ジャズ・オーディオの雑記帳
 by 6041のS
グッド・ベイトのマスターと知り合いであるという僥倖(2020.8.1)

 このところクラシックのLPが安く手に入ったことに味を占めて、さらに探しに行った。そしてまあまあと思われるLPを8枚ばかり選んだ。その時にジャズのLPが30枚程度売りに出ているのに気がついた。よく見るとジャケットが傷んでいるとか、レコードに軽い擦り傷があるとかといった訳あり品のようである。価格もクラシックとは異なり、色々で高くもないが、安くもない。
 そんな中でぼくの目に留まったのが次の3枚である。それが1コインであったので買ってしまった。

 1)Shelly Manne & His Friends – Modern Jazz Performances Of Songs From My Fair Lady
  Contemporary Records – C3527 USA 1956


 2)Duke Pearson – Sweet Honey Bee
  Blue Note – BLP 4252 USA 1967


 3)McCoy Tyner – McCoy Tyner Plays Ellington
  Impulse! – A-79 USA 1965

 なぜジャケット以外に、裏ジャケットとか、レーベルの写真を載せたかというと、もしかしたらこれはオリジナル盤ではないかと思ったからである。シェリーマンで言えば、裏ジャケットに赤枠が使われている。デューク・ピアソンで言えばレーベルがリバティとなっていてVANGELDERの刻印がある。マッコイで言えば赤黒のレーベルといったところだ。傷ありという物も、店の人に頼んで傷の程度を確認すると、すべて浅い擦り傷であり音に影響するほどの程度ではない。(この辺の判断のもととなる知識は、ほとんどグッド・ベイトのマスターから教えてもらったものである。感謝!)ジャケットがばらけるものは修理可能である。
 ということで、これについては是非グッド・ベイトのマスターの判断を伺っておこうと思い出かけて行った。マスター、このレコードを1コインで買ってきたけどどう思う!と聞いてみました。マスターは一通り眺めて、Shelly Manne はレコード番号がCで始まっているな。Duke Pearson はリバティで確か良かったな。VANGELDERの刻印はあるな。McCoyは赤黒のレーベルでVANGELDERの刻印はあるな。などと言い、 3枚ともオリジナル盤だよ!よかったね、といいました。とくにDuke Pearson – Sweet Honey Beeはなかなか手に入りにくい貴重盤だよ。そして3枚ともに大変音に良い録音だよ、とコメントしてくれました。
 ぼくはすっかり嬉しくなり、確か1コインのLPがまだ10枚くらいは有ったよと言いました。マスターは現在、体調の問題で外出を控えているので、ぼくが今からまた出かけて行って1コインのLPをすべて買ってくることにしました。
 結局すべてとは言わないが13枚のLPをゲットして、またグッド・ベイトに戻りました。お店を手伝っている娘さんから、嬉々として出かけましたねと言われてしまいました。買ってきたすべてのLPを、マスターと見ながらあれこれとうん蓄を傾けて盛り上がりました。全部ではないが大部分がオリジナル盤かセカンド盤で、中には非常に珍しい貴重盤もありました。一部を紹介すると、デューク・エリントンのコロンビア盤2枚です。

  
  

 いずれも6-eyeのオリジナル盤です。
 家に帰って早速LPの音を確認すると、期待に違わないヴィヴィッドなオリジナル盤の音がします。手放した人がどういう事情かは知りませんが、ぼくにはちょっとした幸運が舞い込んできたようです。おそらくぼくひとりであったなら最初に入手した3枚で満足していたでしょう。それがマスターのような目利きに助言を受けてその気になり、さらに13枚も入手することが出来たのは、マスターに背中を押してもらったからです。これは僥倖と言っても良いでしょう。今は音を聞きながら、いそいそとジャケットの修復をしています。




モーツァルトのクラリネット五重奏曲(2020.8.5)

 国内盤であれば、クラシックのLPは比較的安価な価格で入手できる。だからいろいろなLPを機会があれば気楽にたくさん買ってしまう。しっかり聞こうと思えば厳選して手元に置いた方が聞きやすいが、今は良いと思わなくても後からあったほうが良かったと思うことも有ろうと、コレクションしてしまう。物は沢山あっても、ある時点で評価するとこれが気に入っているという情報を整理しておこうと思い、あれこれと細かいことを書いている。
 モーツァルトのクラリネット五重奏曲イ長調はブラームスのクラリネット五重奏曲と双璧ということで多くのLPが両者をカップリングして発売されている。モーツァルトのLPは1970年代までで30種類近くあるが、ぼくはその1/3の10枚程度しか持っていない。その中であえてぼくの好きな演奏を挙げると次の表に示す4枚である。

No 曲名 Cl演奏 楽団 レーベル 録音年
1 モーツァルト、ブラームス/クラリネット5重 ボスコフスキー ウィーン八重奏団 London 1963
2 モーツァルト/クラリネット5重&オーボエ4重 ライスター ベルリン・フィル・ゾリステン DG 1965
3 モーツァルト、ブラームス/クラリネット5重 ランスロ バルヒェットSQ ERATO 1956
4 モーツァルト/クラリネット5重&ピアノと管楽器の5重 ウラッハ ウィーン・コンチェルトハウスSQ Westminster 1951

 この曲はハイドンの「ヒバリ」程、明るく穏かというわけではなく、独特の哀愁をおびて、優雅な気品に溢れた曲である。そのイメージの延長のような演奏が好きで、No1に挙げたアルフレード・ボスコフスキーのクラリネットとウィーン八重奏団の演奏は洗練された優雅でおだやかな響きの演奏を好んで聞く。No2に挙げた演奏は、なんといってもカール・ライスターの美しく艶やかなクラリネットの演奏が魅力的である。
 自分が好きと思って選んだ4枚であるから、こんな調子でグダグダ書けば言葉は出てくるが、自分で書いていて面白くもない。ぼくは音楽についていえば、高校時代に音楽を選択して初歩的な楽譜を読めるくらいなので、まったくに素人といって良い。それでも色々な演奏を聞き比べると、自分の好みとか、演奏者の表現方法とか、音色とか気づくことも出てきて面白い。ぼくにできることは生演奏も含めて、自分の好きな曲とか作曲家、演奏者について、とにかくいろいろな演奏を聞き比べることが、見分を広げることにつながると思っている。ゆったりと演奏を楽しむことの方が大切であるが。







職人へのあこがれ(2020.8.10)

 ぼくがまだ小学校に入学した前後の記憶であるが、我が家にはコンソールタイプの電気蓄音機というものが有った。記憶で覚えているのは下のボックスにスピーカーがあり、それが福音電機製のフィールド型であったこと、中央が真空管式のラジオとアンプで、トップが上にふたが開くSP用のプレーヤーであったこと。そしてSP盤は圧倒的に浪花節の物が多かったこと位である。その電蓄が時々故障して音が出なくなると、父が知立銀座にあった電気店に連絡し、そこに店主がやってくるとテスター一つであちこちチェックをして、真空管が悪いとかコンデンサーがパンクしたとか言って直していった。どうして直せるのか、それがぼくには不思議で店主が神様のように見えたものであった。今では、キット屋さんのアンプを何回か製作し、故障も経験し、根気が必要であるが、簡単な故障であれば自分でアンプも直せることが出来るようになった。(だめであればキット屋さんに駆け込みする)それの延長でカセットテープデッキやCDプレーヤーの駆動ベルトの交換などは自分でできるようになり、またベルトドライブターンテーブルのジャンク品であればたいてい修理できるようになった。(おかげでターンテーブルが何台も何台も増えてしまった)
 その次に印象深いのがカメラである。仮にSさんはライカのカメラのコレクターである。それも中古の故障品を安く購入して、自分で分解修理するのである。コレクションの数も半端ではなく、構造から部品に至るまで、アマチュアとは思えぬ知識と技術で、話を聞いていても半分は理解できない。もう一人のKさんは森の写真のプロといっても良い大家である。自分で個展も定期的に開き、地元では有名人である。この人は特にレンズの発色性についての知識は凄く、例えば日本のレンズはニュース写真のようなものでは良いが、森の風景のような写真になると色の深みや個性でドイツのレンズにはかなわない、それはどう違うかというと・・・・と話が止まらない。SさんやKさんが身近にいたころは、写真は関係ないやと思っていたが、今になってあんな凄い人たちの知識を吸収しておくのだったと思っている。ジャンクのカメラやレンズが安く中古品として売られているので、あれを修理することが出来たらどんなに楽しいかと思えるのである。ただオーディオと違って直したらいそいそと撮影に出かけるかと思うと、手が止まってしまう。
 その次に覚えることが出来たのが、野菜作りに欠かせない管理機や草刈り機のエンジンの不調への対処である。ほとんどがキャブレターのつまりに起因することが多く、2サイクルと4サイクルのキャブレターは構造がまったく異なるが、幸い身近に農機具屋があり、教えを乞うことが出来たので必要に迫られて掃除の仕方を覚えた。その延長でいろいろと治具を工夫し、草刈り機のチップソーの研磨やチェンソーの刃の研磨をできるようにもなった。
 それと忘れてはいけないのが、グッド・ベイトのマスターである。ぼくがジャズが好きということで知り合ったのだが、マスターの影響でぼくの聞くジャズの範囲がずいぶんと広がったのはもちろんであるが、ジャズのオリジナル盤を鑑定する鑑定眼は恐ろしいほど広く深く、なぜそんなことにこだわるのか最初は理解できなかったが、その録音された音の良さを体験すると、ぼくも次第にそのことに関心を持つようになった。そしていつの間にか、FMジャズ喫茶Pitchという番組に、マスターと共に参加し、ある程度の話ができるようになりました。マスターの口癖でありますが、まだまだジャズの修行中でありますが、いつもジャズという音楽がぼくの身近にあるのは、マスターと知り合ったことが大変な刺激となっています。そしてマスターを通じて人の輪も広がっています。
 会社を60歳を過ぎた時に定年退職して、その後2年農業の研修を受け、その延長で10年間野菜作りの講師をさせてもらい、今年それも引退した。もうそろそろ好きなジャズやクラシックの音楽を聞いたり、読書をしたりして、悠々自適な生活をとも考えるが、やはりそれは時間を割いてという感じが良く、普段は野菜作りをしたり、野菜に病気が出れば、顕微鏡でそれを観察して病原菌の特定をしたり、自宅の部屋とか日用品の修理の技術を磨いてDIYを実践したりと言った、体を動かして新しいことに挑戦するといった生活が出来ればと思っている。連れ合いと旅行をという計画もあるが、昨今の情勢ではリスクを考えるとそれもなかなかむつかしい。
 やはり大切なのは、人と人との出会いであるとつくづく思う。
 




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