LEGO SPEAKER 第40報

≪第39報 第41報≫

LEGOスピーカーの製作 第40報

写真1 ハイクオリティコンパクト 50号機
写真1
ハイクオリティコンパクト 50号機

1. エアサス・バスレフ方式正式採用機

ついに50号機である。(感慨無量!)
これまで記念号機は10号機、25号機、5周年記念28号機、40号機と製作してきたが、どれも大型のモデルであった。今回は小型で高性能な「ハイクオリティコンパクト」がコンセプトである。これまでの製作経験から得た私の持てるすべてのLEGOスピーカー技術を使う。
その特徴としては
 ・高級小型スピーカーユニットの採用
 ・従来比3倍高密度のオールプレートブロック製作
 ・立体リアパネルの徹底した高剛性エンクロージャ
 ・シンプルなデバイディングネットワーク2ウェイ
 ・最新のエアサス・バスレフ方式
といった内容である。
48号機から始まったエアサス・バスレフ方式の正式採用モデル第一弾である。

2. スピーカーユニット

 本機のコンセプトはハイクオリティと言うことで記念号機でもあり、贅沢な高級スピーカーユニットを選択し、エンクロージャ構造にも贅沢にLEGOブロックを使用する。
 スピーカーユニットにはFOSTEXの10cmアルミニウムコーンウーハー M100HR-W、 20mmマグネシウムドームトゥイーター FT200Dのペアを選択した。
 ウーハーは10cmだがすごく大きなマグネットで駆動力に期待ができる。マグネシウムトゥイーターも使って見たかったモデルだ。正直なところ、まず、このスピーカーユニットのセットを聴いて見たかったのが開発のスタートであった。

写真2 M100HR-W
写真2
M100HR-W
写真3 FT200D
写真3
FT200D

 FOSTEX M100HR-W(写真2)は10cmアルミニウム合金HR振動板ウーハー。アルミコーンは特徴的な特殊形状。タンジェンシャルエッジはストロークが大きく、大型フェライトマグネット磁気回路はニッケルメッキ仕上げでさすがに高級感がある。
主な仕様は
 インピーダンス :4Ω
 最低共振周波数 :72Hz
 再生周波数帯域 :fo~10kHz
 出力音圧レベル :85.5dB/W(1m)
 Mo :7.3g
 Qo :0.4
質量は1.57kgもある。foが72Hzと低いのでバスレフ周波数も低めに設定したい。Qoが低いことからマグネットが強力であることが窺える。
 FOSTEX FT200D(写真3)は20mm純マグネシウムリッジドームトゥイーター。 稜線のあるドーム形状に成型する事により分割振動による共振を分散し、ハードドームにありがちな高音域のカラーレーションが無く美しい再生音を実現とのこと。
大型ネオジウムマグネット磁気回路、アルミヒートシンク、真鍮バックチャンバーでこちらも高級感大。
主な仕様は
 インピーダンス :8Ω
 再生周波数帯域 :1kHz~50kHz
 出力音圧レベル :86.5dB/W(1m)
である。最高音域が50kHzまでと、ハイレゾ再生にも対応したスーパートゥイーターである。それでいて1kHzから使えるワイドレンジがうれしいポイント。

3.構造設計

 それではエンクロージャの構造を解説する。
図1に50号機の構造設計図を示す。エンクロージャは内容積約3.2リットルのシンプルなバスレフ方式であるが、スポンジボールを4個挿入したエアサス・バスレフ方式を採用している。本来、この超強力なウーハーは6リットル程度のエンクロージャを要求するが、エアサス・バスレフ方式の能力で3.2リットルにダウンサイズするのだ。
バスレフダクト長は12cmで、共振周波数は58Hzにチューニングしてみた。これは試聴により調整したい。

図1 構造設計図
図1
構造設計図

 エンクロージャはすべて3.2mm厚さのLEGOプレートブロックで構成して、密度を通常の3倍と高めることで、より丈夫で重く、内部損失の高い高性能な構造としている。特にリアパネルは階段状にして、より強度を確保する。LEGOプレートブロックの板状構造は振動に対して弱くなるので立体構造とするのである。
 重要なバッフルパネルも立体構造として強化している。非常に重いウーハーユニットを固定するので強度には十分に注意して製作しなければならない。プレートブロックのサイズ、種類、組み方にノウハウがあるのだ。
前面サイドのコーナーカットデザインは意匠面のスマートさの狙いだけでなく、バッフルでの高音域のエッジ反射を低減する目的もある。
 バスレフダクト開口部は前面下方にあり、ダクトは底面を利用したコの字型構造である。 できればバスレフダクトは独立した筒形状の方が効率は良いのだろうが、コンパクト化の妨げになるし、内容積の減少も気になるのでこの構造とした。
 デバイディングネットワークのコイル、コンデンサー、抵抗器素子は縦長のリアパネル最後端にターミナルとともにM4ボルト&ナットで固定する。この立体リアパネルは取り外しが困難になると予想されるので、メンテナンスのためにウイークポイント(ブロック間の接合面積を制限する)を設けている。
 4個挿入するスポンジボールはちょうど良いテンションでエンクロージャ側面を圧迫して制振とボールが中で踊ってしまうことを防止する。
 アニバーサリー50号機はオーソドックスな構成で高音質を狙ったモデルなのである。

4.デバイディングネットワーク設計

 2ウェイのデバイディングネットワークは図2に示す3kHzクロスのシンプルな回路である。コイル、コンデンサーともに1素子の6dB/octネットワークで素子挿入による音質劣化を抑えた設計。特にコイルは直流抵抗の少ないコアコイルを用いている。今回のウーハーは4Ωなのでインダクタンスを小さくできるのも利点である。

図2 デバイディングネットワーク
図2
デバイディングネットワーク

 トゥイーターには-2.1dBのアッテネーターを挿入した、セオリーどおりの逆相接続。 狙いとしては、良質なトゥイーターをできるだけ広帯域で使いたいので、レベルを少し絞ってクロス周波数を下げている。トゥイーターのアッテネーター挿入もできれば無くしたいところだが、スルーでハイ上がりを抑えるにはクロス周波数を上げる必要があり、悩むところだ。トゥイーターのアッテネーターはウーハーのようにダンピングファクターに影響することもないので妥協しよう。本来、アッテネーターは抵抗器2本を用いて定インピーダンスで組むのが正しいが、インピーダンスの増加分も考慮してコンデンサーを設定すれば、この-2dB程度のアッテネーターならば音質的な問題は無いと判断している。
<50号機 基本仕様>
・ 形式:バスレフ方式スピーカーシステム
・ 方式:エアサス・バスレフ方式
・ 組み立て方法:ホリゾンタルタイプ(水平組み立て)
・ 使用ユニット:
  ウーハー FOSTEX M100HR-W 10cmアルミ合金HRコーン
  トゥイーター FOSTEX FT200D 2cmマグネシウムリッジドーム
・ 外形寸法:W160mm H272mm D192mm(ターミナル部除く)
・ 実効内容積:約3.2リットル
・ バスレフダクト長:12cm
・ バスレフ共振周波数:58Hz
・ 内蔵ボール:PS-2289 4個(7cmφスポンジ)
・ システムインピーダンス:4Ω
・ 質量:4.5kg

5.製作過程

 50号機1台分の部品を写真4に示す。4個のボールがひときわ異彩を放っている。シンプルな構造なのでLEGOブロックのエンクロージャパーツは4点と少ない。

写真4 総部品(1台分)
写真4
総部品(1台分)

 写真5はバッフルパネルである。コーナーカットデザインで船型構造の強固な造り。補強リブも3箇所に渡している。バスレフダクト開口部は浅いホーン形状で風切り音を低減する。サイドのホワイトリボンがスマートに魅せるデザインのポイント。
 フレームはシンプルな枠構造(写真6)。すべてプレートブロックでできており、極めて強固。左右のこの部品だけでプレートブロック1,800個を費やした。

写真5 バッフルパネル
写真5
バッフルパネル
写真6 フレーム
写真6
フレーム

 リアパネル(写真7)もオールプレートブロックによる立体船型構造。
強度と内容積の確保、定在波防止を狙う。ターミナル部分は挿抜に力がかかるので補強リブを入れた。ターミナル2個とコイル素子固定、回路素子用ポストの6個の穴が開いている。接合部はあえてポッチ列を1列に減らしてウイークポイントとして、メンテナンスの開閉に備えた。
 バスレフダクト(写真8)も贅沢なプレートブロック製。1ポッチ8mmのコの字型構造だが、プレートブロックで造ると強度は申し分ない。

写真7 リアパネル
写真7
リアパネル
写真8 バスレフダクト
写真8
バスレフダクト

 写真9は本機のキーパーツとも言えるスポンジボールである。直径7cmで弾力はソフトボールに近い。何よりも空気抜けの問題がない安定性が良い。吸音材としての効果も良質だろう。
 その他の部品を写真10に示す。ケーブル、ターミナル、インシュレーター、ネットワーク素子、ネジ類である。

写真9 スポンジボール
写真9
スポンジボール
写真10 その他の部品
写真10
その他の部品

 組み立ては、まずはバッフルパネルにトゥイーターを取り付ける。(写真11) M4ボルト&ナット3本で強固に固定した。トゥイーターにはあらかじめ付属のパッキンを貼ってあり、振動による異音の発生を防いでいる。ナットはもちろんダブルで使う。(写真12)

写真11 トゥイーター取り付け
写真11
トゥイーター取り付け
写真12 固定の様子
写真12
固定の様子

 次に重いウーハーを取り付ける。(写真13)
組み立てたバッフルパネルを写真14に示す。2本のスピーカーユニットはM4ボルトでしっかりと装着されている。しかし、巨大マグネットウーハーの質量は尋常ではなかった。
バッフルパネル内部のプレートブロックの組み合わせ構造を見直して、さらに強度を高める必要が生じたのだ。

写真13 ウーハー取り付け
写真13
ウーハー取り付け
写真14 バッフルパネルの様子
写真14
バッフルパネルの様子

 各スピーカーユニットにケーブルを接続してフレームに取り付ける。(写真15、16) フレームの裏面はフラットなので、上からしっかりと押し付けて固定できる。(写真17) 組み立て方法の配慮も重要である。
 バスレスダクトを内部から底面部分に取り付ける。(写真18)

写真15 ケーブル配線
写真15
ケーブル配線
写真16 フレーム固定
写真16
フレーム固定
写真17 フレーム内部の様子
写真17
フレーム内部の様子
写真18 バスレフダクト取り付け
写真18
バスレフダクト取り付け

 スポンジボール4個をエンクロージャ内部に挿入する。(写真19)
エンクロージャ内部の様子。(写真20)
コの字型のバスレフダクトは内部で振動してしまう可能性があるのでエアサス・バスレフのスポンジボールで押し付けて押さえている。
 写真でわかる様にボールは側面にしっかりと接しており、エンクロージャの制振にも寄与している。普通は、このようにボールを挿入したら弾けてしまい安定しないが、実はだんごのように爪楊枝で串刺しにしているのだ。スポンジボールだからできるワザなのだ。 ここでインシュレーターも底面に貼ってしまう。

写真19 スポンジボール
写真19
スポンジボール
写真20 ボール挿入の様子
写真20
ボール挿入の様子

 リアパネルを組み立てる。(写真21)
ターミナル、ネットワーク素子をボルト&ナットで固定する。最裏面にしか平面がないので、縦長に配置することになる。ちょっと使いにくいがターミナルも縦配置。ターミナル部の内面に補強リブが見える。(写真22)

写真21 リアパネル組み立て
写真21
リアパネル組み立て
写真22 リアパネルの様子
写真22
リアパネルの様子

 リアパネルにケーブルを接続して本体に固定すれば組み立ては完了である。(写真23)

写真23 リアパネル固定
写真23
リアパネル固定

組み立ての完了した50号機。想定したとおりのスマートな外観になった。(写真24) ちょっと市販品っぽい?
10cmウーハーモデルなので、写真で見るよりも実物はもっとコンパクト。でも、ずっしりと重い。
背面は構造強度の高い三角型。(写真25)

写真24 50号機外観
写真24
50号機外観
写真25 背面の様子
写真25
背面の様子

バッフル右上に記念号機バッジ「50th Anniversary Airsuspension Bassreflex」が光る。(写真26)
バスレフダクト開口部に少しデザインを入れてみた。(写真27)

写真26 記念号機バッジ 
写真26
記念号機バッジ 
写真27 バスレフダクトデザイン
写真27
バスレフダクトデザイン

6.試聴

第一印象は「すごい音」である。
50号機の音は優秀なスピーカーユニットに助けられてはいるが、高剛性のLEGOエンクロージャ性能が感じられる。
 ・高音域は刺激音が無く澄んでいる
 ・中音域は背圧による歪み感が無く、クリア
 ・低音域は10cmウーハーのこのコンパクトサイズとは信じられないほどダイナミック
 ・エアサス・バスレフ方式でバスレフ効果が高い
 ・フルオーケストラの迫力を感じるのに音量がいらない
 ・これは「本物のオーデイオの音」だと感じる
間違いなく、この50号機はLEGOスピーカー史上最高のクオリティである。

写真28 50号機試聴中 
写真28
50号機試聴中 

7.おわりに

 50号機は独自の低音改善技術も搭載して、LEGOスピーカー製作技術の粋を凝らしたアニバーサリー機種にふさわしい、ハイクオリティなモデルとして製作することができたと自負している。
しかし・・・、まだ完成はしていない。肝心な作業が残っているのだ。
この報告はまたの機会にしたい。

~そして、次の曲が始まるのです。

(2015.9.23)

写真29 アニバーサリー50号機
写真29
アニバーサリー50号機

第39報LEGOスピーカーの製作第41報

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