LEGO SPEAKER 番外編その3

≪第22報 第23報≫

LEGOスピーカーの製作 番外編その3

写真1 2号機ヘッドユニット改
写真1
2号機ヘッドユニット改

1. 悲願の2号機完成

 現存する最古のLEGOスピーカーが2号機である。(写真2、3)
もともとLEGOスピーカーは長岡先生の名機「スワン」をイメージして製作を始めた。
第1報でも記したが「スワン」は首の長いバックロードホーンで、フルレンジユニットを空中に浮かべて配置し優秀な音像定位と音場展開を図り、弱くなる低音域をバックロードホーンで増強するという見事な設計のスピーカーシステムだ。
 1号機はLEGOブロックが高価であったことから部品をケチってきわめてスリムなモデルとしたため、全く低音が出なかった。そこでブロックを奢り大型のモデルとして設計したのが初代2号機である。2007年の当時は私の設計技術も稚拙で今思えばこんな設計で良い音が出るわけは無いのであるが、当時は造る事自体が楽しく目的であったのだ。
 その後、2号機はスピーカーユニットを載せたヘッドユニットを改良したり、スピーカーユニットの駆動力が足りないのでは?と考え、10cmフルレンジユニットの最強モデルFOSTEX FE108EΣに載せ変えたり、ネック部分を改造したりと変遷を繰り返した。
当時のリポートを見るとバックロードらしい豪快なサウンドなどと記しているが、今聴くと私の評価基準が上がったこともあるが、低音域はスカスカ、中高音域は歪っぽく聴くに耐えない。しかし、これらの過程、経験は「失敗」とは呼びたくない。「成果」なのだ。

写真2 2号機外観
写真2
2号機外観
写真3 2号機背面
写真3
2号機背面

 写真2は現状2号機の外観である(後ろのInfinityの黒いネットのせいで闇夜のカラス状態だがゆるされたい)。高さ90cmのスリムなバックロードホーンシステム。ホーン長は1.9mを誇る。写真3は背面であるが1.25kgダンベルのウエイトで転倒を防止している。ネックの強度確保方法などさまざまな製作テクニックを投入して組み立て、使用LEGOブロックは4,000個を超える。

<オリジナル2号機 主要仕様>
・ 形式:点音源型バックロードホーン
・ 使用ユニット:10cmフルレンジ FOSTEX FE108EΣ
・ 構造:4段フォールディング・コニカルホーン
・ ホーン長:約1.9m
・ インピーダンス:8Ω
・ H:900mm W:160mm D:224mm

2. 2号機改造計画

 旧モデルが次々と解体、生まれ変わる中、この2号機だけは解体されずにいた。記念碑的モデルだからだ。しかし、リスニングに使われることは無かった。だが、5年の間に私はさまざまなテクニックを勉強した。なんとか2号機を完成させたいと考えていた。
 2号機の問題点は細すぎるバックロードホーンの音道もあるが、ヘッドユニットの内容積が少なすぎ、十分なホーンロードがかからないこと、そしてスピーカーユニットの背圧が大きく、歪を生じていることである。わかってはいたが、単にヘッドユニットを大きくすることはコンセプトから外れるし、トップヘビーとなり危険なので解がなかったのだが、
・・・今回の計画はこの問題をタンデムドライブの技術で改善しようというものなのだ。
ヘッドユニットの内部にサブユニット(インナーユニットと呼ぶことにする)を設けることで背圧を低減して歪を改善し、バックロードホーンを低音域用のホーンとして積極的に利用することで低音域を増強するという狙いである。
 インナーユニットにはパワーのあるウーハーユニットを奢りたいところであるが、コンパクトなヘッドユニット内部には8cmユニットを納めることが限界である。8cmフルレンジユニットから低音域の駆動能力の高そうなロングストロークアルミコーン、8ΩタイプのAURASOUND NS3-193-8Aを選択した。
 この改造によってもはや2号機は純粋なバックロードホーンとは呼べなくなる。タンデムドライブでもない。「フルレンジ+ホーンウーハーシステム」といったところか。
 図1に構造図を示す。現在のヘッドユニットの下部にインナーユニットを納めるチェンバーを設け、インナーユニットは下向きにホーン上部に固定する。つまりインナーユニットにとってはフロントホーンとなる。ホーンにはカットオフ周波数という特性があり、十分に長いホーンでは低音域しか効果がない。このため8cmユニットで駆動されたフロントホーンウーハーとして動作するはずだ。本来はスピーカーユニット前面とホーンの入り口にはイコライザーと呼ばれる構造が必要なのだが、今回は低音用なので省略している。
 このインナーユニット構造の付加によってヘッドユニットの高さが210mmに増加する。ユニット搭載位置が高くなりすぎることと、トップヘビーの転倒安全確保の理由からネックの長さを400mmから200mmに短縮してシステムの高さを820mmとした。これでもホーンの音道長は約1.8mあり、低音用ホーンとして十分であろう。
2号機改の仕様を以下に示す。

<2号機改 主要仕様>
・ 形式:点音源型フルレンジ+ホーンウーハーシステム
・ 使用ユニット:10cmフルレンジ FOSTEX FE108EΣ
8cmインナーユニット AURASOUND NS3-193-8A
・ 構造:4段フォールディング・コニカルホーンウーハー
・ ホーン長:約1.8m
・ インピーダンス:4Ω
・ H:820mm W:160mm D:224mm

図1 2号機改 構造図
図1
2号機改 構造図

3. 製作過程

 ヘッドユニットの改造に必要な部品を写真4に示す。写真5はインナーユニットのAURASOUND NS3-193-8Aである。アルミの逆ドームコーンはロングストロークのゴムエッジと供に高い低音域駆動能力が期待できる。タンデムドライブとするため8Ωモデルを選んだ。プレスフレームだがコンパクトなネオジウムマグネットも利点。

写真4 ヘッドユニット改造部品
写真4
ヘッドユニット改造部品
写真5 インナーユニット
写真5
インナーユニット

 写真6はインナーバッフルである。スピーカーユニットのフレームと密着するために一部にパネルブロックが貼ってある。スピーカーユニットの前面にはフタのようにごく小さな空間のホーンスロート接合部が付く構造となっている。
 ヘッドユニット底面のインナーバッフル以外の部分を覆うアンダーパネルが写真7である。

写真6 インナーバッフル
写真6
インナーバッフル
写真7 アンダーパネル
写真7
アンダーパネル

 インナーユニットとメインユニットのマグネットが干渉しないようにスペーサーを設ける。写真8のスペーサーは40mmの高さで、マグネットがぶつからない最小の高さとした。
 アンダーパネルを外した現状のヘッドユニットを写真9に示す。吸音材は活性炭1袋であるが、マグネットの巨大なメインユニットFOSTEX FE108EΣで内部はいっぱいで、さぞかし窮屈であったろう。これでは中高音域で歪んで当然だ。
重いメインユニットはM4ボルト&ダブルナットで強固に取り付けられている。5年経過しているが信頼性に問題は無い。

写真8 インナーユニットスペーサー
写真8
インナーユニットスペーサー
写真9 現状ヘッドユニット
写真9
現状ヘッドユニット

 製作は、まずインナーユニットをインナーバッフルに取り付ける。8cmユニットなのでM3ボルト&ダブルナット&ワッシャで強固に取り付けた。ヘッドユニット内にマグネットが向くように下向きに取り付ける。(写真10)
 次にインナーユニットスペーサーをスピーカーユニット背面に固定する。(写真11)

写真10 インナーユニットの取り付け
写真10
インナーユニットの取り付け
写真11 スペーサーの取り付け
写真11
スペーサーの取り付け

 組み上げたインナーユニットモジュールは高さ約70mmで底面のダクトからアルミコーンが見える。(写真12)
 ヘッドユニットのターミナルにインナーユニット用のケーブルを追加する。二つのスピーカーユニットは対向配置となるので信号極性を反転する必要がある。ケーブルの極性が異なることに注意されたい。(写真13)

写真12 インナーユニットモジュール
写真12
インナーユニットモジュール
写真13 ケーブルの接続
写真13
ケーブルの接続

 アンダーパネルを取り付ける。(写真14)
 インナーユニットにケーブルを接続してからインナーユニットモジュールをヘッドユニットに取り付ける。(写真15)

写真14 アンダーパネル取り付け
写真14
アンダーパネル取り付け
写真15 ユニットモジュール取り付け
写真15
ユニットモジュール取り付け

 組み立てたヘッドユニット改の外観と背面。(写真16、17)
ヘッドユニット改は高さが増加してしまったが横幅方向は変わらないのでフルレンジユニットのメリットへの影響は少ないであろう。一般的なミニスピーカーよりもさらに小さい最小のバッフルサイズが高い音像再現性の要である。

写真16 ヘッドユニット改
写真16
ヘッドユニット改
写真17 ヘッドユニット改の背面
写真17
ヘッドユニット改の背面

 ホーン部分を構成するベースユニットのネックを200mmに短縮した。(写真18)
 ヘッドユニット改を載せて2号機改の完成である。
相変わらず写りが悪くて申し訳ないが、完成した2号機改の外観を写真19~22に示す。
ヘッドユニットが大型化したがネックを短くしたのでデザインの安定感は悪くない。
 試聴時には底面の黒御影石ベースとヘッドユニット部分をマジックテープベルトで固定し、ネック接合部分の破損と転倒対策をする。トールサイズモデルでは時節柄、地震対策が重要である。(写真23)

写真18 2号機ベースユニット
写真18
2号機ベースユニット
写真19 完成した2号機改
写真19
完成した2号機改
写真20 2号機改斜め方向
写真20
2号機改斜め方向
写真21 2号機改側面方向
写真21
2号機改側面方向
写真22 2号機改背面方向
写真22
2号機改背面方向
写真23 耐震ベルト固定
写真23
耐震ベルト固定

4. 試聴結果

 期待の音はどうであろうか?・・・
バックロードホーンシステムのダイナミックな低音再現ではない。低音域は8cmのフルレンジユニットが担っているのだから無理も無いが、しかし、これまでの改造では得られなかった十分な低音域のレスポンスがある。中高音域の歪み感はメインユニットのFOSTEX FE108EΣのキャラクターか、ソースを選ぶ傾向があり録音の悪い音楽では粗が目立つが、使用している真空管アンプTriode TRV-A88の音調も相乗してハイスピードでエッジの効いた音だ。
 ソースが優秀な録音であると再現性が一変する。正確な音像、豊かな音場感、そしてハイスピードな低音域。と、このスピーカーシステムでなければ再現できない世界がある。
一言で言うときわめてオーディオ的な音である。私が点音源システムに求めた、そしてLEGOスピーカーで再現したかった音の一つであると感じる。
 改造は大成功である。2号機改は現時点のハイレベルな評価基準でも十分に通用するスピーカーシステムとなった。5年の歳月を経て初めて完成をみたのである。

 やはりフルレンジユニットは良い。この豊かな音楽再現性は音源の分散するマルチウェイシステムではなかなか実現できないだろう。だが、2ウェイシステムの低音から高音までのワイドな音域再生、そして高音域を専用のトゥイーターに受け持たせることによる歪みの低減も魅力的だ。なんとかこの両立を図れないものなのか?・・・
 フフフ・・・。実は一つ方法があるのだ。

5. 次回予告

 次回は久しぶりの大型モデルLEGOスピーカー31号機を造る。ご期待ください。

(2013.1.6)

写真24 31号機鋭意製作中
写真24
31号機鋭意製作中

第22報LEGOスピーカーの製作第23報

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