キット屋コラム
真空管プリメインアンプ

 皆さん、こんにちは。今回は真空管アンプの形式について考えてみます。
カタログの製品仕様を見ると「プリメインアンプ」,「プリアンプ」,「パワーアンプ」,「セレクター/ボリューム付パワーアンプ」など様々な形式があることに気づきます。そのなかでもよくお問い合わせをいただくのが「"プリメインアンプ"と"セレクター/ボリューム付パワーアンプ"はどう違うのか」という内容です。

 これについてはオーディオの歴史的背景も踏まえて理解する必要があるのですが、元々は両者は区別すべきものでした。CD以前のオーディオはアナログ(LPレコード)が主ソースであり、カートリッジ(レコード針)の極めて低い出力電圧(0.2mV~2mV程度)を十分に増幅する必要がありました。加えてトーンコントロール,サブソニックフィルター,バランス調整などの機能が付加されているのが一般的で、それらの機能を「プリアンプ」と総称していました。それをパワーアンプと一体化して使い易くしたものが所謂「プリメインアンプ」です。

 その後CD(デジタル)の時代となり、ソースの出力電圧自体が100倍近く(フルビット=2Vrms)に高められた結果、それまでのアナログソース中心の時代には必須であったプリアンプの必要性が低下し、パワーアンプ直結でも電気的には十分な利得(ゲイン)が得られるようになったのです。その結果、パワーアンプの入力部にセレクター,ボリュームを追加した「簡易プリメイン型」が主流となり現在に至っています。つまり現在真空管プリメインアンプと呼ばれるものの多くが設計上はセレクター/ボリューム付パワーアンプの簡易型を採用しています。

 スピーカーの能率にもよりますが、CDを聴くのに必要なアンプのゲインは一般に20dB~30dB程度と言われており、簡易型でも十分得られるゲインであることから今後ますますこの簡易型が主流になっていくものと思います。

 その一方でプリアンプの必要性が希薄になっているかというと決してそうではありません。次週はプリアンプの電気的メリットならびに音質的効果について考えてみたいと思います。

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