キット屋倶楽部
LEGO SPEAKER 番外編その5
  «第35報   第36報»  

LEGOスピーカーの製作 番外編その5

 
     


写真1 改良された43号機、36号機、39号機

 
  1. LEGOスピーカー改良日記

 LEGOスピーカーは造って終わりではない。もちろん、音楽を聴く実用品としての楽しみもあるが、音をより良くしてゆく改良もまた楽しみの一つである。
 簡単に改造作業が行えるLEGOスピーカーのメリットを活かした改良の報告を行いたい。

 
  2. パッシブラジエーター方式36号機の低音改善

 LEGOスピーカー36号機(写真2)はスタイリッシュなパッシブラジエーター方式の2ウェイモデルである。リボントゥイーターのきれいな高音域とダブルウーハーのパワフルな低音域が特徴のスピーカーシステムだ。
 ところが、久しぶりに聴いてみたら低音がユルユルでしまりがない。このモデルはパッシブラジエーター方式の初期作品で、製作内容を記したLEGOスピーカーの製作第26報では「低音域に独特のクセが感じられる。パワフルではあるが遅れ感、ふくらみ感が感じられるのだ。結果的に低音域が豊かに聴こえるのではあるが、これが正しい再生音であるかは疑問ではある。」と記した。

写真2 パッシブラジエーター方式36号機

・・・もうこの理由は解っている。
LEGOスピーカーの製作番外編その4で31号機の改良経験を述べたが、普通のスピーカーユニットをパッシブラジエーターとして使用した場合、ダンピングが悪いのである。
本来、スピーカーユニットはパワーアンプに接続して制動されて使用するものであり、なにも接続されていないスピーカーユニットはフラフラなのだ。
そこで、抵抗器をパッシブラジエーターのスピーカーユニット端子に接続して振動にブレーキをかける手法を以前ここでも紹介した。

 今回はこの発展方法として可変抵抗器を使用する。これで抵抗値を変えることで自由に低音域の特性を調整することができるようになる。この可変抵抗器は逆タイルブロックに接着してリアパネルに固定する。

 抵抗値を低くしてショート状態に近づけると制動が効き低音が締まり、抵抗値を高くして開放にしてゆくと低音が増強されるはずである。ただし、やりすぎると改良前の緩い低音になってしまうだろう。

 可変抵抗器の抵抗値としては31号機の実験結果から100Ωが最適であったので、最大200Ωとした。もちろん、スピーカーユニットのマグネット強度やエンクロージャの影響で最適値は異なるはずであるが、大きくはずれないだろう。それよりも聴く音楽に合わせて低音域の再生特性の調整を楽しめることが重要である。

 スピーカーシステムに使用する抵抗器はパワーアンプの出力に対応した電力抵抗器であるが、この場合はスピーカーユニットの逆起電力をショートするだけなので小信号用の部品で十分である。

 回路は図1のようになる。2ウェイスピーカーシステムのデバイディングネットワーク素子はそのままで、パッシブラジエーターのスピーカーユニットに可変抵抗器を接続したものである。この36号機は写真3のようにトゥイーターの配線用にターミナルを独立に設けて、ターミナル間に背面でネットワーク素子を接続していた。このターミナルを利用してリアパネルの変更なしに回路を構成できる。

 改良に用意した回路素子を写真4に示す。使用した可変抵抗器は東京コスモス電機の16mm小型モデルRV16YN型 200Ωと専用つまみである。配線は写真5、6のように変更した。外付けだったコンデンサーと抵抗器をコイル素子の固定ネジを利用して内蔵し、上側のトゥイーター用だったターミナルをパッシブラジエーターに配線してリアパネル裏面に可変抵抗器を取り付けた。

 つまみを反時計方向に回すと抵抗値が下がってダンピングが強くなる。

図1 接続回路図 写真3 オリジナル背面
写真4 改良用部品 写真5 リアパネル配線
写真6 内部配線 写真7 改良36号機

 36号機の改造が完了した(写真7)。
可変抵抗器によるダンピング量調整機能は音楽を聴きながら低音域の再現性を調整できて大変おもしろい機能である。

 MAXの200Ωでは多少誇張された低音、0Ωでは密閉型のような低音を聴くことができる。
リニアなBカーブなのでつまみ中央の100Ω程度が適当な印象で、適度に締まったクリアな低音再現に改善することができた。最近のボーカル曲などの音楽では電子楽器音ですごいレベルの低音が録音されているソースもあり、膨らませた低音では振動性になる不具合もある。このような音楽では抵抗値を小さくしてダンプすれば改善できる。クラシック曲をゆったりと聴く時は低音増強が心地良いと感じる。

 
  3. ミニスピーカーシステム43号機の低音強化

 43号機はStereo誌8月号に付属していたスピーカーユニットを使用したミニ2ウェイシステムである(写真8)。実はこのモデルには一つの目的があった。「月刊ステレオ主催・自作スピーカーコンテスト」へのチャレンジである。

写真8 ミニ2ウェイシステム43号機

 第5回となるこのコンテストは自作スピーカーの甲子園と呼ばれ、私もこの43号機でエントリーした。8月号に付属していたスピーカーユニットを使用することが参加の条件である。267件の応募があったそうだが、書類審査の一次審査を無事にパスして入選26機種に選ばれ、某日に行われた審査会に参加することができた。
ところが、展示されていた作品はまるで家具職人の祭典のようで、すごい作品が並んでいて衝撃を受けた。残念ながら入賞はできなかったが、同じスピーカーユニットで、同じ再生環境で他のスピーカー作品と比較試聴できるすばらしい機会を得た。
音質評価で並み居る巨大スピーカーにかなわないのは当然としても、ショックだったのは同じようなサイズの受賞作品が本当に良い音で鳴っていたことである。
壮大なオーケストラ曲で審査されることはわかってはいたが、私の43号機の音は満足できるものではなかった。

 今回の経験での成果は、私の目標ができたことだ。どこかに、「このミニサイズのスピーカーシステムではこんな音」というあきらめがあった。8cmウーハーではボーカル曲はともかく、フルオーケストラは楽しめない。そう思っていたのだ。

 この低音の迫力不足の原因は何だろうか? ・・・予想はしていた。
43号機はバスレフ方式としては内容積が絶対的に足りないのだ!
外形は2.5リットルもあるのに内容積はたったの1リットルである。
これではバスレフ方式が十分に動作しない。バスレフ方式による低音増強ではダクトの共振効率が内容積の影響を受け、ある程度のサイズが必要なのだ。
もちろん、外形サイズをより大きくすれば解決できるが、それでは面白くない。
それではなぜ内容積が少ないのか? それは、LEGOスピーカー最大の問題点「板が厚い」ということなのだ。

 こんな小さなスピーカーシステムを16mmもの板厚で作る人はまずいない。普通は合板なら5mm厚さで十分だ。フレームの板構造は写真9のaが現状の2ピッチ16mm厚さ。bは1ピッチ8mm厚さだが、ある程度の大きさではブロック1ピッチの構造体ではフニャフニャになってしまい、十分な強度が得られない。だから、これまで大切な内容積を犠牲にしていた。また、8mm厚さでも内容積は1.3リットル程度で、まだ不足。
cはa、bのハイブリッドによる案である。これならばある程度の強度もあり、ブロックの内部の容積も有効利用できるので1.5リットルは確保できそうである。
さっそく、フレームを造り直してみた。

写真9 フレームの板構造 写真10 改良したフレーム

 改良フレーム(写真10)は1ピッチ8mmと2ピッチ16mmの交互の構造で強度は2ピッチの従来品には劣るが、内容積の確保に効果的な構造である。

 私はこういった部品の強度を確認するときに指で叩いて音を聴いてみる(スイカの要領)。コンコンと締まったきれいな音がすれば合格で、ビンビンとかポコポコといった強度の弱い音の場合は、その音が再生音に付帯してしまう。
このフレーム部品は合格であった。

 改良した43号機のハイブリッドフレームによる効果は抜群で、バスレフダクトの動作が顕著で効果的に低音域を増強している。また、フレーム内面が凸凹になったので吸音材もなくした。吸音材はバスレフ方式の効率を低下させるからだ。
やはり内容積の増加はバスレフ方式において重要であることが確認できた。

 内容積が増えたのでバスレフダクトのサイズも大きくしてみた。写真11の現状aはダクトサイズ16X16mmだが、bは16X24mmの150%アップである。ダクト長は内寸が約10cmなので8cm程度が限界であるが、その場合のダクト共振周波数は86Hzで、ちょっと高い。ダクトサイズを大きくすると放射効率は上がると考えられるが、共振周波数には大きく影響する。試聴の結果、ダクトサイズは16X16mmでダクト長7cmとして共振周波数を76Hzに設定した場合が好みであった。バスレフダクトからは強力に風が吹き出して、効率良く機能していることがわかる。

オリジナルの43号機ではデバイディングネットワークも工夫して、クロス周波数を2kHzと低く設定して、トゥイーターのアッテネーターを-6dBと大幅に低下させて相対的に低音増強を図っていた。だが、5kHzクロスが推奨のトゥイーターにムリをしたため、高音域に歪が感じられてしまった。今回、バスレフ方式の効率を向上したので、変な工夫をやめて、図2のオーソドックスなデバイディングネットワークに改めた。
トゥイーターには-2dBのアッテネーターを入れて、クロス周波数も4.8kHzに少し高めて中高音のふくらみを抑えている。

写真11 バスレフダクト 図2 修正デバイディングネットワーク

 低音を強化した改良型43号機(写真12)の外観はまったく変わらないが、その音は激変した。スピーカーコンテストにこの音で出せたなら・・・と悔やまれるが、あの経験があったからこそ、この音にできたのだ。

 今は43号機から迫力のあるオーケストラ曲が鳴っている。
また一歩前進できた気がするのだ。

写真12 改良43号機
 
  4. バックロードホーン方式39号機の改造

 先述の自作スピーカーコンテストの参加でスピーカーユニットを貰った(写真13)。
スキャンスピーク製の5pフルレンジユニットである。

 これをどう料理しようか? 小さなエンクロージャに入れても面白くはないだろう。
バックロードホーン方式の39号機(写真14)に載せて、5cmスピーカーユニットの限界に挑戦して見たいと思う。

写真13 5cmフルレンジユニット 写真14 バックロードホーン方式39号機

 39号機はコンパクトなバックロードホーンに強力な10cmフルレンジユニットを搭載して低音の強化を狙ったモデルである。5種類の10cmフルレンジユニットを試したが、正直に言って失敗作であった。90cmの音道をコンパクトに折りたたんだバックロードホーンのサイズがスピーカーユニットに対して小さすぎたのだ。

結果は十分な低音増強は得られず、このモデルでわかったことは、スピーカーユニットのサイズに対して、バックロードホーン方式では必要なエンクロージャのサイズがあるということであった。大きい分には良いのだろうが、小さすぎると十分な能力を発揮できない。サイズを小さくした場合は、それに応じて小さなスピーカーユニットを選択する必要がありそうだ。

 そこで、今回の5cmスピーカーユニットを搭載してみたいのだ。新たに製作するのはスピーカーユニットを取り付けるバッフルパネルである。小型のスピーカーユニットなので浅いホーン形状のパネルとしてみた。フロントホーンの効果もあるだろう。
フロントホーンは放射効率を改善することができ、独特のパワフルな音になる。
このホーン部分はあえてLEGOブロックのポッチを残し、拡散効果でホーンのクセの低減を狙った。バッフルパネルは小型スピーカーユニットの固定が難しかったので、固定パネルを独立した写真15、16の2重パネル構造とした。

写真15 バッフルパネル 写真16 固定パネル

 スピーカーユニットを取り付けると写真17のようになる。奥行きのある独特のフロントホーンパネルである。

 バックロードホーンの本体に取り付けて改造完了(写真18)。

写真17 スピーカーユニットモジュール 写真18 本体取り付け

 改造した5cmフルレンジユニットを搭載した39号機(写真19)。
その音は・・・5cmフルレンジユニットとは信じられない低音表現である。

もちろん、大音量ではスピーカーユニットがばたついて破綻するが、適切な音量では十分に楽しめる音である。今回の5cmユニットはこの39号機のコンパクトなバックロードホーンにはベストなバランスであると思える。十分にホーンロードが効いて、ちゃんとバックロードホーンの迫力のある音になっている。5cmフルレンジユニットから低音を効率よく再生する面白いモデルに改造することができた。

写真19 改造39号機

 しかし、オリジナルの10cmフルレンジユニットを搭載した39号機とくらべて、外観のインパクトは後退してしまった。スピーカーユニットが小さいので意匠に迫力がないのだ。
音響拡散を意図したフロントホーンのLEGOポッチもあまり美しくない。
そこで、サランネットを付ける事にした。

 細いLEGOブロックで枠を造り、生地をタイルブロックで止める。専用のサランネット生地は高価なのでタイツ生地で代用した(写真20)。

 サランネットを装着した改造39号機は落ち着いた良い外観になった(写真21)。

写真20 サランネット作成 写真21 39号機外観
 
  5. おまけ 〜簡単なLEGOスピーカーの作り方〜

ユニークな4.3cm角形の平面振動板を持つHiWave BMR12はパルプ製のハニカム構造平面振動板フルレンジスピーカーユニットである(写真22)。大変コンパクトで、外形が65mmX65mmしかない。LEGOブロックの7ピッチ(56mm)の角穴にちょうど取り付けができるサイズだ。最低共振周波数foは164Hzで、このスピーカーユニット4本を使って超ミニパッシブラジエーターシステムを造る。

 1ピッチのLEGOブロックで内寸7ピッチ(56mm)の枠を造る。5段重ねて、真ん中の3段目にケーブルを引き出すための穴あきブロックを1個入れておく。前面には細長いタイルブロックで化粧をして、裏面にはプレートブロックを1段付ける。
これで、54.4mmの長さの四角い枠ができる(写真23)。

 組み立てはとても簡単で、長さ65mmの長いM3 6角穴つきボルトを8本用意し、この長いボルトでLEGOのフレームを挟んで2つのスピーカーユニットを前後に固定するだけである(写真24)。

 あらかじめケーブルを穴に通しておき、ナットはダブルにして緩みを防止する。プラスチックの構造なのでナットを締めすぎないように注意する。
完成した超ミニキューブLEGOスピーカー(写真25)。スピーカーユニットが2個付いているので、結構重さもある。

 今、このスピーカーをBGMにこれを書いている。パッシブラジエーター方式なので、このサイズにしては低音感もある。LEGOスピーカー史上最小の作品だが、楽しめる音になった。

写真22 HiWave BMR12 写真23 ミニフレーム
写真24 組み立て 写真25 超ミニキューブLEGOスピーカー
 
  6.おわりに

 DigiFi誌付録のデジタルパワーアンプにつないで超ミニキューブLEGOスピーカーを鳴らして見る。コンパクトでノートパソコンのスピーカーシステムに最適である(写真26)。
この作品はとても明るい音がする。スピーカーユニットのキャラクターかな?と思ったのだがハコを叩いて見ると拍子木のような明るい音がする。ボルトで締めているのでLEGOブロックに力がかかって共振周波数が高くなりカンカンという明るい音で鳴るようだ。
でも、うるさくはなく、きれいな音である。
スピーカーシステムはやっぱりハコの音を聴いているのだと改めて思う。

(2015.5.6)

 
     
 
写真26 LEGOミニPCスピーカーシステム

 
第35報 «  LEGOスピーカーの製作 » 第36報
 
キット屋倶楽部のTOPに戻る