ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
ターンテブルあれこれ (2016.2.7)

 ぼくは音楽を再生するのに真空管アンプを使用しているが、300Bのシングルやプッシュプル、2A3のシングルやプッシュプル、EL34、KT88のプシュプルなど適当な数のアンプを時と場合で取り換えて聞いている。それによって音がいろいろと変化するのを楽しんでいる。それと同じようなことをして楽しんでいるのがターンテーブルである。
 ジャズもクラシックもLPを聞くことが多く、使用するカートリッジによって音が変化するが、さらにターンテーブルによっても音が変わるのである。気が付くとアンプと同じようにターンテーブルも1台また1台と増えてしまう。そんな中でまた1台ターンテーブルが増えた。マイクロ精機が1973年頃最高級プレイヤーとして発売したMICRO MR-611というベルトドライブ方式のレコードプレーヤーである。当時の月給の1か月以上に相当する価格であった。もちろんジャンク品であるがそれでも諭吉相当の値段である。うたい文句は「部品取りにどうぞ!」ということであったが、何とか機能を回復させようと意気込んだ。
 購入機の使用であるが、ターンテーブルはベルトドライブ方式のMR-611である。付属しているアームはスタティックバランス型のMA-101mkII(図A)というマイクロの純正アームです。そして装着されていたカートリッジを調べてみるとVF-3200e(図B)というこれも発売当時から装着されていたマイクロのMM型カートリッジです。
 ジャンク品の問題点をチェックしてみると、①電源コードがないので操作できない。②ベルトのポリウレタンゴムが古くなって加水分解しており、アルミのターンテーブルも本体もべたべたに汚れている。③金属部分が腐食により相当汚れている。④これは後でわかったことだが、再生すると相当きついハム音がでる。⑤アームリフターを装着していた樹脂が割れていてリフターを使用できない。⑥スピンドルとターンテーブルが固着していて簡単に外せない。⑦その他の外観的なやつれも大きい。
 そこでまずは電源コードを直付けしてモーターが回転することを確かめたのち、汚れ落とし、金属の磨き、固着部分のはがしなどをあの手この手を駆使してひたすらコツコツと実施した。実質それだけで三日もかかった。そしてすべてを整えたつもりで音を出してみると、LPは再生するのだが、ハム音が乗ってくる。いろいろチェックした結果わかった原因は、付属していた出力コードのアース線のY字端子の近傍が断線していた。
 現在アームリフターの不具合は解決していないが、それ以外はすべて不具合を解消し、音楽を聴いている。意外だったのは、付属していたカートリッジVF-3200eが整った音でLPを再生するのである。元気はつらつというよりは紳士的な音である。MR-611そのものがいかにもSN比のよさそうなかっちりした音を再生する傾向であり、また一つターンテーブルのメニューが増えた。
 それと同時に賢くなったことがある。従来から使っていたDD方式のKENWOOD KP-990というプレーヤーが時々ハム音が出ることがあるようになったが、これもひょっとしてアース線のY字端子の近傍の断線かと思って探ってみると、完全な断線には至っていなかったが、断線に近い状態で時々接触不良となっていた。(図Cの→部分)新しい端子に付け替えてこの問題も解決した。

 これでぼくの所有しているベルトドライブ方式のターンテーブルは3台となった。1台はサンバレーのSV-A1/A2でこれは付属している純正アームにベンツマイクロのACE-MというMCカートリッジに固定して使用している。もう1台はトーレンスのTD-126MKⅢSME3009のアームを取り付け、SURE V15 TYPEⅣのMMカートリッジを取り付け使用している。ぼくの今の構想はMR-611にはモノラル再生専用のカートリッジを取り付けたいと思っているが、当分はこのターンテーブルの特性を理解するために、あの手この手のカートリッジを取り付けて音楽を聞いてみたいと思っている。
 ベルトドライブ方式のターンテーブルは構造が比較的簡素であるので、たいていのジャンク品は復元が可能であり、それだけでつい手を出して購入し、工作の気分で復元そのものを楽しんでしまうが、直した後で音を聞いているといつまでも手元に置いておきたいと思うか、手放しても良いかと思うか分かれ目があるが、このマイクロ精機のターンテーブルは作りも堅牢で付属のアームも高感度であり、残しておきたい一品であろう。



ターンテーブルの話(つづき) (2016.2.10)

 先日入手したマイクロ精機のベルトドライブ方式のターンテブルMR-611に付属していたテーブルシートのやつれがひどかった。 新たに新品のテーブルシートを入手しても良いが、これこそジャンク品を探せば簡単に入手できると思い、中古店に見に行った。しかし、残念ながら適当なものがなかった。残念だなと思いながらふとカウンター前のジャンク置き場を除くと、レコードが無造作に束ねられて置かれていた。中身が見えなかったがEP盤とSP盤ということは判ったので、福袋のつもりで買ってきた。ここであきらめるのは早いと思って、もう1件の店を覗いた。そうしたら格安のターンテーブルが見つかった。シートもきれいである。これならば交換する価値があると思い買ってきた。家に帰ってからターンテーブルの形式番号を見るとPIONEERのPL-A38Sとなっている。このターンテーブルは1976年頃に発売され、オートリターンとオートストップを機構を搭載しており、なかなか面白そうなプレーヤーである。

 とりあえずジャンク品であるので、ホコリまるけサビまるけであり、まずピカピカに掃除した。もちろんベルトは使い物にならないので、暫定的に自作の適当なベルトで回してみると、意外や意外回転数は安定している。オートリターン、オートストップ機構は一部動きの悪さがあったが、これも掃除により回復した。ということでまた懲りることなく新しいターンテーブルを使っている。
 それからレコードであるが、EP盤が15枚とSP盤が17枚あった。SP盤については浪曲か邦楽かと思っていたが、そういうものは1枚もなく次のような内容であった。
 コロンビアローズの「東京のバスガール」、ペギー葉山の「南国土佐を後にして」、江利チエミの「さのさ」、春日八郎の「お富さん」、織井茂子の「黒百合の歌」、「君の名は」、ダイナ・ショアの「青いカナリヤ」など、ぼくでも聞いたことのある演歌を中心としたものであった。夜になったが、さっそくこれを機械式の蓄音機で聞いてみた。懐かしい音がするなと思って聞いていたら、相方からうるさいと言われた。確かに機械式の蓄音機では音量の調節はできないのである。
 ベルトドライブ式のターンテーブルの中古は、ほぼ100パーセントベルトが切れている。ターンテーブル用のベルトをそのたびに買っていると、ジャンク品を買った意味が半減してしまう。そこでずっと使うには問題があるが、暫定的に機能を確認するならばと割り切ってベルトを自作している。使用するのはDIYの店で売っているオーバンドという商品名の輪ゴムである。輪ゴムといっても折径が180×切幅が6×厚みが1.1mmあるので、このバンドを2本接着でつなげばたいていのターンテーブルは回る。(幅と厚みが大きいが)ただし材質が天然ゴムであり、このゴムは接着が難しい。
 工夫をすれば、意外と金を使わないでも楽しめるものである。


「ファブリ世界名曲集」10インチジャケットの製作 (2016.2.20)

 平凡社が1970年から1973年にかけて出版した全60巻の10インチLP全集について、7年前(2009.1.21)の雑記帳で紹介したが、現在に至ってぼくの手元に35巻が集まってきた。一覧表を見てもらうと分かるように、とにかくランダムに持っている。それでも35枚あるとそれなりのヴォリュームになるので、本のままの形状ではレコードが整理しにくいので、10インチのジャケットに作り直せないかと考えていた。そう思っていた折に小学校に通う孫がインフルエンザで学級閉鎖となり、しばらく我が家で預かることになった。ちょうどよい機会と思い、35巻のアルバムのジャケットを製作することにした。やり方はこうである。①本を分解して、表表紙と裏表紙をテープ状の紙を使って糊でつなぎ、26センチの正方形にペーパーカッターで裁断しジャケットの形を作る。②カットした上端の紙より作曲者の名前が印刷された部分と、ファブリ世界名曲集の巻ナンバーをかいた部分をカッターでカットする。③ジャケット本体にカットした2枚の紙を糊で張り付ける。④テープ状の紙と糊で上下端を袋になるように糊づけする。以上の①~④の作業を実施すると、左図の元の本が、矢印のようなジャケットとなる。これをペーパーカッターと糊を使ってひたすら35回繰り返すと、右図のようにジャケットが完成した。

 こんなことをすると何か良いことが起きるのか。それが、起きるのであります。ぼくの意識の中で、何か古臭い骨董品のように扱われていたLPが他の10インチLPと同じ仲間に見えてきた。そうすると一通り聞いてみようという気になり、下手をすると7年前のものを聞きだした。確かになかにはカビだらけで絶対に今まで聞いたことがなかったものまで出てきた。もちろん洗剤できれいに洗って音出しをしてみる。
  第50巻のショパンⅢにはバラードの1番から4番が収録されている。演奏するピアニストはペーター・フランクル。この演奏が実に良いのである。変に甘かったり、大げさだったりする感情移入はせずに、ゆったりとスケール感大きく弾いてゆく。聞いているこちらが素直に曲に浸れるのである。 今、ターンテーブルにPIONEERのPL-A38Sのオートリターンとオートストップ機構を活用し、PickeringのNP/AC-SというMMカートリッジを用いて、これ以外のLPも一通り聞いているが、まだまだ新しい発見がありそうである。


モーツァルトのLPをプレゼントされて (2016.2.25)

 モーツァルトよりもヘンデルの音楽のほうが心地よいと言っていたぼくですが、知人からモーツァルトのLPを20枚程度プレゼントされたので、興味津々でそれを聞いています。モーツァルトの音楽をどんな演奏者が演奏したものを聞いていたのだろうか、それを通してこの人はどんな演奏が好みなのだろうか、ぼくの知らない世界が新しく開けるだろうか。など、いろいろなことに気づかされます。 まず最初に気づいたことは、LPを非常に丁寧に扱う人であるということです。ジャケットのやつれやLP盤面のホコリもほとんどなく、センタースピンドルに当てたヒゲも全くありません。とても気持ちの良い状態です。
 アルバムの内容ですが、半分近くはブルーノ・ワルターとカール・ベームによるモーツァルトの交響曲です。これはさすがに定番中の定番と言われるものですが、シンフォニーを聞く心境にないので横に除けておきます。次にセレナード第9番ニ長調「ポスト・ホルン」ベーム指揮、ベルリン・フィル(DG)が演奏したものです。ベームの演奏はこの曲をシンフォニックにとらえて、とても美しく演奏したもので、ぼくも大好きでこのアルバムは持っているが、もう1枚持っていても良いものである。次はディヴェルティメント第17番ニ長調をパイヤール指揮、パイヤール室内管(ERATO)が演奏したもの。ぼくもこのディヴェルティメントは大好きで、特に第5楽章、第6楽章をよく聞きますが、演奏はウィーン八重奏団です。少人数でリラックスした典雅な演奏が良いと思います。しかしこのパイヤールの演奏もテンポ、リズムともにきびきびとして暖かく楽しい演奏だと思います。次は歌劇(フィガロの結婚、ドン・ジョヴァンニ、コシ・ファン・トゥッテ、魔笛など)序曲集をオトマール・スィトナー指揮、ベルリン国立歌劇場管(ETERNA)が演奏したもの。モーツァルトの歌劇は楽しいものが多く、序曲集も聞いていて楽しいが、もっぱらワルター指揮のコロンビア響の演奏で聞くことが多い。このスイトナーの演奏はオーケストラの響きが素晴らしいと思う。次はヴァイオリン協奏曲第6番、第7番をヨセフ・スーク:ヴァイオリン、プラハ室内楽団(Columbia)が演奏したもの。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲といえば4番か5番がよく聞かれ、偽作といわれる6番、7番のアルバムというのは珍しいと思う。なぜかぼくは今までグリュミオーのヴァイオリンで聞くことが多かったので、スークのものは持っていない。彼の清澄な音色で端正に演奏したものも、モーツァルトの新作を聞くようで素晴らしいと思う。次はオーボエ協奏曲ハ長調をトレチェック(ob)、ベーム指揮、ウィーン・フィル(DG)が演奏したもの。オーボエ協奏曲はぼくも偶然1枚持っている。ネイル・ブラック(ob)、マリナー指揮、A of SMIFが演奏したものである。このきびきびとした演奏も悪くはないが、やはりベームの指揮によるこの演奏のほうが優雅でよいと思う。つぎはオーボエ四重奏曲とクラリネット五重奏曲をコッホ(ob)、ライスター(cl)、ベルリン・フィルハーモニー・ゾリステンが演奏したもの。端正な美しさの演奏である。ここらあたりはあまり聞きこんでいないのでぼくのコメントも怪しくなる。最後はモーツァルトのピアノソナタ16番、7番、12番と11番、15番、8番、10番を録音した2枚のアルバムで演奏はイングリット・ヘブラー(PHILIPS)である。ヘブラーのきめ細やかなテクスチュアのような演奏は、モーツァルトの演奏形式の一つの代表である。ぼくはリリー・クラウスの演奏のほうをよく聞くが。(最も、モーツァルトでもグールドの演奏で時々聞く)
 以上、知人からプレゼントされたLPについてあれこれと書いたが、やはりこの人はLPでも演奏を十分吟味して入手しているようである。演奏を聴きながら、これを持っていた人のことをあれこれと勝手にイメージするのも面白い。(アルバムのなかにピアノコンチェルトと弦楽四重奏が抜けているような気がしているが)






ページトップへ