっかりと固定する(写真19、20)。
このウーハーモジュールだけで配線が独立して完結するので扱いやすい。

写真17、18 ウーハーモジュール配線
写真19、20 ウーハーユニット取り付け

 次はトゥイーターモジュールの組み立て。
こちらも配線は独立しており、ターミナルと単純につなぐだけである。デバイディングネットワーク素子を外付けにするのは見た目が良くないが、コンデンサーを容易に交換できてメリットも大きい(写真21、22)。

 接続するコンデンサーと抵抗器にはU型端子を付けておく。ただし、間違ってパワーアンプの出力をダイレクトに接続してしまうとトゥイーターを壊すので、ターミナルには保護キャップを付けている。フールプルーフである。

  トゥイーターユニットの固定はM4ボルト&ダブルナットに大きなワッシャをかまして四角いマド穴のエッジにしっかりと固定する。

 ウーハーユニットがハデな意匠なので、トゥイーターユニットとエンブレムは控えめな演出(写真23、24)。

写真21、22 トゥイーターモジュール配線
写真23、24 トゥイーターユニット取り付け

 ウーハーモジュールとトゥイーターモジュールを組み合わせる(写真25、26)。

ターミナルは先にも述べたが極性が互い違い配置で、逆相接続のためである。下側が保護キャップ付きのトゥイーター用。

 トップパネルでフタをしてこの部分の組み立て完了(写真27、28)。

写真25、26 ウーハー、トゥイーターモジュール組み合わせ
写真27、28 トップパネル取り付け

 一番下のボトムモジュールCの組み立て(写真29、30)。
ボトムパネルを取り付ける。ボトムパネル裏面には滑り止めのウレタンシールが見える。
御影石ベースとウエイトは写真31のように取り付けられる。大型フロアタイプモデル58号機を支える重要なベース部分だ。

写真29、30 ボトムモジュールC組み立て
写真31 ウエイト装着の様子 写真32 ベース部分

 本機は大型モデルなので机上の作業はここまで。ボトムモジュールの組み立ては設置位置で行う。(組み立て後の移動ができない!!)

 まずはボトムモジュールCを御影石ベースにテープで固定する(写真32)。
次にボトムモジュールBを積み上げる。中にはスポンジボールを挿入(写真33、34)。

写真33、34 ボトムモジュールB取り付け

 ボトムモジュールAを積み上げる。スポンジボールは全部で10個入れた。

ボトムモジュールの中はスポンジボールでいっぱいである(写真35、36)。

写真35、36 ボトムモジュールA取り付け

 スピーカーユニットを搭載したヘッドモジュールを積み上げて組み立ては完了である。

密閉型ではバスレフダクトのような調整項目がエンクロージャに無いので、あとはデバイディングネットワークの最適化だけが残作業である。

 デバイディングネットワークの調整は、背面のコンデンサーと抵抗器をターミナル間で交換するだけなので容易である(写真37)。

 アッテネーターの抵抗器は3.9Ωの-6dBに固定して、コンデンサーを4.7、6.8、8.2μFの3種類を接続して聴きくらべる。LPFのコイルは内部の0.8mHで固定である。

写真37 ネットワーク素子調整

  写真38〜41に組み立てが完了した58号機の外観を示す。
さすがに大型モデルなので迫力がある。テーパーデザインもモニュメントのような独特の雰囲気な意匠となった。ライトオレンジのラインも良いアクセントになっている。

 写真42はスピーカーユニット部分の拡大。
デザイン的にはシンプルだが、ウーハーユニットの成型パターン入りアルミコーンにインパクトがあるので高級感が出せたと思う。
この組み立て方法だと前面のバッフルパネルにタイルブロックが使えないので、ブロック側面になってしまうが、バッフルパネル部分はプレートブロックで製作したので緻密な格子組細工のような意匠になった。

写真 38、39 58号機外観1
写真40、41 58号機外観2
写真42 スピーカーユニット部分
 
  5.特性評価

 各特性の測定を行う。
図8のインピーダンス特性は低音域では1ピークの典型的な密閉型システムのインピーダンス特性である。foは63Hzくらいで、ウーハーユニット単体の35.5Hzからはずいぶん上昇したが、空気バネが大きく加わる密閉型ではしかたの無いところだろう。

 Q値は比較的大きく、内容積と吸音材は適当と判断。システムインピーダンス値は若干低くて6Ω程度である。

 170Hz付近になんらかの共振特性が見えるが、1mくらいの長さによる1/2波長なのでエンクロージャの共鳴管動作かもしれない。2kHz付近からトゥイーターユニットのインピーダンス特性にシフトしており、デバイディングネットワークは設計どおりに機能している。

図8 58号機インピーダンス特性

 周波数特性の測定は、通常はデッドな寝室でスタンドにスピーカーシステムを載せて、1本のスピーカーユニット正面軸上50cmのポイントにマイクを立てて行うのであるが、本機は大型のフロアタイプシステムなので、このセッティングができない。そこで、リスニングルームにてステレオ動作で、リスニングポイントにマイクをセットして行った。実際のリスニング状態での特性となる。このため、特に低音域に部屋の反射による影響が大きく出ている。

 私のリスニングルームの左右壁面距離は3.6mなので、100Hz付近に反射によるピークが生じる。この2倍の200Hzも同様である。そして、その間の75Hz、150Hz、300Hz付近にデップが生じるのだ。このような部屋の影響は測定では避けたいところだが、リスニングルームの部屋サイズから生じる現象なのでやむを得ないところ。吸音体などをコーナーに設置しているが、なかなか解決はできない。現実はスピーカーシステムだけの音ではなく、部屋の影響を大きく受けた音を聴いているのである。

 図9に示す周波数特性はデバイディングネットワークのコンデンサーを3種類に交換して測定している。
当初は8.2μF(青線)を想定していたが、測定の結果、若干クロス周波数付近が膨らむことがわかった。しかし、4.7μF(緑線)では中高音域が低下するので、6.8μF(赤線)を最適値として選択した。

 1kHzに対する-10dB再生周波数帯域は低音域では73Hz程度、高音域はこの測定システムでの限界20kHz以上に伸びている。
さすがに大型モデルだけあり、80Hz以下まで十分なレスポンスが観察される。

  部屋の反射影響を少しでも抑えたいので、片方のスピーカーシステムのトゥイーター正面軸上50cmにマイクを移動して測定してみた。図10に示すように中高音域がよりフラットになり、帯域を拡大した20Hzまでの測定において低音域は50Hz以下までレスポンスしていることがわかるが、やはり150Hzのデップは顕著である。

  なお、ピンク線は信号を出さない状態の測定システムのノイズを示したものである。

全帯域にわたりノイズレベルは55dB以下であり、本測定に問題のないことがわかる。

図9 58号機周波数特性(リスニングポイント)
図10 58号機周波数特性(正面軸上50cm)

 このマイクセッティングでのインパルス特性を見てみよう(図11)。
低音域の壁面反射の影響で150Hz付近に大きなレスポンス低下が見られるところは気になるが、これはスピーカーシステム本来の特性ではない。肝心の2kHz付近のクロスオーバー周波数あたりは時間軸の乱れも無くきれいにつながっていることがわかる。ウーハーとトゥイーターの近接配置が良かったのであろう。

低音域のスケールをいつもは50Hzからにしているが、今回は20Hzからに拡張している。大型システムだけあり、40Hz程度までレスポンスが見られる。
比較的ライブなリスニングルームでの測定であるが、高音域には目立った反射波は無いようだ。

図11 58号機インパルス応答
 
  6.音質評価

 その音を初めて聴いたとき、思わず「おお!」とうなってしまった。
これが大容積スピーカーシステムの音なのか・・・とても深い音だ。
58号機の音は大型フロアタイプスピーカーシステムとして大変満足の得られるものとなった。圧力として感じる低音域のスケール感が違う。これまでのすべてのLEGOスピーカーの中で、最高のワイドレンジ再生である。
特に、大編成オーケストラ曲のダイナミズムがすばらしい。やはりエンクロージャの大きさは、他に代えがたい重要な資質であることを認識した。

 懸案事項であった、転倒対策であるが、

・石ベース+背面ウエイトによる重量付加
・ベルト3本による石ベースとの一体化
・さらに1.25kg×4個のウエイト付加

といった対策を講じている。トップヘビーのトールデザインなので、できるだけボトムに重量バランスを移し、エンクロージャが途中で折れてしまわないようにベルトでベースに強いテンションで縛っている。そして、ベースごとひっくり返ってしまわないように、ベース部分にさらにトータル5kgのオモシを付加したのである。

 
  7.おわりに

 本機が完成してクラシック曲を聴くことがさらに楽しくなった。

この迫力のサウンドこそ、私がLEGOスピーカーに求めていた、そして、これまでの作品では得られなかったものなのである。

(2017.5.7)

     


写真43 58号機 リスニング形態

 
 
 
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