LEGO SPEAKER 第15報

≪第14報 第16報≫

LEGOスピーカーの製作 第15報

写真1 23号機 LEGOらしいLEGOスピーカー?
写真1
23号機 LEGOらしいLEGOスピーカー?

1. つくりたいのにつくれない!

 LEGOスピーカー製作最大の問題は?・・・以前にも書いたように大量のLEGOブロックの入手である。高価とか言う問題ではない。パーツ単位で販売しているお店の在庫が無いのである。国内のLEGOビルダーの皆さんもさぞかし苦労していることだろう。
 普通に手に入るLEGOブロックは大きく2種類あり、映画のキャラクターなどを作り上げるプラモデルのようなパッケージとバケツに入って販売されている基本セットと呼ばれるものがある。だが、この基本セットは車輪や窓などスピーカー製作にとっては無駄なパーツが多い。と思っていたら紙のパッケージに収められた基本ブロックを見つけた。本当に基本的なブロックが650個入って販売されている。価格は3千円以下である。うーんこれは使えそうだ。
 早速、通販で注文してみた。6箱で3,900個のLEGOブロックがなんと次の日に届いた。クリスマスの子供のような心境である。しかし・・・届いてみると9色の色とりどりのパーツが入っており、小さなパーツが多い。スピーカー製作に使えるのは3分の2くらいかな?まあ、本来は子供の玩具なのだから文句は言えない。
 困ったことに色ごとにパーツの種類と個数が違う。9色を混ぜて使ったら美的センスゼロのカオス状態になりそうだ。さらに問題はプレートブロックがない。プレートブロックとは厚さ3mmの板状ブロックであり、箱型のエンクロージャを造るにはフタに欠かせない部品である。大量の色とりどりのパーツを前に途方に暮れた・・・。
 これまでは形状設計を考えてこれに合わせたパーツを入手していたが、今回は入手の容易なパッケージのブロックで如何にスピーカーを造るかがテーマである。(ただし、スピーカーユニットの固定フレームなど一部には手持ちの特殊パーツを使った)

2.23号機 設計と仕様

 プレートブロックが使えないのでエンクロージャのフタ構造は階段状に造らなければならない。そこで、四角錐を前後に組み合わせた構造を考え、フロントホーンとして設計した。
 図1に基本構造を示す。2重の四角錐によって作られた空間をバックキャビティとしたバスレフシステムである。フロントホーンは20号機でも成功しているので張りのある音が期待できる。背面の四角錐の頂点にはバスレフダクトを設ける。まずは10段の10cm長で設計した。内容積を0.6リットル程度と見ていたので、これで共振周波数は100Hzくらいのチューニングである。
 今回はもう一つ考えなければならない。配色である。9色のブロックを寒色系(青、黄緑、緑、白)と暖色系(黄、オレンジ、茶、赤)に2分し(まるで色彩検定?もちろん赤がRチャンネル)、黒はバスレフダクトとスタンドに当てた。より多くパーツの入った青、黄、赤、白で四角錐を造り、フレームをこれ以外の色で造ったのである。なんか、いらない苦労である・・・が、今回のスピーカーはポップな外観になりそうだ。これまでは化粧パネルでブロック上面のポッチを全て隠して、LEGOで造られたことを「言われなければ解らない」ように造ってきた。実用品としての意匠を考えて多くのモデルを黒で造ったのであるが、今回はカラフルにLEGOらしさを強調したモデルにしよう。
 スピーカーユニットには8cmフルレンジのTangBand W3-517SBを選んだ。木製フェイズイコライザが特徴のペーパーコーンユニットである。今回のポップな外観に似合いそうだ。
 この構造の問題点は階段状の構造強度である。2×4サイズのブロックは普通に組むと強固に勘合するが、階段状にずらして組むと1列しか勘合しないためにやわになる。密閉度も明らかに低下するので、図に示すように1列のブロックを追加して2重にした。これでも押し付け方向の強度は弱いと考えられるので補強柱を4箇所に設けた。補強柱は入れるほど強固になるが肝心の内容積を犠牲にしてしまう。
・・・いっそ補強柱で埋めてしまおうか でもそれじゃ意味ないの

<23号機 基本仕様> (調整後)
・方式:8cmフルレンジ フロントホーン
・組立方法:ホリゾンタルタイプ(水平組立)
・エンクロージャ方式:バスレフ
・使用ユニット:TangBand W3-517SB(木製フェイズイコライザ付)
・外形寸法:W208mm H208mm D240mm
・内部容積:約0.8リットル
・ダクト長:70mm(実効ダクト長 約80mm)
・ダクト開口:16mm×16mm
・ダクト共振周波数:約100Hz
・吸音材:活性炭2個

図1 23号機基本構造
図1
23号機基本構造

3.製作過程

 写真2に全構成部品を示す。小形パーツが多かったために購入したほとんどのブロックを使ってしまった。色合いはきれいだがスピーカーシステムとしてはちょっと落ち着かないかな?
 個々の部品を説明する。写真3はフロントホーンである。深さは5段で5cm。写真では階段は7段だが、内側2段でスピーカーユニット部を固定する。青と黄色で鮮やかな配色。ポッチも良い味を出している。23号機のエンブレムも忘れずに。
 リアカバーを写真4に示す。紅白でおめでたいが左右を示す重要な色である。3箇所に補強のリブがある。4箇所目はスタンドが付く。
 メインフレーム(写真5)は数の少ない色パーツで造った。ツートーンが美しい?
このメインフレームにターミナルを付ける。本当はターミナルをリアカバーに付けたかったのであるが、階段状の部分に付けるのは困難なので断念した。

写真2 全構成部品
写真2
全構成部品
写真3 フロントホーン
写真3
フロントホーン
写真4 リアカバー
写真4
リアカバー
写真5 メインフレーム
写真5
メインフレーム

 スピーカーユニット部(写真6)。この部分のパーツは今回購入したブロックではない。テーマから外れてごめんなさい。他に、エンブレムとターミナルを固定した穴あきブロックが別途購入品である。このスピーカーユニット、ユニークな外見にもかかわらず、落ち着いた音がする。
 写真7はバスレフダクトである。10段で10cmから始める。音を聴きながらの長さ調整はお手の物。
 補強柱とスタンド(写真8)。あまったパーツで造った。

写真6 スピーカーユニット部
写真6
スピーカーユニット部
写真7 バスレフダクト
写真7
バスレフダクト
写真8 補強柱とスタンド
写真8
補強柱とスタンド
写真9 補強柱の取り付け
写真9
補強柱の取り付け

 製作を始める。まずはフロントホーンの裏に補強柱を付ける(写真9)。メインフレームを取り付けると俄然しっかりしてくる。ターミナルにケーブルも付けておく(写真10)。
 スピーカーユニット部を取り付ける。補強柱で受ける形になるのでしっかり付くだろう。このスピーカーユニットはマグネットが大きい。ネオジウムの小型マグネットの方が内容積を無駄にしないので望ましいのだが(写真11)。

写真10 メインフレーム組立
写真10
メインフレーム組立
写真11 スピーカー取り付け
写真11
スピーカー取り付け

 写真12に示すように吸音材の活性炭は2個入れた。2個でいっぱいである。吸音材には綿やグラスウール、厚手のフェルトなどいろいろあるが、ほこりが出るのがいやなので活性炭を愛用している。袋が破けると大変だが。
 リアカバーを付ける。取り付けが難しい。きちんと付かないと崩れてしまう。バスレフダクトが中心に付けばしっかりするだろう(写真13)。
 バスレフダクトとスタンドを付けて完成である(写真14)。メインフレームとスタンドの3点に薄いゴムシートを貼ってレッグとした(写真15)。

写真12 吸音材の挿入
写真12
吸音材の挿入
写真13 リアカバー取り付け
写真13
リアカバー取り付け
写真14 ダクトとスタンドの取り付け
写真14
ダクトとスタンドの取り付け
写真15 レッグを貼って完成
写真15
レッグを貼って完成

 今回は形状から3点支持としたが、四角いシステムでは4点支持が良いと考えている。この場合、4点では厳密には1点が浮いた状態になるのでコンプライアンス(柔らかさ)が必要になる。ゴムは柔らかく滑らないのでレッグに適しているが厚みがあるとふらつくので良くない。薄いシートが適している。スパイクなどのハードな接地は3点でないと上手くいかない。今回のような小型で軽いシステムではスパイクの上で踊ってしまうので良くないだろう。なにより滑ってあぶない。
 ポップな外観を写真16~18に示す。色を整えたので意外に派手ではない。左右で色が違うのはやむを得ないところ。どんな音がするかな?

写真16 正面外観
写真16
正面外観
写真17 側面外観
写真17
側面外観
写真18 背面外観
写真18
背面外観
写真19 Lチャンネル
写真19
Lチャンネル

4.試聴と調整

 早速セッティングして聴いてみる。前面はLチャンネルが青色(写真19)、Rチャンネルが黄色(写真20)のフロントホーンであるが、リスニングポジションからは他の色彩は見えないので落ち着いて聴いていられる(写真21)。横からつき出たケーブルがちょっと残念。
 音はどうか・・・低音が出てない。バスレフダクトのチューニングが低すぎたようだ。四角錐に囲まれたバックキャビティの内容積は推定が難しい。メインフレームの内側も考えると内容積は0.8リットルくらいありそうだ。また、バスレフダクトも黒いブロックの部分10cmだけの動作ではなさそうだ。エンクロージャの構造が四角錐の頂点でバスレフダクトにつながるので実効的にはもっと長いように動作するのだろう。音を聴きながら調整(ダクトのブロックを外すだけのこと)したところ、7段くらいが適当なようだ。実効的にはダクト長は8cmくらいで100Hz程度のチューニング周波数だろう。ダクトのチューニングは高めにすると共振効率が上がって低音域にピークができ、一見低音が豊かになるが良く聴くとクセのある低音となる。

写真20 Rチャンネル
写真20
Rチャンネル
写真21 リスニング風景
写真21
リスニング風景

 調整した結果なかなか良い音が出てきた。フロントホーンの音調もちゃんと効いている。スタンダードなバスレフ方式で8cmフルレンジとしては低音もなかなかである。気軽なBGMシステムに最適なLEGOらしいポップで楽しめるシステムになった。容易に手に入るLEGOブロックのパッケージで造れる事もメリットだ。

5.次回予告

 これまでは自作スピーカーはフルレンジ!と言ってきたが、24号機はついに本格2Wayシステムに挑戦する。ご期待ください。

(2010.11.3)

写真22 24号機構想
写真22
24号機構想

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