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LEGO SPEAKER 第50報
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LEGOスピーカーの製作 第50報

 
     

写真1 パッシブラジエーター研究機LEGOスピーカー 60号機

 
  1. はじめに

 最近は実用的に音楽を楽しむ作品を多く製作していた。このため、実験的要素が少なく、製作上の工夫はいろいろとあるが、バスレフ方式や密閉型などオーソドックスな方式に偏っていたと思う。もちろん、良い音を求める上では冒険をしないことも大切ではある。しかし、それではLEGOスピーカーの製作として面白くないのだ。 60号機は久しぶりの実験機である。

 
  2.パッシブラジエーター方式について

 今回のテーマはパッシブラジエーター方式の最適化である。

振り返ってみると、LEGOスピーカーにおいて初代のパッシブラジエーター方式は32号機(LEGOスピーカーの製作第24報)であった。8cmチタンコーンの専用パッシブラジエーターユニットを使用した32号機は2013年の作品で、コンパクトシステムとして高い評価が得られた。

 当時のリポートにパッシブラジエーター方式の原理については以下のように記した。

「パッシブラジエーター方式とはエンクロージャに駆動系を持たないスピーカーユニットを追加して取り付けて、メインのスピーカーユニットの背圧を駆動力として再利用して低音域を増強するシステムである。つまり不要な背圧の処理と低音域の増強を同時に行うという優れた方式なのである。ただし、背圧でパッシブラジエーターユニットがピストンの様に押されて駆動されるのではない。スピーカーユニット背面から出る音は位相が逆なので、この圧力で駆動したのでは逆位相の音が出てしまい相殺してしまう。パッシブラジエーターユニットの振動系が持つ自己共振周波数で共振することで、位相が反転して正相となって放出されて低音域を増強するのだ。」

 

 続いて製作した33号機(同第24報)では専用のパッシブラジエーターユニットを使用しなくても通常のスピーカーユニットで代用できることを実践した。

 34号機(第25報)はパッシブラジエーターと双指向性特性を特徴とした4スピーカーコンパクトシステム、35号機(同第25報)は小型ユニットをパッシブラジエーターに使用したミニシステムを製作したが、これらは凝りすぎて見事に失敗。それでは大型パッシブラジエーターシステムだ、ということで企画した13cmウーハー2発のスタイリッシュ36号機(第26報)は性能改良されて今も実用機である。

 しかし、「パッシブラジエーター方式の本領は超コンパクトモデルにあり」として造った45号機(第35報)は真空管スイッチングパワーアンプと合わせた8cmキューブスタイルで、この方式の優秀性を再認識させた。

 小型スピーカーユニットを貫通ボルトで前後に搭載した構造は「簡単LEGOスピーカーシリーズ」としてその後のキューブスピーカー52号機(第42報)に発展した。さらに、ダブルパッシブラジエーター方式の大型モデル46号機(第36報)、PC用スピーカーとして設計したUSBスピーカー47号機(第37報)と本当に多くのモデルを製作してきたのである。

写真2 LEGOスピーカー パッシブラジエーターシステム
 
  3.パッシブラジエーター方式 31号機改

 私のパッシブラジエーター方式システムで、最も重要な作品が31号機改である。

TEAC製の13cmコアキシャルユニットを使用した31号機は当初、大型のバスレフシステムであったがパッシブラジエーター方式に改造した(写真3 詳細は番外編その4)。 リアに13cmウーハーを搭載して大型パッシブラジエーター方式の低音再生に期待したモデルで、ウーハーの前後対向配置は最も効率が良くなると考えたのである。

このとき、一般的なウーハーユニットをパッシブラジエーターに使用すると低音にしまりが無くなり問題であることに気が付いた。専用のパッシブラジエーターユニットには磁気回路やボイスコイルはなく、代わりにfoを調整するためのオモリが振動板に付いている。 この重さを変えるとfoを調整できるが、現実的ではない。一般のウーハーユニットを利用した場合は、ボイスコイルオープンでは制動がかからず振動板がフラフラの状態になりウーハーユニットの想定された動作状態と異なるのだ。

 スピーカーシステムはパワーアンプに接続されると、アンプの出力インピーダンスでほぼショート状態になる。これによりボイスコイルがマグネットの磁束から力を受けて電磁ブレーキがかかり制動される。これが過振動を抑制して締まりのある低音を再現するのである。したがって、ウーハーユニットをパッシブラジエーターとして利用する場合はボイスコイルをショートする必要があるのだ。

 ただし、本当にショートしたのでは制動がかかりすぎて密閉型エンクロージャのようになってしまう。そこで、31号機改ではここに抵抗器をつなげて、その抵抗値を調整することで低音の調整機能を実現した。試聴の結果、100Ω程度が最適であると結論した。

メインのウーハーユニットに対しても、エンクロージャ内圧が適度に加わることが必要であり、やはり制動のないリアウーハーでは低音再生効率が低下することも解った。

制動抵抗値には最適値が存在するのである。

写真3 コアキシャルユニット搭載LEGOスピーカー31号機(改)

 その後、この抵抗器には耐電力が不要であることから可変抵抗器に交換して、ボリューム調整で低音再現を自在に調整できるように改良している。

 パッシブラジエーターユニットの抵抗器制動方式は、その後に製作したすべての同システムに採用し、さらに以前の作品にも改良作業を加えている。

しかし、この最適化調整を行っていた時代には、私は測定システムを有しておらず試聴に頼っていた。本当に最適化されているのか? さらに新たな制動方法も考えてみたい。

 今回の60号機は31号機改を現代の技術でよみがえらせる57号機、59号機に続くLEGOスピーカーリビルド作品第3弾なのである。

 
  4.設計

 60号機に改良するにあたって31号機改のどこに手を入れるのか?

 ・ サブウーハーユニット交換

 ・ 密閉性の改善

 ・ パッシブラジエーター回路の最適化

である。筐体サイズ、デザイン、構造は変更しない。気に入ったデザインなのだ。

 31号機改のサブウーハーには背面配置であることと、従属ユニットなので安価なウーハーユニットを採用していたのだが、これを交換したい。

 密閉性はパッシブラジエーター方式でも低音再生効率に大きく影響するので、最近お得意の密閉ワザで対応する。そして、今回の本来の目的が測定システムによるパッシブラジエーター回路の最適調整なのだ。

 新たなウーハーユニットには SICA Z002650 ペーパーコーン13cmウーファーを選択した。イタリア製の良質なウーハーである。

最大入力200Wに耐える設計で、ゴム製波型エッジにより低めのfo(64Hz)とストローク性能を確保している。ネオジウム磁石、アルミダイキャストフレームの高級ユニットだ。 リアに搭載するパッシブラジエーター用としては贅沢な選択だが、無加工で現在のウーハーと交換できる寸法を優先したのである。

 60号機の正面図と内部構造図を図1、図2に示す。コアキシャルユニットは突き出したトゥイーターの保護が必要なので本機にはオプションのサランネットが付属している。

 デバイディングネットワークは図3であり、ここは初代の31号機から変えていない。シンプルな6dB/octネットワークだが、このコアキシャルユニットは市販製品TEAC のS-300NEOから流用したものなので、その回路を参考にしている。さすがにメーカー製品だけあり能率調整済でトゥイーターにアッテネーターが不要なのもうれしい点である。 リアに搭載するサブウーハーは調整用ターミナルに直結している。

図1 60号機正面図 図2 60号機構造図
 
図3 60号機デバイディングネットワーク

 60号機開発のポイントはパッシブラジエーター回路の最適化なのであるが、現状31号機改の抵抗器によるユニット振幅制動ではどうも最良に調整できない気がするのだ。

可変抵抗器で抵抗値を小さくしてショートに近づけると密閉型の音に近づき、低音増強効果が減少する。反対に抵抗値を大きくして行くと、パッシブラジエーターの効果は大きくなるが、緩い低音になる。これはメインウーハーに適切な背圧負荷がかからなくなる事も原因である。つまり、アタック時には抵抗値が低く、持続低音では抵抗値が高くなって欲しいのだ。 そこで、短絡素子には単純な抵抗器ではなく、周波数特性を持った素子を接続すれば良いのではないかと考えたのだ。

 アタック時の高音域成分が多い信号にはインピーダンスが低く、持続低音の低い周波数信号にはインピーダンスが高い素子・・・それはコンデンサーだ。

パッシブラジエーターが機能する周波数である70Hz付近で抵抗値の最適と判断した100Ω程度のインピーダンスとなるコンデンサー容量は22uFである。

コンデンサーの容量を上げるとインピーダンスが下がって高音域でのダンピング効果が高くなる算段である。70Hz以下の低音域ではこれ以上にインピーダンスが上昇して制動が弱くなることを考慮して、この22uFよりインピーダンスが下がる47uFと100uFを用意して測定と評価実験をすることにした。

 

<60号機 基本仕様>

 ・ 形式:コアキシャル2ウェイシステム

 ・ 方式:パッシブラジエーター方式

 ・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)

 ・ エンクロージャ方式:リアマウントパッシブラジエーター

 ・ メインユニット:TEAC YDF2-135S80(コアキシャルユニット)
          ウーハー 13cmコーン
          トゥイーター 2.5cmソフトドーム

 ・ パッシブラジエーターユニット:SICA Z002650 パルプコーン13cmウーファー

 ・ 外形寸法:W176mm H320mm D198mm

 ・ 実効内容積:約6リットル

 ・ デバイディングネットワーク:6dB/oct -3dBクロスネットワーク

 ・ クロスオーバー周波数:4.5kHz

 ・ パッシブラジエーター周波数:120Hz(推定)

 ・ パッシブラジエーター機能調整値:47uF(電磁ブレーキ方式)

 ・ システムインピーダンス:6Ω

 
  5.製作

 60号機の全部品を写真4に示す。新規に作成したのはサブウーハーをマウントしたサブユニットモジュールだけであり、他のモジュールは31号機改の流用である。

パッシブラジエーター方式ではメインウーハーの背圧を有効に再利用したいので、吸音材にはスポンジボールではなく、薄いウレタンシートを軽く充填する。

前後のモジュールを並べてみると、同サイズのメインユニットとサブウーハーユニットが対向配置で装着されていることが良くわかる。

 写真5はメインユニットモジュールである。TEACの製品S-300NEOから取り外したコアキシャルユニットであり、良質なコアキシャルユニットを手に入れるためにコストをかけたものだ。プラスチックフレームだが、大変作りのしっかりとしたスピーカーユニットで音質も気に入っている。なによりコアキシャルユニットのもたらす定位感が巣晴らしいのだ。重いユニットなのでしっかりとM4ボルトで固定しており、上下のバッフル面のリブは補強目的もあるが、マグネット小片が仕込んであり、サランネットのマグネットキャッチに対応する。

写真4 60号機全部品(1台) 写真5 メインユニットモジュール

 サブユニットモジュールを写真6に示す。新作モジュールであり、先に紹介したSICA のパルプコーン13cmウーファーが搭載されている。このウーハーユニットはダイキャストフレームで大変高級感がある。

 背面搭載のためLEGOブロックの裏面に固定することになるので、平面性を得るために逆タイルブロック(灰色のタイル)という特殊パーツを使用している。固定するパネルには周囲にリブを設けて強度は申し分ない。

 写真7はフレームである。シンプルなハコ部品だが、内面にマスキングテープを貼り、密閉性の確保と補強を行っている。

写真6 サブユニットモジュール 写真7 フレーム

 フロントベゼル(写真8)はバッフル面下部のフタであり、補強リブのデザインを合わせている。エンブレムも更新。

 リアパネル(写真9)にはターミナル2組とデバイディングネットワーク素子が搭載されるため6箇所に取り付け穴がある。裏面にマスキングテープでエア漏れ対策。

写真8 フロントベゼル 写真9 リアパネル

 補強柱(写真10)はただの棒であるが、32×32mmものサイズで極めて強力。最近はこのような補強柱はあまり意味がないので廃止しているが、本機ではエンクロージャ前後に搭載されるスピーカーユニットの振動を相殺するために効果的であることと、前後のモジュールの組み立て時に強く固定するためにも必要なのだ。精度の高いLEGOブロックだからこそ使える部品である。

 その他の部品を写真11に示す。本機はスピーカーユニットが3つ搭載されるので配線ワイヤーも多い。

写真10 補強柱 写真11 その他の部品

 写真12はパッシブラジエーター調整用の可変抵抗器とコンデンサーである。先に述べたようにコンデンサーは22uF、47uF、100uFの3種類を用意した。

 この容量ではフィルムコンデンサーは無いので無極性の電解コンデンサーを使用する。本機の用途では音響用の高耐圧である必要はないのだが、実験用素子として用意している。

 写真13は60号機のオプションパーツであるサランネットである。コアキシャルユニットの保護のためには必要であり、これもTEAC製品の流用品。サランネットを装着すると外観も落ち着いたイメージとなるのでリスニング時には重宝する。

写真12 調整用素子 写真13 サランネット

 組み立てを行う。コアキシャルユニットを搭載したメインユニットモジュールをフレームに固定する(写真14、15)。配線ワイヤーにはウーハー用とトゥイーター用を間違えないようにマーカーを付けた。

写真14、15 メインユニットモジュール取り付け

フロントベゼルをフレームに固定して前面を造る(写真16、17)。

このバッフルパネルとフロントベゼルにはデザイン的にリブが入っているので極めて強固だが、バッフル面の突き出しリブは音質的には反射が生じてマイナス点ではある。

写真16、17 フロントベゼル取り付け

 リアパネルの組み立てを行う(写真18、19)。ターミナルと内側に固定するデバイディングネットワーク素子であるコイルとコンデンサーを取り付ける。

上側のターミナルがパッシブラジエーターの調整用となる。

 フレーム内部に補強柱と吸音材を挿入する(写真20)。

写真18、19 リアパネル組み立て
 
写真20 補強柱挿入

 サブウーハーを搭載したサブユニットモジュールをフレームに取り付ける(写真21、22)。メンテナンスリッドとなるリアパネル部分から3組のスピーカーユニットからの配線ワイヤーを引き出す。

写真21、22 サブユニットモジュール取り付け

リアパネルに配線して取り付ければ組み立て作業は完了である(写真23、24)。

写真23、24 リアパネル取り付け

 組み立ての完了した60号機の外観を写真25、26に示す。

ベースの31号機改とデザインはまったく変わらない。補強リブの入ったマッシブな容姿はコアキシャルユニットの独特の意匠と合わせてジャズリスニングにとてもよさそうだ。そこにサランネットを装着すると、途端に落ち着いたエレガントなクラッシックリスニングスタイルになる。スピーカーシステムの外観デザインはとても重要だと感じる。

写真25、26 60号機外観
 
  6.測定と調整

 60号機の背面を写真27に示す。上側のターミナルがパッシブラジエーターの制動のための調整素子接続用である。

 可変抵抗器を接続して抵抗制動を試してみる(写真28)。この部分の電力はスピーカーユニットの逆起電力なので微小だから小信号用素子で問題ない。コンデンサーの接続状態は写真29の様になる。

写真27 60号機背面
 
写真28 可変抵抗器接続 写真29 コンデンサー接続

 まずはインピーダンス特性を測定する。Open特性(図4)は調整素子を外したフリーなパッシブラジエーターでのメインユニットのインピーダンス特性である。いびつなインピーダンス特性であり、明らかにパッシブラジエーターの影響が見える。この特性からは120Hz付近にダンピング点があるようだが、 これがパッシブラジエーターの共振点ではないかと推測している。サブウーハーユニット単体のfoは64Hzであるが、このような使い方ではfoは大きく異なると考えられる。やはり専用のパッシブラジエーターユニットのように振動板にオモリを付けないとfo上昇が起こるのではないだろうか?

 パッシブラジエーター調整素子に可変抵抗器をつないで、可変抵抗器をショート状態にした特性(図5)では、ほぼきれいな単一共振特性となった。foが90Hzの密閉型の特性に見える。ピークがダンプされていることから背圧負荷が大きく加わることが確認できるが、これは振動系のバネ性が緩く設計されているハイコンプライアンスユニットには必要な状態である。

この測定結果は想定どおりの挙動である。

図4 インピーダンス特性(Open) 図5 インピーダンス特性(Short)

 可変抵抗器を100Ωに設定した状態(図6)では、Open寄りの特性でパッシブラジエーターが積極的に機能しており、また、インピーダンスピークが若干ダンプされることからメインユニットに背圧負荷も加わり、適した状態になっていると考えられる。

ただし、このダンプ状態ではもう少し抵抗値が低いほうが最適かもしれない。

 それでは注目のコンデンサー接続である(図7〜9)。

22uF、47uF、100uFと容量を増やしていくとインピーダンスのピークが低下するため、制動効果が増加していくことが見える。同時に120Hz付近のディップも減少するのでパッシブラジエーターの効率も低下すると考えられる。

予測したとおりコンデンサー容量22uF時の特性が抵抗100Ω接続状態に近い特性である。 ピークダンプの状況から47uFくらいが適切ではないかと思うが、このインピーダンス特性からはコンデンサーと抵抗器の素子による差異はあまり認められない。

図6 インピーダンス特性(R:100Ω) 図7 インピーダンス特性(C:22uF)
 
図8 インピーダンス特性(C:47uF) 図9 インピーダンス特性(C:100uF)

 周波数特性の測定結果では、クロスの4.5kHz付近の特性がきれいなので驚いた。さすがはコアキシャルユニットである。しかし、周波数特性の測定でも残念ながら顕著な調整差は見出せなかった。

 図10に調整端子のOpen(青線)とShort(赤線)を比較した周波数特性を示す。Openの特性の方が僅かに低音域が膨らんでいるように見える。特に80Hz付近の膨らみはOpenが大きく、インピーダンス特性からもわかるように、これはメインウーハーのfo周波数であり、Shortでは密閉型のように、この点がダンプされるので低下するようだ。120Hz付近にパッシブラジエーターからの放射があるはずであるが、ほとんど測定できていないのはメインユニットの正面軸上50cmでの測定であるためと思われる。なお50Hz付近の特性は環境騒音である。

 図11に示す可変抵抗器の100Ωと200Ωの特性はOpenとほとんど変化がない。特性からパッシブラジエーターは機能しているようである。

図10 周波数特性(Open Short) 図11 周波数特性(可変抵抗接続)

 図12に示すコンデンサー接続に変えてみると、容量によりメインウーハーのfo付近に僅かに変化が見られるが、ほとんどOpenの特性と同一である。だが、これは見方を変えるとコンデンサーの接続による悪影響は無いとも言える。この60号機の計画段階で、パッシブラジエーターにコンデンサーを接続すると不要な位相回りが生じて低域特性が劣化するのではないかと懸念していたのだが、このような問題は無いようだ。

 インパルス応答も測定した(図13)。コアキシャルユニットのきれいなつながりを確認できる。

図12 周波数特性(コンデンサー接続) 図13 インパルス応答

 図14にオリジナルの31号機改の周波数特性(赤線)と47uF接続時の60号機の特性(青線)を比較した。マイクのセッティング状態の違いか、少し全体に感度差が出てしまったが、明らかに60号機の方が低音域特性は改善されている。

これは、エンクロージャのサイズは変わっていないので、サブウーハーユニットの交換と密閉性の改善によるパッシブラジエーター効率の向上と見て良いだろう。

また、300Hz付近の膨らみが減ったのはフレーム内面のマスキングテープ貼り付けによる強度向上の結果であると考えている。

さあ、音はどうだろうか?

図14 周波数特性比較
 
  7.試聴評価

 音質評価を行う(写真30)。まずは抵抗制動の音である。

改造の結果、オリジナルと比較して低音がさらに充実している。十分に楽しめる音である。サブウーハーユニット交換の効果で低音の質も向上したようだ。

やはり調整端子Openの状態ではしまりの無い低音で、Shortでは密閉方式調のダンピングの効いた低音、可変抵抗器100Ω調整状態が私には好みで、パッシブラジエーターの低音増強効果と締まった低音域音質のバランスが良いと感じる。だが、聴く音楽により最適なバランスは異なり、壮大なオーケストラ曲では抵抗値を上げて低音を効かせたくなる。ボーカル曲では抵抗値を下げてもっと締めても良いだろう。

 

コンデンサー接続に変えてみる。この変化には驚いた。

特性評価ではほとんど差が無かったが、明らかにコンデンサー接続の方が音は良いのである。まず、低音の量感と質が両立している感じだ。容量を22uFにした場合と100uFにした場合の変化は抵抗と同様に100uFの方が締まってくるのだが、低音域でインピーダンスが上昇する効果で締めすぎ感が少ないのである。

実験的に10uFと220uFも試したが、バランス的には中間の47uFだろう。

 もう一つの効果は音場感の改善である。

音場感を向上するために背面にトゥイーターをマウントする方法があるが、今回のケースでは従属駆動される背面パッシブラジエーターの高音域は、ひずみの多い汚い高音だと考えられる。コンデンサー接続では、この高音域は低いインピーダンスで強く制動がかかるので不要な高音放射が抑えられるのではないか? この結果、音場感が改善されたと思うのだ。特に本60号機にはフロントメインにコアキシャルユニットを採用しているので音場感の変化には敏感なモデルなのだろう。

 しかし、これらの変化は特性評価で検証することができなかった。これはダイナミックな音質の変化に関する測定方法を再考する必要があるのかもしれないが、困難なことであろう。やはり最後は音を聴いて判断することが重要なのである。

写真30 試聴の様子
 
  8.おまけ

 この60号機にはサランネットを装着することができる。この影響はどのようなものだろう? 周波数特性の変化を測定してみた。

図15に示すように、赤線の装着特性では1kHz程度以上の高音領域で減衰が見られる。前面に異物が付くのだから当然とも言える。だが、これは必ずしもマイナスではないのかもしれない。トゥイーターの高音域が抑えられてソフトな音調になると考えられるので、聴く音楽によっては良い効果となる。外観意匠の変化とも乗じてエレガント指向の音になるだろう。これもリスニングに積極的に利用したい。

 

 私の造るLEGOスピーカーの周波数特性はいつもスピーカーユニットの前面軸上50cmで測定している。このため著しく低音が減少している。「なんだ、100Hzほども低音が出てないじゃないか?」と思われるかもしれないので、60号機をリスニングルームのリスニングポイントでステレオ動作にて測定してみた(図16)。これが実際に私が聴いている音である。

スピーカーシステムの正面ではないので高音域は3kHz程度から緩やかに低下するが、低音域は1kHzの-10dB点では85Hz程度までレスポンスしていることがわかる。これ以下では急激に低下しているが、実は部屋の影響で70Hz程度にディップが出るのである。だから通常はデッドな寝室で測定を行っているのだ。

図15 サランネット影響 図16 リスニングポイント周波数特性
 
  9.おわりに

 今回の製作でパッシブラジエーター方式のコンデンサー制動が有用であることが認められた。容量値にも最適範囲があり、抵抗制動と比較して低音の質と量のバランスが改善される感じである。

しかし、もともとこの60号機は大型モデルであり、オリジナルの31号機改は大型パッシブラジエーターの効果を確認するために製作したモデルであった。このため、低音の不足感は少ないといえる。本来、パッシブラジエーター方式はコンパクトモデルの低音改善にこそ最適な方法であると考えている。

次回はこのコンデンサー制動技術をコンパクトモデルにおいて試してみたいと考えている。

 

本報でこのLEGOスピーカーの製作リポートも第50号となりました。

いつもご覧いただき、ありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。

(2017.8.20)

     


写真30 コアキシャルユニット・パッシブラジエーターLEGOスピーカー60号機

 
 
 
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